20 / 38
第17話 ハデス社 IN ヘヴンタワー
しおりを挟む
昼過ぎ、俺とカルディナはトウキョウヘヴンタワーの近くまで来ていた。
――ガヤガヤガヤ。
流石、大都会の中心地、人通りが尋常ではない。
俺の小さい身体では、人の波にすぐに飲み込まれてしまいそうだ。
二人でこうやって歩くのは初めてだが、傍から見れば年の離れた姉妹にでも見えるのだろうか。
いつもは、ローブのフードを被っているせいで視認され辛いが、通行人に蹴飛ばされたくないのでフードを上げている。
日差しが眩しく見え辛かったが、ローブを失ってチカラが弱っているはずのカルディナの様子が気になった。
「本当に大丈夫か? 顔色、あんま良くないだろ。俺一人で行った方が……」
心配で声を掛けてみるが、カルディナの性格上、強がるに決まっている。
こうやって、俺は少しでも罪悪感を紛らわせている。
「別に、私は平気よ。それに、部外者なうえ犯罪者のあんたが一人で行ったところで、話を聞いてもらえると思ってるの?」
予想通り強がった。しかし、カルディナの言う通り、俺が一人でハデス社に向かっても無駄だということは分かり切っている。
人混みの中でカルディナは、はぐれないように俺の手を引っ張ってくれる。
多少強引で、歩幅が小さい俺はたまに転びそうになる。
でも、幼い頃を思い出すようで少し嬉しかった。と言っても、今の姿の方が幼い気がするな……。
――なんてことを考えていたら、あっという間に目的地だ。
遠くからでも見えていた、そびえ立つ巨大な塔『トウキョウヘヴンタワー』。
テレビや教科書で見たことはあるけど、実際に近くに来たのは初めてだ。
ガラス張りの立派な入口が、俺の中の不安を煽る。
深いことを考えずにここまで来てしまったが、ハデス社に入社することになるのか?
面接は? 試験はあるのか? 最悪、俺の命が危ないんじゃ……。
そんなことを考え始めたら、見る見る顔色が悪くなり、足が硬直してしまった。
そんな俺に見兼ねて、カルディナは俺の肩に手を置き声を掛ける。
「安心しなさいよ、私がなるべくフォローするから。と言っても適当に誤魔化すだけなんだけどね。あんたは余計なこと喋らないように!」
トンッ。
カルディナは、俺の背中を軽く押す。
ヘヴンタワーのガラス張りのドアが開き、ロビーへ足を踏み入れる。
一番最初に目に付いた受付嬢には、カルディナが全て説明してくれた。
この毅然とした態度から、カルディナはハデス社での地位と信頼があることがよく分かった。
まず、俺たちは地下へと繋がるエレベーターを目指す。
白を基調とした円形のタワー内部には、壁沿いに店やエレベーターが並んでいる。
カルディナのエスコート無しでは絶対に迷ってしまうだろう。
話によると、ハデス社のトップである『ハデス』が不在のため、一番話が通じやすそうな『コキュートス』という人物を探すことにした。
「あんた、くれぐれもここでは、『ユミル』じゃなくて『フブキ』って名乗りなさいよ」
「え、どうして? 隠しておかなくていいのか?」
「ここにいるヒト達は、あんたを、つまり昔のユミルを知っているってこと。ユミルはすでに死神を引退している。なのにあんたがユミルを名乗ったらマズいでしょ」
俺じゃなくて、本当にかつて『ユミル』はハデス社で働いていた……?
みんなの知る『ユミル』が一体何者なのか、俺も知るチャンスかもしれない。
ほかのエレベーターが白いのに対し、ひと際目立つ黒いエレベーターが見えてきた。
これが地下へと通じるエレベーターらしい。
その雰囲気は異様で、エレベーターのドアが開いても、足を踏み入れるのをつい躊躇してしまう。
階層を示すボタンは親切にも日本語で書いてある。って、ここは日本なんだから当たり前か。
他にもミミズが這ったような文字や、意味不明の記号が羅列してある。
俺には全く理解できないが、ヒトとかけ離れた存在の使う言語なのだろうと勝手に予想する。
「ところで、このタワーって何階まであるんだ?」
「知らない」
「……知らないって、自分の働いてるとこだろ」
階層を示すボタンに数字はない。カルディナが押したボタンには、『氷獄』と書かれている。
俺が軽く背伸びすれば届く位置に、そのボタンはあった。
……少しだけ押してみたい気持ちはあったが、まぁいい。
エレベーターは、風を切る奇妙な音を立てながら降下していく。
エレベーター内部は暗いが、申し訳程度の照明があるので、視界は問題ない。
外は闇が広がっている……のかすら分からないほど暗い。
目を凝らせば、遠くに何やら青白い光が見える気もする。
ふと、ガラスに映る自分の姿を見て思う。こんな幼い女の子が、ここで死神として働いていた。
自分の小さな手を見て、何を想ってこの女の子は鎌を振るっていたのかと考える。
「……あんた、自分の身体見て何ボーッとしてんの。変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「ハァ!? ち、違うやい!」
――パンポーン
そうこうしているうちに、エレベーターのチャイムが鳴り、ドアが開く。
くそー、誰かが変なこと言うから、エレベーターに乗ってる時間が長く感じてしまった。
実際、かなり長かったとは思う。地上から氷獄がどれぐらい離れているのか見当もつかない。
そこは、壁は黒を基調としている薄暗い廊下が続いている。
道を照らすのは青白い光のランプ。そして、頑丈そうな鉄の扉がいくつも並んでいる。
氷獄というから凍えるのを覚悟していたが、少し肌寒いぐらいか。この肌寒さも、今の俺にとっては心地よい。
カルディナは凍えるまではいかないが、寒そうにしている。俺が寒さに得意なだけらしい。
――ブルブル。
「氷獄階層ってこんなに寒かったかしら。こ、こここのままじゃ風邪引きそ……クシュン! い、急ぐわよ!」
どうやら、カルディナはローブがあった時は平気だったらしいが、俺の手をグイグイと引っ張り先を急ぐ。
廊下突き当りに位置する長い階段を降りて行くと、広い空間に巨大な鉄の扉が見える。
周りには大量の氷が張り付いており、ひと際寒く感じる。
――これが、氷獄へと繋がる扉。
――ガヤガヤガヤ。
流石、大都会の中心地、人通りが尋常ではない。
俺の小さい身体では、人の波にすぐに飲み込まれてしまいそうだ。
二人でこうやって歩くのは初めてだが、傍から見れば年の離れた姉妹にでも見えるのだろうか。
いつもは、ローブのフードを被っているせいで視認され辛いが、通行人に蹴飛ばされたくないのでフードを上げている。
日差しが眩しく見え辛かったが、ローブを失ってチカラが弱っているはずのカルディナの様子が気になった。
「本当に大丈夫か? 顔色、あんま良くないだろ。俺一人で行った方が……」
心配で声を掛けてみるが、カルディナの性格上、強がるに決まっている。
こうやって、俺は少しでも罪悪感を紛らわせている。
「別に、私は平気よ。それに、部外者なうえ犯罪者のあんたが一人で行ったところで、話を聞いてもらえると思ってるの?」
予想通り強がった。しかし、カルディナの言う通り、俺が一人でハデス社に向かっても無駄だということは分かり切っている。
人混みの中でカルディナは、はぐれないように俺の手を引っ張ってくれる。
多少強引で、歩幅が小さい俺はたまに転びそうになる。
でも、幼い頃を思い出すようで少し嬉しかった。と言っても、今の姿の方が幼い気がするな……。
――なんてことを考えていたら、あっという間に目的地だ。
遠くからでも見えていた、そびえ立つ巨大な塔『トウキョウヘヴンタワー』。
テレビや教科書で見たことはあるけど、実際に近くに来たのは初めてだ。
ガラス張りの立派な入口が、俺の中の不安を煽る。
深いことを考えずにここまで来てしまったが、ハデス社に入社することになるのか?
面接は? 試験はあるのか? 最悪、俺の命が危ないんじゃ……。
そんなことを考え始めたら、見る見る顔色が悪くなり、足が硬直してしまった。
そんな俺に見兼ねて、カルディナは俺の肩に手を置き声を掛ける。
「安心しなさいよ、私がなるべくフォローするから。と言っても適当に誤魔化すだけなんだけどね。あんたは余計なこと喋らないように!」
トンッ。
カルディナは、俺の背中を軽く押す。
ヘヴンタワーのガラス張りのドアが開き、ロビーへ足を踏み入れる。
一番最初に目に付いた受付嬢には、カルディナが全て説明してくれた。
この毅然とした態度から、カルディナはハデス社での地位と信頼があることがよく分かった。
まず、俺たちは地下へと繋がるエレベーターを目指す。
白を基調とした円形のタワー内部には、壁沿いに店やエレベーターが並んでいる。
カルディナのエスコート無しでは絶対に迷ってしまうだろう。
話によると、ハデス社のトップである『ハデス』が不在のため、一番話が通じやすそうな『コキュートス』という人物を探すことにした。
「あんた、くれぐれもここでは、『ユミル』じゃなくて『フブキ』って名乗りなさいよ」
「え、どうして? 隠しておかなくていいのか?」
「ここにいるヒト達は、あんたを、つまり昔のユミルを知っているってこと。ユミルはすでに死神を引退している。なのにあんたがユミルを名乗ったらマズいでしょ」
俺じゃなくて、本当にかつて『ユミル』はハデス社で働いていた……?
みんなの知る『ユミル』が一体何者なのか、俺も知るチャンスかもしれない。
ほかのエレベーターが白いのに対し、ひと際目立つ黒いエレベーターが見えてきた。
これが地下へと通じるエレベーターらしい。
その雰囲気は異様で、エレベーターのドアが開いても、足を踏み入れるのをつい躊躇してしまう。
階層を示すボタンは親切にも日本語で書いてある。って、ここは日本なんだから当たり前か。
他にもミミズが這ったような文字や、意味不明の記号が羅列してある。
俺には全く理解できないが、ヒトとかけ離れた存在の使う言語なのだろうと勝手に予想する。
「ところで、このタワーって何階まであるんだ?」
「知らない」
「……知らないって、自分の働いてるとこだろ」
階層を示すボタンに数字はない。カルディナが押したボタンには、『氷獄』と書かれている。
俺が軽く背伸びすれば届く位置に、そのボタンはあった。
……少しだけ押してみたい気持ちはあったが、まぁいい。
エレベーターは、風を切る奇妙な音を立てながら降下していく。
エレベーター内部は暗いが、申し訳程度の照明があるので、視界は問題ない。
外は闇が広がっている……のかすら分からないほど暗い。
目を凝らせば、遠くに何やら青白い光が見える気もする。
ふと、ガラスに映る自分の姿を見て思う。こんな幼い女の子が、ここで死神として働いていた。
自分の小さな手を見て、何を想ってこの女の子は鎌を振るっていたのかと考える。
「……あんた、自分の身体見て何ボーッとしてんの。変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「ハァ!? ち、違うやい!」
――パンポーン
そうこうしているうちに、エレベーターのチャイムが鳴り、ドアが開く。
くそー、誰かが変なこと言うから、エレベーターに乗ってる時間が長く感じてしまった。
実際、かなり長かったとは思う。地上から氷獄がどれぐらい離れているのか見当もつかない。
そこは、壁は黒を基調としている薄暗い廊下が続いている。
道を照らすのは青白い光のランプ。そして、頑丈そうな鉄の扉がいくつも並んでいる。
氷獄というから凍えるのを覚悟していたが、少し肌寒いぐらいか。この肌寒さも、今の俺にとっては心地よい。
カルディナは凍えるまではいかないが、寒そうにしている。俺が寒さに得意なだけらしい。
――ブルブル。
「氷獄階層ってこんなに寒かったかしら。こ、こここのままじゃ風邪引きそ……クシュン! い、急ぐわよ!」
どうやら、カルディナはローブがあった時は平気だったらしいが、俺の手をグイグイと引っ張り先を急ぐ。
廊下突き当りに位置する長い階段を降りて行くと、広い空間に巨大な鉄の扉が見える。
周りには大量の氷が張り付いており、ひと際寒く感じる。
――これが、氷獄へと繋がる扉。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる