stone form ―世界を滅ぼした死神の、ただ一人への執着―

ホタカ

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第1章

第14話 彼の美しい銀髪を梳かす朝

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流実るみの一日は早朝の洗濯から始まる。洗濯機のないこの世界では、とても時間がかかるからだ。
それが終われば朝食作り。じんの良いところは、例え同じメニューが連続しても何も言わず黙々と完食するところだ。欠点があるとすれば、作る量が多い事と、美味しいと言わない事。
それが終わると世話係の仕事が始まる。仕事はとにかく忙しい。昼もろくに食べずに、気付けば夕方になるのは日常茶飯事だ。
夕になって洗濯物を取り込み、食事を作る。
そして彼と一緒に食べ終わった後、ホットタオルとココアをもって書斎で次の日の予定を聞いて就寝の挨拶をする。

このルーティーンが最近板について来たように思う。
何より、靭と顔を合わせる頻度が高くなったのに、何の不都合もなかった。
どうやら彼とは基本的に馬が合うらしく、距離感が丁度良いらしい。彼もそう思うのか、最近では寝起き姿のボサ髪のまま家の中を歩き回るようになった。
完全にリラックスした同居人である。

今日は洗濯物を干し終わってリビングに戻ると、珍しく靭の姿が。相変わらずの寝癖頭とラフ着だが、顔の良さだけは朝日より眩しい。
流実はニコリと微笑むと、朝の挨拶をする。

「おはようございます、クロノアさん」
「ん」

最近は流実が挨拶をすれば一言だが返事をしてくれるようになった。そんな変化も嬉しく感じながらキッチンへ向かう。
靭はシャワーを浴びるらしく、タオルを持って洗面所に向かっていた。いつも深夜か朝方に入るのに、珍しい。
流実はそう思いながら、彼の背後姿を眺めてふと気付いた。

(……そのまま、髪、洗わないよね?)

少し、不安になった。
いやまさか?流石にシャワーの前には梳かすよね?

ドキドキしながら彼を待てば、悪い予想は当たっていた。
やって来た彼は濡れた鳥の巣のような髪を放置して何食わぬ顔で朝食を食べている。

この様子では、どうやら彼は普段から髪を梳かさずシャワーを浴びているようだ。きっと乾かす気もないのだろう。

(…耐えられない)

今まで気付かなかったとはいえ、なるべく目の前の光景を見ないようにしつつ、流実は心の中で呟いた。
折角サラサラで綺麗な長い銀髪なのに、何故手入れしないのか。
最近はどんどん酷くなっている気がする。きっと城では身綺麗にしてくれる人がいて、靭の髪を整えていたに違いない。

(離れには私しかいないんだから、私がしっかりしないと)

靭が手入れしないならば自分がやるしかない。これ以上あの綺麗な髪が痛んだらどうするのか。手遅れになる前に、何とかしないと。
流実は心の中で拳を握ると、さっさと朝食を掻き込んで仕事を始めるのであった。

チャンスは翌日に訪れた。
この日も朝にシャワーへ向かう靭に、流実は意を決して呼び止める。彼は怪訝そうな表情を浮かべ、眉を潜めた。

「何だ」
「あの、今からシャワーですか?髪は梳かしますよね?」
「? いや」
「ちょっと待って下さいね!」

食い気味に返事をし二階へと駆け上がる世話係に彼は訝しげな表情でその背中を見送った。
戻ってきたその手には櫛が握られている。

「クロノアさん、ちょっとそこ座って下さい」
「は?」

どういうつもりだと言いたそうな主人の背中を押し、強引に椅子へ座らせる流実。
―――そして、彼の背後に立ち有無を言わせずさっさと髪を梳かし始めた。

「!? な……」

ビクリと肩を揺らし、咄嗟に背後を見る靭。
しかし流実の決意は変わらない。「ちゃんと座ってて下さい」と前を向かせ、手を動かしていく。

「髪は洗う前に梳かして下さい。このまま洗ったら更に絡まりますし、そもそも綺麗に洗えません」
「べ、別に」
「良くないです。折角綺麗な髪なのに。直ぐに終わりますから、待っていて下さい」

再び肩を大きく揺らす靭。
しかし、今度は何も言わず、されるがままに髪を弄らせてくれた。彼の背後にいるので勿論表情は分からないが、弄らせてくれる程度には不機嫌ではないはず。

いくら世話係とは言え流石にここまでは…と思っていた初めの遠慮はとうにない。流実は無心になって絡まった髪を解いていった。
―――思ったよりコシがあり少し硬い髪はサラサラで手触りが良く、櫛で梳かすと艶が出て、あれ程絡まってうねった髪は真っ直ぐになっていく。
朝日が当たると無垢な銀髪は輝いて朝日色に染まった。その光景にうっとりして、つい流実は「綺麗…」と呟いた。

しばらく解いては梳かすを繰り返すと、すんなりとあの美しいストレートヘアになってくれた。
あのボサボサ頭は寝癖のようだが、櫛で梳かすだけでこんなに綺麗な状態に戻るなんて信じられない。だから逆に放置できたのだろうか?

「……よしっ。これで大丈夫です。綺麗に髪を洗えますよ」

我ながら良い仕事をした。
流実は満足気な表情でその完成した美しい銀髪を見つめる。

(…綺麗な銀髪。ここまで長いなんて、何か理由があのかな…?)

不思議だった。彼は自分で手入れをする訳でもなく、どちらかと言えば長い髪を鬱陶しがっている様にも見える。
何かの願掛けか、それとも…切らないのではなく、切れない理由があるのだろうか?
そんな事を考えつつ、目の前のサラサラでコシのある髪をまた触ろうとして――ふと彼の藍色の瞳と目が合っている事に気付いた。

「―――あっ!ご、ごめんなさい!!」

夢見心地から一転、ギョッとした表情で慌てて手を引っ込める流実。いつの間にか彼は背後を振り返っていたようだ。

―――何も言わず、ただじっと流実を見つめる靭。何故か不思議そうな、一方で疑うような、そして……少しだけ何かを“求める”顔をしていた。

「……もう良いか」
「あっ…はい」

手を引っ込めたままの状態で固まった流実は、シャワー室に消えていった靭の背中をポカンと眺めた。

……何故そんな顔をするのか?その時の流実は、まだ彼の表情の意味を理解できなかったのである。



◇◇◇◇


靭の髪を梳かした翌日。
流実はようやくはけてきた仕事の間を縫って、食堂に来ていた。
呼び鈴が鳴った事に気付いた水狼すいろうは、入り口にいた小さな訪問者を見て目尻に皺を寄せて笑う。

「久しぶり流実ちゃん、いらっしゃい」

流実も水狼の姿を確認するとペコリと一礼して、扉を閉める。
大きな手提げ袋を持っている流実に気付いた水狼は慌ててカウンターから出てその荷物を持った。

「すみません、ありがとうございます」
「いいよ。これは?」
「だいぶ遅くなっちゃいましたけど、お借りした食材と調理器具です」

「ありがとうございました」そう笑顔で言われた水狼は目を丸くして驚く。

「そのまま持ってて良かったのに」
「そんな訳にはいかないです。あ、それと、教えて頂いたスタミナ丼レシピありがとうございます。お陰で、あれから食べてくれるようになったんですよ!」

「本当に?」と更に驚く水狼。

「はい。この前それを伝えれなくて。改めてありがとうございます」

この前とは、皆がイソラ地区へ戦闘に行った日の事だ。あの時はこんな報告ができるほど余裕がなかったから。
水狼は驚いた表情を浮かべたが、直ぐに照れて喜んだ。

「じゃあ、私そろそろ行きますね。まだ仕事残ってて。またレシピ教えて下さい」
「もちろん。族長にもよろしくね?」
「……!はい!!」

特に深い意味もなく社交辞令程度に言った内容は相当嬉しいものだったらしい。流実は満面の笑みで返事をすると、食堂を後にした。

入り口で流実の声とダミ声が聞こえてくる。
しばらくすると、少女と入れ替わるようにガレアが入ってきた。

「いらっしゃい」
「おう。嬢ちゃん何の用事だったんだ?」

ガレアは挨拶も早々に席に着く。
背後の少女が消えて行った入り口を気にしているところをみると、この男も外見の割には心配性の類いなのかも知れない。

「わざわざ貸したものを返しに来たんだよ。いつもので良いかい?」
「ああ。何を貸したんだ?」
「食材と鍋だよ」
「食材!?まさか返しに来たんか?」
「そう。律儀な子だよね」

クスクス笑う水狼に、信じられないものを見るような表情になるガレア。だが、それもすぐに怪訝そうな顔に変わった。

「思ったより元気そうだったな」
「ん?」
「いや。族長と生活してる割にはずっと笑顔だよな。やっぱ嬢ちゃん少し変わってんのかな」
「ふふ。ガレアなら二日と持たないだろうね」

そう言ってキッチンに引っ込んだ水狼を薄く睨み「一時間だって持たねぇよ」と毒づいた。
やがて大盛りのどんぶりを水狼が持ってきたところで、再び入り口の鈴が鳴った。顔を覗かせたのは金髪の少年アクバル。

「さっき流実とすれ違ったけど、ここに来てたの?」

言いながら店内へ入り、ガレアの隣の席に着いたアクバルは水狼を見上げる。
カウンター越しの水狼はその様子に思わず笑ってしまった。

「何?なんか変な事言った?」
「さっきもガレアが同じ事を聞いていたと思ってね」
「お前が?」
「……あんだよ。あの嬢ちゃんが食堂から出てきたから聞いただけだよ」

何となく気まずそうなガレアはどんぶり飯を掻き込み、水狼はクスクス笑うのみだ。

「流実ちゃんは皆から相当心配されているね」
「そりゃ族長の世話係だかんなぁ!でも案外うまくやってるみたいだな。俺、今日は麺が良い!」

「ハイハイ」と笑顔で返した水狼が再びキッチンへ消えて行く。

「無理してんじゃねーだろうな?……この前あんな事があったのに」
「何の話?」

アクバルのその言葉に、さっと表情が変わったガレア。

知ってか知らずか、アクバルは一切の無視をしてやって来た水麺を受け取る。そして、そのまま「頂きます」といってすすり始めた。

「……おいアクバル」
「んー?」
「まさか忘れたんじゃねぇだろうな?族長が…死神が、俺たちの仲間を殺した事を」
「何?お前まだ気にしてんの」

シン…と辺りが静まり返る。食堂には、アクバルの麺をすする音だけが響いていた。
やがて、一呼吸置いてからダン!!と机を叩く大きな音がした。

「てめぇ!!」
「ちょ、ちょっとガレア。ここ訓練所じゃないんだから暴れないで」

顔を真っ赤にしたガレアに慌てて止めに入る水狼。アクバルといえば、やはり何食わぬ顔で麺をすすり続けている。
ある程度食べ終えた後、ようやくアクバルが口を開いた。

「……だからさ、今更じゃん?お前が怒ったって死んだ奴は生き返んないだろ」
「仲間殺されて言う事がそれだけか!お前、死神の味方なのかよ!」

怒りを含んだダミ声が食堂に響く。
オレンジ色の短髪が逆立ち、赤くなった顔から牙が覗いている。
狼族特有の、怒りによる変化だった。
その姿に水狼は焦って「まあ、まあ」と言うが、アクバルは全く意に介して無い。

「じゃあ聞くけど。お前は族長が誰も殺さなきゃ満足なの?戦争してんのに?」
「っ!そんな事言ってないだろうが。じゃなくて仲間を殺した事がー……」
「族長は間違ってなかった」

冷静にそう言い放つアクバル。
言われた内容に付いていけないのか、ガレアはあんぐりと口を開けたままだ。

「あいつ、敵から逃げたんだ」
「……は?」
「……俺、隣だったからさ。サンシェは武器捨てて逃げようとしてた」

ゆっくり、どんぶりを置きながらそう言った。

「その姿を見たら……迷ったんだ。あれ?俺も戦わなくて良いのか?って」
「!!」
「次の瞬間、あいつの首が飛んでた。そんで我に返ったよ。ああ、戦わなくちゃって。元々戦闘好きな俺だって一瞬思ったんだ。他の奴が見たらどう思う?」
「そ、そりゃ…」

ガレアは口を噤んだ。
こんな事、誰だって考えなくとも分かる。

―――戦線崩壊だ。
恐怖は面白いくらいにあっという間に伝染する。一人が恐怖すれば皆が恐怖し、一人が逃げれば皆が逃げる。そして行き着く先は「敗北」と「死」だ。
だから敵前逃亡は軍法違反とされており、極刑になるほど罪も重い。

「族長は、違反者を処罰しただけさ」

アクバルはゆっくり箸を置いた。

「じゃ、ごっそさん!」
「あ、ああ。またね」

にかっといつも通りの笑顔に戻ったアクバルは、そう言うと席を立った。
隣で呆然と立ち尽くすガレアとすれ違う瞬間、アクバルは静かに呟く。

「……俺だってあいつの事は好きだった。でもさ、“ここ”はそーゆートコじゃないだろ」

「戦場だろ」と最後に言い残して。
ガラン、と扉が閉まる音が食堂にこだまする。食堂から出たアクバルは嫌な空気を振り払うように「ン――!!」と思い切り背伸びした。

「……ま、何も言わねぇ族長がいけないんだけどさ」

ため息混じりにそうポツリとこぼした声は、誰にも聞かれることはなかったけれど。

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