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始まり

会議で話す、されど進まず

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 それは昼間の事、高校の制服を着ている時点で不良だと思われているであろう刹菜と明らかな季節外れの奈々美の2人の存在感が浮いたファミレスの中での事。
 初めに始まりに口を開いたのは刹菜であった。
「からあげにレモンをかけるかどうか。それを訊かずに勝手にレモンをかける人をどう思うか。私としては万死に値するな。そいつの目にレモンをかけてやりたいくらいだ」
 一真は頷いていた。
「まったくだ。俺も許さねえ」
 那雪は黙々とからあげを食べていた。
 そんな中、奈々美はレモンを口に咥える。
「酸っぱくないのか美味しいのか。魔女の味覚なら美味しいのか。私も中学くらいまでは食べてたけど……えいっ!」
 レモンを堪能する奈々美、その綺麗な口に咥えられたレモン、刹菜はそんなレモンを思い切り押し込んだのであった。奈々美は無理やり口の中へと入り込んでいくレモンの酸味の刺激に深く咳き込んだ。
「冗談キツいわ」
 そんなやり取りを横目に那雪が口を開く。
「話し合う事ってそんなことじゃないでしょ」
 刹菜は笑っていた。
「そうだったかな。刹菜ちゃん分かんないや」
「明らかに違うけどな」
 一真はノートとシャーペンを取り出した。
「うわぁ。一真大学行ってないくせにまだそんな忌々しき勉強道具持ってんの?」
「余ったやつだ、それに結構役立つぞ」
 一真はノートを広げた。そのノートは前のページの書き込みからして何度か同じように作戦会議に使ったことが見てとれた。
「作戦としては俺となゆきちは飯塚家に乗り込む」
「ひゅー、先陣切ってくのカッコいい」
「黙れ刹菜」
 ノートに一真と那雪の攻め入る場所を書き込んだ。その下に刹菜と奈々美、そして矢印を紫の塔へと向けて引いていく。
「同じ時間、俺が電話をかけてワン切りするからそのタイミングで塔を壊してくれ。多分俺と飯塚家のアイツとの戦いが始まった後だから流石にやつも逃げ出す事はないはず」
「汚い字。だからイケメンでもモテないんだ。奈々美に見捨てられるんだ。身だしなみや細かい仕草にそういうとこが出るものだからな」
「いつも制服のやつに言われたくない。あとあのエロ魔女はショタか女の子しか好きになれないらしい」
「字の汚さであどけない子どもアピールか?心が汚い」
「やけに煽ってくるなバカ」
 そして閑話を休めて本題を続ける。
「多分11時半から戦い始めるからそれまでに準備宜しくな」
 一真の言葉が途切れるや否や刹菜が即座に手を挙げた。
「奈々美に質問。六芒星の紫の塔は全部壊さなきゃいけないんでしょうか?そう言われたら私過労死しちゃうよブラック企業」
 訊ねられた奈々美は妖しく微笑みながら首をゆっくり横に振る。
「バランスを崩せばそれだけでいいから一本壊せばいいだけよ」
 刹菜はいつも通りにニヤついて言った。
「それなら楽だね。あと、万一の為にある作戦思いついたから奈々美にはもっと動いていただこう」
 刹菜が考えた事だというにも関わらず、その笑顔はこの前のものとは違って得意げな感情を見せていないいつものニヤけ面であった。
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