我恋歌、君へ。(わがこいうた、きみへ。)

郁一

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第三章

我恋歌、君へ。第三部:23 酒宴

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 誕生日と成人式も過ぎて、神音と俺もようやく酒が飲めるようになったので、その日、仕事が終わったら『i-CeL』メンバーで飲みに行くことになった。
 楽しみが待っていると、仕事が終わった後の片付けも素早く終えられるらしい。
あっという間に挨拶をして帰って行くメンバーたちを、相川さんが苦笑しながら見送ってくれた。
発案者の八代さんの号令に続いて、ぞろぞろと歩いて移動する。
「おすすめの店を予約しといたで」
「へぇ~ヤッシーのおすすめは、激安丼ぶり屋くらいかと思っていました」
 文月さんの突っ込みに八代さんは少しふくれていた。
「おれかて、飲みに行く時くらいあるわ」
「ふ~ん、だれと?」
 アレンさんがにやりと笑いながら聞く。
「……し、仕事仲間とかな、関係者とか」
「他には?」
「……専門学校時代の友達……」
「ふむふむ」
「…………どうせ彼女とは行けてませんとも」
 最後に悔しそうに認めた八代さんの肩を、無言でアレンさんと文月さん、そして神音までもがばしばしと叩きまくる。
 勢いが良すぎて慰めを通り越して嫌がらせになっていると思う。
 案の定、予約していた店についた時には八代さんが半泣き状態になっていた。
 案内された個室は三方を壁に、廊下と部屋との境は垂らした大きな布で区切られた空間だった。
「ほぅ、ヤッシーにしてはやりましたなぁ」
 神音が冗談めかして褒めると、少し元気を取り戻した八代さんが胸を張る。
「せやろ? つまみも美味いし、酒も絶品や。神音と響ちゃんにとって、はじめての夜や。とっておきをご用意したで」
「その言い方はやらしいですよ」
 さっさとかばんを置いて上着をハンガーにかけていた文月さんが突っ込み、軽く頭部に手刀をお見舞いする。
 ふげっと大げさに呻いてみせる八代さんの姿に笑いながら、俺たちも上着を脱いでハンガーにかけ、席に座った。
「響くんは何を頼むの?」
「う……ん、よくわからないので困っています」
 ドリンクメニューを手渡され、神音と一緒に眺めていると横からアレンさんが覗きこんできて聞いてきた。
「まず王道のビールから試してみたら? 他はオレたちが頼んだものを少しずつ試飲してから決めればいいよ」
 八代さんと文月さんも、孫を見る祖父母のような優しい目で俺たちを見て頷いているので、年長者のアドバイスに従うことにした。
 俺たちが試せるよう、それぞれ別々のドリンクをオーダーしてしばらく待つと、先にお通しの小鉢が運ばれた。
「それにしても、ついに神音が成人とはなぁ……はじめて会った時なんぞ、こーんなちびっこいガキやったんに」
 手を拭いた後、しみじみと八代さんが過去を振り返りながらそう言って、自分の前に手を伸ばして下げる。
「ぼく、そんなに小さくなかったよ」
「いやいや、十分小さかったって。そのくせ態度は憎たらしいくらい大きくてな」
「強引なくらいでしたね」
 文月さんも当初を思い出して笑いながら賛同している。
 神音はむすっと口を尖らせ、坐った目つきでふたりを睨んでいた。
「けど、そのちっこいガキのおかげで、おれら演奏続けてこれたわけやし、メジャーデビューまで果たせたんやからな。感謝しとるんや、これでも」
「そうですね……ヤッシーと僕だけの時より、神音が加入した後の方が圧倒的に観客の反応が良かった。それは投げ入れてくれた金額にも如実に表れていました」
 あごに手を当てて、冷静に話す文月さんの横で八代さんが盛んに頷いている。
「やめてよね~柄でもないこと言うの。気持ち悪いって」
「あはは、神音が照れとる」
「照れてないし!」
 にぎやかに笑いながら言い合う三人を眺めていると、オーダーしたドリンクが運ばれて各自の手元に配られた。
「では、数奇な巡り合わせが重なり、今ここに揃ったオレたち全員にあらためて感謝と慰労の意味を込めて。さらにめでたく成人した我らが神音様と響くんに、乾杯っ」
 アレンさんの音頭に続いて乾杯と言いながらグラスを合わせ、はじめてのビールを飲んだ。
(……うへっ、俺これ苦手だ……)
 舌を直撃する強烈な苦みに炭酸が追い打ちをかけてくる。とても喜んで飲みたい味ではない。
 俺たちの様子を見ていた年長組たちが揃って苦笑する。
「……だれ、これが美味しいって言う奴」
 隣で神音も心底裏切られたって顔でビールを睨みつけている。
「あはは~。ふたりの好みにビールは合わないみたいだね。よし、次はオレの飲んでみなさいな」
 アレンさんのを皮切りに、年長組のドリンクを少しずつ試飲させてもらう。
 神音と首を傾げながら、ああでもないこうでもないと試した酒の感想を言っている間に、最初に頼んだビールを八代さんがすべて飲み干した。
 次のドリンクとつまみになる料理を数品オーダーする。
「三人の中でだれが一番、お酒が強いんですか?」
 文月さんが頼んだ焼酎を試飲しながら聞いてみると、三人は顔を見合わせた。
「ダイだよね」
「そう言うリーダーが酔っ払ったとこ、見たことないな」
「ぼくも先輩が顔色を変えた姿を見たことがありません」
 つまり一番強いのはアレンさんなのか、と思いながら焼酎を神音に渡して、神音が試していた果実酒を受け取る。
 ふわっと芳醇な香りがして、飲んでみるとまろやかで美味しい。
「お、その顔やと響ちゃんは果実酒が気に入ったみたいやな」
「はい、これ美味しいです」
「神音は?」
 全員の視線を集めた神音は、アレンさんが頼んでいたワインを飲んでいた。
「……文月のも、これも好き」
「なるほど。案外神音もイケる口ですね」
 料理をつまみながら、それからも様々な酒を飲み、思い出話も交えながら酒宴が続いた。
 年長組も順調に盃を重ねているはずなのに、顔色を変えているのは八代さんだけで、それも上機嫌そうに見える程度だった。
 アレンさんや文月さんは水やお茶を飲んでいるんじゃないかと疑いたくなるほど、平常と全然変わらない。
 彼らが楽しそうに笑っている様子を見ていると、ようやく飲みの大切さがわかった気がして、俺も大人の仲間入りが出来たんだなって実感した。
(またこうやって、みんなと飲みたいなぁ)
 楽しい時間は過ぎるのも早い。
 気がつくと雰囲気に乗せられてずいぶんと飲んでしまっていたようだ。
 くらくらと揺れる頭を抱えて、とろんと重くなってきたまぶたと格闘していたら、肩にとんと何かが圧し掛かってくる。
 重い頭を動かして肩を見ると、頬を赤く染めた神音がとてつもなく幸せそうな顔で眠っていた。
(……駄目だ、俺も眠い……)
 片割れの幸せそうな寝顔につられて、ぐんと重みを増した頭を両手で抱える。
「お、神音が寝落ちたみたいやな」
「響くんも、限界みたいだね」
「ではぼくが会計してきます」
「ええわ、おれが行くで。ダイは神音を頼むわ」
 みんなの声が聞こえているけれど、いつもより遠くて湾曲しているような気がする。
 体が熱くて息をするのも辛い。
(う~……服、脱ぎたい……)
 息苦しくて胸元のボタンを外す俺の手を、だれかが掴んで邪魔をする。
「響くん、もう少し我慢して。こんなところで脱いじゃ駄目だよ」
 笑い含みの声はだれだったかな、とまどろみはじめた意識のはざまで考える。
「それじゃ、次は明後日やな」
「ダイもヤッシーも、神音を頼むね」
「おれらよりもリーダーが心配やねん。響ちゃんの隙をついて、好き勝手せんようにな」
「……君たちね、オレを何だと思っているの」
 しばらく間が空いて、二つの声が重なって聞こえた。
「「飢えたオオカミ」」
「……はぁ……もう、いいから行って」
 呆れたようなため息と声音に、軽い笑い声とじゃあな、と軽い挨拶が聞こえた。
 次に気がつくと車の中にいるようで、だれかの肩にもたれている状態だった。
「ん? 気がついたかな、響くん」
 呼びかけに応えようと思ったけど、指も口も意思に反旗を翻して動かない。
 すぐにまた意識がかすんで、ゆらゆらと揺れる心地よさに身も心も委ねた。


 背中が冷たい何かに触れたのをきっかけに、心地よさから意識が切り離され、目を開いた。
「……アレン、さん」
「あ、ようやく気がついたね」
 仰向けになった俺に覆い被さるような態勢で、アレンさんがふわっと微笑んだ。
「気持ち良さそうに眠っていたから、起こさないように運んだつもりだったんだけどね」
「……ここ、は……」
 ぎこちなく動く目で周囲を確認すると、暗いけれどアレンさんと暮らす部屋の寝室にいるのだとわかる。
「そうだよ、オレたちの家に戻ってきたよ。水を飲むかい? それともすぐに眠りたい?」
 気を抜くとすぐにでも蕩けてしまいそうな意識をどうにか保って、アレンさんへ無言で腕を伸ばした。
「ひ、響くんっ……」
 珍しく慌てた様子のアレンさんの首に腕を回し、頭部を抱き寄せる。
「……寒い……」
 さっきまで感じていたあたたかさを求めて、アレンさんにすがりつくと慌てふためく気配がした。
「ちょ……響くん、離して……さすがに今は危険すぎるよっ」
 何か言ってるな、と思いながら寒さを凌ぐことしか考えられなくて、抱き寄せる腕に力を込めた。
 すると重なる体を離そうとしていたアレンさんの動きが弱まり、長く息を吐き出したようだった。
「……仕方がないね。耐えてみせますとも」
 ごそごそと態勢を変えたようで物が擦れる音が続き、隣にアレンさんが横たわると俺を抱き抱えた。
(う……ん、まだ足りない……)
 すぐそばにある温もりに甘えるように、顔を擦り寄せて両手で握り締める。
 深く息を吸い込んだところで、ようやく納得できたのか、わずかに保っていた意識が掠れていく。
「本当に困った……いつまででも待てるはずだったのに、自信がなくなってきたよ」
 心地よく夢も見ない眠りを貪り、ようやく目を開くとすでに室内は明るくなっていた。  
横を見てもベッドにだれもいない。
(あ~えっと、昨夜はみんなと飲んで……神音が寝ちゃって、俺はどうやって帰ってきたんだっけ……記憶があいまいだ)
 軽い頭痛と喉の渇きを感じて、ひとまず水を求めてベッドを降りる。
 足元が少しふわふわした感じがまだ残っているけれど、気持ち悪さはないのでキッチンへ入って水を飲んだ。
 浴室の方から水音が聞こえるので、アレンさんが使っているのだろう。ふと自分の体を見下ろすとちゃんとパジャマに着替えていた。
(また迷惑をかけてしまった……)
 アレンさんが出てきたら、まずは昨夜面倒を見させてしまったことを謝ろうと決めて、出てくるのを待ったけれどなかなか出て来ない。
 まさか倒れているのでは、と不安にかられて浴室の手前に立つと、かすかに声が聞こえた。
「……響、くんっ」
 押し殺したアレンさんの声で、すごく苦しそうだ。きっと何か困っているんだと思って、助けに駆け込もうとした寸前、浴室と脱衣室を区切るドアの隙間からアレンさんの姿が見えて立ち止まる。
「くっ、……ぅ」
 苦しげなうめき声を噛み殺しながら、アレンさんが何をしているのかがわかって、息が止まった。
 ぶわっと体温が急上昇して、頭の中が焼き切れたようで何も考えられなくなる。
(と、とにかく……戻ろう……っ)
 その場から走って逃げだしたいところだけれど、俺がここにいたことを気付かれてはいけない気もする。
 強張って動けない体を懸命に動かして、そろそろと音を立てずにリビングへ戻った。
「……はぁ~……」
 浴室からは見えないソファの横まで辿り着くと、ずるずるとその場に座りこみ、長く深く息を吐き出した。
 爆音を鳴らす心臓を静かにさせようと、何度も深呼吸をくり返すけど効果はない。
(どうしよう……アレンさんも男なんだから、当然だよね……)
 考えなくてもわかることを、俺はずっと見ないふりをしている。避けていた問題を目の前に突きつけられて、うろたえている自分自身が愚かだとも思う。
(アレンさんは俺を好きだと言った。神音たちも好きな相手ならしたくなると言っていたし、俺もアレンさんが好きだと言ったわけで……ちょっと待て。俺、昨夜何をした?)
酒に酔って眠くなった俺をここまで運んでくれたのはアレンさんだろう。ベッドに下ろされた時に起きたのか、急に遠ざかった温もりが恋しくて、抱き寄せたことはうろ覚えだけど記憶にある。
(ひぃ~っ! 俺は何てことをっ)
 同じ部屋、同じベッドで寝起きする関係になって、抱きついたりキスしたことはあるけれど、それ以上になる可能性はまだ考えていなかった。
 それなのに酒に酔った勢いで誘うような行動をとってしまったことに、ようやく気がつく。
(酒って恐ろしいっ)
 よくぞアレンさんが誘惑に打ち勝ってくれた。アレンさんが誘惑に負けたら何をしてくるのか考えたところで、ふいに体に悪寒が走って震えた。
(俺は……できる、のか?)
 目隠しをされた状態で一方的に体を触られた時や、薬を飲まされて連れ去られた時のような行為が、同性であっても傷つける以外の意味も持つと教えられて、ようやく可能性に思い至ったけれど。
(……アレンさんは、したい、んだよな)
 俺の名前を呼びながら熱情を冷まそうとしていた姿を覗き見てしまった今、認めないわけにはいかない。
 問題は俺の方にある。
 正直なところ、記憶と同じ行為をすると考えるだけで、恐怖心が湧きあがってくる。
(……怖い……)
 薬のせいで歪んだ世界の中で多くの仮面をつけた人々から受けた視線。襲ってきた黒い蛇や、顔が見えない男に追いかけられ、逃げている間に触れた壁や絨毯の感触。
肌を撫で回す手の温度や感触、強引に口内を貪る舌の不快感までもがありありと蘇る。
 気がつくとカタカタと歯が小さく鳴り、震えが強くなっていた。
 病院で目覚めてから、こんなに詳細をはっきりと思い出したことはない。警察に事情を説明した時ですら、ここまで鮮明じゃなかった。
 アレンさんにキスされたとしても、こんな風に恐怖心を感じなかったのに、なぜ今になってと不思議な気持ちもある。
(もしこのまま拒み続けていたら……関係も壊れてしまう?)
 アレンさんが望むことと、俺が望むことが違った場合でも一緒に暮らせていけるのだろうか。
 避けて通れない現実だとわかっていても、やっぱり答えは決められなかった。
「……そんなところで、どうしたの?」
 座り込んだまま考え込んでいたら、アレンさんの声が聞こえて、はっと思考の渦から切り離された。不審に思われないように慌てて立ち上がる。
「すみません、ちょっと頭が痛かっただけで……あっ、いや本当に少し痛い気がする程度ですからっ」
 頭痛を打ち明けただけでアレンさんの表情が曇ったので、口が滑ったと思い言い直したけれどアレンさんは納得していないようだ。
 あっという間に距離を詰められて、体を引き寄せられると額と額を合わせる。
「……熱はないね。二日酔いかな?」
「は、い……」
「気持ち悪くはない? お水は飲めそうかな?」
「だ、大丈夫です。ご心配なく……じゃなくて、昨夜は大変お世話になりました」
 さっきまで悩んでいたのに、今はアレンさんの一挙手一投足にどぎまぎして鼓動が乱れて息苦しいくらいだ。
 一呼吸置きたくて、アレンさんから少し離れると頭を下げてお礼を言う。
「気にしなくていいんだよ~。オレたちはお世話する覚悟の上で誘ったんだからね」
「でも、お支払いもしていないし」
「それも気にしない、気にしない。オレたちからの成人祝いってことで、ね?」
 ここは甘えてしまってもいいのか、自信が持てない俺はぐずぐずと考え込んでしまう。
 するとアレンさんがぎゅっと抱きついてきた。
「じゃぁ、こうしよう。オレは響くんのか~わいい天使の寝顔を思う存分、じぃ~っくり堪能出来たから、それで良しとしない?」
「……俺は可愛くないですって……」
 納得できないながらも、これ以上話をしていたらさっき悩んでいた現実問題が再発しそうな気がしたので、アレンさんの発言を否定しつつそっと離れた。
 残りの休日はアレンさんと少し距離を置くことにした。
 うっかり目撃してしまったアレンさんの姿を思えば、不必要に近づいて刺激してはいけないと思ったから。
 アレンさんがいつか暮らすつもりで用意したと言うここには、防音機能を施した部屋が用意されている。
 防音室の壁には全身が映る鏡が取り付けられていて、開閉も出来るようになっているので、その奥に譜面やら楽器までも収納できる優れものだ。
 おかげで休日も練習が出来るのでありがたい。
「このマンションは音大生向けに作ったからね。プロ演奏家が住んでいたりもするし、音楽教室を開きたい人たちにも好評だよ」
 さらっと答えてくれるアレンさんを一段と遠い人に感じながら、防音室を利用させてもらうのだが、今日はいつもと少し勝手が違う。
 神音から借りた小型のキーボードを取り出し、鳴らしながら発声練習をくり返す。
 単調な基礎練習をひたすら時間も忘れてくり返した。
(今は何も考えたくない)
 現実逃避として練習に没頭するのはよくないかもしれないが、言いようのない不安を払拭する他の方法が思いつかなかった。


 俺の中で何かが変わってしまったようだ。
 翌日からアレンさんと今まで通りに接することが出来なくなって、ぎこちなさを感じるようになった。
 仕事場では今まで通りに会話しているし、部屋に戻った後も会話しないわけでもない。
 ただ飲み会の前なら並んで座っていたソファにも、今は離れた場所に座っている。
 先に座って本を読んでいたアレンさんが俺をちらっと見たけど、そばにおいでとも言わずに本へ視線を戻してしまう。
 反対側の端に座って、視界の端っこでその様子を伺いながら、俺も今書店で人気を呼んでいる本を開く。
 一緒にいられるわずかな時間なのに、以前とは違って距離感がある。
 アレンさんは気付いているのかいないのか、はっきりとは何も言わない。
 ただ俺に触れる回数が減ったと思う。
 眠るベッドは同じなのに、眠る時は隣にいても朝目覚めると隣にいないことが増えた。
(……はぁ~、俺はどうしたいんだ)
 そばにいて欲しい。それは間違いないんだけど、アレンさんがそれ以上を望んだ時が怖くて近づけない。
 だけどやっぱり離れて欲しくはないから、目で姿を追い求めてしまう。
(あぁっ、もう、自分で自分が嫌になるっ!)
 神音が言う通り、煮え切らない俺の性格は一生治らないようだ。
 仕事中は私生活の悩みを持ちこめないので、ぐだぐだ考えることもなく、とても救いを感じる時間だった。
 それでも休憩中や、演奏の合間にアレンさんの姿を見る度、考えてしまうのは止められなかった。
ぐるぐる悩み続けるのも、気まずい空気が続くのも耐え兼ねて、仕事が終わり帰ろうとしていたメンバーたちの中から、神音の腕を掴んで少し離れたカフェへ連れ込んだ。
「……それで?」
 お互いに飲み物をオーダーした後、店員が去ったのを確認してから、分かっていたように神音が話を促す。
「悩める子羊よ、弟くんに正直に打ち明けてみなさい」
「だれが子羊だ……いや、論点はそこじゃなくて……」
 いつもの神音らしい応答に流されそうになり、頭を抱える俺を神音がにやにや笑って眺めている。
「いやぁ~、響も人並みに悩めるようになったんだねぇ~」
「人並みって……俺が何を悩んでいるのかわかってるの?」
「まぁ、だいたいは。当ててみせよう、我が片割れは恋愛についてお悩みですね?」
「……そう、なるのか……?」
「煮え切らないね、相変わらず」
 頬杖をついた神音が苦笑いしたところへ、頼んでいた飲み物が届く。一旦会話が途切れた。
「恋人と同居したての人間が悩んでいるとしたら、十中八九その恋人が絡んでいると思うじゃん。と言うか今の響が真剣に悩むのって、音楽かアレン関係でしかないんじゃないの」
「ひ、ひどいなその言い草……」
 神音の言う通りだと、俺はかなり自己中心的な人間になってしまう。
「そうじゃなくて、喜ぶべきことだって言ってんの。いいじゃん、これまでの他人に興味なしって感じの響じゃなくなって、ぼくはすごく嬉しいよ。樫部さんのことからはじまって、響がここまで成長してくれたのかと思うと涙が出てくるよ」
 ヨヨヨッ、と泣き真似をしてみせる神音の足をテーブルの下で軽く蹴り飛ばす。
 肩をすくめてからかうのをやめた神音が、それでともう一度促してくる。
「……ねぇ、神音。正直に教えて欲しいんだけど」
「ふむふむ、遠慮せず何でも聞いてみなさい。答えられる保証はないけどね」
 アイスティーに刺したストローを咥え、ずずぅっと吸い上げる神音を見ながら、迷う心をそのまま打ち明けた。
「アレンさんとセックス出来なかったら、俺は捨てられると思う?」
「ぶっ!」
 俺の質問に驚いた神音がアイスティを飲みこみ損ねて、げほごほと咳込んだ。
「……大丈夫、神音?」
 涙目になって咳き込み続ける神音は、胸を抑えて片手をひらひらと振ってみせる。
「ひ~っ、気管に入っちゃったよ……窒息するかと思った……あぁ~、もうびっくりしたなぁ」
「ご、ごめん……そんなに驚くとは思わなくて……」
 そもそも最初は神音が俺に言ったことだ。
 俺がどんな風に変わるのか興味があるとかないとか。
 テーブルに備えられている紙ナフキンで目尻を拭った神音が、一呼吸置いてから俺を見る。
「どうしてまたそんな考えに行きついたわけ?」
「……ちゃんと話すと長くなるよ?」
「いいよ、急ぎの仕事もないし。思う存分付き合うよ」
 本腰を入れて話を聞く姿勢になった神音へ、前置きをしてから話しを切り出した。
 飲み会の翌日に偶然目撃してしまったこと、そこから考えて気付いた恐怖心、アレンさんに対して罪悪感を抱いていることも順に話をした。
 店内はそこそこ人が出入りをしていて、賑やかな話し声も入り乱れている。
 またお客が店内に入ってきて、出迎える店員の声が聞こえたところで、沈黙していた神音が息を吐き出した。
「……それはもう、ふたりの問題だとしか言えないなぁ」
「神音……」
「そんな情けない顔しないでよ。別に見捨てるわけじゃないから。これはぼくの考えだけど、たぶんアレンは響のこと本当に、すっご~く好きだと思う。だからこそ任せたわけだし、本音は嫌だったけど同居を許したんだからね」
 一口アイスティを飲んで、神音が考えつつも続きを話す。
「……アレンは響のことよく見てるよ。だからきっとわかってるんじゃないかな。確かに好きな人に触れられないのは辛いかもしれない……でも、たぶんアレンの想いはそんな程度じゃ消えないくらい深いと思うよ」
「……どうしてそう思うの?」
 俺はバンドメンバーの中で、一番アレンさんと付き合った年月が短いから知らない部分も多く気付けないのだろうか。
 すると神音が困ったような、でも微笑ましいと言うように笑いながら首を横に振った。
「前にも言ったと思うけど、アレンを『i-CeL』に誘った頃、あいつは本当にひどかったんだよ。この世に幸福なんて一生期待できないって感じでさ。そのくせ音だけは情熱的で。そのアンバランスさが危険だったけど魅力的でもあって……って、今は音楽の話はここまでにして」
 話が逸れてしまいそうになった神音が、一旦話を止める。
「笑顔は絶やさないけど、時々どこか遠くを見ていたアレンがね、響と会わせた日から生き返ったみたいに様子が変わってさ。響を見る時のあいつの目を見れば、その理由はぼくにだってすぐにわかったよ。だからってすぐに響を託せるかどうかは別問題だけど」
 最後の一言に力を込める神音に、思わず俺は苦笑してしまった。
「今も、アレンが響を見る時の目は変わってない。今日だってアレンは響を気遣いながら、距離を置いて見守っていたし……あんなに想われていながら、捨てられるかもしれないって悩めるなんてある意味、羨ましいね」
「……まだ同居しはじめたばかりだから、余裕があるだけじゃないの?」
「どうしてそう捻くれた考え方するのかな」
 今度は神音の方が苦笑する。
「ぼくが先に焚きつけておいて、こんなこと言うのはおかしいと思うけど。いいんじゃないの、そのまんま何もしなくても。自然に任せていればいいさ。したくなければしないまま、したければすればいい。それが原因で別れる話になったらアレンをぼくの目の前に連れて来なよ。商売道具だから手は使えない代わりに、全身全霊で蹴りつけてやるから」
 ついでに呪いもかけてやろうかな、と冗談にしては険呑な目つきで話しを終えて、神音がアイスティを飲みはじめた。
 話を聞いた後も、まだ考え続けている俺の様子に気付いていながら、神音はメニューを取り上げてデザート欄を眺めつつ、俺の整理がつくまでのんびり待っている。
「……神音、俺……よくわからないんだ」
「うん?」
「あの時……とにかく嫌だったから同じことされたら、俺はアレンさんを嫌いになってしまいそうで。だけどアレンさんに我慢させたくない。一緒にいることが辛いと思って欲しくないから……どうしたらいいのかわからなくなる」
「……それ、そのままアレンに伝えたらいいんじゃないの?」
「い、言えないよ……」
「何で?」
 メニューを持ったまま、神音が俺を見てにやっと笑う。
「……アレンさんを傷つけてしまう気がするから」
「なるほどね。さて、ここでぼくは謝らないといけない」
「?」
 メニューをスタンドに戻して、神音が姿勢を正した。
「とっても不愉快なんだけど、響の背後にだれが座っているか、確かめてごらん」
 神音が少し申し訳なさを感じてるような表情で俺を見てくる。まさかと思いながら立ち上がり背後を振り返る。
 後ろの席に座っていた人を見たとたん、心臓が止まりそうになった。
「……い、つから……」
 帽子を被っているけれど、特徴的な髪がはみ出しているし、その首筋から肩や背中までの形を見間違えるはずがない。
「いや~いつ響が気付くかと内心冷や冷やしていたけど、最後まで気付かなかったね。喜んでいいのか悲しんでいいのか……とにかく、ごめん」
 顔の前で手を合わせて謝る神音の声が遠くに聞こえる。
 帽子を被ったその人を見つめたまま立ち尽くしていると、その人がゆっくり振り返る。
 読書や翻訳の仕事をしている時だけかけている眼鏡をして、わずかに微笑んでいるアレンさんが、目の前にいた。
「…………」
 声を失って動けない俺を見ながら、アレンさんが立ち上がって近づいてくる。
 真横に立ったその人を見上げる勇気がなく、俯いたら腕をそっと掴まれた。
「落ち着いたら、いくらでもぼくを怒ってくれていい……とにかく、いまは退散させてもらうね」
 神音が素早く店内から出て行った。その後ろ姿を見送っても、まだ俺は立ち直れない。
(ひ、ひどいよ……神音)
 片割れに騙された衝撃よりも、聞かれてしまったことに激しく動揺している。
「……帰ろう、響くん」
 怒っているんじゃないか、呆れているかもしれないと思い悩んでいた俺の腕を掴んだまま、そっと声を掛けてくる。
 その優しい声音の主を見ることが出来ない。
 腕を引かれるままに歩きだしたけど、ずっと俯いて歩いた。
 会話もなく、でも急ぐこともしないで、部屋までゆっくりと歩いて行く。
 通り過ぎていく人の気配や雑談する声、走り去る車の音にさえ、叱られているような心地になる。
 やがてエレベーターに乗り込んで、ふたりきりになったところで、このままではいけないと口を開いた。
「……ご、めっ」
 謝ろうと顔を上げたら、口を塞がれた。
 目的の階についたエレベーターのドアが開いて、アレンさんが顔を離した。
「……謝るのはナシだって、言ってるのに」
 帽子を被って眼鏡をかけたアレンさんが、いつものように苦笑しながら俺を見ていた。
 何も言えない俺を引っ張って、部屋のカギを開けたアレンさんが中へ入って行く。
 そのまま俺をソファへ座らせると、すぐ隣に座って帽子をとった。
「はぁ……嫌いじゃないけど、ずっと被っているのは得意じゃないな」
 髪をかきあげながら息を吐き出したアレンさんが、帽子をテーブルに投げる。
 ふたり並んでソファに座るのは久しぶりな気がするけど、ふたりの間に感じる距離は相変わらずだ。
 何も言うことが出来ない俺の横で、アレンさんが足を組み、しばらく考え込んでいる様子だった。
「響くん……今日はオレの方が謝るべきだね。神音と一緒に響くんを騙す真似をして、ごめん」
「……どうして……」
 まだ衝撃が抜けきらない俺は、それだけを言うのが精一杯だった。
 するとアレンさんが少し憂いを帯びた顔つきになる。
「これが最善だと思ったから……最近、響くんが何か悩んでいることは気付いていたけど、踏み込むべきか判断に迷って。悔しいけど、響くんが最も頼りにしている相談相手は神音だ。正直な気持ちを聞き出すにはこれが最善な方法だと神音もオレも思ったんだよ。それに……オレだからこそ、打ち明けられない悩みを抱えている気がしてね」
 違うかな、と青い目が俺を見る。責めているわけでもなく、哀しんでいるわけでもない淡々とした目で確認してくる。
 それが余計に辛かった。
「……ち、が……」
 否定しようとした口が止まって、先が言えなくなる。ここで否定しなかったら俺がアレンさんを信頼していないことになるのに、どうしてもその先が言えない。
 アレンさんは目を細めて微笑むと、手を解いて俺の頬に触れてくる。
「わかってるから。それにオレは怒っていないよ」
「…………」
「響くんを責めてもいない。オレがオレを許せないだけだから……決して追い詰めたりしないと誓っていたのに」
 頬に触れていたアレンさんの手が、ゆっくり頭からあごへと優しく撫でていく。
「オレの修行不足で、響くんを怖がらせてしまってごめん。飲み会の夜、響くんがオレに摺り寄って眠る姿を見ていたら耐えられなくなって……響くんには申し訳ないと思っても止められなかった」
「……アレンさん」
 俺とアレンさんの間には、腕を伸ばせば届く距離しかない。
 だけどアレンさんが俺を見る目には、この距離さえもどかしいと感じるほど、愛情に満ちている。
「愛しくて、触れたくてたまらないけど響くんが嫌がることはしたくない。だから響くんが望まない限り、オレは何もしないから……」
 素直に打ち明けなかったのは俺なのに、アレンさんの方が罪の意識を感じているのは間違っている。
 俺はアレンさんの手を掴んで、首を横に振った。
「アレンさんは悪くない。俺に直接何かしたわけでもないのに、謝る必要なんてない」
「響くん……」
 こんなことになってもまだ優しく俺を見てくれる。
 その表情を見て、正直に打ち明けられなかった気持ちを伝える覚悟が決まった。
「ごめんなさい。俺はやっぱりアレンさんが怖い。浚われた時と同じことをされたら怖いと思うのに、同じことをしたがるアレンさんを見て恐ろしいと思ってしまったんです」
「うん、わかってるよ」
 掴んだ手が動いて、俺の頬を濡らすしずくを指で拭う。
 目を閉じてその感触を感じながら、次に言いたい想いを探る。
「……でも、俺が間違っていた。今まで何度もアレンさんとキスしましたよね。でも一度だって嫌だと感じなかった。あの時は何もかもが嫌だったのに。だから、もしかしたらアレンさんなら……嫌じゃないかもしれない」
 いつだって俺は気付くのが遅すぎる。
 記憶の中で触れてきた男たちの手は自分勝手で、ただ不愉快でしかなかったけど。
 アレンさんの手に触れられて、不愉快だと思ったことはない。それは俺を想ってくれているから、その手から伝わる温かさを俺は心地よく感じられる。
「……ひ、びきくん……何を言っているのか、わかってる……?」
 俺を茫然と見つめるアレンさんが、途切れ途切れに聞いてくる。
 珍しく無防備な表情が急におかしく思えて、小さく笑ってしまった。
「はい」
 はっきりと頷いてみせたのに、ぽかんと呆けたまま、ゆっくりまばたきをくり返すだけで反応が薄いアレンさんを見ていたら、少しずつ不安になってきた。
(呆れてる、のかな? だけど今を逃したらもっと言いづらくなると思う)
 ずっと一緒にいたいのなら、きっとこの問題は避けて通れない。
 聞かれてしまったのなら、いっそ試してみようと思った。
 この機会を逃したら、もう自分から言えなくなる気がするし、アレンさんも言えなくなるだろうから。
「うまく言えなくて、伝わっていないかもしれません。だから……もう一度言います。試してくれませんか? 彼らみたいに、俺に触れて欲しいんです」
 今度こそアレンさんが口を半開きにして、動かなくなってしまった。
 信じられないと目を瞠ったまま、いくら待っても何も言ってくれない。
「……嫌、ですか?」
 不安にかられてアレンさんの目を見ると、素早く何度もまばたきをくり返して、俺の顔をじっと注意深く見つめはじめる。
「ごめん……オレ、都合のいい夢を見ているのかな……」
「違います。ちゃんと起きてますよ」
 自信が無さそうな、か細い声でアレンさんが聞いてくる。
「あの、試してみたけれど、やっぱり怖いって言うかもしれませんよ?」
「……へ、あ……うん。それは構わないよ……」
 わかっているのか、わかっていないのか。
 まだ茫洋としているアレンさんに念を押したけど、返ってくる声は頼りない。
(大丈夫かな……?)
 もくもくと不安が胸に湧いてくる。
 するとアレンさんがぐっと身を乗り出し、顔を近づけてきた。
「ね、ひとつお願い。オレの頬を思いっきりつねってくれる?」
「……アレンさん……」
 そこまで信じられないのかと、少し複雑な気分になりながら、言われた通り頬をつねってやった。
「っ、……ぅ……間違いなく、現実なんだね」
 顔をしかめながらアレンさんが呟いた後で、いつものようにほわんと笑った。
「どうしよう。この展開は予想していなかったから、心構えが出来ていない。困ったな、本当に響くんはオレの予想をいつも裏切ってくれるよ」
 片方の頬を赤く染めた状態で、アレンさんが片目を閉じてみせる。
(あ~……少し強くつねり過ぎたかも)
 せっかくのきれいな顔立ちで、気障な仕草も頬の赤さがすべて台無しにしている。
 思わず笑ってしまったら、ふいっと顔が近づいて唇が重なる。
「……本当に、いいの?」
 押し当てるだけのキスの後、アレンさんが俺の表情の変化を絶対に見逃さないとばかりに、じっと見つめながら確認してくる。
 俺はしっかりアレンさんを見返したまま、大きく頷いた。
「はい……お願いします」
 たっぷり十秒はじっと見つめられたと思う。
 何も言わず俺を見ていたアレンさんが、両腕を掴んでそっと引き寄せるとキスをしてきた。
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