呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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風使いと〈斬撃の巫女〉

図書館

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 穏やかな日が差す庭の中で那雪と父親が話している間、一真は父親と共に傘を見せ合っていた。
「俺の傘の方が高級だぞ一真」
「何年ものだ? 俺の傘のがフレッシュだな」
「所詮は俗物、使い込まれたヴィンテージ物こそが真の強さを芯に宿らせる」
「使い過ぎてもう使い物にならないんじゃないか」
 そんな会話が繰り広げられている中、なんと珍しく刹菜が黙ってコーヒーを啜っていた。
「みんな親子トークしてるから私だけ迷子ちゃんだ、孤独の迷いにゃんこ」
 にゃあ、と鳴きながらそんなことを呟いていた。
 そして景色を眺め続けていた。黄色の花が咲き誇る絨毯のような花畑、白くて強い花が咲く植木鉢、そして背の高いレンガ造りの建物。
「なんだろあれ。まさか雰囲気だけで建てていらっしゃったり?」
 そこに目を通す、目に魔力を流し込み目をこらす。窓の向こうに聳える背の高い棚、そこに収まるものは大勢の本たち。
「図書館かあ……魔導教団活動記録とかあったりしたら楽だな管理が杜撰だな、ああ、バカの方が相手にしやすいからそうあって欲しいな」
 ひとりごとしか言えない虚しい刹菜。言葉の何もかもが空気に薄れて消えて行くようで誰にも届かないように思えた。
 あまりにも虚しい刹菜はしばらくの間、那雪を眺めていることにしたのであった。
 正直顔は刹菜と変わりない程度、同じ教室にいれば下から数えた方が早いとまで言われるであろう。体型も刹菜より脚が少し細い程度、ほぼ変わりなし。そんな那雪のことをどこか愛おしく思うのは雰囲気故であろうか。
「男って顔ばかり身体ばかり心ばかり見てるから私たちのことなんか普通目にかけない……って、それだと全部見てんな」
 そんな言葉を吐く刹菜はどうやらカフェインが回り始めていたようだった。
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