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第21話 再誕、伝説の死神アイドル
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俺がローブ職人アネモネと別れた後、そこに新たな客が訪問する。
「こんにちはー! アネモネさん」
小柄の少女が、小さめのツインテールを揺らしながら元気良く挨拶する。
黒いローブを羽織っているので死神だということは見て分かる。
「おや、またお客さんかね。こんな珍しいこともあるのかのぉ」
アネモネは、嬉しいと思いながらも滅多にない事態に困惑する。
フブキと長話をしていたせいで少なからず疲労を見せる。
「あのあのー、アネモネさんって昔アイドルやってたって聞いたんですけどホントー?」
少女は無邪気に尋ねるが、アネモネは顔を逸らしてしまう。
「……そんな時代もあったかの。あまりその話はしたくないがね」
「どうして?」
「どうしても、じゃ」
素っ気ない態度のアネモネに、少女は頬っぺたを膨らませ不機嫌そうにする。
「あ、あの! 実はアタシ、モネさんのファンなんです! 実際にライブは見たことないけど……、ある人からお話は沢山聞いてて、動画や写真でも見て、その……」
少女は必至にアネモネにアピールをする。その様子は何か急ぎ、焦っているように見える。
アネモネは、その様子を見て怪しいとも思ったが、それ以上に嬉しかったのだ。
過去の自分を認めてくれている。黒歴史だと思っていた時代を必要とされていることに。
「何があったかは知らぬが、肉体も失ったこんな婆さんに構ってくれてありがとうねぇ……。そうだね、昔のローブとマイクは奥にしまっているから、少し待っておきなさい」
そう言うと、アネモネは部屋の奥、ランプの光もほとんど届かない場所に、小さなランタンを持って行った。
足元が見えづらく、何度か転びそうになる。
しばらくするとアネモネは、古びてボロボロで埃の被った小さな箱を両手に大事そうに抱えて持ってきた。
「これが、その時のローブ、そしてマイクじゃ。お前さん、これが必要なんじゃろ。これをどうするつもりか知らんが、死神のチカラは悪用することも容易い。わかっておるな……?」
少女は、大きく頷くと笑顔を見せた。しかし、どこか悲し気でもある。
「ありがとう、モネさん。もう用はないよ」
そう言うと少女は、隠し持っていた鎌に瞬時に電源を入れ、刃を出現させる。
間髪入れず、アネモネの身体目掛け、素早く鎌を振るった。
鎌の刃は光の弧を描き、アネモネの身体を切り抜ける。
「ア……アァ……」
アネモネは、何かを口にしようとしたが無残にも力尽きる。
ローブと魂を切り離されると、着ていたローブだけ地面にはらりと落ちた。
「この箱は大事にしないとねー、そのローブはもう汚いしいらないよね」
少女は、切り離したアネモネの魂を回収しようとするが、チカラが大分弱まっていたせいか跡形もなく塵となり消えてしまった。
「あらら、アタシがやんなくても長くなかったんだ。悪く思わないでよね」
そして少女は、箱にしまってあったモネのローブとマイクを慎重に取り出す。
「これがあの、モネの……! こんな黒い地味で弱っちいローブじゃ満足できないっての。見返せるわけもなかった。でも、これがあれば……」
躊躇いもなく、少女はモネのローブを羽織る。
そこには、かつての死神アイドル『モネ』の姿があった。
「これからは、アタシがモネ。死神アイドル、モネ! 過去の自分とはおさらばだよ。いらない……消えちゃえばいいんだ」
ライブをして、大勢の魂を一気に奪う。今までにないほどの優越感。……たまらない。
――親はお金持ちで、幼い頃は何の苦労もなく育ってきた。だけど、ある日いきなり、いらない子だって。
理由は分からなかった。勉強ができなかったからなのか、運動ができなかったから? それとも単純に可愛くなくなったのかな。
――そして、自分の居場所には知らない子供がいた。
もう帰る場所がないんだ。そう思って、人目につかない陰の場所で生きるようになった。
盗んだり、悪いことをした。その経験からか、ヘヴンタワーに侵入するのは容易かった。
当たり前のようにお金があった暮らしは戻ってこない。
そう思っていたけど、メフィストってヒトが拾ってくれた。
お金を稼げるって。そう言われて死神になったんだ。
――数日後。
ヘヴンタワー中、いや、町中で騒ぎになっていた。
「おい、聞いたか? 大量殺人だってよ、それも死因不明。こえー、お前も気をつけろよな」
「アイドルのライブ中に大勢の人が倒れたんだって⁉」
「ああ、知ってるよ。うちの知り合いもアイドルが好きでさぁ……」
至る所でアイドルだ、殺人だの騒ぎが起こっている。
ヘヴンタワー内で、仕事の書類を届けに行こうとしていた俺に、カルディナが慌てて駆け寄ってくる。
「ねぇ、聞いた⁉ 復活したんだって、伝説の死神アイドル『モネ』さんが!」
「……モネ?」
俺はその名前にピンとこなかった。
当然だ、そのアイドルが現れて騒ぎになったのは俺の生まれるずっと前、しかも短期間。
相当なアイドルヲタクでもない限り、知るはずもないのだ。
さらに、ローブ職人のアネモネさんが亡くなったのが発覚したのはもう少し先のことだった。
人の出入りも少なく、外との交流もほとんどない。発見が遅くなるのも無理はない。
高品質で特別なローブを作れる職人を失ったということは、死神の界隈に大打撃を与えることになるだろう。
黒いローブは量産体制が整っているとはいえ、材料の都合上、速度がどうしても追いつかない。
これらに関して、ハデスや死神たちがこれから考えていかなければならない重要なことになる。
今回は何やら事件……のようだな。
「こんにちはー! アネモネさん」
小柄の少女が、小さめのツインテールを揺らしながら元気良く挨拶する。
黒いローブを羽織っているので死神だということは見て分かる。
「おや、またお客さんかね。こんな珍しいこともあるのかのぉ」
アネモネは、嬉しいと思いながらも滅多にない事態に困惑する。
フブキと長話をしていたせいで少なからず疲労を見せる。
「あのあのー、アネモネさんって昔アイドルやってたって聞いたんですけどホントー?」
少女は無邪気に尋ねるが、アネモネは顔を逸らしてしまう。
「……そんな時代もあったかの。あまりその話はしたくないがね」
「どうして?」
「どうしても、じゃ」
素っ気ない態度のアネモネに、少女は頬っぺたを膨らませ不機嫌そうにする。
「あ、あの! 実はアタシ、モネさんのファンなんです! 実際にライブは見たことないけど……、ある人からお話は沢山聞いてて、動画や写真でも見て、その……」
少女は必至にアネモネにアピールをする。その様子は何か急ぎ、焦っているように見える。
アネモネは、その様子を見て怪しいとも思ったが、それ以上に嬉しかったのだ。
過去の自分を認めてくれている。黒歴史だと思っていた時代を必要とされていることに。
「何があったかは知らぬが、肉体も失ったこんな婆さんに構ってくれてありがとうねぇ……。そうだね、昔のローブとマイクは奥にしまっているから、少し待っておきなさい」
そう言うと、アネモネは部屋の奥、ランプの光もほとんど届かない場所に、小さなランタンを持って行った。
足元が見えづらく、何度か転びそうになる。
しばらくするとアネモネは、古びてボロボロで埃の被った小さな箱を両手に大事そうに抱えて持ってきた。
「これが、その時のローブ、そしてマイクじゃ。お前さん、これが必要なんじゃろ。これをどうするつもりか知らんが、死神のチカラは悪用することも容易い。わかっておるな……?」
少女は、大きく頷くと笑顔を見せた。しかし、どこか悲し気でもある。
「ありがとう、モネさん。もう用はないよ」
そう言うと少女は、隠し持っていた鎌に瞬時に電源を入れ、刃を出現させる。
間髪入れず、アネモネの身体目掛け、素早く鎌を振るった。
鎌の刃は光の弧を描き、アネモネの身体を切り抜ける。
「ア……アァ……」
アネモネは、何かを口にしようとしたが無残にも力尽きる。
ローブと魂を切り離されると、着ていたローブだけ地面にはらりと落ちた。
「この箱は大事にしないとねー、そのローブはもう汚いしいらないよね」
少女は、切り離したアネモネの魂を回収しようとするが、チカラが大分弱まっていたせいか跡形もなく塵となり消えてしまった。
「あらら、アタシがやんなくても長くなかったんだ。悪く思わないでよね」
そして少女は、箱にしまってあったモネのローブとマイクを慎重に取り出す。
「これがあの、モネの……! こんな黒い地味で弱っちいローブじゃ満足できないっての。見返せるわけもなかった。でも、これがあれば……」
躊躇いもなく、少女はモネのローブを羽織る。
そこには、かつての死神アイドル『モネ』の姿があった。
「これからは、アタシがモネ。死神アイドル、モネ! 過去の自分とはおさらばだよ。いらない……消えちゃえばいいんだ」
ライブをして、大勢の魂を一気に奪う。今までにないほどの優越感。……たまらない。
――親はお金持ちで、幼い頃は何の苦労もなく育ってきた。だけど、ある日いきなり、いらない子だって。
理由は分からなかった。勉強ができなかったからなのか、運動ができなかったから? それとも単純に可愛くなくなったのかな。
――そして、自分の居場所には知らない子供がいた。
もう帰る場所がないんだ。そう思って、人目につかない陰の場所で生きるようになった。
盗んだり、悪いことをした。その経験からか、ヘヴンタワーに侵入するのは容易かった。
当たり前のようにお金があった暮らしは戻ってこない。
そう思っていたけど、メフィストってヒトが拾ってくれた。
お金を稼げるって。そう言われて死神になったんだ。
――数日後。
ヘヴンタワー中、いや、町中で騒ぎになっていた。
「おい、聞いたか? 大量殺人だってよ、それも死因不明。こえー、お前も気をつけろよな」
「アイドルのライブ中に大勢の人が倒れたんだって⁉」
「ああ、知ってるよ。うちの知り合いもアイドルが好きでさぁ……」
至る所でアイドルだ、殺人だの騒ぎが起こっている。
ヘヴンタワー内で、仕事の書類を届けに行こうとしていた俺に、カルディナが慌てて駆け寄ってくる。
「ねぇ、聞いた⁉ 復活したんだって、伝説の死神アイドル『モネ』さんが!」
「……モネ?」
俺はその名前にピンとこなかった。
当然だ、そのアイドルが現れて騒ぎになったのは俺の生まれるずっと前、しかも短期間。
相当なアイドルヲタクでもない限り、知るはずもないのだ。
さらに、ローブ職人のアネモネさんが亡くなったのが発覚したのはもう少し先のことだった。
人の出入りも少なく、外との交流もほとんどない。発見が遅くなるのも無理はない。
高品質で特別なローブを作れる職人を失ったということは、死神の界隈に大打撃を与えることになるだろう。
黒いローブは量産体制が整っているとはいえ、材料の都合上、速度がどうしても追いつかない。
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