盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第二十七話

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 ―――――――場所は変わって、カイ達はというと………当初の目的地だったヘッツアという村を目指して、黙々と森の中を進んでいた。

 下草を踏む音と鬱蒼と生い茂る草木をすり抜け、動物たちの鳴き声が間近くで聞きながら魔物と遭遇しないことを祈っていた。

 前も言ったがカイとダルドは剣術なんて知らないし教わったこともないので、もしも、魔物が現れたら対処できない。

 そんな状態で、よく今まで生き残ってこれたな、と同業者に言われるだろう。

 カイ達のような非公認の者は護衛なしの暗い洞窟や打ち捨てられた砦、廃墟、墓所など魔物が棲みつきやすい場所に行かなければならない。

 冒険ギルドに入っていれば、ギルドから支給品や傭兵の支援など、ギルド本部がある程度、見てくれるので、安心して冒険ができる。

 いまだ、地図に載っていない場所を見つけ出せば、それだけで帝国から報酬金がもらえるのだ。

 危険の先に巨大な富が待っている。多くの若者が酒場で、そう言いながら酒を食らって夢を見ている。

 壮大な夢かもしれないが、カイたちも彼らと同じくその考えだった。

 だが、カイたちには支援はない。全て自腹なのだ。

 金がそんな危ない状態で、この二年を無事にやってこられたのは強運の持ち主としか思えない。

 不思議なほどだ。自分に神の加護があるのでは? と思ってしまうほどだ。

 いつこの運が尽きるのか、内心ビクビクしていた。

 それはそうと先程まで歩くのを拒んでいた竜王だったが自分の抵抗が無駄だということを悟ったのか、諦めたように今は自分の足でポツポツと歩いている。

 気怠そうに歩くその姿を見ているとカイはなぜかイライラしてしまう。

 息を大きく吐く。ダルドも同じく苛立ちを見せているようだ。

 カイが竜王へ視線を向ける。

 すると口を膨らませて、知らん顔をした。それがさらに苛立たせる。

 どこまでイラつかせればいいんだ、と心の中で投げかけた。

 竜王は子供のように拗ねてる。間違いなく、竜王は拗ねてる。

 何に対してそうなっているのかはわからないが。

「はぁ……めんどくせぇ……」

 カイはそう深いため息をついた。

「流れでここまで連れて来たけど……もういいよ。どこかに行って。ついてこなくていいから……」

 困り顔でそう告げ、犬を追い払うように手をひらひらさせる。

竜王はカイを一瞥するもすぐに視線を逸らし、無視する。

ついてこれないようにと歩みを早めたが、前を歩くカイとダルドの後をしっかりついてきている。

 なぜ、邪魔も扱いされても、ついてくるのかと言うとその理由はカイにはわかっていた。

 昨日話していた竜の宝玉を取り返したいのだろう。

 どうして、自分たちの協力がいるのかは不明だが。他の奴に頼んだ方が断然に良い。

 竜王はふと考える。

 どうやって、竜の宝玉を取り戻すのか。

(―――――戦って奪い返す? 無理だ。 やつは神の加護を受けている。力も圧倒的に上だ)

 この世界を作り出した創造主である神ラインデルクが二ブラスに加護を与えている。

 それもよりにもよって、正義の勇者ではなく、傲慢で、冷酷で、残虐な女に神の力を与えている。

 勝てるはずがない……。だから他の方法を考えないといけなかった。

 なら、気が付かれずに奪い返すのは? それなら可能性はある。

 細かい方法までは思い付かなかった竜王だったが、盗み出すのが有効な手段なのではないか。と思い付いた。

 そうすると人の街へ、帝都へ忍び込むには人間の方がいい。それと、それを生業にしている者ならできるかもしれない。

 そう簡単に人間と接触できないし、したらしたで攻撃の対象となるだろう。

 だが目の前にいる二人は攻撃してこない。

 しかも、盗賊ではないが墓荒らしだ。隠密行動にも長けている様子。

 彼らにかけるしかない。

 そして、無事に盗み出せたとしても、二ブラスが黙っているはずがない。

 彼女と闘うことになるだろう。どうやって、闘う? そもそも勝てるのか? と彼女には課題が多かった。

 考え込んでいた竜王にカイが唐突に振り向いて、言った。

「森を抜けるぞ」 

 そうカイが告げた後、歩みを進めるにつれて、鬱蒼と生い茂ていた草木が拓けていき、太陽の光も徐々に射す光の量も多くなってきていた。

 やがて、森を抜け、拓けた場所へ出た。

 丘になった上に三人は立つ。彼らの目の前に果てのない緑の平原が広がっていた。

 緑の地平線がどこまでも続く光景には嘆息してしまう。

 時々、丘や生い茂った木々があった。辺りを見渡して、遠くの方に目を向けると煙が上がっているのが見える。

 よく見るとそこに集落があった。カイ達が目標にしていたヘッツア村だった。

 カイ達が村と言っていたので、そんなに大きな村ではない、と思っていた竜王だったが、見て驚く。

 ここからでもわかる高い木柵、物見塔まである。規模からしてら村というより一つの街だ。

 それと防衛面ではかなり力を入れているようだ。

 普通なら村くらいで、物見塔や木柵を建てることはしない。そんな時間と労力を使うよりももっと重要な拠点や人が多く集まる場所へ作った方が利口だろう。

 ヘツァル村の代表者が用心深い者だとすぐにわかる。規模からしてら村というより一つの街。

 どうしてそこが村と呼ばれているのかが不思議なくらいだ。

 丘を下り、草原の中を歩みを続ける。

 どれだけ歩いたか覚えていないが、もうカイ達はへとへとだった。竜王はそうでもないようにケロッとした顔でなんで疲れてんの? という顔で二人を不思議そうに見る。

 森を抜けた安全地帯に出たので、舗道を歩く。道なりに進むにつれて、大きな風車が見え、農場が見え始めた。

 牛の鳴き声が聞こえた。遠くの方では野馬が自由に駆けていた。農夫たちはせっせと畑を耕す為に土に鍬を振り下ろし、石で敷き詰められた舗装された道では荷馬車が行き来していた。

 田舎村だが、意外と活気があるようだ。

 木壁が村を囲み、見張り台まである。

 帝国兵の巡回兵がこちらに来るのが見えた。

 騎馬に乗った三人の帝国兵を見て、カイは、はっと焦るように後ろをついてきていた竜王へ駈け寄り、問答無用に竜王のフードを深々とかぶせた。

「ぬゅあ??!!! 前が?!! 前が見えない?!!!!」

 フードを取ろうと暴れるがそれを無理やりかぶせさせる。

「ダルド!」

 まだ気が付いていなかったダルドを呼び、近くへ寄らせる。

 小声で帝国兵を一瞥して言う。

「目立たせないようにしよう」
「どうします?」
「俺の左側に立たせる。お前は真ん中を」
「了解」

 ダルドが道の真ん中へ移動し、カイはその隣、左横に竜王を歩かせた。

 帝国兵が近づいてくる。顔がわかるほどはっきりと見えた。

(―――――やばい、このまま見逃してくれればいいんだけど……)

 カイの頬を冷や汗がつたる。
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