盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第二十一話

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「同じ人間……」

 人間同士で醜い殺し合いをしていること知っている。遥か昔から彼らは殺し合いをしていた。

 一つの戦いが終われば、またどこかで新たな戦いが始まり、悲劇は繰り返される。

 戦いは終わることを知らないのだ。

 人が集まるところに争いが生まれる。そう、誰かが言っていた。

 今いるこの場所も昔の戦場だった。

 大軍が横隊を組み、槍を揃えて、行軍し、敵と乱戦を繰り広げていた。

 騎兵が突撃をかけ、さらに敵味方が入り混じった。

 緑の奇麗な草原は一瞬で、血で染まり、遺体が散乱した。腐敗した臭いが立ち込め、カラスの餌となる。

 今ではすっかり、森となっているが。

 いくつもの国と文明が滅んだ。

 そんな争いの絶えない世界で、竜王は悲観し、せめて、自分たちだけでも平和に生きようと考えた。

 そして、自分の王国を築いたのだ。

 軽快に鳴らされるラッパ、花吹雪、街中が活気つき、笑い声が絶えない、明るい国だった。

 それを破壊するのが人間―――――やはり愚かな存在だ、とそう思った。

 何かを考え込む竜王にカイは声をかける。

「――――――大丈夫か?」

 はっと我に返った竜王は間抜けた声を出した。

「え?あ、あぁ、大丈夫だ」
「で、なんの話だったけ?」
「盗賊がここに出るって話だ」
「あぁ。そうだった」

 盗賊と聞いて、正直、驚かなかった。どこにでもいるゴロツキだ。

 しかしカイたちの行動を見ると、ただの盗賊にしては警戒し過ぎている。そう疑問に思った。

 何度も辺りを見渡し、街路は避けて進む。頭を低く、警戒しながら背丈ほどある茂みの中に入っていく。

 誰が好んで茂みに入ろうと思うか。

 整備された街路を横目に竜王は眉を寄せ、難しい顔をした。

 カイは竜王が自分たちの行動に対して、疑問に思っているだろうと察した。

「それもただの盗賊じゃないぞ。かなりヤバイ奴らだ」

 かなりやばい、って言われも想像がつかないし怖くもなかった。

「あーなんて言ったか。確か……“ブラック・ホース団”だっけ?」

 うろ覚えだったようで、隣を歩くダルドに問いかける。

「いやいや。それは帝国騎士団の名前で、あの盗賊団の名前は“ブラッド・ホース団”ですよ」
「あ、そうだ。それだ」

 ブラッド・ホース団―――――“血に塗られた馬は大地を駆け抜ける”――――――誰が付けたのかわからないが、そういう通り名があるそうだ。

 その盗賊団は最近になって現れたそうで、有名になっている。田舎の村人ですら、その名を知っている。

 というのもそこらのゴロツキとは違い、団にいるメンバーが異質すぎるからだ。

 彼らは帝国軍から逃げ出した脱走兵や名の知れた傭兵、冒険者崩れ、さらには亡国の騎士までもがいる。

 装備もしっかり揃っていて、腕に自信があるツワモノたちの集まりだ。

 盗賊団の頭はゲランという男だそうだ。名前しかわからず、出身も、年齢も、顔もわからない。わかっているのはそいつが男ということだけだ。

 ゲランが率いる盗賊団の規模はおよそ1000人ほど。正確な人数はわかっていないが、少なくとも一個旅団並みの規模がある。

 それだけで帝国にとって、かなりの脅威になる。

 さらには誰もが戦いを得意としているプロ中のプロで、カイたちのような素人は相手にはならない。

 そんなやつらがすぐ近くにいるかもしれないと思うとどうも腰が弱腰になってしまう。

 弱気に声がもれた。

「……出くわしたくないなぁ……」

 そういって、刀の柄に手が伸び、ダルドも同じく、鉄斧に柄に手を忍ばせた。

「モンスターの方が可愛く見えてくるぜ。まったく」
「どれほどヤバイんだ?」
「あー、あれだ簡単に言うとサイクロプスに真っ裸で出くわすくらい?」
「いや、それ、ぜんぜん、イメージがわかないんだが?」

 竜王は苦笑いで答えた。

「で、そいつらがなんでまた盗賊に? わざわざ犯罪者になる必要があったのか?」

 竜王は疑問に思った。凄腕の兵士や傭兵なら帝国軍に所属している方が利益が大きいと思う。

 帝国ではその者の技量によって支払われる雇用金が違う。

 帝国軍に所属していれば、最悪、敵国の民を殺しても罪に問われないのだ。

 ――――――我が偉大なる帝国と皇帝陛下に対して、仇を名す者には死の制裁を受ける―――――とそんな文言の立て看板と共に帝国に反抗的な者が晒し首となっているのを街路で見かけたことがあった。

 帝国に逆らうとどうなるか、誰もが分かっている。

 軍に所属していないのであれば、恩赦は与えられず、兵士でできていたことができなくなるし、最悪な話、民の食糧や私物を皇帝の名の下に、と言って徴収、没収ということも許されていたが、兵士でなくなれば、その行為は帝国の刑法に触れ、罪となる。

 だから普通に考えれば、軍にいた方が良さそうに思えるが。

 ブラッド・ホース団は他の盗賊団とは少し違うようだ。

 彼らは命を危険にさらして稼ぐより、武器も扱ったことのない商人や旅人を襲った方が稼げる、と思っている。

 確かに彼らの考えは間違っていない。

 まず、狙われるのはトレジャーズギルドのギルドメンバーだろう。彼らが持ち帰る発掘品はかなり高価な物が多いのだ。

 被害が大きくなり始めたくらいからギルド連合はブラッド・ホース団に対し、懸賞金を出す、とおふれを出しているが、誰も名乗りを上げない。

 相手は1000人の集団だ。軍隊でも連れてこない限り、勝てないってことを誰もがわかっている。

 それにブラッド・ホース団は噂では地方貴族であるランボルド男爵の庇護下にあるという噂がある。

 どのような条件なのかは知らないが、ランボルド男爵の領地アルカラに拠点があることはわかっている。

 帝国は治安維持の名目で、討伐軍を派遣したものの、その行為が治安維持を委任されている地方貴族に対しての越権を招くとして、ランボルド男爵が討伐軍が領地に入ることを拒んだのである。

 地方問題に介入してはならない、帝国法でそう定められている以上、例え皇帝でも手が出せないのである。

 もし、越権し、地方問題に介入すると、地方貴族らの不信を買ってしまうことになる。そうなると帝国に対しての忠誠も揺らいでしまう。

 ブラッド・ホース団はそこを狙ったのだろう。

 “帝国は手を出せない” それは彼らの強みである。 

 当然ながら領地に入ることを拒んだランボルド男爵には疑いがかけられている。

 もしかしたらブラッド・ホース団と繋がっているのではないのか? と。しかし、確固たる証拠がない。

 証拠もなく、ランボルド男爵を裁くわけにはいかないのである。

 アルカラは今やブラッド・ホース団の好き放題にできる場所と化していた。

「洗練された兵士を相手にするより、俺たちのようなザコを相手にして、金目の物を奪った方が利口だ。俺ならそうする」
「同感ですぜアニキ。あっしらは、やつらからしたら、リスクの小さいカモですからね」
「なるほど」

 二人が警戒している理由を一応、理解した竜王だった。
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