30 / 132
〈お菓子の魔女〉と呪いの少女
目覚め
しおりを挟む
暗闇に落ちた意識。それを引き戻したのは冷い何かが張り付く感触だった。
那雪は目を開くと自分の身体が濡れていた事に気が付いていた。
ーあのまま寝てたんだー
抱きかかえている美少女の服が鮮やかな紅に染まっている事、喉から何かが這い上がって来る感覚が那雪を襲う。這い上がる感覚は喉から口へと上って行き、そして口から紅い液体が勢い良く吹き出る。それは紛れもなく那雪の身体を巡り流れていた血液。口から吹き出た血は自分だけでなく洋子の身体まで汚していた。那雪は身体に熱と気怠さを感じて重いその身を無理やり立たせ、なけなしの力で洋子をどうにか背負う。空はそんな2人に対して泣いていた。天から降り注ぐ涙を浴びながら那雪は苦しくて重い身体を引き摺るように家の中へと入って行く。大切な人と共に。
✡
それは昨日の夜の事。晴れた闇空を飛び回る〈東の魔女〉東院 奈々美の元に疾風が勢い良く襲いかかる。視えない風、何かを切るような音、箒に乗って闇の中で浮いている奈々美には何が視えているのだろうか、奈々美は下に向けて指を鳴らす。途端に音は止み、静寂が訪れた。
奈々美は即座に手を掲げる。するとどうであろう。手のひらの上わずか数センチ、そこで先程の何かを切るように走る音が泳いでいた。その音は時が経つにつれて強く大きく変わって行く。奈々美は微笑みながらそれを暗闇の大地へと放り投げた。不可視の風の大玉は行き先へと空間を斬るように走って行く。順調に地面を喰らおうとした風だったが、突然風の玉が何かに遮られた。それは地より勢い良く昇る竜巻、風と風はぶつかり合って闇の中に消失した。
奈々美は高度を下げて地にかろうじて浮く程の高さで風使いの正体を魔女の瞳の中に捉えた。
「よお、この前はよくもコケにしてくれたじゃねえか。刹菜とてめぇだ!」
売った覚えのない怨みを買われた奈々美は鋭い目付きの男を見つめる。
「私は何もしていないのだけれども。まあいいわ。あなたの気が済むまで遊んでア・ゲ・ル」
「ざけんじゃねえ!」
男は風を放つ。しかし奈々美にとっては、四大元素を操る魔女一族である〈東の魔女〉にとってはそんな玩具は取り上げ放題な安物でしかなかった。勢い良く向かって来る風だったが奈々美は人差し指一つで受け止めてそれを我が物とする。そして色っぽい笑みを浮かべてこう言うのであった。
「〈東の魔女〉。人の心を、女の心を弄ぶ百合サキュバスと無理やり交わりその血を継いだ東院一族は人の内の世界ではなく外の世界を弄ぶ力を得たの」
人差し指を回しながら風を集め、それを投げて遊ぶ玩具のような心持ちで男の元へと放り投げるのであった。
咄嗟に風を撃って対抗する男であったがそれは弾かれて風は男を飲み込み大いに痛め付けていた。その風の音はまるで男を嘲笑っているように高い音を立てていた。
「ああ! クソが! この風使いの日之影 怜がこんな落ちこぼれの〈三原色の魔女〉なんかに負けるなんて……認められるか!」
奈々美は闇の中で魅惑的な妖しい笑みを浮かべて言った。
「そう……その落ちこぼれに負けるアナタって一体何なのかしら」
怜は風を生成して放とうとするも、目の前には奈々美の白く細い指があり、怜の額を突いて押す。
「男の額って女の子と違ってへこんでいるのよね……可愛くない」
怜の生成した風はその生みの親に噛み付いて後ろへと飛ばし、そして地面に叩き付けた。
この戦いを遊びだと言った奈々美は怜と同じ風属性、それも怜が風を使ったその時にしか魔法を使っていなかったのであった。
その遊びで完全なる勝利を収めた奈々美は跨っている箒を揺らし、空へと飛んで行った。星屑の中へと紛れて消えて行った。
那雪は目を開くと自分の身体が濡れていた事に気が付いていた。
ーあのまま寝てたんだー
抱きかかえている美少女の服が鮮やかな紅に染まっている事、喉から何かが這い上がって来る感覚が那雪を襲う。這い上がる感覚は喉から口へと上って行き、そして口から紅い液体が勢い良く吹き出る。それは紛れもなく那雪の身体を巡り流れていた血液。口から吹き出た血は自分だけでなく洋子の身体まで汚していた。那雪は身体に熱と気怠さを感じて重いその身を無理やり立たせ、なけなしの力で洋子をどうにか背負う。空はそんな2人に対して泣いていた。天から降り注ぐ涙を浴びながら那雪は苦しくて重い身体を引き摺るように家の中へと入って行く。大切な人と共に。
✡
それは昨日の夜の事。晴れた闇空を飛び回る〈東の魔女〉東院 奈々美の元に疾風が勢い良く襲いかかる。視えない風、何かを切るような音、箒に乗って闇の中で浮いている奈々美には何が視えているのだろうか、奈々美は下に向けて指を鳴らす。途端に音は止み、静寂が訪れた。
奈々美は即座に手を掲げる。するとどうであろう。手のひらの上わずか数センチ、そこで先程の何かを切るように走る音が泳いでいた。その音は時が経つにつれて強く大きく変わって行く。奈々美は微笑みながらそれを暗闇の大地へと放り投げた。不可視の風の大玉は行き先へと空間を斬るように走って行く。順調に地面を喰らおうとした風だったが、突然風の玉が何かに遮られた。それは地より勢い良く昇る竜巻、風と風はぶつかり合って闇の中に消失した。
奈々美は高度を下げて地にかろうじて浮く程の高さで風使いの正体を魔女の瞳の中に捉えた。
「よお、この前はよくもコケにしてくれたじゃねえか。刹菜とてめぇだ!」
売った覚えのない怨みを買われた奈々美は鋭い目付きの男を見つめる。
「私は何もしていないのだけれども。まあいいわ。あなたの気が済むまで遊んでア・ゲ・ル」
「ざけんじゃねえ!」
男は風を放つ。しかし奈々美にとっては、四大元素を操る魔女一族である〈東の魔女〉にとってはそんな玩具は取り上げ放題な安物でしかなかった。勢い良く向かって来る風だったが奈々美は人差し指一つで受け止めてそれを我が物とする。そして色っぽい笑みを浮かべてこう言うのであった。
「〈東の魔女〉。人の心を、女の心を弄ぶ百合サキュバスと無理やり交わりその血を継いだ東院一族は人の内の世界ではなく外の世界を弄ぶ力を得たの」
人差し指を回しながら風を集め、それを投げて遊ぶ玩具のような心持ちで男の元へと放り投げるのであった。
咄嗟に風を撃って対抗する男であったがそれは弾かれて風は男を飲み込み大いに痛め付けていた。その風の音はまるで男を嘲笑っているように高い音を立てていた。
「ああ! クソが! この風使いの日之影 怜がこんな落ちこぼれの〈三原色の魔女〉なんかに負けるなんて……認められるか!」
奈々美は闇の中で魅惑的な妖しい笑みを浮かべて言った。
「そう……その落ちこぼれに負けるアナタって一体何なのかしら」
怜は風を生成して放とうとするも、目の前には奈々美の白く細い指があり、怜の額を突いて押す。
「男の額って女の子と違ってへこんでいるのよね……可愛くない」
怜の生成した風はその生みの親に噛み付いて後ろへと飛ばし、そして地面に叩き付けた。
この戦いを遊びだと言った奈々美は怜と同じ風属性、それも怜が風を使ったその時にしか魔法を使っていなかったのであった。
その遊びで完全なる勝利を収めた奈々美は跨っている箒を揺らし、空へと飛んで行った。星屑の中へと紛れて消えて行った。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる