盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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ヘッツア村 その3

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 帝国軍の検問を何とか通ることができたカイたちだったが気になることがあった。カイはこっそりと誰にもバレないように後ろを横目で確認する。

 すると検問にいる帝国兵らはカイの後ろに並んでいた旅人の荷物検査しているようだった。

 それを見たカイは一安心し、視線を戻す。

 どうやら自分たちにはもう興味を持ってないようだ。カイは胸を撫で下ろしながら溜まった息を吐く。

「あぶねー……まじで……」

 まさか危ない橋を二回も渡ることになるとは思ってもいなかった。村の外の巡回隊もそうだし、今の検問もすうだし、いつこの馬鹿が竜王だとバレのか。不安でしかない。

 ダルドも冷や汗を拭った。

「……アニキィー、ヒヤヒヤものでしたね?」

 と引きつった顔でそうささやいてくる。

「あぁ。……寿命が一年縮まった気がするわ」

 と胸を抑えながら冗談で言うカイに竜王が気に障ったのか、頬を膨らませてムスッとした。

「それは私のせいか? 私のせいなのか?」
「いや、そういうわけじゃない」

 自分たちが墓荒らしで、盗んだ金銀財宝を見られたらと思うとヒヤヒヤだった。

 ちなみに誰も気づいていないと思われるが、勇者が葬られていたあの地下墓地で、石の棺の中にあった勇者の指輪と銀の腕輪をこっそり、くすねていた。

 これを換金したらかなり、値が付く。

 服の内側にある隠しポケットにしまいこんでいて、正解だった。

 だが、ヒヤヒヤしたのは半分はお前のせいだけどな、とカイは文句を言う。

「いやー、気にしないでくださいよぉ竜王さん!まさか、隣に竜王がいるなんて、誰も気づくわけないじゃないですかーハハッ!!」

 そのダルドの声に近くにいた通りすがりの人の視線が向けられる。

 何を言っているんだこいつは? と思われたのだろう。

 目立つ行動は極力避けたいカイはそれを見て、焦るようにダルドの頭を叩く。

「バカ! 声が大きい」
「いたッ」
「竜王を竜王って呼んでどうするボケッ!!」
「あ、アニキだって、今、竜王って言ったじゃないですか?!」
「うっせ!」

 ゴツンと鈍い音がした。

 カイはダルドの頭を二回も叩く。その光景を見ていた通りすがりの人らが。クスクスと笑いながら立ち去っていく。

 まぁ、誰も自分の目の前に竜王がいるなんて思わないだろう。

「……それにしても近頃、帝国軍の監視がさらに厳しくなっている気がするな」

 この前まで、村ごときに検問所を置くなんてなかった。

 ヘッツァ村は首都の近くに特殊な場所にあるからかもしれないが、それでも警備が厳重過ぎる。

 まるで、何かに怯えているように見えた。

 反帝国連合の動きが水面下ではあるが活発化しているという噂は聞いたことがある。

 なんでも、帝国貴族や帝国領を所有する領主ら少なくとも数名が反帝国連合になびいている、とか。反乱を警戒してのことだろう。

 他にも理由がありそうだが、カイには見当がつかないので、とりあえず、今はヘッツア村の中に入ることを優先することにした。

 政治の話なんて、カイにはどうでもよかった。

 自分さえ生きられればそれでいい。

 国なんて滅んでも死にはしないのだから。

 門を守るの二人兵士に検問所ちゃんと通過した事を伝えた。

 さすがに検問で入念に調べ上げられたので、ここまで来れば、兵士もすんなり通す。

 一応、兵士らに会釈しながら村の門をくぐると早速、騒がしくなった。

 舗装された道の端々には飲食店が軒並み、お客を呼び込もうと店主らが声を張り上げた。

 行く旅人らを足止めさせ、食べ物を売るのだ。

 カイによって見慣れた光景だった。だから、チラ見しただけで、それらの呼び込みを無視する。

 愛想が悪い? そんなの知らん。

 時間の無駄だ、と自分に言い聞かせ、目的の店へと足早に向かう。

 すると突然、身体が重くなった。腕が誰かに引っ張られている気がする。

 右手を引っ張ろうとするとくいっと後ろに引っ張り返される。

 それもとてつもない馬鹿力に後ろにこけそうになった。

 腕を引っ張っているのが誰なのかは見当がついている。

「……つ」

 振り返ると案の定、竜王が両足で踏んっていたのだ。

「何してんだ?」
「ん!!!」

 と左手である場所を指さしながらカイとは反対方向に身体を向ける。何が何でも会を進ませるつもりはないようだった。

 一体、彼女をそんなに夢中にさせることがあったのだろうか。

 彼女の指先を追っていくと一つのご飯屋……ではなくて、その隣にあるお団子屋に向けられていることがわかった。

 店の看板には東洋の島国伝来、みたらし団子販売中!と書いている。

「……なるほど」

 みたらし団子……れはカイの生まれた国でおやつとして食べられるお菓子である。

 カイにしたら、見慣れた食べ物だし、そう驚くものではないのだが。

 竜王は完全に目を奪われている。

「……みたらし団子が欲しいのか?」

 その問いかけに竜王が振り返る。

「買ってくれるのか!??」

 目を輝かせる竜王はまるで子供と一緒だった。

 てか、そもそもこいつは何歳なんだ、というところから始まる。

 顔つきは厳ついくせに、行動が子供だし。

「早く買ってくれ」
「いや、買うとは一言も言ってないんだが?」

 それに竜王は眉を寄せ、にらみを決めて、低い声音で言う。

「買え。はやく。今すぐに。さもなくばこの村を業火の炎で焼き尽くすぞ」
「待て待て待て、そんなんで、竜王の力使わなくていいから。そんなんで、虐殺をしなくていいから。てか、お前、平和を愛するとか言ってなかったか?」
「うっせぇ。はやく、買え」
「口が悪くなってるし……」

 竜王の目が本気だぅたので、カイは折れてしまう。ため息を一つ吐いた。

 腰に下げている吊り下げ鞄から布の財布を取り出す。

「もぉー。……一つだけだぞ?」
「やった!」

 そういうと竜王は掴んでいた腕を振り払い、団子屋に駆け込む。

 店のカウンターに身体を乗り上げて、奥に居る店主に声をかけた。

「おじいさぁーーーん! みたらし団子を4つくださぁーい!!」
「4つも買うんかい!!」
「なんか、悪いか??」

 と言いながら右の手の平を見せ、魔法を唱えようとした。

 それだけはやめろ、と急いで竜王の元へ駆け寄り、彼女と同じように店主にみたらし団子を四つもらうように告げる。

 店主が微笑みながら、皿に四つのみたらし団子を乗せて、竜王に渡す。

「おぉ! なんだこれは!! 見たことないぞ!」

 両手で受け取った竜王はマジマジと見つめて、動こうとしなかったので、カウンターから退かし、店主に金額を教えてもらう。

「いくら?」
「銀貨2枚と銅貨4枚です」
「げっ、一本銅貨6枚もすんのかよ??」

 驚いたカイにダルドが横で、高い買い物しましたね、と囁く。

 みたらし団子を受け取ってしまっては仕方ないと思い、渋々、お金を渡す。

「あいよ、おおきに」

 店主が満面の笑みで会釈した後、お金を受け取る。

 そんな中、一人の少女はテンションが上がっていた。

「カイ、カイよ! 団子とはいったいなんなのだ??」
「まぁーなんていうか、餅?みたいなもんだな」
「餅? 餅とはなんだ??」
「あー、お米を粉にして、丸めて茹でたやつ」
「ほぉ!! 面白い! 餅とはどんな食感やんだ??

 質問攻めに答えるのが、面倒になったカイは食べたらわかる、と答えた。

「なら、早速、いただくとしよう!」

 そう言って、一本のみたらし団子を手に取り、串に刺さっている三つの団子のうち、一つを食べ、しばらく、もぐもぐタイムに入った。
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