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風使いと〈斬撃の巫女〉
巡り合わせ
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夜闇に透ける幽霊たち。レースの布地のように薄くかすれていた。漂う霊たちを斬っていく者がいた。刀は霊を狙うまでもなく、ただ空中で振るわれるだけで霊の身体は消えていく。それこそが〈斬撃の巫女〉霧島家の仕事であった。
菜穂は月夜の下で優雅に舞うように刀を振り、霊たちを全て斬って夜の寂しさを取り戻していく。やがて全ての霊が消えたその時、辺りを見渡して菜穂はただひとり、言葉を洩らすのであった。
「先輩の家の近く……久しぶりに寄ってみようかな」
そして刀を一度振った。それだけで菜穂の身体はアパートの屋上で缶コーヒーを飲みながらひとり佇む怜の元へと運ばれたのであった。
✡
菜穂の身体は崩れ落ちて跪いていた。怜はそんな菜穂に冷たい視線と言葉を放り込んで立ち去ったのであった。菜穂を跪かせたそれは勇人がこの世からいなくなってしまったのだという簡単な事実。怜の事情だけであれば運の巡り合わせが悪かったのだろうか、そう言えたのだろう。しかし、菜穂の大切なふたりの内のひとり、勇人がいなくなってしまった。
菜穂の頬を一筋の涙が伝う。父の命令で魔導教団に入った菜穂。〈斬撃の巫女〉程の力があれば逆らう事も出来たはずだがそれはしなかった。魔女の研究をしている。そんな噂だけで勇人を救えるような気がしていたから。しかし、救いたい人はこの世にはもういない。救えるような気がした、それは幻でしかなかったのだ。
菜穂はその場を立ち去り悲しみに沈みながら、もう会えない人、そして今も生きる大切な人を想いながら暗い夜道を歩いて行く。怜とは仲直りが出来るであろうか、怜とまた一緒に生きて行けるだろうか。怜を想うだけで心の底から湧いてくる暖かくな想いと息が詰まるような苦しみ、揺れて震えて止まらないひとつの感情。
菜穂は怜に恋をしていた。
菜穂は月夜の下で優雅に舞うように刀を振り、霊たちを全て斬って夜の寂しさを取り戻していく。やがて全ての霊が消えたその時、辺りを見渡して菜穂はただひとり、言葉を洩らすのであった。
「先輩の家の近く……久しぶりに寄ってみようかな」
そして刀を一度振った。それだけで菜穂の身体はアパートの屋上で缶コーヒーを飲みながらひとり佇む怜の元へと運ばれたのであった。
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菜穂の身体は崩れ落ちて跪いていた。怜はそんな菜穂に冷たい視線と言葉を放り込んで立ち去ったのであった。菜穂を跪かせたそれは勇人がこの世からいなくなってしまったのだという簡単な事実。怜の事情だけであれば運の巡り合わせが悪かったのだろうか、そう言えたのだろう。しかし、菜穂の大切なふたりの内のひとり、勇人がいなくなってしまった。
菜穂の頬を一筋の涙が伝う。父の命令で魔導教団に入った菜穂。〈斬撃の巫女〉程の力があれば逆らう事も出来たはずだがそれはしなかった。魔女の研究をしている。そんな噂だけで勇人を救えるような気がしていたから。しかし、救いたい人はこの世にはもういない。救えるような気がした、それは幻でしかなかったのだ。
菜穂はその場を立ち去り悲しみに沈みながら、もう会えない人、そして今も生きる大切な人を想いながら暗い夜道を歩いて行く。怜とは仲直りが出来るであろうか、怜とまた一緒に生きて行けるだろうか。怜を想うだけで心の底から湧いてくる暖かくな想いと息が詰まるような苦しみ、揺れて震えて止まらないひとつの感情。
菜穂は怜に恋をしていた。
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