盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第二十二話

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 竜王はカイからいろいろ聞かされたもののイマイチわかっていなかったが、とりあえず、厄介な盗賊団がこの一帯に居るということで認識した。

 それから数刻ほど歩いた辺りで、大げさというほどに慎重に進んで行く二人の背中をおもむろに見つめた。

 するとなぜだかわからないが竜王は嫌な予感がした。

 野生の勘というものだろうか。これから何か起きそうな気がしたのだ。

 竜王は思わず苦笑いし、二人に聞こえないようにつぶやく。

「……よくよく考えてみたらこう言うのってあれだ、噂をすればなんとやらだな」

 自分で言った言葉にうんうんと頷く。それにカイが横目で見ながら口を開いた。

「おい、聞こえたぞ、縁起の悪いことを言うなよ」

 どうやらカイに聞かれたようだ。それに驚くことなく、竜王は両手を広げ、肩を上げる。

「フッ。本当のことを言ったまでだ。こういうのはな、大抵、その盗賊に出くわすのが流れになってる」

 そう自慢げに竜王は言う。

「なんの流れだよ、それ。やめろよ。強制的にそっちの方向に持っていくな。それに――――」
「しー」

 竜王が何かに感づき、唇に人差し指を当てる。

「何がしーだよ――――」

 カイが振り返り、一言文句を言おうとしたが、ダルドに呼び止められる。

「アニキ」

 ダルドは歩みを止めると姿勢を低くしたまま、木々の向こう側にある街道の方向を凝視していた。

 何かを見つけると二人にも姿勢を低くするように手で合図を出してきた。

 察したカイはとカイは小声で吐き、ダルドの近くに寄る。

「……マジかよ」

 ダルドはジッと見つめたまま、視線を外さなかった。鉄斧の柄をギュッと握り締める。

「アニキ、前方に見える大岩の傍に男が二人、それと細長い木の下、木陰で休んでいる鎧を着こんだ男が一人……おそらく騎士だ」

 ダルドに言われるように視線先に見える大岩の傍に革の鎧を着た男が二人、その近くにある木の下に騎士風の男が一人、腰を下ろしていた。

 彼らは馬の荷を下ろし、地面に広げる。その場に座り込んで、何かを食べ始めていた。

 酒も手にしている。どうやら休憩中のようだ。

 にしても、魔物がうろつくこんな場所で優雅に昼飯とは彼らの神経を疑う。よっぽど、腕に自信があるか。ただのバカなのか。

 ただ、馬の近くにいる騎士風の男が気になる。

 常に周囲を警戒しているようだ。それだけで手練れだとわかる。
 
 カイはダルドに一瞥し、視線を再び、男たちへ向ける。

「あれ、冒険者とかじゃないのか?」

 装備や身だしなみからして盗賊のようには見えなかった。

「んーここからじゃあよく見えないっすね。近づくのも危険ですし……どうしやすアニキ?」

 近づいて確認するなんてそんなリスクを取る必要性はどこにもなかった。

 そこにいる男が冒険者だろうが、トレジャーズギルドの連中だろうが関係ない。

 カイの答えは一つしかなかった。

「ここはスルーだ。少し遠回りになるが道を変えよう」

 面倒なことに巻き込まれたくない、という思いが強かった。

「ですな」

 ダルドも頷き、同感する。

 二人で行動方針を決め、早速、移動しようとしたがいつの間にか竜王が二人の間に入り、顔を覗き込ませていた。

 気が付かなった二人は驚きの声をあげそうになるが、そこはなんとか押し殺した。

 竜王は視線先の光景に違和感を覚えたのか小首を傾げる。

「ダルド、お前さっき、岩の近くに二人、それに木々の下に一人って言ったよな?」
「あ、あぁ。そうだが?」
「あそこを見てみろ」

 顎で指さす竜王に言われるがままに二人は竜王がいう場所を見た。

 すると騎士風の男の後ろに馬がいた。黒い毛色の馬だ。そう珍しくないしそれだけで特に変わったようには見えない。

 さらによく見てみるとカイはあることに気が付いた。

「……馬が五頭いる」

 馬が五頭いる。それはなにを意味するのか。ダルドが気が付き、目を見開いた。

「あと、二人はどこかに居るぞ」
「まさか?? 予備の馬って事は?」
「だったら同じ数の三頭は用意するだろ……」
「じゃあ……」

 ダルドが竜王を見た。竜王は頷く。

「あぁ。二人いる」
「まずいな、はやく行こう」

 カイも竜王と同じく嫌な予感がした。

 今すぐにこの場を離れないといけない、とそう思った。

 だが、行動するにはすでに遅かったようだ。

 すぐ近くで枝が折れる音がし話し声がしたからだ。

 その話し声がだんだんと大きくなってきているのがわかった。

 何者かがこちらに近づいて来ている。

 生唾を飲んだカイはその場にとどまり、周囲を確認する。

 ここで声を出すと自分たちの居場所がバレると判断したのか、口パクで「身を隠せ」と指示を出した。

 ダルドと竜王は同時に頷き、それぞれ身を隠した。

 ダルドは茂みに身を潜め、カイは横ロールで下草の中に入り込み、地面にぴったりと張り付いた。

 竜王は右往左往して、どこに隠れればいいのか、考えつかず、とりあえず、木の後ろへ隠れた。

 遠くから鎧を着た男と女の二人組が近づいてくる。

「―――――にしても、あまりいい獲物はとれなかったな」

 銅の鎧を着た大男の肩には仕留められた兎が三頭、ロープに吊るされていた。

 弓を使ったのか、矢がまだ刺さっている兎もいる。

 隣にいる同じく銅の鎧姿の女が射ったのだろう。右手に石弓を持っている。

「良い狩場だって聞いたんだがな。がっかりだ」

 彼らは狩りをするためにこの森に入ったようだ。

 装備からして、狩人には見えない。カイが言った通り、冒険者の可能性が高い。

 だが、迂闊に声をかけるわけにはいかないので、二人はそのまま、やり過ごすつもりだった。
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