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第八話 我らが至高なる御方 その2
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人間と魔族、魔物との間のわだかまりはすぐにどうこうできる話ではないため、ここはリベルを遠のけることをロランは考えた。
「リベル、君に周辺の警戒を任せたい。どうも森が騒がしくてね」
ロランは普段は騒がしい森が今日はやけに静寂に包まれていることに違和感を感じていた。
ロランの命令に対して、リベルは真面目な顔で胸に手を当ててお辞儀すると上目遣いで答える。
「我が主様、ご心配には及びません。すでに親衛隊が周辺の安全を確保しております」
「あぁだから静かなのね」
「はい“至るところ”にいます」
「なんか、監視されているような気はしていたんだけど……それか」
「ですので、何かありましたらこのリベルめに報告が来るようにしております」
(――――さすが優秀だ)と心の中で褒める。
すると褒められたことを感じ取ったのか、ドヤ顔で見てきた。褒めてほしいという顔で見つめてくる。
「さ、さすがは僕のリベルだ」
そういうとリベルは頬を赤らめて嬉しそうに頭を下げる。
「ありがたきお言葉。リベル、我が主様のお役に立てたこと、至上の喜びに感じます」
それには思わず、苦笑いしてしまう。「どんだけ、忠誠心高いんだよ」と心からツッコミを入れる。
「あーそろそろ外してくれる?」
わざとらしくあくびをして背伸びをした。
「僕は限界に近いみたいだから」
「かしこまりました。我が主様」
そういうとまたゆっくりと頭を下げると月明りに照らされた壁が作る影に歩み寄ると地面にスーッと沈み込んでいく。
完全にいなくなったことを確認した後、レオは疑問を投げる。
「あなた様は……本当に一体、何者なのですか……?」
それにロランは口端をあげて、ニヤリと笑った。
★★★★★★
翌日のことだった。リュデンヌ地方ソリア街にて帝国軍の部隊とフェレン聖騎士団が街へと向かっていた。
フェレン聖騎士団―――星女神スティーファーを崇め、信仰を広めるための組織である。また、目標がもう一つあり、弱き民を悪しき魔物から守り、平和と安寧をもたらすことだ。厳格であり、そして、有識者でなければ、入団することすら許されないと言われている。そんなフェレン聖騎士団らが崩れた街の門を潜り抜け、歓迎のない街へと入る。どこを見ても街の住民らしき人はおらず、帝国兵ばかりだった。
街道には帝国軍の兵士たちが行き交っている。数日前までは商人や街の人々の陽気な話声がしていたのかもしれないが、今では姿も形もない。帝国軍の補給部隊が到着していたようで、食糧の配給が始まっていた。街道では一仕事を終えた兵士たちであふれかえり、進む道が塞がれている。フェレン聖騎士団に気づいた部隊長らが道を開ける様に指示を出す。
「おい、フェレン聖騎士団だ! 道を開けろ!」
彼らはとある奇妙な報告を受け、調査のためにソリアの街へ訪れていた。
白銀の鎧を身にまとう騎士たち。鎧の真ん中あたりには星の紋章が入っている。フェレン聖騎士らは街の様子を見て、複雑な表情を見せる。彼らは不可侵の誓いを持っており中立な立場を保つため、国家が行うことに対しては口を出すことが禁じられている。彼らは魔物を討伐するための騎士だ。その誓いは決して破ることは許されない。誰もがもどかしい思いをしていても触れることすらできないのである。
壮年の白髪のフェレン騎士が道端に視線を向けた。
家屋は焼け落ち、焦げた臭いが漂っていた。木材は炭のように黒くなり、まだ煙が立ち込めている。そして、折り重なるように転がっている死体を見て視線をそらし小さく声を漏らした。
「なんと惨いことを……」
真横には占領した街を巡回していた帝国軍の兵士たちが隊列を組んで横切っていた。視線がチラリと向けられる。
「ギリオン、口は慎みなさい」
「しかし、騎士長……これはさすがにやりすぎでは……?」
先頭に馬を進める赤髪のロングヘアの女騎士へ疑問を投げかけた。いたるところにソリアの街の人が殺され、女子供も容赦なく、惨殺されている。騎士長とよばれた女騎士も悔しそうな顔をしていたが、フェレン聖教会が定める「不可侵の誓い」を忠実に守ろうとしていた。
「ギリオン、我々の職務はあくまでも“悪しき魔物”から人々を救済することです」
「それは百も承知です。しかし、それは本当に聖騎士と呼べるのでしょうか……」
その疑問に女騎士は目尻でチラリと見るも返す言葉もなく、口をへの字に閉じる。
(――――私だって、分かってるわよ。そんなこと。こんなのは間違ってる)
フェレン聖騎士たちの姿を見た帝国軍の部隊長が駆け寄ってきた。胸に手を当てて帝国式の敬礼をする。それにフェレン聖騎士団の女騎士長が手を挙げて返礼した。
「これはこれは『魔物退治マーガレット』と呼ばれた“マーガレット騎士長殿ではありませんか。わざわざ、こんな辺境な場所までお越しいただくとは」
フェレン聖騎士団にマーガレットあり。いつの間にか、そういわれていた。マーガレットは今年で二十六歳。幼少期から剣術を習い、騎士となった。森を住処にしていたケルベロスをたった一人で殺し、さらにはゴブリンやオークといった魔物を数えきれないほど殺し首をはねた。魔物を殺す。それが彼女は宿命だと思っている。すべての魔物をこの世から消し去るために彼女は剣を持った。血に塗らた身体は常に魔物の臭いが染みついている。
「その言葉、褒め言葉と受けとめてもいいのですか?」
「えぇ、もちろんです。ささ、こちらです」
馬から降りると帝国軍の部隊長があるところへと連れていく。
焼け落ちた教会の前、青空の下にきれいに並べられた帝国兵の死体があった。その数はおおよそ三十体ほど。その光景にはとくに違和感を感じなかった。
戦いがあり、死んだ人間がいて、帝国兵が死んだ。それが何もおかしいことはない。一方的な戦いになったと聞いていた。アンジュ卿の部隊のほとんどはすでに撤退しており、街にはそれを知らされずに取り残された住民がある意味で囮という形になった。アンジュ軍の兵士の死体がないこと気に喰わなかったが、それよりも気になることがあった。マーガレットは眉をひそめる。
「これは……」
はっきりとは見えない。しかし、死んだ兵士の身体になにか黒い霧のようなものが立ち込めているようで、フェレン聖騎士団の騎士らも同じく気づいていた。
「リベル、君に周辺の警戒を任せたい。どうも森が騒がしくてね」
ロランは普段は騒がしい森が今日はやけに静寂に包まれていることに違和感を感じていた。
ロランの命令に対して、リベルは真面目な顔で胸に手を当ててお辞儀すると上目遣いで答える。
「我が主様、ご心配には及びません。すでに親衛隊が周辺の安全を確保しております」
「あぁだから静かなのね」
「はい“至るところ”にいます」
「なんか、監視されているような気はしていたんだけど……それか」
「ですので、何かありましたらこのリベルめに報告が来るようにしております」
(――――さすが優秀だ)と心の中で褒める。
すると褒められたことを感じ取ったのか、ドヤ顔で見てきた。褒めてほしいという顔で見つめてくる。
「さ、さすがは僕のリベルだ」
そういうとリベルは頬を赤らめて嬉しそうに頭を下げる。
「ありがたきお言葉。リベル、我が主様のお役に立てたこと、至上の喜びに感じます」
それには思わず、苦笑いしてしまう。「どんだけ、忠誠心高いんだよ」と心からツッコミを入れる。
「あーそろそろ外してくれる?」
わざとらしくあくびをして背伸びをした。
「僕は限界に近いみたいだから」
「かしこまりました。我が主様」
そういうとまたゆっくりと頭を下げると月明りに照らされた壁が作る影に歩み寄ると地面にスーッと沈み込んでいく。
完全にいなくなったことを確認した後、レオは疑問を投げる。
「あなた様は……本当に一体、何者なのですか……?」
それにロランは口端をあげて、ニヤリと笑った。
★★★★★★
翌日のことだった。リュデンヌ地方ソリア街にて帝国軍の部隊とフェレン聖騎士団が街へと向かっていた。
フェレン聖騎士団―――星女神スティーファーを崇め、信仰を広めるための組織である。また、目標がもう一つあり、弱き民を悪しき魔物から守り、平和と安寧をもたらすことだ。厳格であり、そして、有識者でなければ、入団することすら許されないと言われている。そんなフェレン聖騎士団らが崩れた街の門を潜り抜け、歓迎のない街へと入る。どこを見ても街の住民らしき人はおらず、帝国兵ばかりだった。
街道には帝国軍の兵士たちが行き交っている。数日前までは商人や街の人々の陽気な話声がしていたのかもしれないが、今では姿も形もない。帝国軍の補給部隊が到着していたようで、食糧の配給が始まっていた。街道では一仕事を終えた兵士たちであふれかえり、進む道が塞がれている。フェレン聖騎士団に気づいた部隊長らが道を開ける様に指示を出す。
「おい、フェレン聖騎士団だ! 道を開けろ!」
彼らはとある奇妙な報告を受け、調査のためにソリアの街へ訪れていた。
白銀の鎧を身にまとう騎士たち。鎧の真ん中あたりには星の紋章が入っている。フェレン聖騎士らは街の様子を見て、複雑な表情を見せる。彼らは不可侵の誓いを持っており中立な立場を保つため、国家が行うことに対しては口を出すことが禁じられている。彼らは魔物を討伐するための騎士だ。その誓いは決して破ることは許されない。誰もがもどかしい思いをしていても触れることすらできないのである。
壮年の白髪のフェレン騎士が道端に視線を向けた。
家屋は焼け落ち、焦げた臭いが漂っていた。木材は炭のように黒くなり、まだ煙が立ち込めている。そして、折り重なるように転がっている死体を見て視線をそらし小さく声を漏らした。
「なんと惨いことを……」
真横には占領した街を巡回していた帝国軍の兵士たちが隊列を組んで横切っていた。視線がチラリと向けられる。
「ギリオン、口は慎みなさい」
「しかし、騎士長……これはさすがにやりすぎでは……?」
先頭に馬を進める赤髪のロングヘアの女騎士へ疑問を投げかけた。いたるところにソリアの街の人が殺され、女子供も容赦なく、惨殺されている。騎士長とよばれた女騎士も悔しそうな顔をしていたが、フェレン聖教会が定める「不可侵の誓い」を忠実に守ろうとしていた。
「ギリオン、我々の職務はあくまでも“悪しき魔物”から人々を救済することです」
「それは百も承知です。しかし、それは本当に聖騎士と呼べるのでしょうか……」
その疑問に女騎士は目尻でチラリと見るも返す言葉もなく、口をへの字に閉じる。
(――――私だって、分かってるわよ。そんなこと。こんなのは間違ってる)
フェレン聖騎士たちの姿を見た帝国軍の部隊長が駆け寄ってきた。胸に手を当てて帝国式の敬礼をする。それにフェレン聖騎士団の女騎士長が手を挙げて返礼した。
「これはこれは『魔物退治マーガレット』と呼ばれた“マーガレット騎士長殿ではありませんか。わざわざ、こんな辺境な場所までお越しいただくとは」
フェレン聖騎士団にマーガレットあり。いつの間にか、そういわれていた。マーガレットは今年で二十六歳。幼少期から剣術を習い、騎士となった。森を住処にしていたケルベロスをたった一人で殺し、さらにはゴブリンやオークといった魔物を数えきれないほど殺し首をはねた。魔物を殺す。それが彼女は宿命だと思っている。すべての魔物をこの世から消し去るために彼女は剣を持った。血に塗らた身体は常に魔物の臭いが染みついている。
「その言葉、褒め言葉と受けとめてもいいのですか?」
「えぇ、もちろんです。ささ、こちらです」
馬から降りると帝国軍の部隊長があるところへと連れていく。
焼け落ちた教会の前、青空の下にきれいに並べられた帝国兵の死体があった。その数はおおよそ三十体ほど。その光景にはとくに違和感を感じなかった。
戦いがあり、死んだ人間がいて、帝国兵が死んだ。それが何もおかしいことはない。一方的な戦いになったと聞いていた。アンジュ卿の部隊のほとんどはすでに撤退しており、街にはそれを知らされずに取り残された住民がある意味で囮という形になった。アンジュ軍の兵士の死体がないこと気に喰わなかったが、それよりも気になることがあった。マーガレットは眉をひそめる。
「これは……」
はっきりとは見えない。しかし、死んだ兵士の身体になにか黒い霧のようなものが立ち込めているようで、フェレン聖騎士団の騎士らも同じく気づいていた。
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