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換金屋のバラック
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竜王が無言のまま、もくもぐとみたらし団子を食べる。
美味しそうに食べる姿にカイはなぜか、満足した気分になった。
自分の国のお菓子をこんなにもおいしそうに食べるのを見たらなんか買ってよかった、と思ってしまう。
自慢気に聞く。
「―――おいしいだろ?」
その問いかけに竜王はおいしい、とは言わず、頷くだけだった。
憎たらしい。素直じゃない竜王にイラッとする。
ダルドが自分も欲しいのか、ヨダレが垂れていた。それに気づいた竜王は渡すものかという態度を取り、残りの全部を手に取り、無理やり口の中に突っ込む。
満足顔の竜王はベンチの上に上がるというそこから高く飛んで着地し、カイに振り返る。
「ほら、行くぞカイ」
自由奔放にも程があるだろ、と心でつぶやく。ダルドも呆れ顔をした。
「アニキ、これからどこへいくんです?」
「とりあえず、最初に換金屋に行こうと思う」
「あぁーバラックの店ですか?」
「そうそう」
カイはヘッツア村に来た目的は、食料の調達もそうだが、バラックに会うためでもあった。
盗んだ品物とかを換金してくれるのはバラックのような盗難品も買い取ってくれる店でお金に換金している。
普通の店でそんなことをすれば、大変なことになるし、まず買い取ってもらえない。
危ない盗品をいつまでも手元に置いておくわけにはいかないので、さっさと金に換えとく方が身のためなのだ。
カイは膝に両手を突き、よっこいしょ、と立ち上がる。
それを見た竜王が小ばかにした顔をする。
「お前は年寄か?」
「うっせっ。こちとら重い荷物をずっと背負ってんだ」
竜王が小首を傾げる。不思議そうにカイが背負う背嚢を見つめた。
「そんなに重いのか? それ?」
「あぁ。いろんな物が入っているからな……」
大きい声では言えない物もあるが。
「ふーん。どれ、持たせてみろ」
そういって、竜王が手を差し出す。
「お前に持てるのか?」
「いいから」
カイは背負っていた背嚢を手渡した。
「……そんな、重くないぞこれ?」
軽々と片手で持ち上げる竜王に少し驚いたが、そういえば、こいつは魔物なんだったと思い出す。
「じゃあ、持っててくれよ、それ」
冗談交じりでそういってみる。すると、竜王からは意外な返事が返って来た。
「いいよー」
「いいの?!!」
「え? こんくらい余裕だし」
竜王の言葉に甘えて、カイは彼女に持たせることにした。
ずっと旅をしてきていたので、身体がバキバキで、早くフカフカのベッドで横になりたい気分だったカイだったが、重たい足を前に出しながらバラックの店に向かう。
ヘッツア村の端にある大きな家々の裏路地に入り、細道を進む。
家と家の間の道とは言えない隙間を身体を横にして、入っていく。
少し進むと拓けた場所に出た。
しかし、四方を家々に囲まれ道がなかった。完全に行き止まりに竜王は苦笑いで尋ねる。
「道を間違えたのか?」
「いいや。この先さ」
カイは迷うことなく壁に向かって歩く。 木目の板壁に歩み寄り、おもむろに三回ノックする。
乾いた音がした後、壁の向こう側から声がした。
「誰だ?」
貫禄のある攻撃的な声だったがカイは怯むことなく答えた。
「カイだ、入れてくれ」
「あぁ、カイか! ちょっと待ってろよ」
暫くして、木目の板壁が横にスライドしていく。
竜王は興味深そうに見る。
「なるほど。隠し通路か」
強面の背の高い男がのそのそと出てきた。
身体もカイよりも一回り大きく、鎧は革製で頭に額当てをつけて、カイと同じ刀を腰に帯びていた。
「久世のおやっさん、おひさー」
と手の平をあげて、カイは馴れ馴れしくすると強面の男の表情が緩む。
「カイ~無事だったかぁー!」
軽い足取りでカイの肩に腕を回すと、髪の毛をかき乱した。
大きな手でカイの頭が覆われる。
「で、どうだった? 収穫はあったか?」
「んーまぁまぁだよ」
「そうか、まぁ無事で何よりだ」
一笑した久世はカイの背中をバンと叩く。それからカイから少し離れるとダルドにも挨拶した。
「おう。ダルド! 相変わらず、ブサイクだな」
「ブサイクでわるかったなッ!!」
「ハハハッー! そう怒るな。冗談だ。――――ん?」
いつものメンバーにはいない竜王に気が付いた、久世が物珍しそうに頭から足先まで嘗め回すように見る。
「そこの別嬪さんは?」
「あぁ、俺たちの新しいメンバーさ」
「ほぉー。見たことのない目色だな。ルガリア人か? それとも南部の民か?」
「いや、どちらでもない。西の奥の民さ」
「へぇー。で、なんて名前なんだ?」
興味深そうにする久世に対して、愛想笑いして誤魔化していた竜王も困った顔でカイに視線を送る。
カイは咄嗟に頭に出て来た名前を言った。
「こいつはレオーネって言うんだ」
それに竜王が驚いたような顔をする。カイを睨みつけてきたが何も言わなかった。
「レオーネか。いい名前じゃねーか!」
久世があることを思い出す。
「ん、あー確か、レオーネって名はムスタシア帝国じゃあ、神に祝福された者って意味だったな」
「え?」
それにカイは自分がとんでもないことをやらかした事に気づく。
悪魔に神に祝福された者なんて、名前をつけるなんて、とんでもないことだ。
竜王が怒りを露にするのも仕方がなかった。
後でどうなるか、と思うと冷や汗がタラタラと流れ出た。
後ろで黒いオーラを感じるカイは横目で竜王を確認する。
すると殺意を込めた瞳で竜王が見つめていた。
「後で殺す」
口パクで、そう言った。カイは視線を急いで、久世に戻す。
「……どうした、なんか顔色が悪いぞ……?」
久世がカイの異変に気付いたが、それになんでもないと答える。
「じゃ、じゃあ、おやっさん、バラックに会ってくるわ……」
俯いて、弱弱しい声音をしたカイを見た久世は心配になる。
「お前……大丈夫か……? マジで死にそうな顔をしてるぞ?」
「……大丈夫……今から死ぬかもしれないから……」
そういって、久世に別れを告げると隠し通路へとカイは向かう。ダルドと竜王もそれに続く。
久世は三人の背中を見つめながら小首を傾げるとささやいた。
「どういうことだ……?」
暫く考えたが、わからなかった。
「まいっか。俺は俺の仕事っと」
そういって、久世は再び、木目の壁を元に戻すのであった。
美味しそうに食べる姿にカイはなぜか、満足した気分になった。
自分の国のお菓子をこんなにもおいしそうに食べるのを見たらなんか買ってよかった、と思ってしまう。
自慢気に聞く。
「―――おいしいだろ?」
その問いかけに竜王はおいしい、とは言わず、頷くだけだった。
憎たらしい。素直じゃない竜王にイラッとする。
ダルドが自分も欲しいのか、ヨダレが垂れていた。それに気づいた竜王は渡すものかという態度を取り、残りの全部を手に取り、無理やり口の中に突っ込む。
満足顔の竜王はベンチの上に上がるというそこから高く飛んで着地し、カイに振り返る。
「ほら、行くぞカイ」
自由奔放にも程があるだろ、と心でつぶやく。ダルドも呆れ顔をした。
「アニキ、これからどこへいくんです?」
「とりあえず、最初に換金屋に行こうと思う」
「あぁーバラックの店ですか?」
「そうそう」
カイはヘッツア村に来た目的は、食料の調達もそうだが、バラックに会うためでもあった。
盗んだ品物とかを換金してくれるのはバラックのような盗難品も買い取ってくれる店でお金に換金している。
普通の店でそんなことをすれば、大変なことになるし、まず買い取ってもらえない。
危ない盗品をいつまでも手元に置いておくわけにはいかないので、さっさと金に換えとく方が身のためなのだ。
カイは膝に両手を突き、よっこいしょ、と立ち上がる。
それを見た竜王が小ばかにした顔をする。
「お前は年寄か?」
「うっせっ。こちとら重い荷物をずっと背負ってんだ」
竜王が小首を傾げる。不思議そうにカイが背負う背嚢を見つめた。
「そんなに重いのか? それ?」
「あぁ。いろんな物が入っているからな……」
大きい声では言えない物もあるが。
「ふーん。どれ、持たせてみろ」
そういって、竜王が手を差し出す。
「お前に持てるのか?」
「いいから」
カイは背負っていた背嚢を手渡した。
「……そんな、重くないぞこれ?」
軽々と片手で持ち上げる竜王に少し驚いたが、そういえば、こいつは魔物なんだったと思い出す。
「じゃあ、持っててくれよ、それ」
冗談交じりでそういってみる。すると、竜王からは意外な返事が返って来た。
「いいよー」
「いいの?!!」
「え? こんくらい余裕だし」
竜王の言葉に甘えて、カイは彼女に持たせることにした。
ずっと旅をしてきていたので、身体がバキバキで、早くフカフカのベッドで横になりたい気分だったカイだったが、重たい足を前に出しながらバラックの店に向かう。
ヘッツア村の端にある大きな家々の裏路地に入り、細道を進む。
家と家の間の道とは言えない隙間を身体を横にして、入っていく。
少し進むと拓けた場所に出た。
しかし、四方を家々に囲まれ道がなかった。完全に行き止まりに竜王は苦笑いで尋ねる。
「道を間違えたのか?」
「いいや。この先さ」
カイは迷うことなく壁に向かって歩く。 木目の板壁に歩み寄り、おもむろに三回ノックする。
乾いた音がした後、壁の向こう側から声がした。
「誰だ?」
貫禄のある攻撃的な声だったがカイは怯むことなく答えた。
「カイだ、入れてくれ」
「あぁ、カイか! ちょっと待ってろよ」
暫くして、木目の板壁が横にスライドしていく。
竜王は興味深そうに見る。
「なるほど。隠し通路か」
強面の背の高い男がのそのそと出てきた。
身体もカイよりも一回り大きく、鎧は革製で頭に額当てをつけて、カイと同じ刀を腰に帯びていた。
「久世のおやっさん、おひさー」
と手の平をあげて、カイは馴れ馴れしくすると強面の男の表情が緩む。
「カイ~無事だったかぁー!」
軽い足取りでカイの肩に腕を回すと、髪の毛をかき乱した。
大きな手でカイの頭が覆われる。
「で、どうだった? 収穫はあったか?」
「んーまぁまぁだよ」
「そうか、まぁ無事で何よりだ」
一笑した久世はカイの背中をバンと叩く。それからカイから少し離れるとダルドにも挨拶した。
「おう。ダルド! 相変わらず、ブサイクだな」
「ブサイクでわるかったなッ!!」
「ハハハッー! そう怒るな。冗談だ。――――ん?」
いつものメンバーにはいない竜王に気が付いた、久世が物珍しそうに頭から足先まで嘗め回すように見る。
「そこの別嬪さんは?」
「あぁ、俺たちの新しいメンバーさ」
「ほぉー。見たことのない目色だな。ルガリア人か? それとも南部の民か?」
「いや、どちらでもない。西の奥の民さ」
「へぇー。で、なんて名前なんだ?」
興味深そうにする久世に対して、愛想笑いして誤魔化していた竜王も困った顔でカイに視線を送る。
カイは咄嗟に頭に出て来た名前を言った。
「こいつはレオーネって言うんだ」
それに竜王が驚いたような顔をする。カイを睨みつけてきたが何も言わなかった。
「レオーネか。いい名前じゃねーか!」
久世があることを思い出す。
「ん、あー確か、レオーネって名はムスタシア帝国じゃあ、神に祝福された者って意味だったな」
「え?」
それにカイは自分がとんでもないことをやらかした事に気づく。
悪魔に神に祝福された者なんて、名前をつけるなんて、とんでもないことだ。
竜王が怒りを露にするのも仕方がなかった。
後でどうなるか、と思うと冷や汗がタラタラと流れ出た。
後ろで黒いオーラを感じるカイは横目で竜王を確認する。
すると殺意を込めた瞳で竜王が見つめていた。
「後で殺す」
口パクで、そう言った。カイは視線を急いで、久世に戻す。
「……どうした、なんか顔色が悪いぞ……?」
久世がカイの異変に気付いたが、それになんでもないと答える。
「じゃ、じゃあ、おやっさん、バラックに会ってくるわ……」
俯いて、弱弱しい声音をしたカイを見た久世は心配になる。
「お前……大丈夫か……? マジで死にそうな顔をしてるぞ?」
「……大丈夫……今から死ぬかもしれないから……」
そういって、久世に別れを告げると隠し通路へとカイは向かう。ダルドと竜王もそれに続く。
久世は三人の背中を見つめながら小首を傾げるとささやいた。
「どういうことだ……?」
暫く考えたが、わからなかった。
「まいっか。俺は俺の仕事っと」
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