魔王が勇者~魔女と呼ばれた少女とひきこもり魔王が勇者になって世界を救う??!

飯塚ヒロアキ

文字の大きさ
6 / 52

第六話 炎の中で その3

しおりを挟む
 鋼鉄製の剣を素手で破壊したことに帝国兵らは驚き留まり、少年からの質問に対して考える余裕もなかった。

 しばらくの間、答えを待った黒髪少年だったが進展がないと判断し呆れたように両肩をすくめる。

「……まぁわかるはずないか」

 (―――――こいつらはまったく学ぼうとしないからな。相変わらず、無能だ)

「もういいや。君たち、目障りだから消えてもらおう」

 そうつぶやくと視線を目の前にいる帝国軍の部隊長に向けた。

「面白いものを見せてあげるよ」

 悪魔のような笑みを浮かべたあと右手を突き出す。何をするのかを思った瞬間、少年はささやいた。

「―――“デス・シャドゥー”―――」

 黒髪少年の手から禍々しい黒い霧があふれ出し、力を溜めるように収縮していくと帝国兵士らへ分散して飛んで行った。帝国兵たちはそれがなんなんかはわからなかっが、身の危険を感じ、慌てて剣で斬り払った。しかし、斬っても斬っても分裂するだけで、消えることもなく元の塊に戻るとまるで生き物のように動きを見せた。そして、次々に帝国兵らを真っ黒な霧が飲み込んだ。断末魔が響き渡り、次第に声が小さくなっていき、聞こえなったと思うと黒い霧が飛散していく。

 すると包み込まれていた帝国兵らが脱力するかのように力なくして、バタバタと倒れていった。

 まるで、人形のような命を感じない様子だった。

 黒い霧から免れた帝国兵らが仲間の顔を覗き込む。すると全員、即死しているのがわかった。

 明らかに闇系魔法だと悟った瞬間、帝国兵らに戦慄が走る。

「ば、ばけものッ?!!!」

 それに黒髪の少年の眉が跳ねる。

「その言い方は酷いなぁ。もっと別の呼び方があるだろうに」

 少し怒った表情をした。闇系魔法は人間では使えないことを知っていた一人の兵士がようやく、目の前にいる少年の正体を看破した。

「き、貴様、まさか、魔族かっ??!!」
「ま、魔族?!!」

 帝国兵らが悲鳴じみた声をあげると少年―――ロランは口角を持ち上げた。

「ご名答~君たち気付くの遅すぎ~」

 帝国兵らは勝てないと知ると武器を投げ捨てて一目散に逃げ出していく。自分の正体を知られた以上、逃がすほどロランは甘くはなかった。

 指を鳴らす。

 するとロランの影から次々に漆黒の狼が一匹、二匹、三匹と次々に現れていき、瞬く間に数十匹の群れとなった。

「行け。あいつらを捕食せよ」

 ロランの指示で漆黒の狼たちは遠吠えをしたあと一斉に動き出す。逃げる帝国兵士らの背中に容赦なく襲い、その鋭利な鉤爪で肉を引き裂く。

 足に噛みつき、そのまま振り回しながら嚙みちってみせた。

「た、助けてくれ!!! やめろ!! 来るなぁあぁああああ――――!!!!??」
「ぎゃあぁああああ――――ッ!!!」

 断末魔があちこちで響き渡る。獣が帝国兵を食い散らす惨たらしい光景を目の当たりにしていた少女は口元を手で覆い、えずいた。

 ロランはひと段落ついたと満足げに頷いたあと、少女の方へと視線を向けるとあまりのショッキングな光景に気を失っていることに気が付く。苦笑いした。

「あ、ちょっとやり過ぎたかな」

 さすがに、気絶した少女を燃え盛る街の片隅に放置して立ち去るわけにもいかず、仕方なしにとロランは少女を抱き抱え、帝国軍の増援が来る前にその場をあとにすることにした。


 ♦♦♦♦♦


 リュデンヌ地方の北側にある森の中、月明りが射仕込む放棄された一軒の家屋にロランの姿があった。帝国軍の攻撃を受けたソリアの街からは少し離れた場所で、舗装された道沿いではあったが、誰も通る様子はなかった。

 静寂に包まれ、虫の鳴き声が聞こえてくる。静かな場所だった。

 ロランがいる家屋には人が住んでいた痕跡が残されていた。慌てて出て行ったのか、それとも何者かに襲われたのか。判断はできなかったが何も持っては逃げず、そのままとなっていた。埃被った机、散乱した食器、斜めに傾いたタンス。乱雑に開けられた何かをしまっていたであろう木箱などを見て、激しく散らかっていた。

 ボーっと見つめるロランにとっては、なぜ、そうなったのかなんてどうでもいいことだった。

 ロランは久々に人間の家屋の中を見た。とりあえず、と転がっていた椅子を立て直して、腰掛ける。雨風にさらされた椅子がギジリと軋む。

 それから眠たそうにあくびをする。

 ベッドに寝かせていた少女がようやく気が付いた。

「ここは……」
「ようやく気が付いたね」

 声がした方へと視線を向ける。薄暗い部屋の中で、怪しく光る赤い双眼が自分を真っすぐと見つめていることに恐怖のあまりに全身の鳥肌が立った。

 そして、気を失う前に見た光景を思い出し、少女は飛び起きると悲鳴を上げた。

「きゃあああああ!」
「うるさいな。もぉ~」

 耳元を押さえるロランを見て、人間じみた姿に少女は口を開けたまま固まってしまった。

「一体、あなたは何者なのですか……?」

 震えながら尋ねる少女に対して、ロランは答える。

「何者? 何者か……。あーなんて言えばいいのか。旅人、そう旅人さ」
「旅……人?」
「そっ。僕は世界中を旅してるんだぁ~」

 少女の顔には疑問符しか浮かばない。

「どうして旅をされるのですか?」
「どうして……」

 その質問にロランは答えが見つからなかった。口をパクパクしていると続けて質問が飛んでくる。

「あの……ここはどこですか?」
「どこって……。見ての通り、家だよ。まぁ廃屋だけどね」

 視線をめぐらせた少女は身体を震わせる。何を言うのかと思いきや身体を縮めて両手で自分を覆うようにしながら言う。

「私を……襲うんですか?」
「なんでだよッ!?」

 思わずツッコミを入れてしまい、ロランの声が響いた。

「だって……あなたは闇の魔法を使ってたから……」

 闇魔法を使う人間はそうそういない。いるのはネクロマンサーのような死霊使いか、もしくは魔物だろう。

「あー……えっと、あれは……だな、えーっと、なんて言うのか。ちょっとした手品みたいなものだ、うん」

 ロランの返答を聞いて、疑いつつも少女は少しだけほっとした表情を浮かべた。そして、改めるようにして、その場で正座すると小さく頭を下げた。

「あの、私のような者を助けていただき、ありがとうございました……」

 まるで、自分を卑下したような言い方にロランは不愉快に思ったがそこには触れないことにした。

「いや別に助けたわけじゃない。たまたま通りかかっただけだよ」
「それでも……わたしの命を助けてもらったのですから……」

 ロランは再びため息をつくと面倒くさそうに手を振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...