呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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風使いと〈斬撃の巫女〉

進まぬ入信

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 抹茶の美味しい和菓子屋『桃ん雅和菓子店』は日本家屋のような外観をしていたが中はコンビニやスーパーと変わりの無い壁や天井、そしてそこに和菓子のサンプルが入ったショーケースと商品が置いてあるというあまりにも見掛け倒しの酷い店なのであった。
 そんな中、裏の客人を迎え入れる部屋は和室で畳に座らせるという仕様であった。
「敵の脚を痺れさせて、そうでなくても胡座で立ちにくくして一気に叩く気だなこの策士め」
 刹菜は相変わらずニヤけながら冗談を放り込んでいた。
「ただの雰囲気ですがまあ今どきの若い感性だとただ不便かも知れませんね」
「そのくらい分かってる。私はジョークをポイ捨てする人間なんだ」
 刹菜の冗談も志乃の言い回しもたまに理解するために時間がかかってしまう。そんなふたりのやり取りなのだから一真は下手に口を挟むことすら出来ないでいた。
「トイレは水洗式かい? 雰囲気ならぼっとん便所で統一していそうだな」
「お客さまに多大なご不便をおかけすることは許せませんから洋式ですよ。あなたはとても遊び心にあふれていらっしゃるようですね」
「ムキー!」
 言葉と言葉による闘い。勝ちも負けも分からない、傷が見えないぶん終わりすら見えて来ない闘い。
 それがようやく終わると思って一真が口を開きかけたその時、刹菜は話題を思い切り変えにかかったのであった。
「そもそもキミの言う遊び心あふれてるだなんてそれはキミの方だろ? なんだよあんな店構えなのにわざわざ和服なんて。因みに高いの? 所詮は綿だろ?」
「あらあら、本物の絹を見たことがない方だと発言が語ってますね。そんな生活なら趣味にお金をかけずに節約出来るかも知れないのに」
「趣味にお金がかからない? 店番に趣味を持ち込み過ぎるんだよ限度超えてな」
「そう、このくらい趣味を持ち込まなきゃお客さまの気は引けませんからね」
「つまりこの店は『色気で客引きしてます』ってキャバクラみたいなことを仰るのか」
「おもてなしはお抹茶で」
 もはや話は進まない、それだけであった。
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