呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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始まり

〈東の魔女〉

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 夜に見回りと探索、刹菜は己に課せられた役割をこなすために立ち去った。残された那雪に一真はこれから会う予定の人物について話す。
「これから〈東の魔女〉東院 奈々美のとこに行くつもりだ。あの人ならもしかしたら戦いを避けつつ呪いを解く手段を持ってるかも知れない」
 夜は既に迫っている。死への猶予時間が、那雪という個人世界の終末時計の針がまた一つ終焉へと近付こうとしている。やつは闇に紛れて見えない内にその針を進めるのだから。
 その事実に那雪本人よりも一真の方が焦っていた。気になるあの子がいなくなる。姿を消してしまう。そう考えるだけで心臓の鼓動が早まっていく。那雪は一真の震える手を見て自らの手で包み込むのであった。
「なゆきち」
「焦ったらダメ。これから魔法に詳しい人に会うんでしょ? ならきっと解決してくれるって信じなきゃ」
 2人が立っている場所、それは古びた一軒家。そこに住んでいるのは魔女ではなく幽霊なのではないだろうか、それとも乙女ではなく魔女だからそこに住んでいるのだろうか。那雪はそんな事を考えていた。
 一真は呼び鈴を鳴らす。それから再び鳴らす。間髪入れずに3度鳴らす。つまり、連打なるものであった。
「迷惑過ぎる! 何考えてるの」
「これがコマンド入力ってやつだ」
 この前と同じで毎度やる事で一真なのだと簡単に分かるのだということであろう。
 迷惑行為の果てにドアは右へとズレていく。隔たりがなくなって見えてきた向こうに立っていたのは若い女性。魔女特有の帽子を被り紺色のローブを纏っており、その姿はいかにもな魔女であった。
 〈東の魔女〉東院 奈々美は美しい顔をしていた。穢れどころか傷一つ、そして汚れ一つないこの上ない美人たる奈々美は綺麗な薄桃色の唇を動かし、この世の穢れを知らぬような綺麗な声で彼女の心を表した言葉を紡いでいく。
「まだそんな合図をしていたの? 確か初めて会った時のアナタはショタだったけれどもあの時から何年経ったのかしら?」
「さあな! でもあの時はお前もロリだっただろ、〈三原色の魔女〉」
「その呼び方はやめていただきたいものね……あの頭刹菜」
「はぁ、嫌でも元凶が分かってしまうの」
 奈々美は目を見開いて一真の後ろにいる少女の方に目を向ける。
「あれ、一真が女の子連れて来たわね、いらっしゃいお嬢さん……」
 その少女の姿を見るや否や奈々美は震えながら歓喜を興奮を言葉にする。
「細いっ! 大好き! 絶対大好き、名前を教えていただけないかしら」
「はぁ、唐津 那雪です」
「那雪ちゃんね」
 それから奈々美は那雪の服を捲り白いお腹を撫で始める。
「ぺたんこ具合いが堪らないわ。私、来世では那雪ちゃんのお腹から産まれたい」
「黙れエロ魔女、なゆきちは脚が良いだろ! 黒のストッキングを履かせたら綺麗な細い脚がますます可愛くなるだろ」
「脚好きはお黙りなさい」
「くたばれアンバランスな性癖持ちのヌシ、俺が身長伸びた瞬間愛想つかしたもんな」
「はぁ!? アナタが成長したのが悪いの。一生可愛いままでいて欲しかった」
 那雪にとってはあまりにも変態水準の高いやり取りに唖然として何一つ言葉を発せないでいた。何も話さずに固まっているその姿はまるで置き物のようであった。
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