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ヘッツア村 その1
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竜王の質問にカイは低く声であぁと言って頷いた。
それに思わず、気は確かか? とカイに囁く。
「他に村に入る方法はないのか?」
「ない」
カイははっきりと言い放つ。ダルドがその理由を答えた。
「ここは帝国にとって重要拠点の一つなんです。警備が厳重になっていて、出入りするのは北門と南門だけしか許されてないんです。それ以外は軍が使っている出入り口なんで、確実に捕まります」
竜王が北側から入ろうとしていることに気が付き、じゃあ南門の方は警備が薄いんじゃないか? と聞いてきた。
ダルドが答える。
「南門も厳重で、検問所があるから結局、検問を通らないといけないんだ」
ダルドがそうどこか自慢げに話すとその通りだとカイも同調するように頷いた。竜王はふーん、と鼻を鳴らす。彼女はおもむろに視線を木壁へと向けた。
木壁はかなり太い丸太使っているようだ。さらに紐で束ねて、補強している。
上には人が歩ける通路があるようで、弓を持った兵士がうろついている。
監視塔もあるようだ。鋭い眼光を自分たちに向けてきている。そんな様子を彼女は見上げながら何かを考えていた。
カイは横目で竜王を見て何を考えているかを察した。
「おい。間違ってもそこを乗り越えていこうなんて思うなよ?」
彼の指摘が図星だったのか、竜王が動揺しながら早口で答える。
「そ、そんなこと考えていない」
「ほんとか?」
ジト目で尋ねた。すると小声で竜王がボソつく。
「……私ならいけそうなんて思ってないから……」
「おい……」
(――――――こいつ、目を離すと何するかわからんな……)
思いっきりツッコミを入れたくなったカイだったがそこは我慢した。なぜならここで目立つことはしたくなかったからだ。帝国兵に目を付けられたくない。頭を掻きながら答えた。
「まぁ……さっきもやり過ごしたし……今回もなんとかなるか……」
「なんとななると信じましょう」
ダルドも同感のようだった。なるべく目立たないようにしながら三人は検問に並んでいる列に混ざった。
複数の帝国兵が並んでいた商人の荷台を入念に調べ始めた。
一人の帝国兵が二台に上がり、中身を漁りはじめ、商人の顔色を窺っているようだ。
「積み荷はなんだ?」
偉そうな物言いの帝国兵に対して、商人は微笑みながら答える。
「小麦粉でさぁ」
「小麦粉だと? 店に下ろす物か?」
「えぇ。パン屋に納品する小麦粉です」
「……なるほど。納品書を寄こせ」
そういわれた商人が手荷物を漁り、四つ折りになった羊皮紙を一枚取り出した。
それに帝国兵の一人が乱暴に取り上げて、目を通す。
「……確かに間違いないな」
指揮官が積み荷を見て、疑いの目を向ける。
「おい、待て。他は何を積んでいる?」
「ほ、他ですか? あぁーえーっと……」
眉を寄せて考え込む商人に帝国兵は苛立つ。
「早く言えッ!」
若い帝国兵が商人の首元に槍先を突き立てる。それに驚いた商人は両手を上げた。
「ええい、まってくだせぇ。えっとあーそうだ。蜂蜜酒にラム酒、それと装飾品類、鉱石などでさぁ」
一人の帝国兵が積み荷を槍の石突きで袋をつつく。すると鈍い音がした。中身を漁り、手に取ってみると鉱石だった。どうやら問題なさそうだったようで、帝国兵が指揮官に目で合図を出す。
「何か不審な物は積んでないだろうな?」
「まさかそんな。私は帝国の民で、ただの商人でさぁ」
深々と頭を下げ、手を合わせて、指揮官の前で拝む。
「旦那さん……どうか通してくだせぇ」
「――――――よし、なら通行料は銀貨10枚だ」
「はいぃこれで……」
指揮官が銀貨が入った小袋を受け取り、待機していた若い帝国兵に渡す。
若い帝国兵が小袋の締まった紐を解き、置かれている長机の上に出す。一枚一枚、しっかり数えていくのが見えた。
「―――銀貨10枚。数に間違いありません」
それに指揮官が頷く。
「一枚寄こせ」
そういって、若い帝国兵に手を出し出す。若い帝国兵が一枚選び、指揮官へと投げ渡した。受け取った指揮官はおもむろに金貨を噛んだ。
本物かどうかを確かめているのだろう。
納得したのか、指揮官は封鎖している帝国兵に手を振って合図を出す。
「よし! 通ってよし。次ッ!」
カイ達の番だ。少し緊張した面立ちでダルドとカイが前に立つ。もしものことを考えて、竜王を後ろに立たせた。
口髭の指揮官が目の前にまでやってきて、手を腰にあてると目を細めた。
「お前たちはなんだ?」
質問にはすぐには答えられなかった。下手に嘘をつくと疑われてしまうからだ。
矛盾や違和感を相手に与えないよう細心の注意が必要である。
「見たところ、帝国人ではないな。何もだ?」
それにカイはダルドと竜王に目配りをした後、笑みを浮かべながら口を開いた。
「……俺たちは―――――」
それに思わず、気は確かか? とカイに囁く。
「他に村に入る方法はないのか?」
「ない」
カイははっきりと言い放つ。ダルドがその理由を答えた。
「ここは帝国にとって重要拠点の一つなんです。警備が厳重になっていて、出入りするのは北門と南門だけしか許されてないんです。それ以外は軍が使っている出入り口なんで、確実に捕まります」
竜王が北側から入ろうとしていることに気が付き、じゃあ南門の方は警備が薄いんじゃないか? と聞いてきた。
ダルドが答える。
「南門も厳重で、検問所があるから結局、検問を通らないといけないんだ」
ダルドがそうどこか自慢げに話すとその通りだとカイも同調するように頷いた。竜王はふーん、と鼻を鳴らす。彼女はおもむろに視線を木壁へと向けた。
木壁はかなり太い丸太使っているようだ。さらに紐で束ねて、補強している。
上には人が歩ける通路があるようで、弓を持った兵士がうろついている。
監視塔もあるようだ。鋭い眼光を自分たちに向けてきている。そんな様子を彼女は見上げながら何かを考えていた。
カイは横目で竜王を見て何を考えているかを察した。
「おい。間違ってもそこを乗り越えていこうなんて思うなよ?」
彼の指摘が図星だったのか、竜王が動揺しながら早口で答える。
「そ、そんなこと考えていない」
「ほんとか?」
ジト目で尋ねた。すると小声で竜王がボソつく。
「……私ならいけそうなんて思ってないから……」
「おい……」
(――――――こいつ、目を離すと何するかわからんな……)
思いっきりツッコミを入れたくなったカイだったがそこは我慢した。なぜならここで目立つことはしたくなかったからだ。帝国兵に目を付けられたくない。頭を掻きながら答えた。
「まぁ……さっきもやり過ごしたし……今回もなんとかなるか……」
「なんとななると信じましょう」
ダルドも同感のようだった。なるべく目立たないようにしながら三人は検問に並んでいる列に混ざった。
複数の帝国兵が並んでいた商人の荷台を入念に調べ始めた。
一人の帝国兵が二台に上がり、中身を漁りはじめ、商人の顔色を窺っているようだ。
「積み荷はなんだ?」
偉そうな物言いの帝国兵に対して、商人は微笑みながら答える。
「小麦粉でさぁ」
「小麦粉だと? 店に下ろす物か?」
「えぇ。パン屋に納品する小麦粉です」
「……なるほど。納品書を寄こせ」
そういわれた商人が手荷物を漁り、四つ折りになった羊皮紙を一枚取り出した。
それに帝国兵の一人が乱暴に取り上げて、目を通す。
「……確かに間違いないな」
指揮官が積み荷を見て、疑いの目を向ける。
「おい、待て。他は何を積んでいる?」
「ほ、他ですか? あぁーえーっと……」
眉を寄せて考え込む商人に帝国兵は苛立つ。
「早く言えッ!」
若い帝国兵が商人の首元に槍先を突き立てる。それに驚いた商人は両手を上げた。
「ええい、まってくだせぇ。えっとあーそうだ。蜂蜜酒にラム酒、それと装飾品類、鉱石などでさぁ」
一人の帝国兵が積み荷を槍の石突きで袋をつつく。すると鈍い音がした。中身を漁り、手に取ってみると鉱石だった。どうやら問題なさそうだったようで、帝国兵が指揮官に目で合図を出す。
「何か不審な物は積んでないだろうな?」
「まさかそんな。私は帝国の民で、ただの商人でさぁ」
深々と頭を下げ、手を合わせて、指揮官の前で拝む。
「旦那さん……どうか通してくだせぇ」
「――――――よし、なら通行料は銀貨10枚だ」
「はいぃこれで……」
指揮官が銀貨が入った小袋を受け取り、待機していた若い帝国兵に渡す。
若い帝国兵が小袋の締まった紐を解き、置かれている長机の上に出す。一枚一枚、しっかり数えていくのが見えた。
「―――銀貨10枚。数に間違いありません」
それに指揮官が頷く。
「一枚寄こせ」
そういって、若い帝国兵に手を出し出す。若い帝国兵が一枚選び、指揮官へと投げ渡した。受け取った指揮官はおもむろに金貨を噛んだ。
本物かどうかを確かめているのだろう。
納得したのか、指揮官は封鎖している帝国兵に手を振って合図を出す。
「よし! 通ってよし。次ッ!」
カイ達の番だ。少し緊張した面立ちでダルドとカイが前に立つ。もしものことを考えて、竜王を後ろに立たせた。
口髭の指揮官が目の前にまでやってきて、手を腰にあてると目を細めた。
「お前たちはなんだ?」
質問にはすぐには答えられなかった。下手に嘘をつくと疑われてしまうからだ。
矛盾や違和感を相手に与えないよう細心の注意が必要である。
「見たところ、帝国人ではないな。何もだ?」
それにカイはダルドと竜王に目配りをした後、笑みを浮かべながら口を開いた。
「……俺たちは―――――」
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