盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第二十八話

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 帝国軍が自国領土の警備として出している巡回隊が各地を巡回警備している。

 これは盗賊や敗残兵などが起こす被害が横行しているからだ。

 帝国は勢力を拡げ過ぎだ。そういわれているほどに監視の目が届いていないのだ。

 それなのに巡回部隊と出くわすなんて、カイは自分が付いていない、と思ってしまった。

 巡回隊の騎兵とそれに随伴する歩兵がカイ達の方向へまっすぐ向かってくる。

 彼らの進む道先にちょうど左右に分かれた道があった。カイはそのどちらかへ曲がってくれ、と天に願う。しかし、カイの願いは天には届かず……。

 自分の方へと彼らは誘われるように向かって来た。

(――――――やばい、やばい、やばい……)

 焦っている間にも帝国兵が徐々に自分達へと迫ってくる。

 カイは隣にいる竜王を横目で見る。心配の元は彼女だ。魔物、いや魔物の中の王が隣にいるのだ。バレたらどうなるか想像もつかない。そんな彼の心境を察して居ないのか、自分の立場を理解して居ないのか、彼女は焦る素振りを見せていない。

 むしろどこか落ち着いているようにも見える。どうすんだよ?! と叫びたくなるのを抑えつつ、小声で竜王に話しかける。

「おい」

 竜王は振り向かない。無視だ。もう一度声をかける。と、面倒くさそうに眉を寄せて、口を開く。

「なんだ?」
「なんだ、じゃない。お前、その、隠す気はないか??」
「ん?」

 何? と言う顔をしたので、声を押し殺しながら指摘する。

「その角だよ!!どうするんだよ??」
「どうする、って言われても、な……。この角のは外せないぞ?」

 と、竜王は自分の角を撫でながら答えた。確かに生えてるからな、と同感したカイはそうじゃない、と自分にツッコミを入れる。

「だからって、そのまま、すれ違うのはマズいだろ? なんとかならないのかよ?」
「そう言われてもなー」
「お前、竜王だろ?!」
「魔物の王といえども、出来ないこともある」

 名言を言ったかのようにキリッとキメ顔でそうこたえる。

 さらにイラつく。思わず、声を上げかけたが、ダルドがカイの名前を呼んで止める。竜王と言い合いをしているうちにすぐ近くまで、帝国兵が来ていたのだ。

 カイは汗を流しながら必死に考えた。

 ここで、変な動きを見せると帝国兵に怪しまれてしまうだろう。下手に引き返したり、脇道に逸れたりするのは危険すぎると考え、自然にかつ、目立たずに道の隅に寄って帝国兵が進める道を空けた。

 蹄の音がし馬の鼻息、兵士達の話し声を耳にしながら視線をそらす。

 チラッと視線を上げてみると先頭をいく口髭の帝国兵が巡回隊の隊長だろうか。後方へ続く兵士に何か指示を出している。視線が合いそうになったので、反射的に下を向いてしまった。

 今の行動はまずかったか……と心の中で不安になった。

 そうこうしていると帝国兵とすれ違う瞬間が来た。何事もなく通り過ぎていけばいいのだが。そう願うばかりだった。

 軍馬に跨る一人の口髭の帝国兵士が横を通っていく。その時、カイらを横目で見てきた。どこか怪しむ顔をする。何か違和感を覚えたのだろうか。目を細めた。視線を感じたカイの頬に冷や汗が滴り落ちる。

 口髭の帝国兵の視界に目深くフードを被る女の姿が入った途端、馬首を返し、カイ達を呼び止める。

「おい待て」

  野太くて大きな声がする。

「ひっ??!!」

 突然のことでカイとダルドは思わず身体がビクつき、カイは思わず、変な声を出してしまった。馬上から声をかけた口髭の帝国兵に顔を向けてくる。かなり顰め面だ。

「ど、どうしたんです……?」

 カイが答えると口髭の帝国兵がカイの目の前にまで馬を進め、腰に下げている剣の柄頭に手を添えて見せた。

 まるで、いつでもお前を斬り殺せるぞ、と言っているように思えた。他の帝国兵もその男に倣うように剣柄に手を置いている。

 気が付けば、取り囲まれていた。逃げ道も塞がれている。絶対絶望とはこのとこを意味するのだろう。

「お前らどこから来た?」

 話し方がかなり偉そうな口振りだ。さすがは帝国人。彼らは自分の民族が世界で一番優れていると思いこんでいるのだ。態度に少しイラッとしながらも顔を笑顔にしたまま答える。相手に不快感を与えないように声音を落とした。

「どこって、その、えっと、東の国からです」
「東?」

 考える素振りを見せ、再び口を開いた。

「あぁーあのジパルグか」
「―――――で、そのジパルグ人がここで何をしている?」
「そ、それは……」

 具体的に答える言葉が見つからず、口ごもるとすかさず、ダルドがフォローを入れる。

「た、旅ですよ。あっしらは世界中を旅するただの旅人ですぜ」
「旅人だと……? そういうお前は? ずいぶん訛っているな」
「ええ。まぁ、帝国のかなり北の田舎村で育ったもんで」
「ふーん………」

 怪しんだ目でジロジロと見つめてきた。他の兵士らもカイらを取り囲み始める。
 
 口髭の帝国兵は気になっていた女を指差す。

「そこの女、フードを取って顔を見せてみろ」

 やっぱり、そっちが本当の目的だったのか、と察する二人。竜王と口髭の帝国兵の間にダルドが割って入った。

「あ、いや、こいつはですね。顔にヒドイ火傷を負ってまして……」
「だから?」
「その、ただれた顔を誰にも見られたくない、ということで……」

 口髭の帝国兵は眉を顰めた。

「怪しいな。最近、魔族がうろついていると噂が流れている」
「まさか、あっしらはれっきとした人間ですぜ???」
「お前たちは人間かもしれんが、そいつはどうかな」

 後ろを振り返り、指を鳴らす。

「おい こいつのフードを取れ」
「「はっ」」

 待機していた帝国兵の二人が軍馬から素早く降り、竜王の下へ駈け寄る。カイ達はそれを邪魔しようとしたが、他の帝国兵が取り押さられてしまった。

 両脇に立った帝国兵は竜王を無理やり跪かせ、フードに手をかけた。

 もう終わった、そう思ったカイは竜王がフードを取られる瞬間を直視できず、思わず目を閉じてしまう。

 竜王は抵抗することなく、待っていたので帝国兵が勢いよくフードを取った。

 すると何も起きなかった。帝国兵たちの反応もイマイチだった。少し悲鳴のような声を上げる兵士もいる。気になり、目を開けて見てみると、兵士たちが驚き顔で腰が引けていた。まるで、醜い者を見るような顔だ。

 竜王に顔を向けると、彼女の頭に生えていたはずの角がきれいさっぱりなくなっていたのだ。

 二人の帝国兵もなんの異常がないと感じ、上官に視線を送る。

 竜王の頬に深い火傷痕が残っているのを見て、口髭の帝国兵は納得したのか、部下を下がらせた。

「それでは嫁には行けんな。同情する……」

 そう言葉を残し、待機していた帝国兵たちに指示を出し、再び、巡回の任務に戻っていった。

 帝国兵らが通り過ぎるのを見送っていく。

 竜王は何もなかったかのように村へ向かって歩き始めていた。
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