59 / 195
時間の使い方
しおりを挟む
次の日。
マヤタやフェンとの約束にはまだ数日あるけれど、ナティスは早速中庭にやって来ていた。
フォーグは、その日の内にナティスが中庭で診療所を開くという通達を出しておいてくれると言っていたし、始めるのはナティスの準備が整ったら、いつでもいいとも言ってくれていた。
流石に昨日の今日で、誰かが治療を目的にやって来る可能性が低いのは、わかっている。
だが、警戒心が強い魔族がいるのと同様に、好奇心の強い魔族もまた多い。
もしかしたら中庭で作業をしていたら、治療が必要なくても、覗きに来てくれる魔族はいるかもしれない。
治療薬を調合するのに、自室である必要はない。
リファナに教えて貰っていたときは森の中だったし、現にフェンに協力して貰う事が必要である万能薬の調合を試すのは、いつも中庭だった。
魔力が必要かそうでないかの差があるだけで、治療薬の調合に必要な環境は変わらないのだから、必要な物を運び込んで、中庭を作業場にしても問題ないだろう。
それにここには、薬草園がある。
必要な分を採取した後、魔王城の備蓄用の治療薬を作りつつ、ゆっくり誰かが来るのを待つ。
そういう時間の使い方は、悪くない様に思えた。
ひとまず空いた時間で、備蓄用の治療薬を優先的に作ろうと決めている。
今までナティスは、万能薬を作ってみたいという自分の欲に夢中になってしまっていたのだが、昨日の話を聞いて、まだまだ備蓄用の治療薬も十分ではないと知ったからだ。
それならば、今はもっと汎用的な治療薬を作る方に、注力すべきだろう。
もし必要分に余裕があるのであれば、ロイトの性格なら兵士以外にも行き渡るように手配するだろう事が、明白だからだ。
それがゆくゆくは、魔族達全体の怪我人の減少へと繋がる。
セイルとは多く会話をした訳ではないけれど、マヤタやフェンとは沢山会話を重ねて、性格はわかって来ている。
だから、今魔王城に居る四魔天と呼ばれる三人全員も、余った治療薬を囲い込み私腹を肥やす様なタイプではないと判断出来た事も、それを後押しした。
もし万能薬の調合に成功すれば、もちろん魔族の役に立つことは出来るだろうし、人間との和平交渉に一石を投じる事も出来ると思う。
ロイトの元を堂々と訪ねる事も出来て、会いに行くという目的も達せられる。
けれど今、手の届くところに困っている人がいるのに、それを無視して自分の目的の為に動くのは違う気がした。
日の入りと共に中庭に出て来て、診療所という場所を確保しつつ、備蓄用の治療薬を調合する。
もちろん、怪我や病気を看て欲しいという魔族が現れてくれるのなら、そちらを優先する。
人間の世界の活動時間の区切りが、朝昼夜と大きく分れている様に、魔族の世界では日の入りに始まり、真夜中から日の出までが活動時間の中心だ。
魔王城では、その都度時間を区切るように、大きな鐘が鳴る。
それは城下まで響き渡り、魔王城内だけでなくその城下町までも、時間を知らせてくれていた。
とりあえずはその区分けに合わせて、暫く時間を使ってみようと思う。
日の入りから真夜中までの前半時間は、診療所と備蓄用治療薬の調合に。
真夜中から日の出までの後半時間は、前半時間で看きれなかった場合の続きと、万能薬の調合の試作に。
診療所と言っても、最初から沢山の魔族が来てくれるとは思っていない。
時間に幅を持たせて、気が向いた時にいつでも訪ねて貰える様、一日を通してその都度対応する事にして、調合はそれぞれ時間を分けて特化させてみようと考えている。
そうすればマヤタやフェンを、今までのように一日中に渡って長時間拘束する必要もなくなるだろう。
時間を忘れて、集中しすぎた末に倒れるという以前の失態が、完全になくなるかどうかは自分次第という所もあるのだけれど、少なくとも区切りを付けることで、自分の限界に気付きやすくはなるのではないだろうかという思惑もあった。
マヤタやフェンとの約束にはまだ数日あるけれど、ナティスは早速中庭にやって来ていた。
フォーグは、その日の内にナティスが中庭で診療所を開くという通達を出しておいてくれると言っていたし、始めるのはナティスの準備が整ったら、いつでもいいとも言ってくれていた。
流石に昨日の今日で、誰かが治療を目的にやって来る可能性が低いのは、わかっている。
だが、警戒心が強い魔族がいるのと同様に、好奇心の強い魔族もまた多い。
もしかしたら中庭で作業をしていたら、治療が必要なくても、覗きに来てくれる魔族はいるかもしれない。
治療薬を調合するのに、自室である必要はない。
リファナに教えて貰っていたときは森の中だったし、現にフェンに協力して貰う事が必要である万能薬の調合を試すのは、いつも中庭だった。
魔力が必要かそうでないかの差があるだけで、治療薬の調合に必要な環境は変わらないのだから、必要な物を運び込んで、中庭を作業場にしても問題ないだろう。
それにここには、薬草園がある。
必要な分を採取した後、魔王城の備蓄用の治療薬を作りつつ、ゆっくり誰かが来るのを待つ。
そういう時間の使い方は、悪くない様に思えた。
ひとまず空いた時間で、備蓄用の治療薬を優先的に作ろうと決めている。
今までナティスは、万能薬を作ってみたいという自分の欲に夢中になってしまっていたのだが、昨日の話を聞いて、まだまだ備蓄用の治療薬も十分ではないと知ったからだ。
それならば、今はもっと汎用的な治療薬を作る方に、注力すべきだろう。
もし必要分に余裕があるのであれば、ロイトの性格なら兵士以外にも行き渡るように手配するだろう事が、明白だからだ。
それがゆくゆくは、魔族達全体の怪我人の減少へと繋がる。
セイルとは多く会話をした訳ではないけれど、マヤタやフェンとは沢山会話を重ねて、性格はわかって来ている。
だから、今魔王城に居る四魔天と呼ばれる三人全員も、余った治療薬を囲い込み私腹を肥やす様なタイプではないと判断出来た事も、それを後押しした。
もし万能薬の調合に成功すれば、もちろん魔族の役に立つことは出来るだろうし、人間との和平交渉に一石を投じる事も出来ると思う。
ロイトの元を堂々と訪ねる事も出来て、会いに行くという目的も達せられる。
けれど今、手の届くところに困っている人がいるのに、それを無視して自分の目的の為に動くのは違う気がした。
日の入りと共に中庭に出て来て、診療所という場所を確保しつつ、備蓄用の治療薬を調合する。
もちろん、怪我や病気を看て欲しいという魔族が現れてくれるのなら、そちらを優先する。
人間の世界の活動時間の区切りが、朝昼夜と大きく分れている様に、魔族の世界では日の入りに始まり、真夜中から日の出までが活動時間の中心だ。
魔王城では、その都度時間を区切るように、大きな鐘が鳴る。
それは城下まで響き渡り、魔王城内だけでなくその城下町までも、時間を知らせてくれていた。
とりあえずはその区分けに合わせて、暫く時間を使ってみようと思う。
日の入りから真夜中までの前半時間は、診療所と備蓄用治療薬の調合に。
真夜中から日の出までの後半時間は、前半時間で看きれなかった場合の続きと、万能薬の調合の試作に。
診療所と言っても、最初から沢山の魔族が来てくれるとは思っていない。
時間に幅を持たせて、気が向いた時にいつでも訪ねて貰える様、一日を通してその都度対応する事にして、調合はそれぞれ時間を分けて特化させてみようと考えている。
そうすればマヤタやフェンを、今までのように一日中に渡って長時間拘束する必要もなくなるだろう。
時間を忘れて、集中しすぎた末に倒れるという以前の失態が、完全になくなるかどうかは自分次第という所もあるのだけれど、少なくとも区切りを付けることで、自分の限界に気付きやすくはなるのではないだろうかという思惑もあった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
96
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる