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那雪と美雪

唐津 美雪

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 目を開けたそこは闇の中、どうにか戻って来ることが出来たようであった。見えない道を進んで行く。やがて薄く青く輝く少女を目にした。
「美雪?」
 そう呼ばれた少女は顔を上げて那雪に目を向けた。
「那雪が来たのね。うふふ、どう? 私、可愛いでしょ」
 那雪は美雪を睨みつける。
「叔母さんとヴァレンシアさんを傷付けたのは美雪なの?」
 美雪は両肩から薄青く輝き透ける羽を広げて嗤う。
「あのババアと痴女? そう、私、強いでしょ?」
 その言葉を受け取った那雪は美雪に汚い叫び声を浴びせた。
「どうしてっ! どうしてそんなことしたの!」
「叫び慣れてないような声……那雪は昔から大人しかったもんね」
 答えるつもりもない少女、その様子を見た那雪はますます鋭い目をして睨みつける。
「醜い顔、本当に私と血が繋がってるのかな? どうしたらそんな気持ち悪い顔と色気のひとつもない身体に生まれることが出来るの? どうすればそんな生きることすら恥ずかしい姿でこの世に留まれるの?」
 あまりにも痛い言葉に那雪は怒りを投げ付ける。
「うるさいっ! 妹のくせに顔も声も良くて胸もお尻も脚も色っぽくて勉強も運動も何もかも出来てイラつく!」
「面白い喧嘩の売り方するね、お姉ちゃん」
 美雪は見下した目と嘲笑う口調と声でそう答えたのであった。
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