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第三章
我恋歌、君へ。第三部 7:披露
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翌朝は混雑を避けて早めにホテルをチェックアウトすることになっており、まだ眠気が抜けきらないままロビーに集合した。
欠伸をする俺と神音に気づいて、松木さんが苦笑しながら話しかけてきた。
「お二人とも昨日は楽しめた様子ですね」
「あぁー……うん。まぁね、ぼくたちは所詮、音楽狂だと痛感した休日だったかな」
半眼のまま神音が何とも微妙な返答をして、最後尾にいた文月さんが小さく笑った。
「それは羨ましい。好きなことが仕事につながっているとは幸せなことです」
「……ところでヤッシーたちはまだですか?」
松木さんへ肩をすくめるだけで返答をしなかった神音に代わり、文月さんが質問をしたところで、ロビーへエレベーターが下りてきて、ふたりが姿を現した。
アレンさんの様子はかなり回復したようで、まっすぐ立って危なげなく歩いてくる。
(良かった……思ったより元気そう)
安心したのがバレたのか、近くまで来たアレンさんが目を細めて笑い、俺の頭にぽんと手を載せた。
「昨日はありがとうね。お粥とゼリーも美味しかったよ」
「よ、良かったです……すみません、それくらいしか出来なくて」
松木さんが何度もアレンさんの体調を確認したけれど、昨日が嘘のような回復ぶりで心配のしすぎと苦笑いしていた。
こうして全員が揃うと、松木さんが出発を告げ、すぐにホテルを後にした。
公演は今日を含めて残り二日。
長かったようで短かったツアーがもうすぐ終わりなんだと、ここに来て少しずつ実感できるようになってきた。
「さぁて、今日も張り切って行きましょうか」
リーダーが先に車を下りて、会場へ歩いて行く。その後について行こうとしたら、早朝にも関わらず、十人以上のファンが待っているのが見えた。
(えぇっ、ライブは夕方からだよ?)
早く入ってくれていたスタッフたちがファンを止める背後を通り、通用口から中に入る。
その間声をかけられるのはもちろん、俺以外のメンバーたちだ。
「ありがと。まだ時間があるけど、待ちくたびれて本番でダウンしないようにね」
きらきら笑顔でアレンさんがファンへ向けて手を振れば、黄色い歓声が上がり、文月さんがガッツポーズをとってみせるとまたひとつ歓声が上がる。
「今日もみんな可愛いね。愛してる」
俺の横で神音がウィンクすると、こちらでも甲高い悲鳴がした。
(何でそう、さらっと言えるかなぁ)
聞いている俺の方が恥ずかしくなって、被っていた帽子を深く被り直し、すごすごと通用口へ急いだ。
用意された楽屋に入ると、こちらにもファンからの差し入れや手紙が入った袋がいくつも置かれていた。
「これまでの会場でいただいたものです。すべてチェックしてからお渡ししますので、お時間をいただきました。どうぞ、みなさんへ向けての差し入れやお手紙はこちらに。個別のものは各々の鏡の前です」
「わぁっ……毎回思うんだけど、聞いてくれるだけでもうれしいのに、こうしてもらえるとぼくたち愛されてるなって実感するよ」
真っ先に自分の分が置かれたコーナーに駆け寄り、スツールに腰をかけた神音が目を輝かせながら紙袋を覗きこむ。
八代さんは贈り物の山を前に目を丸くしている。
「せやけど、デビュー前より多くなってるやん。無理してへんやろか?」
「そうですね……気持ちはうれしいのですが、ライブに来てもらうだけでも負担をかけていますから」
『i-CeL』のファンの多くを学生が占めていると富岡さんから聞いたことがある。
だから文月さんもうれしい反面、心配しているようだ。
「重々ありがたみを噛みしめておきなさいよ、みなさん」
アレンさんもスツールに腰掛け、一番上にあった手紙を手に取り開く。
新参者には関係がないと思いながら、俺に用意された場所へ歩いて行くと、驚いたことにテーブルの上に小さいながら手紙と差し入れが山を築いていた。
「…………」
これは夢かもしれない。何しろ早起きしたし、途中でサンドイッチを購入したものの、朝ご飯を食べていないから低血糖で幻を見ているんだ、と現実逃避をする。
それくらい俺にとっては信じられないことだった。
「おっ、それいま流行りのブランドの箱だ。何がもらえたのか、開けてみなよ」
「……え、でも……間違えたのかもしれないし……」
となりからひょいっと覗きこんできた神音が、目を輝かせたまま催促してくる。
「間違えるとかないって。ほら、ちゃんとメッセージカードも付けてくれてんじゃん」
パステルブルーの箱には、透ける素材のリボンが美しく結ばれて、折り畳んだ状態のメッセージカードが添えられている。
何度も神音に催促されながら、震える手を伸ばしてそのカードを開いてみる。
可愛らしい丸っこい文字で、一番上にキョウさまへと綴られていた。
「ほら間違いじゃなかったでしょ」
「……うん」
はじめてファンからもらった贈り物に、心臓がばくばく鳴り響いて、手の震えがなかなか治まらなかった。
ライブが終わってから開けようかなとも思ったけど、先に開けてあげなよと神音に言われてリボンを解いた。
中身を確認されたのなら、一度解かれたリボンなんだろうけれど。
「……うわ……」
これから日差しが厳しくなるので、と選んで贈ってくれたのは帽子だった。
覗いていた神音がひゅぅ、と口笛を吹く。
「かっこいいじゃん! 響に似合いそう。さっすがファンの子の審美眼は狂いがないね!」
「……に、似合うかな、これ……」
「何をうろたえてんの。せっかくくれたんだから、活用してあげないと失礼だよ。ささ、試着してみなさいって」
神音が横から肘でつついて催促する勢いは止まらず、仕方がないなぁと箱に手を入れて帽子をそっと持ち上げる。
日よけを兼ねているから、つばが広めの黒い帽子はシンプルに見えるけれど考えて作られているようだった。
一部が通気性のいい素材で作られているから、ずっと被っていても蒸れにくくて快適そうだ。
サイズも後頭部の調節部分で多少変えられるようで、ちょうどよくフィットする。
「うん、よく似合ってるよ」
「そう?」
「ねぇそれ、今夜被って歌ってあげたら? もしかしたら見に来てくれるかもしれないし」
「……えぇ?」
勝手に衣装に手を加えていいのだろうか。神音の主張に慌てて松木さんを振りかえると、やりとりを聞いていた松木さんは少し首を傾げた。
「どうでしょう……キョウさんはどうしたいと思いますか?」
あらためて聞かれると戸惑い、予想外のことだらけで、思考が追いつかない。
「……えっと……できれば、そうしたいです」
「わかりました。確認してきます」
にこっと笑顔で頷いて、松木さんが確認の電話をして間もなく、許可が下りたと教えてくれた。
最初の衣装に追加された帽子をそっとテーブルに置いて、まだ強く鳴り続けている胸に手を当てて深く息を吸いこむ。
(いつもより緊張してる……)
予想外の贈り物がさらに拍車をかけているようで、どれだけ深呼吸しても手が震えて汗ばんだままだ。
まずは朝食をとりながら、ミーティングをはじめましょうと松木さんの声が聞こえて、目を開く。
最終スケジュールの確認と、注意点などなど。松木さんや主だったスタッフを交えてのミーティングを終えると、それぞれウォーミングアップとリハーサルへ移行した。
それぞれ担当の場所へスタッフが散っていく中、松木さんを捕まえて俺と神音は廊下に出て、昨日やると決めたことを伝えた。
話を聞いているうちに、松木さんの目が丸くなっていく。
「……だめ、でしょうか?」
その表情に不安を覚えて、つい小声で呟くと首を少し左右に振ってから、松木さんはにこりと笑った。
「私が判断できる内容ではありません。しかし富岡プロデューサーが許したのであれば、間違いはないでしょう。私は必要なことを為すだけです」
関係各所には手配しておきます、と松木さんが引き受けてくれて、軽く一礼してから忙しそうに小走りで去って行った。
本当はミーティング中に打ち明けたかったんだけど、アレンさんが重荷に感じて欲しくないから、メンバーの前では言えなかったんだ。
楽屋に戻って体を解しながら、それとなくアレンさんを確認していると、いつもより休憩を挟む回数が多いくらいで、他に変わった様子はない。
トイレに立った八代さんを追いかけて聞いてみたところ、明け方には平熱に下がっていたらしい。
(大丈夫だよね……たぶん)
他人を心配する余裕はないものの、やっぱり昨日の今日ではと不安は残る。
長い廊下へ出て黙々とアップしながら、パンッと頬を叩いた。
(いまこそ、しっかりしなきゃ)
神音と文月さんも交えて、昨日一日で仕上げた作戦が吉と出るか、凶と出るかわからない。
だけど神音が言ったとおり、こんな時だからこそやる価値があるのだろう。
(良くも悪くも、今日が一番の勝負どころだ)
夜遅くまで仕上げに時間を使ったおかげで、睡眠時間は大幅に減ってしまった。
褒められたことじゃないとわかっていたけれど、ここで手を抜いたらこの先がないと思ったんだ。
だから本番の数時間前に、ある程度の用意を終えたところで、眠気が限界を超えた。
中央のソファに座ったらとなりに神音がいて、はじめは欠伸をこらえながらそこにいたんだけど、神音がコテンと頭を俺の肩に乗せて眠ってしまい、つられて俺も眠気に負けて目を閉じる。
「……余裕やなぁ……神音はともかく、響ちゃんまで……」
ガクガク震えながら八代さんが羨ましそうに呟く声が聞こえた。
どれくらいそうしていたのか、ふっと意識が浮上したのは何となくどこかで嗅いだことのある匂いを感じたからだ。
まだ重いまぶたを持て余しながら、周囲を見渡すと衣装に着替えたアレンさんが歩いて行く後ろ姿が見えた。
(……まさか、起こそうとしてくれたのかな)
本番が近くなったのかと慌てて体を起こすと、神音の頭が滑り落ちた。その勢いで目が覚めたらしい神音が、むにゃむにゃ何かを呟きながら目を擦っている。
「あれ……まだ時間残ってるじゃん」
時刻を確認した神音が少し残念そうに言う。寝足りないんだろうけど、立ちあがって伸びをしはじめた神音に習って俺も肩を回して緊張を解していく。
そうしている間にも時間は過ぎていく。
「響、気持ちの整理は大丈夫だよね?」
「うん。後はやるしかないって感じ」
「心配しなくても、昔と同じ気持ちで楽しめばいいさ」
神音がこそっと小声で確認してきたので、笑顔で頷く。緊張してはいるし、不安も晴れることはない。だけど刻々と本番は近づいており、逃げ出すつもりもないのなら、後はただ歌うしかない。
(願わくば、笑顔でステージを下りられますように)
衣装を身につけ、メイクとヘアスタイルを整えてもらい、片平響から『i-CeL』のキョウへと変貌を遂げた姿を鏡に映し、その前に置かれていた帽子を最後に被る。
ついにライブ開始の声が告げられ、いつものようにメンバー全員で手を揃えながら、高まる緊張に震えていた。
セットリストは基本的にどの公演場所も似通っていたけれど、細かい違いはある。
例えば三曲目はお客さんの反応を見て、臨機応変に対応できるように三パターン用意されていた。
(今夜は三番目のパターンかな……)
横目で神音を確認すると、小さく頷いて指を三本立てている。
これはあまりお客さんの反応が良くない場合に用意されていたパターンだった。
スタッフにも意思は伝わったようで、三曲目の演奏に合わせて照明が切り替わる。
『i-CeL』ファンの中で人気が高いと言うこの曲で、一気にテンションを引き上げてから、次の曲へと小話を挟んで突入する。
ここまでで一番の規模を誇るステージは広く、観客との距離も少し遠ざかったようだ。
公演が進むにつれて、心理的な距離は縮まり、はじめが嘘のように一体感を覚えて歌うことができた。
心配していたアレンさんもここまでは順調で、いよいよ折り返し地点だ。
(……もう、なるようになれっ)
照明が絞られ、俺と神音だけを照らす。
予定とは違う進行に背後で戸惑っている気配を感じる。
事情を知っている文月さんがフォローしてくれたようだけれど、ざわざわと落ち着かない様子が伝わってくる。
そんな中で、俺は神音と目を見交わして頷いた。
ステージを下りていくメンバーたちのかすかな物音を聞きながら、マイクを握り直す。
「今夜はわざわざ会場に足を運んでくれて、ありがとう。とても感謝しています。昨夜生まれたての新曲を、せめてものお礼に変えて演奏します。聞いてください」
言い終えても明りが戻らないステージに不安を感じたのか、観客の拍手もまばらだった。
構わず俺と神音は一礼してから、神音の指が先に音を奏ではじめる。
本当はグランドピアノで演奏したがった神音だけど、さすがに一瞬でセットできる方法はない。
キーボードで代用する神音が奏でる音を聞きながら、一瞬懐かしい気分になった。
いつもピアノの前に座り、練習熱心だった神音の背中を思い出して、いまここで演奏に歌を合わせることができることに不思議な心地になりながら歌いだす。
神音の伴奏だけで歌う。
こっそり神音と夜の街にくり出して歌っていたのはこの為だった。
少なくとも一曲分、アレンさんの負担は減り、そして俺の実力が試される。
俺にとっては勝負の一曲だけど、昨日神音と曲を仕上げながら感じたこと、そしていま歌いながら思うことは楽しさだった。
まだ純粋に歌うことを楽しんでいた幼い頃、神音と遊んでいた頃の気持ちが戻ってきたみたいだ。
どこまでも神音の音と俺の声が融合して、世界が広がっていくようだった。
幼い子どもが遊んでいる姿を見て、思わず微笑んでしまう人は多い。俺たちにとってピアノに合わせて歌うことが遊びだった時期があったことを思い出し、聞いている人たちに微笑みたくなるようなあったかい気持ちになって欲しいと、神音の伴奏で歌うことを思いついたのだった。
(どうかな……あったかい気分が伝わってくれるだろうか……)
俺の案を聞いてすぐさま賛同した神音は、ならば曲にもこだわりたいと言って、あの日から曲を作ってくれていた。
神音に比べると難産体質な俺の作詞は、ギリギリ何とか間に合わせた感じだけど、いままでにないほど優しく、けれど激しさも秘めた曲に仕上がった。
歌い終わって、ピアノの余韻が消えるまで楽しかったけれど、演奏が終わって沈黙する客席と相反するように、鼓動がどんどん音を大きくしていく。
まだステージに立っていると言うのに、一瞬で素の片平響に戻ったような心地になり、体が震えだした。
「響っ」
神音が名前を呼ぶ小さな声に我に返って、強張った体で一礼する。
ステージを下りようとした時、ぱらぱらとまばらな拍手が聞こえた。
聞き間違いかな、と止めかけた足をもう一度動かそうとしたら、重なった拍手が大きなうねりになって湧きあがった。
(よかった……)
満足してくれたかはわからないけれど、反感を買ったりはしなかったようだ。
ほっと息を吐き出し、もう一度頭を下げてから神音とステージを駆け下りた。
楽屋に戻り、急いでアンコール用の衣装に着替えていると、先に戻っていた八代さんたちに羽交い絞めにされた。
「こらっ! また、しでかしてくれたなっ!」
「ぐっ……ヤッシー……苦し……」
神音の首に腕を回して、軽く絞めあげている八代さんは上気した顔のまま、本当にうれしそうににかっと笑っていた。
俺を羽交い絞めにしているのはアレンさんで、泣きたいような笑っているような、複雑な表情をしている。
「……アレンさん?」
「はぁ~、まったくもう……響くんはちょくちょく、オレたちの度肝を抜いてくれるよね……あらためて惚れ直しちゃったなぁ~」
「な、ななにを言ってるんですかっ!」
じたばた手足を動かして暴れてみるけれど、アレンさんの腕は緩まなかった。
文月さんが腕組みをして、うんうんと頷きながら俺たちを眺めている。
「提案を聞いた時はどうなるかと思いました。しかし成功させましたね、神音、響君」
グッジョブ。文月さんが親指を立てて俺たちを労ってくれた。
俺と神音がメンバーに相談せずに行ったことなのに、文句を言わず受け入れてくれたことにまず安心して、少しずつやり遂げたんだと実感が追いついてくる。
汗を拭い、衣装を着替えて水分を補給していると楽屋に富岡さんが入ってきたのが見えた。
「富岡さん?」
いつも通りの無表情をほんの少し和ませて、富岡さんが俺と神音の頭を撫でた。
「面白いことをすると神音から連絡を受けてな。様子を見に駆けつけてみれば……まったくよく考えたものだ」
「ぼくじゃなくて、響のアイディアだよ。それに本当はもう少し披露目は先かなって思ってたんだけどね。予想より仕上がりが早かったし、響も良い感じに覚悟決めてくれてたからね。勢いでやっちゃったよ」
神音は許可をもらったと言っていたけれど、ファンに粋がっていると不快に受け取られることもあった行動を、よく許してくれたなと思いながら俺は頭を下げた。
「ありがとうございました」
「……おまえ次第でいかようにも転ぶことを、少しは自覚できたか? 出し惜しみしていたらあっという間にファンは目を反らしてしまうぞ。本当はこんなことができるんだよ、すごいだろうと内心で思っているだけでは、だれにも気づかれはしないものだ」
富岡さんはちらっと腕時計を確認して、ステージを指差した。
「そろそろ行け。待っているぞ」
「はいっ」
その後は予定通りに全力で演奏をして歌い、公演が無事に終了した。
欠伸をする俺と神音に気づいて、松木さんが苦笑しながら話しかけてきた。
「お二人とも昨日は楽しめた様子ですね」
「あぁー……うん。まぁね、ぼくたちは所詮、音楽狂だと痛感した休日だったかな」
半眼のまま神音が何とも微妙な返答をして、最後尾にいた文月さんが小さく笑った。
「それは羨ましい。好きなことが仕事につながっているとは幸せなことです」
「……ところでヤッシーたちはまだですか?」
松木さんへ肩をすくめるだけで返答をしなかった神音に代わり、文月さんが質問をしたところで、ロビーへエレベーターが下りてきて、ふたりが姿を現した。
アレンさんの様子はかなり回復したようで、まっすぐ立って危なげなく歩いてくる。
(良かった……思ったより元気そう)
安心したのがバレたのか、近くまで来たアレンさんが目を細めて笑い、俺の頭にぽんと手を載せた。
「昨日はありがとうね。お粥とゼリーも美味しかったよ」
「よ、良かったです……すみません、それくらいしか出来なくて」
松木さんが何度もアレンさんの体調を確認したけれど、昨日が嘘のような回復ぶりで心配のしすぎと苦笑いしていた。
こうして全員が揃うと、松木さんが出発を告げ、すぐにホテルを後にした。
公演は今日を含めて残り二日。
長かったようで短かったツアーがもうすぐ終わりなんだと、ここに来て少しずつ実感できるようになってきた。
「さぁて、今日も張り切って行きましょうか」
リーダーが先に車を下りて、会場へ歩いて行く。その後について行こうとしたら、早朝にも関わらず、十人以上のファンが待っているのが見えた。
(えぇっ、ライブは夕方からだよ?)
早く入ってくれていたスタッフたちがファンを止める背後を通り、通用口から中に入る。
その間声をかけられるのはもちろん、俺以外のメンバーたちだ。
「ありがと。まだ時間があるけど、待ちくたびれて本番でダウンしないようにね」
きらきら笑顔でアレンさんがファンへ向けて手を振れば、黄色い歓声が上がり、文月さんがガッツポーズをとってみせるとまたひとつ歓声が上がる。
「今日もみんな可愛いね。愛してる」
俺の横で神音がウィンクすると、こちらでも甲高い悲鳴がした。
(何でそう、さらっと言えるかなぁ)
聞いている俺の方が恥ずかしくなって、被っていた帽子を深く被り直し、すごすごと通用口へ急いだ。
用意された楽屋に入ると、こちらにもファンからの差し入れや手紙が入った袋がいくつも置かれていた。
「これまでの会場でいただいたものです。すべてチェックしてからお渡ししますので、お時間をいただきました。どうぞ、みなさんへ向けての差し入れやお手紙はこちらに。個別のものは各々の鏡の前です」
「わぁっ……毎回思うんだけど、聞いてくれるだけでもうれしいのに、こうしてもらえるとぼくたち愛されてるなって実感するよ」
真っ先に自分の分が置かれたコーナーに駆け寄り、スツールに腰をかけた神音が目を輝かせながら紙袋を覗きこむ。
八代さんは贈り物の山を前に目を丸くしている。
「せやけど、デビュー前より多くなってるやん。無理してへんやろか?」
「そうですね……気持ちはうれしいのですが、ライブに来てもらうだけでも負担をかけていますから」
『i-CeL』のファンの多くを学生が占めていると富岡さんから聞いたことがある。
だから文月さんもうれしい反面、心配しているようだ。
「重々ありがたみを噛みしめておきなさいよ、みなさん」
アレンさんもスツールに腰掛け、一番上にあった手紙を手に取り開く。
新参者には関係がないと思いながら、俺に用意された場所へ歩いて行くと、驚いたことにテーブルの上に小さいながら手紙と差し入れが山を築いていた。
「…………」
これは夢かもしれない。何しろ早起きしたし、途中でサンドイッチを購入したものの、朝ご飯を食べていないから低血糖で幻を見ているんだ、と現実逃避をする。
それくらい俺にとっては信じられないことだった。
「おっ、それいま流行りのブランドの箱だ。何がもらえたのか、開けてみなよ」
「……え、でも……間違えたのかもしれないし……」
となりからひょいっと覗きこんできた神音が、目を輝かせたまま催促してくる。
「間違えるとかないって。ほら、ちゃんとメッセージカードも付けてくれてんじゃん」
パステルブルーの箱には、透ける素材のリボンが美しく結ばれて、折り畳んだ状態のメッセージカードが添えられている。
何度も神音に催促されながら、震える手を伸ばしてそのカードを開いてみる。
可愛らしい丸っこい文字で、一番上にキョウさまへと綴られていた。
「ほら間違いじゃなかったでしょ」
「……うん」
はじめてファンからもらった贈り物に、心臓がばくばく鳴り響いて、手の震えがなかなか治まらなかった。
ライブが終わってから開けようかなとも思ったけど、先に開けてあげなよと神音に言われてリボンを解いた。
中身を確認されたのなら、一度解かれたリボンなんだろうけれど。
「……うわ……」
これから日差しが厳しくなるので、と選んで贈ってくれたのは帽子だった。
覗いていた神音がひゅぅ、と口笛を吹く。
「かっこいいじゃん! 響に似合いそう。さっすがファンの子の審美眼は狂いがないね!」
「……に、似合うかな、これ……」
「何をうろたえてんの。せっかくくれたんだから、活用してあげないと失礼だよ。ささ、試着してみなさいって」
神音が横から肘でつついて催促する勢いは止まらず、仕方がないなぁと箱に手を入れて帽子をそっと持ち上げる。
日よけを兼ねているから、つばが広めの黒い帽子はシンプルに見えるけれど考えて作られているようだった。
一部が通気性のいい素材で作られているから、ずっと被っていても蒸れにくくて快適そうだ。
サイズも後頭部の調節部分で多少変えられるようで、ちょうどよくフィットする。
「うん、よく似合ってるよ」
「そう?」
「ねぇそれ、今夜被って歌ってあげたら? もしかしたら見に来てくれるかもしれないし」
「……えぇ?」
勝手に衣装に手を加えていいのだろうか。神音の主張に慌てて松木さんを振りかえると、やりとりを聞いていた松木さんは少し首を傾げた。
「どうでしょう……キョウさんはどうしたいと思いますか?」
あらためて聞かれると戸惑い、予想外のことだらけで、思考が追いつかない。
「……えっと……できれば、そうしたいです」
「わかりました。確認してきます」
にこっと笑顔で頷いて、松木さんが確認の電話をして間もなく、許可が下りたと教えてくれた。
最初の衣装に追加された帽子をそっとテーブルに置いて、まだ強く鳴り続けている胸に手を当てて深く息を吸いこむ。
(いつもより緊張してる……)
予想外の贈り物がさらに拍車をかけているようで、どれだけ深呼吸しても手が震えて汗ばんだままだ。
まずは朝食をとりながら、ミーティングをはじめましょうと松木さんの声が聞こえて、目を開く。
最終スケジュールの確認と、注意点などなど。松木さんや主だったスタッフを交えてのミーティングを終えると、それぞれウォーミングアップとリハーサルへ移行した。
それぞれ担当の場所へスタッフが散っていく中、松木さんを捕まえて俺と神音は廊下に出て、昨日やると決めたことを伝えた。
話を聞いているうちに、松木さんの目が丸くなっていく。
「……だめ、でしょうか?」
その表情に不安を覚えて、つい小声で呟くと首を少し左右に振ってから、松木さんはにこりと笑った。
「私が判断できる内容ではありません。しかし富岡プロデューサーが許したのであれば、間違いはないでしょう。私は必要なことを為すだけです」
関係各所には手配しておきます、と松木さんが引き受けてくれて、軽く一礼してから忙しそうに小走りで去って行った。
本当はミーティング中に打ち明けたかったんだけど、アレンさんが重荷に感じて欲しくないから、メンバーの前では言えなかったんだ。
楽屋に戻って体を解しながら、それとなくアレンさんを確認していると、いつもより休憩を挟む回数が多いくらいで、他に変わった様子はない。
トイレに立った八代さんを追いかけて聞いてみたところ、明け方には平熱に下がっていたらしい。
(大丈夫だよね……たぶん)
他人を心配する余裕はないものの、やっぱり昨日の今日ではと不安は残る。
長い廊下へ出て黙々とアップしながら、パンッと頬を叩いた。
(いまこそ、しっかりしなきゃ)
神音と文月さんも交えて、昨日一日で仕上げた作戦が吉と出るか、凶と出るかわからない。
だけど神音が言ったとおり、こんな時だからこそやる価値があるのだろう。
(良くも悪くも、今日が一番の勝負どころだ)
夜遅くまで仕上げに時間を使ったおかげで、睡眠時間は大幅に減ってしまった。
褒められたことじゃないとわかっていたけれど、ここで手を抜いたらこの先がないと思ったんだ。
だから本番の数時間前に、ある程度の用意を終えたところで、眠気が限界を超えた。
中央のソファに座ったらとなりに神音がいて、はじめは欠伸をこらえながらそこにいたんだけど、神音がコテンと頭を俺の肩に乗せて眠ってしまい、つられて俺も眠気に負けて目を閉じる。
「……余裕やなぁ……神音はともかく、響ちゃんまで……」
ガクガク震えながら八代さんが羨ましそうに呟く声が聞こえた。
どれくらいそうしていたのか、ふっと意識が浮上したのは何となくどこかで嗅いだことのある匂いを感じたからだ。
まだ重いまぶたを持て余しながら、周囲を見渡すと衣装に着替えたアレンさんが歩いて行く後ろ姿が見えた。
(……まさか、起こそうとしてくれたのかな)
本番が近くなったのかと慌てて体を起こすと、神音の頭が滑り落ちた。その勢いで目が覚めたらしい神音が、むにゃむにゃ何かを呟きながら目を擦っている。
「あれ……まだ時間残ってるじゃん」
時刻を確認した神音が少し残念そうに言う。寝足りないんだろうけど、立ちあがって伸びをしはじめた神音に習って俺も肩を回して緊張を解していく。
そうしている間にも時間は過ぎていく。
「響、気持ちの整理は大丈夫だよね?」
「うん。後はやるしかないって感じ」
「心配しなくても、昔と同じ気持ちで楽しめばいいさ」
神音がこそっと小声で確認してきたので、笑顔で頷く。緊張してはいるし、不安も晴れることはない。だけど刻々と本番は近づいており、逃げ出すつもりもないのなら、後はただ歌うしかない。
(願わくば、笑顔でステージを下りられますように)
衣装を身につけ、メイクとヘアスタイルを整えてもらい、片平響から『i-CeL』のキョウへと変貌を遂げた姿を鏡に映し、その前に置かれていた帽子を最後に被る。
ついにライブ開始の声が告げられ、いつものようにメンバー全員で手を揃えながら、高まる緊張に震えていた。
セットリストは基本的にどの公演場所も似通っていたけれど、細かい違いはある。
例えば三曲目はお客さんの反応を見て、臨機応変に対応できるように三パターン用意されていた。
(今夜は三番目のパターンかな……)
横目で神音を確認すると、小さく頷いて指を三本立てている。
これはあまりお客さんの反応が良くない場合に用意されていたパターンだった。
スタッフにも意思は伝わったようで、三曲目の演奏に合わせて照明が切り替わる。
『i-CeL』ファンの中で人気が高いと言うこの曲で、一気にテンションを引き上げてから、次の曲へと小話を挟んで突入する。
ここまでで一番の規模を誇るステージは広く、観客との距離も少し遠ざかったようだ。
公演が進むにつれて、心理的な距離は縮まり、はじめが嘘のように一体感を覚えて歌うことができた。
心配していたアレンさんもここまでは順調で、いよいよ折り返し地点だ。
(……もう、なるようになれっ)
照明が絞られ、俺と神音だけを照らす。
予定とは違う進行に背後で戸惑っている気配を感じる。
事情を知っている文月さんがフォローしてくれたようだけれど、ざわざわと落ち着かない様子が伝わってくる。
そんな中で、俺は神音と目を見交わして頷いた。
ステージを下りていくメンバーたちのかすかな物音を聞きながら、マイクを握り直す。
「今夜はわざわざ会場に足を運んでくれて、ありがとう。とても感謝しています。昨夜生まれたての新曲を、せめてものお礼に変えて演奏します。聞いてください」
言い終えても明りが戻らないステージに不安を感じたのか、観客の拍手もまばらだった。
構わず俺と神音は一礼してから、神音の指が先に音を奏ではじめる。
本当はグランドピアノで演奏したがった神音だけど、さすがに一瞬でセットできる方法はない。
キーボードで代用する神音が奏でる音を聞きながら、一瞬懐かしい気分になった。
いつもピアノの前に座り、練習熱心だった神音の背中を思い出して、いまここで演奏に歌を合わせることができることに不思議な心地になりながら歌いだす。
神音の伴奏だけで歌う。
こっそり神音と夜の街にくり出して歌っていたのはこの為だった。
少なくとも一曲分、アレンさんの負担は減り、そして俺の実力が試される。
俺にとっては勝負の一曲だけど、昨日神音と曲を仕上げながら感じたこと、そしていま歌いながら思うことは楽しさだった。
まだ純粋に歌うことを楽しんでいた幼い頃、神音と遊んでいた頃の気持ちが戻ってきたみたいだ。
どこまでも神音の音と俺の声が融合して、世界が広がっていくようだった。
幼い子どもが遊んでいる姿を見て、思わず微笑んでしまう人は多い。俺たちにとってピアノに合わせて歌うことが遊びだった時期があったことを思い出し、聞いている人たちに微笑みたくなるようなあったかい気持ちになって欲しいと、神音の伴奏で歌うことを思いついたのだった。
(どうかな……あったかい気分が伝わってくれるだろうか……)
俺の案を聞いてすぐさま賛同した神音は、ならば曲にもこだわりたいと言って、あの日から曲を作ってくれていた。
神音に比べると難産体質な俺の作詞は、ギリギリ何とか間に合わせた感じだけど、いままでにないほど優しく、けれど激しさも秘めた曲に仕上がった。
歌い終わって、ピアノの余韻が消えるまで楽しかったけれど、演奏が終わって沈黙する客席と相反するように、鼓動がどんどん音を大きくしていく。
まだステージに立っていると言うのに、一瞬で素の片平響に戻ったような心地になり、体が震えだした。
「響っ」
神音が名前を呼ぶ小さな声に我に返って、強張った体で一礼する。
ステージを下りようとした時、ぱらぱらとまばらな拍手が聞こえた。
聞き間違いかな、と止めかけた足をもう一度動かそうとしたら、重なった拍手が大きなうねりになって湧きあがった。
(よかった……)
満足してくれたかはわからないけれど、反感を買ったりはしなかったようだ。
ほっと息を吐き出し、もう一度頭を下げてから神音とステージを駆け下りた。
楽屋に戻り、急いでアンコール用の衣装に着替えていると、先に戻っていた八代さんたちに羽交い絞めにされた。
「こらっ! また、しでかしてくれたなっ!」
「ぐっ……ヤッシー……苦し……」
神音の首に腕を回して、軽く絞めあげている八代さんは上気した顔のまま、本当にうれしそうににかっと笑っていた。
俺を羽交い絞めにしているのはアレンさんで、泣きたいような笑っているような、複雑な表情をしている。
「……アレンさん?」
「はぁ~、まったくもう……響くんはちょくちょく、オレたちの度肝を抜いてくれるよね……あらためて惚れ直しちゃったなぁ~」
「な、ななにを言ってるんですかっ!」
じたばた手足を動かして暴れてみるけれど、アレンさんの腕は緩まなかった。
文月さんが腕組みをして、うんうんと頷きながら俺たちを眺めている。
「提案を聞いた時はどうなるかと思いました。しかし成功させましたね、神音、響君」
グッジョブ。文月さんが親指を立てて俺たちを労ってくれた。
俺と神音がメンバーに相談せずに行ったことなのに、文句を言わず受け入れてくれたことにまず安心して、少しずつやり遂げたんだと実感が追いついてくる。
汗を拭い、衣装を着替えて水分を補給していると楽屋に富岡さんが入ってきたのが見えた。
「富岡さん?」
いつも通りの無表情をほんの少し和ませて、富岡さんが俺と神音の頭を撫でた。
「面白いことをすると神音から連絡を受けてな。様子を見に駆けつけてみれば……まったくよく考えたものだ」
「ぼくじゃなくて、響のアイディアだよ。それに本当はもう少し披露目は先かなって思ってたんだけどね。予想より仕上がりが早かったし、響も良い感じに覚悟決めてくれてたからね。勢いでやっちゃったよ」
神音は許可をもらったと言っていたけれど、ファンに粋がっていると不快に受け取られることもあった行動を、よく許してくれたなと思いながら俺は頭を下げた。
「ありがとうございました」
「……おまえ次第でいかようにも転ぶことを、少しは自覚できたか? 出し惜しみしていたらあっという間にファンは目を反らしてしまうぞ。本当はこんなことができるんだよ、すごいだろうと内心で思っているだけでは、だれにも気づかれはしないものだ」
富岡さんはちらっと腕時計を確認して、ステージを指差した。
「そろそろ行け。待っているぞ」
「はいっ」
その後は予定通りに全力で演奏をして歌い、公演が無事に終了した。
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