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第22話 魂のライブ
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伝説の死神アイドルが現れたとニュースになってから、町中は混乱を隠せていない。
ハデス社では緊急事態ということもあり、俺とカルディナの他、大勢の死神がこの件の捜査にあたる。
上手くいけば、相当な額の報酬が支払われるとの噂だ。
そのせいか、正社員だけではなく、バイトの死神も非常に士気が高く見える。
とりあえず、俺とカルディナは早朝から聞き込み、町の散策を行う。
SNS上では、嘘の情報も多いらしく当てにならない。
とはいえ、聞き込みをしても噂だけが広まっており、これといった情報はなかなか聞き出せない。
また、死神アイドルのことを知らない、興味がないといったヒトが多いのも事実だ。
こんなオカルト話を信じているヤツ……なんて思われているのかもしれない。
ヘヴンタワーの周りを散策してみたが、そもそもデパートや、ライブができそうな場所自体が少ない。
苦労して見つけたライブ会場も死神アイドルらしき人物が出る予定もなく、それに関する事件も起こっていないという。
「ホントに死神アイドルなんているのか? デマが広がっただけなんじゃないのか……」
なんてボソッと口に出してしまう。ゴールが見えず、ふとした瞬間に疲労が襲ってくる。
「確かに、この町にはいなさそうね。情報も曖昧で、このままじゃ見つかりそうにないわね……。そうだ、昔ライブをしていたのは隣町だったはず」
「まじか! よし、その周辺のデパートやライブ会場を片っ端から調べよう」
ベテランであるカルディナの方が、この件についての知識はあるはず。異論はなかった。
日も暮れ始め、考えている余裕もなかったので、即行動あるのみ。
隣町は、カルディナの方が土地勘がある。
前まではカルディナの縄張りのようなもので、俺が邪魔しちゃったんだっけか。
でも、もっと昔はその伝説のアイドルが隣町を仕切ってたのかもしれないな。
そして、古く少し汚れた地下ライブ会場の入り口に着いた。
そこには『緊急参戦! 伝説のアイドル』などとデカデカと書かれたポスターが何枚も貼られていた。
そんなやつ『モネ』しかいない。
慌てて会場の奥に進む。しかし、驚くほど静かだ。誰もいないんじゃないのか?
ステージにライトが照らされてはいるが、そこで歌っている様子などない。
「なっ……⁉」
その光景に思わず声が出なくなった。
何人もの人が倒れている。駆け寄って確かめたが、息はない。
魂を抜き取られた状態、死体だ。
「外傷はないわね、間違いなく死神の仕業。お察しの通り、あのアイドルね」
そう言うと、カルディナは死体を念入りに調べ始める。
「なぁ、この人たち、死んでるんだよな……。助ける方法ってないのか?」
カルディナはすぐには答えなかったが、呼吸を置いてから語り始める。
「今は魂を抜かれて動けないから、死体ではあるけど、魂を戻してあげれば助かるでしょうね」
「ほんとか⁉ じゃあ、すぐに魂を取り返しに行こう!」
「魂を抜かれてから今は大して時間が経っていないようだけど、帰ってくる頃には……。魂が肉体から離れた状態が続けば、戻そうとしても魂と肉体に拒否反応が起きる。戻っても肉体が腐敗し始めている可能性もあるし、障害が出るかもしれないのよ」
「じゃあ、急げばいいだろ! 助かる可能性があるなら……!」
思わず、俺は熱くなってしまった。俺も死神、人が死ぬところなんて何度も見ている。
だが、これだけ大勢の人が倒れていることにガマンできなかった。
――カルディナは他にも言いたげな表情だったが、これ以上は話さなかった。
明らかにモネがいた形跡を見つけたのに、本人が見つからないもどかしさ。
同じ場所を探していても非効率だということで、俺とカルディナは別々に探すことにした。
見つけ次第、スマホで緊急信号を送るから問題はないはずだ。
闇雲に歩き回っても仕方ない。俺はふと思い出した。
コユキと行ったデパートの屋上にライブ会場として使える場所があることを。
――辺りはすっかり暗くなってしまったが、デパートはライトのおかげで明るく眩しいくらいだ。
階段、エレベーターを駆使して屋上を目指す。屋上に出る扉まで来ると、賑やかな音が聞こえる。
俺は気持ちを抑えられず、勢いよく屋上へ飛び出す。
~♪
「みんなの魂ソウルいーただいちゃうよっ☆ ララ~ラ~」
~♪
そこには、黄色とオレンジの綺麗な装飾を纏い、スカートをフリフリさせながらリズムにノッてライブをするアイドルの姿。
しかし、周りの観客大勢いるのに声援どころか、何一つ声を発さずに棒立ちしているようだ。
この異様な光景、どう考えても普通じゃない。
「おいっ! 今すぐライブを中止しろ!」
――しかし、モネは聞いていない。
遠いから聞こえていないのか、聞いていないフリなのか分からないが、何一つ変わらずライブを続けている。
「おい、聞いてんのか!」
会場の最前線まで行って大声で訴える。すると、モネはやっと歌うのをやめ俺と目が合う。
「子供……? 良い子は黙ってライブを聴いててねー」
「誰が子供じゃい!」
……って、言ってもムダか。仕事の都合上、身バレできないしな。
「あのさぁ、邪魔、しないでよ!!」
モネが叫ぶと、辺り一面の風が騒がしくなった。
ハデス社では緊急事態ということもあり、俺とカルディナの他、大勢の死神がこの件の捜査にあたる。
上手くいけば、相当な額の報酬が支払われるとの噂だ。
そのせいか、正社員だけではなく、バイトの死神も非常に士気が高く見える。
とりあえず、俺とカルディナは早朝から聞き込み、町の散策を行う。
SNS上では、嘘の情報も多いらしく当てにならない。
とはいえ、聞き込みをしても噂だけが広まっており、これといった情報はなかなか聞き出せない。
また、死神アイドルのことを知らない、興味がないといったヒトが多いのも事実だ。
こんなオカルト話を信じているヤツ……なんて思われているのかもしれない。
ヘヴンタワーの周りを散策してみたが、そもそもデパートや、ライブができそうな場所自体が少ない。
苦労して見つけたライブ会場も死神アイドルらしき人物が出る予定もなく、それに関する事件も起こっていないという。
「ホントに死神アイドルなんているのか? デマが広がっただけなんじゃないのか……」
なんてボソッと口に出してしまう。ゴールが見えず、ふとした瞬間に疲労が襲ってくる。
「確かに、この町にはいなさそうね。情報も曖昧で、このままじゃ見つかりそうにないわね……。そうだ、昔ライブをしていたのは隣町だったはず」
「まじか! よし、その周辺のデパートやライブ会場を片っ端から調べよう」
ベテランであるカルディナの方が、この件についての知識はあるはず。異論はなかった。
日も暮れ始め、考えている余裕もなかったので、即行動あるのみ。
隣町は、カルディナの方が土地勘がある。
前まではカルディナの縄張りのようなもので、俺が邪魔しちゃったんだっけか。
でも、もっと昔はその伝説のアイドルが隣町を仕切ってたのかもしれないな。
そして、古く少し汚れた地下ライブ会場の入り口に着いた。
そこには『緊急参戦! 伝説のアイドル』などとデカデカと書かれたポスターが何枚も貼られていた。
そんなやつ『モネ』しかいない。
慌てて会場の奥に進む。しかし、驚くほど静かだ。誰もいないんじゃないのか?
ステージにライトが照らされてはいるが、そこで歌っている様子などない。
「なっ……⁉」
その光景に思わず声が出なくなった。
何人もの人が倒れている。駆け寄って確かめたが、息はない。
魂を抜き取られた状態、死体だ。
「外傷はないわね、間違いなく死神の仕業。お察しの通り、あのアイドルね」
そう言うと、カルディナは死体を念入りに調べ始める。
「なぁ、この人たち、死んでるんだよな……。助ける方法ってないのか?」
カルディナはすぐには答えなかったが、呼吸を置いてから語り始める。
「今は魂を抜かれて動けないから、死体ではあるけど、魂を戻してあげれば助かるでしょうね」
「ほんとか⁉ じゃあ、すぐに魂を取り返しに行こう!」
「魂を抜かれてから今は大して時間が経っていないようだけど、帰ってくる頃には……。魂が肉体から離れた状態が続けば、戻そうとしても魂と肉体に拒否反応が起きる。戻っても肉体が腐敗し始めている可能性もあるし、障害が出るかもしれないのよ」
「じゃあ、急げばいいだろ! 助かる可能性があるなら……!」
思わず、俺は熱くなってしまった。俺も死神、人が死ぬところなんて何度も見ている。
だが、これだけ大勢の人が倒れていることにガマンできなかった。
――カルディナは他にも言いたげな表情だったが、これ以上は話さなかった。
明らかにモネがいた形跡を見つけたのに、本人が見つからないもどかしさ。
同じ場所を探していても非効率だということで、俺とカルディナは別々に探すことにした。
見つけ次第、スマホで緊急信号を送るから問題はないはずだ。
闇雲に歩き回っても仕方ない。俺はふと思い出した。
コユキと行ったデパートの屋上にライブ会場として使える場所があることを。
――辺りはすっかり暗くなってしまったが、デパートはライトのおかげで明るく眩しいくらいだ。
階段、エレベーターを駆使して屋上を目指す。屋上に出る扉まで来ると、賑やかな音が聞こえる。
俺は気持ちを抑えられず、勢いよく屋上へ飛び出す。
~♪
「みんなの魂ソウルいーただいちゃうよっ☆ ララ~ラ~」
~♪
そこには、黄色とオレンジの綺麗な装飾を纏い、スカートをフリフリさせながらリズムにノッてライブをするアイドルの姿。
しかし、周りの観客大勢いるのに声援どころか、何一つ声を発さずに棒立ちしているようだ。
この異様な光景、どう考えても普通じゃない。
「おいっ! 今すぐライブを中止しろ!」
――しかし、モネは聞いていない。
遠いから聞こえていないのか、聞いていないフリなのか分からないが、何一つ変わらずライブを続けている。
「おい、聞いてんのか!」
会場の最前線まで行って大声で訴える。すると、モネはやっと歌うのをやめ俺と目が合う。
「子供……? 良い子は黙ってライブを聴いててねー」
「誰が子供じゃい!」
……って、言ってもムダか。仕事の都合上、身バレできないしな。
「あのさぁ、邪魔、しないでよ!!」
モネが叫ぶと、辺り一面の風が騒がしくなった。
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