35 / 35
換金屋のバラック その3
しおりを挟む
薄気味悪い笑いが突然、ごみ溜めの中からした。
変な声がした方へ三人の視線が向けられると何かに気づいた竜王は驚き、目を見開く。
それはゴミ溜めの中からよっこらせ、と背の低い腰の曲がった老人が出てきたのである。
ゴミを掻き分け、足場を確認しながらこちらへと向かってくる。
まったく気配を感じなかった竜王は何者だろうかと恐れ、ただの老人には見えなかったので、思わず、身構えてしまう。
「そいつは今から200年前のフェレン聖騎士団の騎士が持っていたものだよ」
「こ、これが、か……?」
竜王が疑うように剣を見つめる。確かに一級品に間違いはないがこんなゴミの山に乱雑に置かれているとは思いもよらなかった。
歴史のある物は丁重に保管されるものだ。宝物庫にあるべき代物だ。
「あ、ちなみにそれ俺が見つけたやつ」
と自慢げな顔でカイが告げて来た。
「お前がか? もしかして……?」
竜王は嫌な予感がした。
「そう。北にあるフェレン聖教会修道院の地下墓地から見つけたんだ」
「盗んだのか??」
「うん」
悪いことをしたとは全然、思ってないカイに呆れてしまう。
「なんということを……」
死者と共に葬られていたはずの物を掘り起こしたのか。
竜王はカイがこれの本当の価値を知っているのか疑ってしまう。
「そいつの名はエクシオ。エクシオの戦いで大勝利を治めたフェレン聖騎士が戦いの勝利の証にとその名を与えたのじゃ」
エクシオの戦い――――エクシオ地方の領有を巡って、シスラ公爵軍とムスタシア帝国軍との戦いのことである。
エクシオ地方は広大な牧草地帯であり、この領土を保有していたシスラ公爵がムスタシア帝国に反乱を起こしたことがきっかけだった。
当初、シスラ公爵が挙兵したことに周辺の領主が続々と彼女に賛同し遂には公爵軍がムスタシア帝国軍の兵士数を上回った。
エクシオの戦いは公爵軍の優勢に傾き、決着が着こうとしていた。
その時、戦場の中央の丘で布陣していたフェレン聖騎士団はどちらに味方するかで迷っていた。
正義はどちらにあるか。そんなことで騎士団内で言い争いになり、決が来まならなかったのである。
功を得たいが為に、フェレン聖騎士団の騎士らが独断で動き、シスラ公爵軍に攻撃を仕掛けた。
もう、ムスタシア帝国側に付くしか他になかったフェレン聖騎士団の星空教会軍は一気にシスラ公爵軍に総攻撃、側面をつかれる形になった公爵軍は対処ができず、また上級騎士の一人が総大将であるシスラを討ち取り、戦いは終わる。
シスラ公爵を討ち取った剣がこの剣である。
「……シスラ公爵とは仲が良かった」
竜王は視線を落とし、ぼそりとつぶやく。
「助けてやれないですまなかった……」
竜王は剣刃を優しく撫でる。
その場にいた彼らには聞こえないくらい、小さな声だった。
「ところで、おぬしら、今日は何しにここに?」
「おぉーそうだった! バラック爺さん! 今日も換金をお願いしたいんだ!」
「イッヒヒッ。今日はどんなお宝に会えるのかの」
変な笑いをするなよ気持ち悪い、と心の中で、文句を垂れる。
楽しそうにバラックは自分の仕事机へと向かい、椅子に座ると手招きする。
「さー早く見せたまえ」
「まぁーそう焦らず」
カイは竜王に持ってもらっていた背嚢を返してもらい、机に置く。
バラックは両手をすり合わせて、嬉しそうに背嚢を漁る。
彼のしわしわの手が何かを掴み、背嚢から出す。
「ほぉーこれはー東の国の壺じゃな。それに真珠のネックレス、お、指輪まであるのか」
ゴソゴソと漁るバラックの手が止まる。
背嚢の中から剣の柄が出てきた瞬間、バラックの眉が寄る。
「これは? 刃がないぞ?」
折れた剣に値打ちはつかないことはカイも知っている。
「でも、それ、帝国軍の兵士長が持っていたやつだから高いと思うけど?」
「なるほど。どれどれー」
言われる通りにバラックが柄頭を確認する。
「おー確かに柄頭は金でできておるな」
「だろー。で、いくら?」
「ま、金貨5枚ってところだの」
竜王が驚き声を上げる。
「そんなにするの?!!」
破損品に対して、彼女はせいぜい、銀貨数枚だと思っていたが、予測は見事に外れた。
金はかなり貴重らしく、高値で売買される。
今回は刃の折れた剣で、さらには柄頭だけだったが、金の量がまあまああったようだ。
「この東の国の壺はエストニアの壺だの。まぁ値打ちはないから銅貨3枚、指輪は銀製だから銀貨5枚、真珠のネックレスは真珠の大きさ、サイズから査定して、金貨2枚と銅貨5枚ってとこだな」
「合計で金12枚銀5枚銅5枚か。じゃあ、それでお願いします」
「あいよ。ちょい待っての」
そういうとバラックは足下に隠していた布袋を取り出し、閉じた紐を解き、中身を覗いて確認する。
換金する提示した金額を机の上に置いていく。そのタワーになった金をカイは懐に隠していた革財布に数えながら入れていった。
「これで、全部っと」
カイは懐にしまい込んだ勇者の指輪と腕輪を思い出すと手を入れて出そうとしたが、ふと竜王の視線を感じた。
これは余り見せたくなかったカイは竜王を一瞥したあと思案する。
そして、あることを思いついた。
変な声がした方へ三人の視線が向けられると何かに気づいた竜王は驚き、目を見開く。
それはゴミ溜めの中からよっこらせ、と背の低い腰の曲がった老人が出てきたのである。
ゴミを掻き分け、足場を確認しながらこちらへと向かってくる。
まったく気配を感じなかった竜王は何者だろうかと恐れ、ただの老人には見えなかったので、思わず、身構えてしまう。
「そいつは今から200年前のフェレン聖騎士団の騎士が持っていたものだよ」
「こ、これが、か……?」
竜王が疑うように剣を見つめる。確かに一級品に間違いはないがこんなゴミの山に乱雑に置かれているとは思いもよらなかった。
歴史のある物は丁重に保管されるものだ。宝物庫にあるべき代物だ。
「あ、ちなみにそれ俺が見つけたやつ」
と自慢げな顔でカイが告げて来た。
「お前がか? もしかして……?」
竜王は嫌な予感がした。
「そう。北にあるフェレン聖教会修道院の地下墓地から見つけたんだ」
「盗んだのか??」
「うん」
悪いことをしたとは全然、思ってないカイに呆れてしまう。
「なんということを……」
死者と共に葬られていたはずの物を掘り起こしたのか。
竜王はカイがこれの本当の価値を知っているのか疑ってしまう。
「そいつの名はエクシオ。エクシオの戦いで大勝利を治めたフェレン聖騎士が戦いの勝利の証にとその名を与えたのじゃ」
エクシオの戦い――――エクシオ地方の領有を巡って、シスラ公爵軍とムスタシア帝国軍との戦いのことである。
エクシオ地方は広大な牧草地帯であり、この領土を保有していたシスラ公爵がムスタシア帝国に反乱を起こしたことがきっかけだった。
当初、シスラ公爵が挙兵したことに周辺の領主が続々と彼女に賛同し遂には公爵軍がムスタシア帝国軍の兵士数を上回った。
エクシオの戦いは公爵軍の優勢に傾き、決着が着こうとしていた。
その時、戦場の中央の丘で布陣していたフェレン聖騎士団はどちらに味方するかで迷っていた。
正義はどちらにあるか。そんなことで騎士団内で言い争いになり、決が来まならなかったのである。
功を得たいが為に、フェレン聖騎士団の騎士らが独断で動き、シスラ公爵軍に攻撃を仕掛けた。
もう、ムスタシア帝国側に付くしか他になかったフェレン聖騎士団の星空教会軍は一気にシスラ公爵軍に総攻撃、側面をつかれる形になった公爵軍は対処ができず、また上級騎士の一人が総大将であるシスラを討ち取り、戦いは終わる。
シスラ公爵を討ち取った剣がこの剣である。
「……シスラ公爵とは仲が良かった」
竜王は視線を落とし、ぼそりとつぶやく。
「助けてやれないですまなかった……」
竜王は剣刃を優しく撫でる。
その場にいた彼らには聞こえないくらい、小さな声だった。
「ところで、おぬしら、今日は何しにここに?」
「おぉーそうだった! バラック爺さん! 今日も換金をお願いしたいんだ!」
「イッヒヒッ。今日はどんなお宝に会えるのかの」
変な笑いをするなよ気持ち悪い、と心の中で、文句を垂れる。
楽しそうにバラックは自分の仕事机へと向かい、椅子に座ると手招きする。
「さー早く見せたまえ」
「まぁーそう焦らず」
カイは竜王に持ってもらっていた背嚢を返してもらい、机に置く。
バラックは両手をすり合わせて、嬉しそうに背嚢を漁る。
彼のしわしわの手が何かを掴み、背嚢から出す。
「ほぉーこれはー東の国の壺じゃな。それに真珠のネックレス、お、指輪まであるのか」
ゴソゴソと漁るバラックの手が止まる。
背嚢の中から剣の柄が出てきた瞬間、バラックの眉が寄る。
「これは? 刃がないぞ?」
折れた剣に値打ちはつかないことはカイも知っている。
「でも、それ、帝国軍の兵士長が持っていたやつだから高いと思うけど?」
「なるほど。どれどれー」
言われる通りにバラックが柄頭を確認する。
「おー確かに柄頭は金でできておるな」
「だろー。で、いくら?」
「ま、金貨5枚ってところだの」
竜王が驚き声を上げる。
「そんなにするの?!!」
破損品に対して、彼女はせいぜい、銀貨数枚だと思っていたが、予測は見事に外れた。
金はかなり貴重らしく、高値で売買される。
今回は刃の折れた剣で、さらには柄頭だけだったが、金の量がまあまああったようだ。
「この東の国の壺はエストニアの壺だの。まぁ値打ちはないから銅貨3枚、指輪は銀製だから銀貨5枚、真珠のネックレスは真珠の大きさ、サイズから査定して、金貨2枚と銅貨5枚ってとこだな」
「合計で金12枚銀5枚銅5枚か。じゃあ、それでお願いします」
「あいよ。ちょい待っての」
そういうとバラックは足下に隠していた布袋を取り出し、閉じた紐を解き、中身を覗いて確認する。
換金する提示した金額を机の上に置いていく。そのタワーになった金をカイは懐に隠していた革財布に数えながら入れていった。
「これで、全部っと」
カイは懐にしまい込んだ勇者の指輪と腕輪を思い出すと手を入れて出そうとしたが、ふと竜王の視線を感じた。
これは余り見せたくなかったカイは竜王を一瞥したあと思案する。
そして、あることを思いついた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる