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「っぶっくく、クックックッ!」
「……いつまで笑ってるんだ、ワーグナー」
男からプロポーズされるという衝撃的な出来事から数日後、俺は侯爵邸に向かうべく馬車に揺られている。
思い出し笑いが止まらない目の前の男は、ワーグナー・シルス。俺の護衛兼侍従。母親が乳母だったから同い年の乳兄弟というやつで、気の置けない関係だ。
「っはぁー!何回思い出しても笑える。あのっ、宰相がっ、提案書や使えない部下をバッサバッサ切る魔王スピナーがっ、観測史上最低のクソクズ王子にプロポーズしたなんてっっ」
「宰相のむ・す・めっな!」
俺にプロポーズした男は、ロバート・スピナー侯爵。我が国の宰相で、自分にも他人にも厳しい仕事人間。国の政権を長年牛耳っているとこから、魔王と呼ばれている。
あのプロポーズは本当は「私(の娘)と結婚してください」と言うつもりだったのだが、娘を溺愛しているあまり言いたくなさすぎて噛んでしまったらしい。
「まあまあ、お陰であの部屋の空気が和んで助かったじゃないか」
「父上達は大爆笑だったけどな。俺は辱しめられた気分だったわ……」
「しっかし、まさかアレンが魔王の婿養子になるとはな。娘を溺愛しているって噂は本当らしいし、相手に選ばれるって、そんなに気に入られてたのか?」
「それなんだよなー、俺宰相には小言しか言われた覚えないんだけど。自分で言うのもあれだが、大事な娘とクズ男を結婚させようとする親なんて普通いないだろ?だから23歳の今まで婚約者一人いなかったんだから」
「宰相の娘。情報いる?」
「はぁー調べてると思った。お前なら」
ワーグナーは情報屋とパイプがあり、どんな人物の情報でも大抵すぐ調べてくる。だから今まで大きなトラブルもなく、女性達と関係が持てたのだ。俺だってむやみやたらに手を出してる訳じゃない。……本当だ。
あの夜はたまたまワーグナーが護衛から外れていた。だからアシャの側妃と気づかずに……
「リリアナ・スピナー。18歳。身長153cm。容姿は……すぐ見れるから省略。11歳から16歳まで五年間、体調を崩し領地に引きこもり療養していたらしい。」
「えっ?五年も?」
「あぁ、領地は北部の大公領の隣だからかなり辺境だな。そのせいか、その間の様子は分からなかった」
「今は病は完治しているのか?」
「医師の診察では問題ないそうだ。ただ、長い間世間から離れていたせいか人見知りが激しいようで、社交界デビューはしていない。」
「そうか……わかったぞ!!」
「ん?」
「つまり、リリアナ嬢は人前に出せない程の容姿でコミュ症って事だな!だからコミュ力お化けでクズの俺なら妻として扱ってくれるとでも思ったんだろ」
「えーと」
「大丈夫だ。女性は中身が大事だからな。ふわふわのおっぱいかお尻があれば愛でれるさ……」
「そんな悟った顔するなよ……」
(容姿も伝えるべきだったか?まぁ、おもしろいからいいか)
ガタンッ
侯爵邸に着いたようだ。
「よし、いくぞ」
「はい、殿下」
俺は侍従モードに入ったワーグナーを伴って、馬車を降りた。
「アレン第3王子殿下にご挨拶申し上げます」
ザッと音がしそうなほど、宰相父娘と大勢の使用人が仰々しく迎えてくれた。
「顔を上げてくれ、出迎え感謝する」
すると、見慣れた黒髪翠眼の男が一歩出た。ロバート・スピナー宰相だ。王宮で見るより軽装で、少し柔らかい表情をしている。
「殿下、ご足労いただきありがとうございます。こちらが我が娘のリリアナでございます」
心底愛しいという声色でリリアナ嬢を促す。
「お初にお目にかかります。スピナー侯爵家長女、リリアナと申します」
ふわふわのおっぱい……じゃなくて、ミルクティーベージュのふわふわロングヘアー。宰相と同じ新緑の様な翠眼。プルンとした唇……
小さく華奢な体でカーテシーをしている姿は神々しい……
「あれ?俺死んだ?……目の前に天使いる……」
「死んでませんよ。でも早く挨拶しないと隣の魔王に殺されますよ」
「……いつまで笑ってるんだ、ワーグナー」
男からプロポーズされるという衝撃的な出来事から数日後、俺は侯爵邸に向かうべく馬車に揺られている。
思い出し笑いが止まらない目の前の男は、ワーグナー・シルス。俺の護衛兼侍従。母親が乳母だったから同い年の乳兄弟というやつで、気の置けない関係だ。
「っはぁー!何回思い出しても笑える。あのっ、宰相がっ、提案書や使えない部下をバッサバッサ切る魔王スピナーがっ、観測史上最低のクソクズ王子にプロポーズしたなんてっっ」
「宰相のむ・す・めっな!」
俺にプロポーズした男は、ロバート・スピナー侯爵。我が国の宰相で、自分にも他人にも厳しい仕事人間。国の政権を長年牛耳っているとこから、魔王と呼ばれている。
あのプロポーズは本当は「私(の娘)と結婚してください」と言うつもりだったのだが、娘を溺愛しているあまり言いたくなさすぎて噛んでしまったらしい。
「まあまあ、お陰であの部屋の空気が和んで助かったじゃないか」
「父上達は大爆笑だったけどな。俺は辱しめられた気分だったわ……」
「しっかし、まさかアレンが魔王の婿養子になるとはな。娘を溺愛しているって噂は本当らしいし、相手に選ばれるって、そんなに気に入られてたのか?」
「それなんだよなー、俺宰相には小言しか言われた覚えないんだけど。自分で言うのもあれだが、大事な娘とクズ男を結婚させようとする親なんて普通いないだろ?だから23歳の今まで婚約者一人いなかったんだから」
「宰相の娘。情報いる?」
「はぁー調べてると思った。お前なら」
ワーグナーは情報屋とパイプがあり、どんな人物の情報でも大抵すぐ調べてくる。だから今まで大きなトラブルもなく、女性達と関係が持てたのだ。俺だってむやみやたらに手を出してる訳じゃない。……本当だ。
あの夜はたまたまワーグナーが護衛から外れていた。だからアシャの側妃と気づかずに……
「リリアナ・スピナー。18歳。身長153cm。容姿は……すぐ見れるから省略。11歳から16歳まで五年間、体調を崩し領地に引きこもり療養していたらしい。」
「えっ?五年も?」
「あぁ、領地は北部の大公領の隣だからかなり辺境だな。そのせいか、その間の様子は分からなかった」
「今は病は完治しているのか?」
「医師の診察では問題ないそうだ。ただ、長い間世間から離れていたせいか人見知りが激しいようで、社交界デビューはしていない。」
「そうか……わかったぞ!!」
「ん?」
「つまり、リリアナ嬢は人前に出せない程の容姿でコミュ症って事だな!だからコミュ力お化けでクズの俺なら妻として扱ってくれるとでも思ったんだろ」
「えーと」
「大丈夫だ。女性は中身が大事だからな。ふわふわのおっぱいかお尻があれば愛でれるさ……」
「そんな悟った顔するなよ……」
(容姿も伝えるべきだったか?まぁ、おもしろいからいいか)
ガタンッ
侯爵邸に着いたようだ。
「よし、いくぞ」
「はい、殿下」
俺は侍従モードに入ったワーグナーを伴って、馬車を降りた。
「アレン第3王子殿下にご挨拶申し上げます」
ザッと音がしそうなほど、宰相父娘と大勢の使用人が仰々しく迎えてくれた。
「顔を上げてくれ、出迎え感謝する」
すると、見慣れた黒髪翠眼の男が一歩出た。ロバート・スピナー宰相だ。王宮で見るより軽装で、少し柔らかい表情をしている。
「殿下、ご足労いただきありがとうございます。こちらが我が娘のリリアナでございます」
心底愛しいという声色でリリアナ嬢を促す。
「お初にお目にかかります。スピナー侯爵家長女、リリアナと申します」
ふわふわのおっぱい……じゃなくて、ミルクティーベージュのふわふわロングヘアー。宰相と同じ新緑の様な翠眼。プルンとした唇……
小さく華奢な体でカーテシーをしている姿は神々しい……
「あれ?俺死んだ?……目の前に天使いる……」
「死んでませんよ。でも早く挨拶しないと隣の魔王に殺されますよ」
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