盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第二十九話

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 帝国兵が去っていくのを見届けたあといちじはどうなることか、とカイは安堵し、胸をなでおろす。

 そして、詰まった息を吐いて、力を抜いた。

 結果的にはうまく逃げれたのだがカイは気になったことが一つあった。竜王に視線を向ける。

 視線を感じた竜王がニヤリと笑った。
 
 いったい、どういう手を使ったんだ? カイはそう疑問する。
 
 まさか帝国兵らの身分検査をやり過ごせるとは思わなかった。

 確実にバレると思っていたし、最悪、帝国兵と闘う、ということも頭に入れていた。

 大陸最強の帝国軍を敵にしたら最期、地獄の果てまで追いかけられる。

 さらには自分の職を失うことにもなる。それだけは避けたかった。

 問題の人物である竜王に視線を送る。

 だが、彼女は何もなかったかのように楽しそうにしながら鼻歌を歌っている。

(――――――なんだ、この余裕の態度は……お前のせいで……危ない目に合ったんだぞ……)

 と目で訴えかけたが竜王には伝わらなかった。

 イラつきながらもカイの視線は自然と竜王の頭に向けられた。

(――――――やっぱり、どうなってんだろう……??)

 竜王特徴でもあった二本の角が今、見事になくなっているのである。

 角がないことで彼女が魔物ではなく人間だと思ってしまう。不思議な感覚だった。

 角を取り外したわけでもないし、ましてや脱着式なわけがない。

(――――――なら角はどこに消えた? 引っ込んだのか? んなわけあるか……)

 自分にツッコミを入れた。

(――――――もしかしてこれも幻術か何かかなのか?)

 竜王は幻術を得意としている。前にダルドが燃やされた時、幻術の一部だった。

 となるとこれも幻術なのだろうか、と疑問する。

(……俺には見えてないだけか。だとすると実際にはあったりするのか……?)

 気になって仕方がないカイは竜王に近づき、彼女の頭へと手を伸ばす。それは自分の意志ではなく、まったくの無意識だった。

 竜王の頭を何度も撫でる。

 しかし、そこには角のような物はなかったし手に違和感がない。普通に女の子の頭を撫でているだけだ。

 艶だった髪はしなやかで、ツルツルとしていて、触り心地がよく、ほのかに彼女の香りがした。

 不思議な感覚になり、さらに両手で確かめようとするとさすがに驚いた竜王が身体を傾けて、カイの手を振り払う。

「お前……さっきから何をしてるんだ?」

 不快に思ったのかしかめっ面でカイを睨みつけていた。竜王の鋭い眼光に気圧され、思わずしどろもどろになる。

「あ、あぁいや、その、あーすまん。つい……」
「つい、だと?」

 それに視線をそらし小さく頷く。

 竜王はカイの頬を人差し指で刺し、問う。

「貴様は女の頭を不用意に触るのか?」

 数秒の間を開けて答える。

「……ま、まぁ俺にはその、必要だったと思うが?」
「必要だった? 撫でることが??」
「お、おう」

 驚く顔をした竜王は呆れた顔で首を左右に振った。 

「なんというやつだ。……変態だ。変態に間違いない」

 変態と言う言葉にカイが反応する。

「はぁ? なんで俺が変態になるんだよ?意味が分からん」
「女の頭を撫でるなどどういう神経をしているんだ? 私はお前の女になった覚えはないぞ」
「だ、誰がそんなこといったんだよ! 俺はなくなっている角を確かめたかっただけで、別にお前の頭を撫でたいとかそういうこと思ったわけじゃないし! だいたい魔物をかわいいとか思う人間なんていいねぇーよ」

 それに腹を立てた竜王は無言で、カイの脛を蹴り上げる。

 悲鳴を上げたカイは痛みのあまり、地面に伏せ、唸った。

 うずくまるカイを見下ろす竜王はしてやった、という笑みを浮かべて、放置していった。

「……折れた、これ絶対……折れた」
「そんなんで、折れるか馬鹿が」

 そんな二人で言い争う様子をダルドは遠目で見ていた。

 思わず呆れてしまった。

「いつの間にかめっちゃ、仲良しになってるし……」

 とカイ達に気が付かないように小さくぼやく。

 自分が邪魔だなと判断したのか、存在を消して、寂しそうな背中で、二人の先頭に歩み出て、目指していた街へと向かう。

 二人は言い合いをしながらもダルトの後ろをついていく、と言った感じになる。

「我は竜王! こんな程度のこと、朝飯前だ!!」

 そう鼻で笑って、竜王は自慢げに胸を張る。

「で、どうなってるんだ??? それは??」
「だから気安く触るな!!」

 パチンと乾いた音が再びなり、カイの悲鳴が上がった。





 それから一行はようやくヘッツア村に到着した。

 ヘッツア村はまるで砦だ。周りは木の壁に囲まれており、門では帝国軍の駐屯部隊が守っている。

 というのもヘッツア村は帝国とを繋ぐ中継地点となっており、重要拠点となっているからだ。

 村の門の所まで来たカイが竜王に忠告する。 

「おい、気を付けろ」
「今度はなんだ?」
「帝国の検問だ」

 普段から出入りをしているカイは村の入り口近くに帝国軍の検問所があることを知っていた。

 検問所には列ができていた。帝国兵が通ろうとする者を検査している。

カイ達もそこを通ろうとしたので、竜王はカイに近寄り耳元で理解できないような顔で尋ねた。

「まさか、検問を通る気か?」
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