実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺が逃げだした理由

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 俺が前世を思い出して、スンッとなってしまってから数ヶ月が経つと、両親から怪訝な顔をされるようになった。メソメソが無くなった俺が気になるらしい。

 まぁ一方的に俺は無視してるんですけどね!今更って感じするし、俺も対して家族に興味が沸かなかった。多分、前世の俺がアラサーと呼ばれる齢であったせいもある。

 家族に甘えたい精神年齢を飛び越えてしまった。なんなら殆ど出会うこともないから他人のようなもんだしね。

 ……って考えて生きてたらわざわざ夕食を一緒に食べようとしたり、お茶に誘われてみたり…ここに兄達がいなくて良かったと心底思うのであった。兄達は学園に入学してるから学園の寮で暮らしてるから、両親より顔を合わせる機会がない。

 最近城下町に降りているのも知っているらしく、何かとメイドや従者を使って探りを入れてくる始末である。もう、鬱陶しい…。

 アルディウスとして生きることに不満はないが、家族には不信感が募る。しかしまだ家出を決行するには金も知識も体力もない…悶々とした生活が続くなか、さらに面倒な男がやってきた。……幼馴染の王子様である。上の兄と同い年の美少年。名をロンバウト・ディン・エンデルクロス第二王子、俺の暮らす国の紛れもない王子だ。

 あっ、因みに俺はアルディウス・アーダングラウド。アーダングラウド公爵家の末っ子ね。

 上の兄と同い年なのになんで俺と幼馴染なのか…理由は詳しく知らないが、まぁ諸事情があるのだろうと深くは考えていない。しかし、この第二王子も性格が悪い!

 前世を思い出す前の俺がメソメソの原因となったのは紛れもなくこいつのせいだ。そんなやつが会いに来たと言われたら苦虫を噛み潰す表情になっても仕方がない。

 俺が会いたくないから城には顔を出さなくなったし呼び出されても無視を決め込んでたのに…ついに不敬罪で捕まえにきたか?

 ここで追い返しても後が面倒になる。渋々…それはもう嫌な顔をして身なりを整えた。こんなことなら朝早くから城下町に降りれば良かったと後悔する。


 「あぁ、死ぬほど会いたくない。いっそのこと自分の首を締めて気絶できないかな~。」
 「こ、怖いことを仰らないでくださいませアルディウス様。」
 「机の角でもいいし、なんなら下剤でも飲んでトイレに篭もるのも…いやでも…。」


 どうにか会わずに済む方法を探したが、いい方法が見つからなかったので諦めて会うことにする。もうサロンで待ってるらしいしな…早く帰ってもらお。

 それなりに見れる格好になり、焦るメイドを無視して大きなため息を零す。


 「あっ、俺にお茶とか出さなくていいから。俺が秒で部屋に帰るからね。俺が居なくても両親が勝手に相手するだろ。」
 「アルディウス様にお会いしに来ているのですからそんな邪険にされずとも…。」
 「大っっっ嫌いな奴相手に使う時間は無駄だろ。」


 俺がそう言えばメイドはもう何も言わなくなる。今まで強い言葉で伝えることなんてしなかったからな。驚いて言葉もでないだろうに。

 残念だったな。泣き虫はもう卒業したんだ。

 
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