盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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換金屋のバラック その3

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 薄気味悪い笑いが突然、ごみ溜めの中からした。

 変な声がした方へ三人の視線が向けられると何かに気づいた竜王は驚き、目を見開く。

 それはゴミ溜めの中からよっこらせ、と背の低い腰の曲がった老人が出てきたのである。

 ゴミを掻き分け、足場を確認しながらこちらへと向かってくる。

 まったく気配を感じなかった竜王は何者だろうかと恐れ、ただの老人には見えなかったので、思わず、身構えてしまう。

「そいつは今から200年前のフェレン聖騎士団の騎士が持っていたものだよ」
「こ、これが、か……?」

 竜王が疑うように剣を見つめる。確かに一級品に間違いはないがこんなゴミの山に乱雑に置かれているとは思いもよらなかった。

 歴史のある物は丁重に保管されるものだ。宝物庫にあるべき代物だ。

「あ、ちなみにそれ俺が見つけたやつ」

 と自慢げな顔でカイが告げて来た。

「お前がか? もしかして……?」

 竜王は嫌な予感がした。

「そう。北にあるフェレン聖教会修道院の地下墓地から見つけたんだ」
「盗んだのか??」
「うん」

 悪いことをしたとは全然、思ってないカイに呆れてしまう。

「なんということを……」

 死者と共に葬られていたはずの物を掘り起こしたのか。

 竜王はカイがこれの本当の価値を知っているのか疑ってしまう。

「そいつの名はエクシオ。エクシオの戦いで大勝利を治めたフェレン聖騎士が戦いの勝利の証にとその名を与えたのじゃ」

 エクシオの戦い――――エクシオ地方の領有を巡って、シスラ公爵軍とムスタシア帝国軍との戦いのことである。

 エクシオ地方は広大な牧草地帯であり、この領土を保有していたシスラ公爵がムスタシア帝国に反乱を起こしたことがきっかけだった。

 当初、シスラ公爵が挙兵したことに周辺の領主が続々と彼女に賛同し遂には公爵軍がムスタシア帝国軍の兵士数を上回った。

 エクシオの戦いは公爵軍の優勢に傾き、決着が着こうとしていた。

 その時、戦場の中央の丘で布陣していたフェレン聖騎士団はどちらに味方するかで迷っていた。 

 正義はどちらにあるか。そんなことで騎士団内で言い争いになり、決が来まならなかったのである。

 功を得たいが為に、フェレン聖騎士団の騎士らが独断で動き、シスラ公爵軍に攻撃を仕掛けた。

 もう、ムスタシア帝国側に付くしか他になかったフェレン聖騎士団の星空教会軍は一気にシスラ公爵軍に総攻撃、側面をつかれる形になった公爵軍は対処ができず、また上級騎士の一人が総大将であるシスラを討ち取り、戦いは終わる。

 シスラ公爵を討ち取った剣がこの剣である。

「……シスラ公爵とは仲が良かった」

 竜王は視線を落とし、ぼそりとつぶやく。

「助けてやれないですまなかった……」

 竜王は剣刃を優しく撫でる。

 その場にいた彼らには聞こえないくらい、小さな声だった。

「ところで、おぬしら、今日は何しにここに?」
「おぉーそうだった! バラック爺さん! 今日も換金をお願いしたいんだ!」
「イッヒヒッ。今日はどんなお宝に会えるのかの」

 変な笑いをするなよ気持ち悪い、と心の中で、文句を垂れる。

 楽しそうにバラックは自分の仕事机へと向かい、椅子に座ると手招きする。

「さー早く見せたまえ」
「まぁーそう焦らず」

 カイは竜王に持ってもらっていた背嚢を返してもらい、机に置く。

 バラックは両手をすり合わせて、嬉しそうに背嚢を漁る。

 彼のしわしわの手が何かを掴み、背嚢から出す。

「ほぉーこれはー東の国の壺じゃな。それに真珠のネックレス、お、指輪まであるのか」

 ゴソゴソと漁るバラックの手が止まる。

 背嚢の中から剣の柄が出てきた瞬間、バラックの眉が寄る。

「これは? 刃がないぞ?」

 折れた剣に値打ちはつかないことはカイも知っている。

「でも、それ、帝国軍の兵士長が持っていたやつだから高いと思うけど?」
「なるほど。どれどれー」

 言われる通りにバラックが柄頭を確認する。

「おー確かに柄頭は金でできておるな」
「だろー。で、いくら?」
「ま、金貨5枚ってところだの」

 竜王が驚き声を上げる。

「そんなにするの?!!」

 破損品に対して、彼女はせいぜい、銀貨数枚だと思っていたが、予測は見事に外れた。

 金はかなり貴重らしく、高値で売買される。

 今回は刃の折れた剣で、さらには柄頭だけだったが、金の量がまあまああったようだ。

「この東の国の壺はエストニアの壺だの。まぁ値打ちはないから銅貨3枚、指輪は銀製だから銀貨5枚、真珠のネックレスは真珠の大きさ、サイズから査定して、金貨2枚と銅貨5枚ってとこだな」
「合計で金12枚銀5枚銅5枚か。じゃあ、それでお願いします」
「あいよ。ちょい待っての」

 そういうとバラックは足下に隠していた布袋を取り出し、閉じた紐を解き、中身を覗いて確認する。

 換金する提示した金額を机の上に置いていく。そのタワーになった金をカイは懐に隠していた革財布に数えながら入れていった。

「これで、全部っと」

 カイは懐にしまい込んだ勇者の指輪と腕輪を思い出すと手を入れて出そうとしたが、ふと竜王の視線を感じた。

 これは余り見せたくなかったカイは竜王を一瞥したあと思案する。

 そして、あることを思いついた。
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