盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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換金屋のバラック その2

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 カイは怒らせてしまった竜王から逃げるように早歩きで進む。

「カイッ!」

 と怒気の籠った声で呼ばれたカイは迷うことなく思いっきり走り出す。  

「あ、逃げた」

 ダルドがつぶやくと隣にいた竜王は身体を引くし、右足を後ろに起き、踵に力を入れ、凄まじい速さのスタートダッシュを決める。

「待てゴラァ―――ッ!!!」

 カイは竜王の追撃をしり、必死に駆けるも捕まるのは目に見えていた。

 だから、逃げるのを諦めたカイは身体の向きを変え、意を決して方向転換するとその反動を頼りにジャンピング土下座を決め込む。

 カイのその奇妙な行動に思わず立ち止まってしまう。

「し、知らなかったんだ!! そんな言葉があっだなんて……、知らなかったんだ。だから許してくれ……」
「よりにもよって私が憎む神に与えられた名をつけるなんて……」

 竜王の両手に力が入りすぎて、震えていた。

 ヤバイ、殺される。

 カイは顔を地面に埋め、額を土に擦り付けて、陳謝した。

 竜王が地面にはいつくばって、頭を土に擦り込む行為が気になっていた。

「……で、さっきからなにをしてるんだ?」
「土下座です」
「土下座とはなんだ?」
「ジパルグ人の最大の謝罪を込めた時に使うやつ」
「ふーん。そ、れ、で、許してもらえる、と?」 
「……いや……。その……これしかできなくて……」

 頭の中で、あの日の事を思い出してしまった。

 豪華で焼かれる居城、神とは皇帝ラニアスの冷徹な目で睨まれたこと。

 それに怒りのあまりに竜王の足元の地面が割れ、身体中から魔力が溢れ出ていた。竜王がカイに手を伸ばし、魔法を詠唱し始める。

「消し炭にしてやる……」

 額に青筋が入る竜王にカイはさらに謝罪する。

 竜王にとって、神とは永遠の敵であり、平和を破壊した張本人である。

 世界を掻き回し、勇者を殺し、治めるべき統治者を暴君にした。

 神こそ、悪の元凶だ。

 許せなかった。神を。あいつを。あのクソ野郎を。この手で殺さなければ、気が済まない。

 いや、殺さなければ、平和なんて来ない。

 魔物たちの悲鳴が頭から離れない。

 助けを求め、生きながらにして、引き裂かれ、焼かれていった悲痛な叫びが竜王の頭にこだまする。 

「頼む! なんでもするから!!!」

 その言葉にカイを見下ろした竜王は熱が入った身体から一気に冷えた気がした。

 その伸ばした手を引っ込め、大きくため息を吐き、腰に手を置く。

「なんでもするのか?」
「あぁ! なんでもするから!」

 それに竜王はふむ、と何かを思案顔した。

 あることを思いついた竜王は手のひらを拳で叩く。

「じゃあ、お前にとっておきの仕事がある」
「え? なに仕事って?」
「ニシシシ……」

 と不敵な笑みを浮かべる竜王だった。

 竜王はふと、周りを見渡す。

 気づかないうちに行き止まりになっていたようで、竜王の向いている先に今にも崩れかけた建物がいくつも見えた。

 錆びれた景色、ボロボロの家屋、人気のない場所に竜王は眉を寄せた。

「ここは……一体……?」

 カイは顔を上げる。

「あー、ここは、貧民区さ」
「貧民区?」
「まー簡単に言えば、貧乏人が集まる場所、ってとこ」
「なるほど。この村にもそんな場所があるのだな」

 悲しい気持ちになった竜王だったが、どうしようもできないこともわかっていた。

 二人の後を追っていたダルドがおいつく。息切れして、両手を膝につき、肩で息をしていた。

 カイがダルドに暴言を吐く。

「遅いぞダルド!」
「いや、二人が速いだけです」

 とツッコミを入れた。

 カイは許してもらえたのだろうと考えて、立ち上がると、スボンに着いた土をパタパタと叩く。

「んで、あそこがバラックの店」

 カイが指差す先に看板がつけられた少し大きめな店があった。

 看板には換金屋バラックと書いてある。

 カイが言っていた盗品を換金してくれる場所だ。

 竜王は心配になった。

 雨が降ったら絶対に雨漏りするであろう隙間だらけの屋根に、店の周りに置かれたガラクタの山にちゃんと営業しているのか不安になる。

 竜王の目にはゴミにしか見えなかった。

 だが、これが金になるのだから不思議だ。

 カイ、竜王、ダルドは三人、揃って、バラックの店へと入る。

 中に入ると竜王はゴミ、いや、ガラクタの山に圧倒される。

 辺り一面にガラクタが積み上げられ、足の踏み場が真ん中にしか確保されていなかった。

 カイとダルドは慣れたように店の奥に進み、カウンターを除き込んだ。

 誰もいそうにない。

 空いた椅子、乱雑に置かれた工具、ルーペ、それになにかの書類の山。

「おーいーバラックー?」
「………」
「あれ? 留守かな?」

 カイが声を上げるも反応がなかった。

 竜王は周りを見渡す。

 近くに刺さっている長剣が目に入る。

 柄頭に銀細工、鞘にも緻密な彫刻が施されている。

「……ん?」

 気になってしまった竜王はそれを手に取り、まじまじと見つめた。

「竜王さん、あんまり、商品を触らない方がいいですぜ? かなりの値打ち物がありますから、下手に触って壊したりでもしたら大変だよ」

 というダルドだったが、そういう値打ち物の保管はしっかりしないといけないだろ? とツッコミを入れる。

 鞘から剣をゆっくりと引き抜く。

 刃には一点の曇りもない。

 それにずっしりとした重さ、持ち心地、剣に歪みがないか、などを調べる。

「この輝き、かなり鍛錬されている……」

 おもむろに刃先を指先で軽く触れただけで、パックリと皮膚が割れ、赤い血が滲み出てきた。

 普通ならこうはいかない。

 少し触れただけで、切れてしまう刃はそうそうない。

 それに持った時に剣自体に力を感じた。

「……強化魔法の付与までされているのか。これはすごいなぁ。かなりの一級品だ」

   かなりの凄腕な鍛治職人が作ったのだろうと竜王は思った。

 自分がもらいたいくらいだ。

  すると突然、ゴミの山の中から薄気味悪い笑い声がした。

「ヒッヒッヒ。  そいつは高いよ」
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