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お互いを所有する印(*)
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「ナ、ティス?」
「私の、です」
ロイトの身体に印が付けられた事に満足してふわりと笑うと、ロイトがぐっと息を詰め余裕をなくした様に、噛み付くようなキスでナティスの唇を塞ぐ。
と同時に、ナティスの最奥まで激しく求め始める。
ようやく、本能のままにナティスを求めるロイトを、呼び起こせたのだと感じた。
けれど、嬉しいという気持ちは一瞬で吹き飛び、その激しさに置いて行かれない様に応えるだけで精一杯になる。
そこからは、ただただ荒い二人の息遣いとベッドの軋む音だけが、部屋中に響き渡っていた。
やがて高まりきった熱が、ナティスの中で限界を迎えようとしているのがわかる程に、どんどんと内側に圧迫感が増し、ロイトの動きに更に激しさが加わって行く。
余裕を全く無くしたロイトの、今まで見た事のない表情が、ナティスの瞳いっぱいに映っていた。
きっとナティスの目にも、同じ様にロイトしか映っていない。
ずっとロイトの瞳の奥にあったティアの残像は消え、もうナティスしか見えていない事を、真っ直ぐな視線は雄弁に語ってくれていた。
(あぁ。なんて、幸せななのかしら)
荒い息を吐きながら、ぐっと引き寄せるようにロイトに抱き込まれたのと、縋るようにナティスが背に回した腕に力を込めたのは、どちらが先だっただろう。
お互いを求める引力に、逆らえない。まるで、こうして抱き合っている事こそが、自然なのだとさえ思える。
「…………っく、っ!」
「んあぁ、ぁ……っ、んっ、ぁぁぁぁ!」
触れ合う肌の熱は、どちらのものかわからない位に溶け合う。
ロイトの熱がナティスの中にじんわりと広がって行くのを感じながら、ようやく身体も心も、全て一つになれた気がした。
ロイトが、ゆっくりと身体から出て行く喪失感と恍惚感に包まれながら、荒くなった息を何とか整えていると、どさりとロイトが身体の上に覆い被さる様に落ちてくる。
まるで甘える様な仕草で、ぐりぐりと頭を胸元に押し付けてくるロイトの重さが愛しい。
そっと背中に回していた手で髪を撫でようとしたら、鎖骨と胸の間にある柔らかい部分に、突然ピリッとした痛みが走った。
まだ快楽の種が失われていない身体は、その痛みにさえ快感を拾ってしまいそうで、ビクリと身体が跳ねる。
そんなナティスの反応に気をよくしたのか、ロイトが顔を上げてふっと微笑み、ゴロンとナティスの上から横へと移動した。
ベッドの上で並んで横たわる形になり、たった今感じた痛みが何なのか理解出来ていないナティスの胸元を、ロイトが愛おしそうに指でそっと撫でる。
「お返しだ」
「え? あっ……」
ロイトの指がなぞる先に視線を落とすと、そこには赤い所有者の印。
ナティスの白い肌の上に、先程夢中でロイトの首筋に付けたものと同じ痕が、くっきりと存在していた。
「あんな凶悪な強請り方をされるとは、思わなかった」
「そんな、つもりでは……」
「理性が全部吹っ飛んで、我を忘れてしまったが……身体は辛くないか?」
ロイトに我慢して欲しくなかったし、後悔からの優しさなんて必要ない。
ナティスだけが気持ち良くして貰うばかりではなく、二人で一緒に愛を交わしたくて必死だった。
強請ったつもりはなかったのだけれど、ロイトにはそう伝わっていたらしい。
自分から求めすぎてしまったかもしれないという恥ずかしさが、今頃になって湧き上がってくる。
けれど、身体をベッドにゆっくりと沈ませて、ロイトがコツンとナティスの額に自らの額をくっつけながら、恥ずかしそうに、けれど幸せそうな顔をして笑うから。
きっと、それで正解だったのだとも思う。
ロイトにとって、今夜のナティスとの一夜は、一年前とは何もかもが違うものになったのがわかる。
そして、ティアとの最期の夜に交わされた理性的な愛情とは違う、抑えきれずに溢れ出す熱情を、今のナティスにぶつけてくれたのだという事も。
「大好き」
「……っ! あぁ。俺も、愛してる」
激しく愛された身体を案じてくれているロイトに、大丈夫だと言おうと思うよりも前に、勝手に言葉が出ていた。
飾らないたった一言だったけれど、素直にするりと飛び出したからこそ、それが本心だとロイトには伝わったらしい。
一瞬息を詰めたロイトは、どこか泣き出しそうな笑顔で、真っ直ぐにナティスを見つめる。
額同士をくっつけていたから、二人の距離は近い。
そのままごく自然に引き寄せられる様にして、情熱の名残を楽しむかのように、どちらからともなくお互いの温かな唇に触れた。
「んっ……ぁ」
「疲れただろう。少し休むと良い」
触れるだけの優しいキスだったけれど、再び火が付きそうになってしまうナティスを余所に、ロイトはいつの間にかナティスの頭の下へ腕を潜らせ、ぴったりくっついた体勢で抱き込んで来る。
腕枕をされているのか、抱きしめられているのかはわからないけれど、気怠さと共にロイトの体温がすぐ傍にある事に、とても安心した。
ロイトはそのまま、ナティスを守るようにふわりと布団を掛け、ぽんぽんっとあやすように睡眠を促してくる。
部屋に戻って来た時に、ナティスがベッドに沈んでしまいそうになっていた事を、覚えていたのだろう。
(簡単に休ませてやれない、なんて言っていたのに……優しいんだから)
ロイトの甲斐甲斐しさを見るに、ナティスに無茶を強いたと考えているのかもしれない。
けれど、激しく欲しいと求めたのは、ナティスも一緒だ。
むしろ、無意識のうちに沢山煽ってしまったのかもしれないとも思う。
けれど、「甘やかし過ぎです」と訴えるナティスの視線が正しく届くことはなく、更に甘やかすようにロイトの指がナティスの髪を梳く。
ロイトがナティスの髪を触るのが好きな事はわかっているので、仕方ないと自分に言い訳しながら、甘やかな雰囲気も相まって、ついされるがままになってしまう。
目まぐるしく過ぎた一日ではあったので、気持ちは高ぶっていても、激しい愛情を受け止めた身体が疲労しているのは確かだった。
与えられる気持ち良さに身を委ねて、ナティスは思わず目を閉じてしまいそうになって、慌てて身じろぎする。
「私の、です」
ロイトの身体に印が付けられた事に満足してふわりと笑うと、ロイトがぐっと息を詰め余裕をなくした様に、噛み付くようなキスでナティスの唇を塞ぐ。
と同時に、ナティスの最奥まで激しく求め始める。
ようやく、本能のままにナティスを求めるロイトを、呼び起こせたのだと感じた。
けれど、嬉しいという気持ちは一瞬で吹き飛び、その激しさに置いて行かれない様に応えるだけで精一杯になる。
そこからは、ただただ荒い二人の息遣いとベッドの軋む音だけが、部屋中に響き渡っていた。
やがて高まりきった熱が、ナティスの中で限界を迎えようとしているのがわかる程に、どんどんと内側に圧迫感が増し、ロイトの動きに更に激しさが加わって行く。
余裕を全く無くしたロイトの、今まで見た事のない表情が、ナティスの瞳いっぱいに映っていた。
きっとナティスの目にも、同じ様にロイトしか映っていない。
ずっとロイトの瞳の奥にあったティアの残像は消え、もうナティスしか見えていない事を、真っ直ぐな視線は雄弁に語ってくれていた。
(あぁ。なんて、幸せななのかしら)
荒い息を吐きながら、ぐっと引き寄せるようにロイトに抱き込まれたのと、縋るようにナティスが背に回した腕に力を込めたのは、どちらが先だっただろう。
お互いを求める引力に、逆らえない。まるで、こうして抱き合っている事こそが、自然なのだとさえ思える。
「…………っく、っ!」
「んあぁ、ぁ……っ、んっ、ぁぁぁぁ!」
触れ合う肌の熱は、どちらのものかわからない位に溶け合う。
ロイトの熱がナティスの中にじんわりと広がって行くのを感じながら、ようやく身体も心も、全て一つになれた気がした。
ロイトが、ゆっくりと身体から出て行く喪失感と恍惚感に包まれながら、荒くなった息を何とか整えていると、どさりとロイトが身体の上に覆い被さる様に落ちてくる。
まるで甘える様な仕草で、ぐりぐりと頭を胸元に押し付けてくるロイトの重さが愛しい。
そっと背中に回していた手で髪を撫でようとしたら、鎖骨と胸の間にある柔らかい部分に、突然ピリッとした痛みが走った。
まだ快楽の種が失われていない身体は、その痛みにさえ快感を拾ってしまいそうで、ビクリと身体が跳ねる。
そんなナティスの反応に気をよくしたのか、ロイトが顔を上げてふっと微笑み、ゴロンとナティスの上から横へと移動した。
ベッドの上で並んで横たわる形になり、たった今感じた痛みが何なのか理解出来ていないナティスの胸元を、ロイトが愛おしそうに指でそっと撫でる。
「お返しだ」
「え? あっ……」
ロイトの指がなぞる先に視線を落とすと、そこには赤い所有者の印。
ナティスの白い肌の上に、先程夢中でロイトの首筋に付けたものと同じ痕が、くっきりと存在していた。
「あんな凶悪な強請り方をされるとは、思わなかった」
「そんな、つもりでは……」
「理性が全部吹っ飛んで、我を忘れてしまったが……身体は辛くないか?」
ロイトに我慢して欲しくなかったし、後悔からの優しさなんて必要ない。
ナティスだけが気持ち良くして貰うばかりではなく、二人で一緒に愛を交わしたくて必死だった。
強請ったつもりはなかったのだけれど、ロイトにはそう伝わっていたらしい。
自分から求めすぎてしまったかもしれないという恥ずかしさが、今頃になって湧き上がってくる。
けれど、身体をベッドにゆっくりと沈ませて、ロイトがコツンとナティスの額に自らの額をくっつけながら、恥ずかしそうに、けれど幸せそうな顔をして笑うから。
きっと、それで正解だったのだとも思う。
ロイトにとって、今夜のナティスとの一夜は、一年前とは何もかもが違うものになったのがわかる。
そして、ティアとの最期の夜に交わされた理性的な愛情とは違う、抑えきれずに溢れ出す熱情を、今のナティスにぶつけてくれたのだという事も。
「大好き」
「……っ! あぁ。俺も、愛してる」
激しく愛された身体を案じてくれているロイトに、大丈夫だと言おうと思うよりも前に、勝手に言葉が出ていた。
飾らないたった一言だったけれど、素直にするりと飛び出したからこそ、それが本心だとロイトには伝わったらしい。
一瞬息を詰めたロイトは、どこか泣き出しそうな笑顔で、真っ直ぐにナティスを見つめる。
額同士をくっつけていたから、二人の距離は近い。
そのままごく自然に引き寄せられる様にして、情熱の名残を楽しむかのように、どちらからともなくお互いの温かな唇に触れた。
「んっ……ぁ」
「疲れただろう。少し休むと良い」
触れるだけの優しいキスだったけれど、再び火が付きそうになってしまうナティスを余所に、ロイトはいつの間にかナティスの頭の下へ腕を潜らせ、ぴったりくっついた体勢で抱き込んで来る。
腕枕をされているのか、抱きしめられているのかはわからないけれど、気怠さと共にロイトの体温がすぐ傍にある事に、とても安心した。
ロイトはそのまま、ナティスを守るようにふわりと布団を掛け、ぽんぽんっとあやすように睡眠を促してくる。
部屋に戻って来た時に、ナティスがベッドに沈んでしまいそうになっていた事を、覚えていたのだろう。
(簡単に休ませてやれない、なんて言っていたのに……優しいんだから)
ロイトの甲斐甲斐しさを見るに、ナティスに無茶を強いたと考えているのかもしれない。
けれど、激しく欲しいと求めたのは、ナティスも一緒だ。
むしろ、無意識のうちに沢山煽ってしまったのかもしれないとも思う。
けれど、「甘やかし過ぎです」と訴えるナティスの視線が正しく届くことはなく、更に甘やかすようにロイトの指がナティスの髪を梳く。
ロイトがナティスの髪を触るのが好きな事はわかっているので、仕方ないと自分に言い訳しながら、甘やかな雰囲気も相まって、ついされるがままになってしまう。
目まぐるしく過ぎた一日ではあったので、気持ちは高ぶっていても、激しい愛情を受け止めた身体が疲労しているのは確かだった。
与えられる気持ち良さに身を委ねて、ナティスは思わず目を閉じてしまいそうになって、慌てて身じろぎする。
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