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幸福に包まれた時間(*)
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「あの、ロイト……待っ……」
「ここまで来て、お預けは酷いんじゃないか? ティア」
「そうじゃ……ないんだけど、えっと……その……私だけなのは、恥ずかしい」
「あぁ、なるほど……わかった」
ティアが拒んでいるのでは無く、一人だけ脱がされている事を恥ずかしがっているのだと気付いたロイトが、納得したように頷いてちゅっと額にキスを落としてティアの下着から指を離す。そしてそのまま、ティアをまたいだまま膝立ちで起き上がって、ばさりと勢いよく自身の服を脱ぎ捨てた。
魔王として正装しキッチリ着込んでいる姿や、執務中の姿、町へデートに行く時にティアと合せてお洒落をしてくれた姿、それに今日の様にシャツとズボンという楽な格好をしている姿、今まで様々なロイトの姿を見て来たと思っていたけれど、そういえば裸を見た事はなかった。
いつもは魔王というイメージよりは、スラリとした王子様のようで格好いいとしか思っていなかったけれど、服の下に潜んでいたしっかりと付いた筋肉と引き締まった身体を前に、急に男らしさを感じてドギマギする。
そんなティアの心情を察したのか、ロイトがそのまま躊躇無く下着まで脱ぎ捨てて本当の真っ裸になり、「これでいいよね」とばかりに微笑む。
堂々とティアの前に晒されたロイトの下半身は、既に熱を帯びてしっかりと主張をしており、それがティアと一緒にいるからだという事実は嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちだ。
「もう恥ずかしくない?」
「違う意味で、恥ずかしいです!」
再び覆い被さってきたロイトにぎゅっと抱きつくと、耳元に柔らかな笑い声が触れる。抱きしめられたまま再びかけられた下着を脱がすロイトの指を、拒む事はもう無い。
お互いが生まれたままの姿で抱き合う気持ちよさが、恥ずかしさに勝る。
ようやく深いキスに溺れるばかりでなく、応える事が出来るようになった頃、ロイトの手がティアの蜜壺に触れた。既にロイトによって細部まで愛され尽くしていた身体は、まるで早く受入れたいと願う様にそこを濡らしている。
「触るよ」
「はい……っぁ、ん……は、ぁっ、ン」
くちゅりと音を立ててロイトの指がゆっくりと慣らすように侵入して来た時には、流石に未知の違和感でいっぱいになったけれど、痛みや嫌悪感はない。
ロイトに翻弄されるがまま、どろどろになっていくのが、身体なのか思考なのかわからなくなる。
やがてティアの中を探っていたロイトの指が離れ、キスが降ってくるのと同時に、乱されたそこへロイトの熱が押し当てられた。
溶かされていたはずの思考がふと冴えて、いよいよだとティアが身構えてしまった事に気付いたロイトが、ふわりと頭を撫でてくれた。
「怖い?」
「いいえ……でも初めてなので、お手柔らかにお願いします」
「もちろん、大切にする」
ふるふると首を横に振って、受入れるのが嫌なわけではない事を告げると、笑顔のロイトのキスが額や瞼、頬や鼻、そして唇へとちゅっちゅっとティアの緊張を解すように降り積もる。
くすぐったくて思わずくすり笑ったのと、ロイトの熱がティアを貫いたのは同時だった。
「ん、っぁあ、は……っ、ぁあ……っふ、ぁ!」
ロイトが初めてのティアの為に、ゆっくりと身体を進めてくれている事はわかる。
けれどそれ以上に未知の感覚は強烈で、ロイトが少しでも動く度に堪える堪えないの次元ではなく、あられもない声が勝手に出てしまう。
「ティア、大丈夫?」
ロイトの熱が全てティアの中に埋まったのだろう。動きを止めた身体がぴったりとくっついているのがわかる。
更にロイトがティアの背中に手を回して抱きしめてくれたので、境目がわからない位にひとつになれた事が嬉しい。
けれど大丈夫だと伝えたい気持ちとは裏腹に、ティアは息の仕方がよくわからなくなってしまっていた。
「ロイ、ロイト……っは、ぁ」
はふはふと細かな息を吐き続けていたら、ロイトの柔らかな唇がまるでどうすればいいのかを思い出させる様にティアのそれを塞いで、呼吸が落ち着く。
ロイトの方が、ティア自身よりもティアの事をわかってくれている。
ティアからもぎゅっと抱きつくと、落ち着きを取り戻した事を悟ったのだろう。伺うように覗き込んで来たその深い碧色の瞳には、熱情が宿っていた。
「そろそろ限界だ、動いてもいい?」
「大丈夫。ロイトの好きに……して?」
思ったままを口にしたら、ロイトの顔が珍しくぶわりと赤くなって、その後何かを耐えるように大きく息を吐いた。
「その台詞は、不用意に言っちゃ駄目」
「ロイトにしか、言わな……んっ、ひゃ! ぁ……ぁんっ」
ロイトの事は信用している。何をされても大丈夫だと思ったからそう言ったのに、どうして注意されたのかわからなくて、ロイト相手だからそう言ったのだと説明しようとした言葉は、中で質量を増したロイトの熱に驚いたのと、何かのスイッチが入ったかの様なロイトの突然の激しい動きについて行けなくなって、途中から喘声に変わった。
「ごめん、ティア。痛くない?」
「嬉し……い、から……もっと」
痛くはないが中はずっと苦しい。でもそれはロイトが我を忘れてティアを求めてくれている証拠のようで、嬉しくて気にはならなかった。
きっと本当はもっと自由に動きたいだろうに、何とかティアを大事にしてくれようとするロイトの気持ちで幸福感が溢れる。
ロイトのように深いキスはまだ出来ないけれど、触れるだけのキスをティアから仕掛けると、ロイトの動きから手加減が更に薄れた。
やがて二人から漏れる激しい吐息だけが、部屋中を支配して行く。
「くっ……、ティア」
「ロイト、っぁ……んあぁぁぁぁぁ!」
お互いしか見えなくなって、熱が限界まで高まり合い、二人は同時に恍惚の時を迎えた。
頭を撫でられる感覚が気持ちよくて、このままずっと微睡んでいたい。
そう思いながらも、額に触れる柔らかい感触がくすぐったくてゆっくりと目を開けると、至近距離にロイトの微笑みがあって驚いて目が覚めた。
「おはよう、ティア」
ぱちぱちと瞬きをするティアに、ロイトがちゅっとキスを重ねる。
「あ、私……寝ちゃってました……?」
「ちょっとだけね。可愛い寝顔が見られて、俺は眼福だったけど」
「もう!」
恥ずかしさでがばりと布団を持ち上げて顔を隠すと、隠れきらなかった頭のてっぺんに何度もキスが落ちてきて、余計に恥ずかしくなる。
もぞもぞと顔を出すと、軽いキスが唇に触れて幸せが包み込む。
「まだ夜明け前だよ、もう少し休む?」
「せっかくロイトと居られるのに、眠っちゃったら勿体ないから、嫌です」
「そんな可愛い事言われたら、休ませてあげられなくなるんだけど?」
「そういう意味じゃ……っ、ぁ」
するりと艶めかしく頬を撫でられ、ぞわりとまた熱を引き起こされそうになる。
ロイトと触れあうのは嫌ではないけれど、初めてで全力を使い切ってしまった感があるので、これ以上は体力が持つかどうか正直疑わしい。
「ティアから聖女の甘い匂いが消えた。ちょっともったいないけど、思った以上に嬉しいな」
「……匂い? どういう事ですか?」
「ふふ、どういう事だろうね? でも流石に最初からそんなに無理はさせないよ。時間はこの先、たっぷりあるんだから」
「お、お手柔らかにお願いしますね?」
首筋に顔を埋めて匂いを確かめたロイトの唇が、そこにちゅっとキスを落とす。
けれどそれ以上進まない様子に、良かったような残念なような気持ちになっていると、それを見越したのかロイトが「ふむ」と何かを思案し、小さく首を傾げた。
「じゃあ、一緒に風呂にでも入る?」
「……えっ!?」
「嫌?」
「嫌じゃ、ない……です、けど」
「恥ずかしい? なら問題ないのかな。ティアの恥ずかしいは、拒否じゃないみたいだから」
「ロイトの意地悪」
「ティアの事を理解しているだけだよ」
「じゃあ、今私が何を思っているかわかりますか?」
余裕顔で笑うロイトを困らせてみたくて、じっと視線を合わせて覗き込みながら尋ねてみると、ロイトはその余裕の表情のまま「もちろん」と頷いた。
「ロイト、大好き?」
「残念。「ロイト、愛してる」です」
ロイトの答えは本当は合っていたのだけれど、本当に見通されているのが悔しくて、せめて少しでも驚かせてみたかったから、そう言いながらぎゅっと抱きつく。
そんなティアをロイトはそれ以上の力強さで抱き返してくれた。
「あぁ、ティアは本当に俺の事を喜ばせる天才だ。俺もティアを愛してる。これからは、ずっと傍に……」
「陛下! お休みの所、失礼致します」
やっぱりもう一回。そんな雰囲気になりかけたベッドの空気を、扉を強く叩く音と焦ったような声が引き裂き、二人は現実に引き戻された。
「ここまで来て、お預けは酷いんじゃないか? ティア」
「そうじゃ……ないんだけど、えっと……その……私だけなのは、恥ずかしい」
「あぁ、なるほど……わかった」
ティアが拒んでいるのでは無く、一人だけ脱がされている事を恥ずかしがっているのだと気付いたロイトが、納得したように頷いてちゅっと額にキスを落としてティアの下着から指を離す。そしてそのまま、ティアをまたいだまま膝立ちで起き上がって、ばさりと勢いよく自身の服を脱ぎ捨てた。
魔王として正装しキッチリ着込んでいる姿や、執務中の姿、町へデートに行く時にティアと合せてお洒落をしてくれた姿、それに今日の様にシャツとズボンという楽な格好をしている姿、今まで様々なロイトの姿を見て来たと思っていたけれど、そういえば裸を見た事はなかった。
いつもは魔王というイメージよりは、スラリとした王子様のようで格好いいとしか思っていなかったけれど、服の下に潜んでいたしっかりと付いた筋肉と引き締まった身体を前に、急に男らしさを感じてドギマギする。
そんなティアの心情を察したのか、ロイトがそのまま躊躇無く下着まで脱ぎ捨てて本当の真っ裸になり、「これでいいよね」とばかりに微笑む。
堂々とティアの前に晒されたロイトの下半身は、既に熱を帯びてしっかりと主張をしており、それがティアと一緒にいるからだという事実は嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちだ。
「もう恥ずかしくない?」
「違う意味で、恥ずかしいです!」
再び覆い被さってきたロイトにぎゅっと抱きつくと、耳元に柔らかな笑い声が触れる。抱きしめられたまま再びかけられた下着を脱がすロイトの指を、拒む事はもう無い。
お互いが生まれたままの姿で抱き合う気持ちよさが、恥ずかしさに勝る。
ようやく深いキスに溺れるばかりでなく、応える事が出来るようになった頃、ロイトの手がティアの蜜壺に触れた。既にロイトによって細部まで愛され尽くしていた身体は、まるで早く受入れたいと願う様にそこを濡らしている。
「触るよ」
「はい……っぁ、ん……は、ぁっ、ン」
くちゅりと音を立ててロイトの指がゆっくりと慣らすように侵入して来た時には、流石に未知の違和感でいっぱいになったけれど、痛みや嫌悪感はない。
ロイトに翻弄されるがまま、どろどろになっていくのが、身体なのか思考なのかわからなくなる。
やがてティアの中を探っていたロイトの指が離れ、キスが降ってくるのと同時に、乱されたそこへロイトの熱が押し当てられた。
溶かされていたはずの思考がふと冴えて、いよいよだとティアが身構えてしまった事に気付いたロイトが、ふわりと頭を撫でてくれた。
「怖い?」
「いいえ……でも初めてなので、お手柔らかにお願いします」
「もちろん、大切にする」
ふるふると首を横に振って、受入れるのが嫌なわけではない事を告げると、笑顔のロイトのキスが額や瞼、頬や鼻、そして唇へとちゅっちゅっとティアの緊張を解すように降り積もる。
くすぐったくて思わずくすり笑ったのと、ロイトの熱がティアを貫いたのは同時だった。
「ん、っぁあ、は……っ、ぁあ……っふ、ぁ!」
ロイトが初めてのティアの為に、ゆっくりと身体を進めてくれている事はわかる。
けれどそれ以上に未知の感覚は強烈で、ロイトが少しでも動く度に堪える堪えないの次元ではなく、あられもない声が勝手に出てしまう。
「ティア、大丈夫?」
ロイトの熱が全てティアの中に埋まったのだろう。動きを止めた身体がぴったりとくっついているのがわかる。
更にロイトがティアの背中に手を回して抱きしめてくれたので、境目がわからない位にひとつになれた事が嬉しい。
けれど大丈夫だと伝えたい気持ちとは裏腹に、ティアは息の仕方がよくわからなくなってしまっていた。
「ロイ、ロイト……っは、ぁ」
はふはふと細かな息を吐き続けていたら、ロイトの柔らかな唇がまるでどうすればいいのかを思い出させる様にティアのそれを塞いで、呼吸が落ち着く。
ロイトの方が、ティア自身よりもティアの事をわかってくれている。
ティアからもぎゅっと抱きつくと、落ち着きを取り戻した事を悟ったのだろう。伺うように覗き込んで来たその深い碧色の瞳には、熱情が宿っていた。
「そろそろ限界だ、動いてもいい?」
「大丈夫。ロイトの好きに……して?」
思ったままを口にしたら、ロイトの顔が珍しくぶわりと赤くなって、その後何かを耐えるように大きく息を吐いた。
「その台詞は、不用意に言っちゃ駄目」
「ロイトにしか、言わな……んっ、ひゃ! ぁ……ぁんっ」
ロイトの事は信用している。何をされても大丈夫だと思ったからそう言ったのに、どうして注意されたのかわからなくて、ロイト相手だからそう言ったのだと説明しようとした言葉は、中で質量を増したロイトの熱に驚いたのと、何かのスイッチが入ったかの様なロイトの突然の激しい動きについて行けなくなって、途中から喘声に変わった。
「ごめん、ティア。痛くない?」
「嬉し……い、から……もっと」
痛くはないが中はずっと苦しい。でもそれはロイトが我を忘れてティアを求めてくれている証拠のようで、嬉しくて気にはならなかった。
きっと本当はもっと自由に動きたいだろうに、何とかティアを大事にしてくれようとするロイトの気持ちで幸福感が溢れる。
ロイトのように深いキスはまだ出来ないけれど、触れるだけのキスをティアから仕掛けると、ロイトの動きから手加減が更に薄れた。
やがて二人から漏れる激しい吐息だけが、部屋中を支配して行く。
「くっ……、ティア」
「ロイト、っぁ……んあぁぁぁぁぁ!」
お互いしか見えなくなって、熱が限界まで高まり合い、二人は同時に恍惚の時を迎えた。
頭を撫でられる感覚が気持ちよくて、このままずっと微睡んでいたい。
そう思いながらも、額に触れる柔らかい感触がくすぐったくてゆっくりと目を開けると、至近距離にロイトの微笑みがあって驚いて目が覚めた。
「おはよう、ティア」
ぱちぱちと瞬きをするティアに、ロイトがちゅっとキスを重ねる。
「あ、私……寝ちゃってました……?」
「ちょっとだけね。可愛い寝顔が見られて、俺は眼福だったけど」
「もう!」
恥ずかしさでがばりと布団を持ち上げて顔を隠すと、隠れきらなかった頭のてっぺんに何度もキスが落ちてきて、余計に恥ずかしくなる。
もぞもぞと顔を出すと、軽いキスが唇に触れて幸せが包み込む。
「まだ夜明け前だよ、もう少し休む?」
「せっかくロイトと居られるのに、眠っちゃったら勿体ないから、嫌です」
「そんな可愛い事言われたら、休ませてあげられなくなるんだけど?」
「そういう意味じゃ……っ、ぁ」
するりと艶めかしく頬を撫でられ、ぞわりとまた熱を引き起こされそうになる。
ロイトと触れあうのは嫌ではないけれど、初めてで全力を使い切ってしまった感があるので、これ以上は体力が持つかどうか正直疑わしい。
「ティアから聖女の甘い匂いが消えた。ちょっともったいないけど、思った以上に嬉しいな」
「……匂い? どういう事ですか?」
「ふふ、どういう事だろうね? でも流石に最初からそんなに無理はさせないよ。時間はこの先、たっぷりあるんだから」
「お、お手柔らかにお願いしますね?」
首筋に顔を埋めて匂いを確かめたロイトの唇が、そこにちゅっとキスを落とす。
けれどそれ以上進まない様子に、良かったような残念なような気持ちになっていると、それを見越したのかロイトが「ふむ」と何かを思案し、小さく首を傾げた。
「じゃあ、一緒に風呂にでも入る?」
「……えっ!?」
「嫌?」
「嫌じゃ、ない……です、けど」
「恥ずかしい? なら問題ないのかな。ティアの恥ずかしいは、拒否じゃないみたいだから」
「ロイトの意地悪」
「ティアの事を理解しているだけだよ」
「じゃあ、今私が何を思っているかわかりますか?」
余裕顔で笑うロイトを困らせてみたくて、じっと視線を合わせて覗き込みながら尋ねてみると、ロイトはその余裕の表情のまま「もちろん」と頷いた。
「ロイト、大好き?」
「残念。「ロイト、愛してる」です」
ロイトの答えは本当は合っていたのだけれど、本当に見通されているのが悔しくて、せめて少しでも驚かせてみたかったから、そう言いながらぎゅっと抱きつく。
そんなティアをロイトはそれ以上の力強さで抱き返してくれた。
「あぁ、ティアは本当に俺の事を喜ばせる天才だ。俺もティアを愛してる。これからは、ずっと傍に……」
「陛下! お休みの所、失礼致します」
やっぱりもう一回。そんな雰囲気になりかけたベッドの空気を、扉を強く叩く音と焦ったような声が引き裂き、二人は現実に引き戻された。
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