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俺が逃げだした理由
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しおりを挟む「なんだ、元気そうじゃないか。」
「お陰様で毎日充実してます。」
「最近は王宮にもこないから、体調でも崩しているんじゃないかと心配だったんだよ?」
「お陰様で数日ふて寝をしましたが元気です。お気になさらずに。」
「……なんだか雰囲気が変わったね。」
「いろいろと吹っ切れたもので。わざわざ悪口を聞きに王宮に行くのも嫌になっただけですよ。」
「おや?悪口なんで誰が言うんだい?僕が懲らしめてあげようか?」
「おや、自覚がないようで。」
「僕はアルディウスを可愛がってるだけで悪口なんて言ってないもの。」
「無自覚とはたちが悪いですよ王子様?周りにどんな話をしているのか知りませんが、俺を孤立させて泣く姿を見るのは楽しかったですか?悪趣味ですね。」
「ふーん…そんな言い方するんだ。悪い虫が付かないように気を使っていただけなのに。」
「なんとでも言えるでしょう、王子の貴方なら。」
「本心だよ?」
「そうだとするなら尚更たちが悪い。」
フンッと鼻を鳴らす。サロンの高級ソファに腰掛けるロンバウト王子をジト目で睨みつつ入り口の扉の前から動かない俺。
ソファに座って紅茶でも出されてしまえば長話になる。それだけはどうしても避けなければならないのだ。理由は簡単、この性悪王子を早く帰したいからである。
美しい黒髪に黄金色の瞳がとても美しく、黙っていれば本当に綺麗な王子様なのに勿体無い…幼い頃より俺を孤立させていた張本人はこいつである。何が気に入らないのか知らないけど、間違いなく記憶を辿れば俺に友達がいのは王子のせいだ。
アルディウスに関わるとロンバウト王子に嫌われるぞ。あの子に関わるとロクな目に合わないぞ。…なーんて子供騙しの噂。
まぁ、実際に真に受けて自信を無くしてナヨナヨになってしまったのは自分の意志が弱かったせいもある。しかし同い年くらいの貴族の子に声をかけようとすれば避けられ逃げられ煙たがられる。
……まだ子供よ?そんなの泣きたくもなっちゃうじゃないのさ。泣いたら泣いたで女々しいねぇ、弱虫ねぇ、なんて王子に言われてみろよ。精神病むわ。
ニヤニヤ笑いながら惨めに泣く俺を眺める趣味を持つこいつが性悪以外になんと例えればいい?鬼畜とか?
これが続くとなると俺も嫌になる。だからもう関わり合いたくない。だからはっきり告げて、こいつとオサラバしたいのだ。
「もう俺から貴方に会いに行くことはありませんから。」
「……は?なに言ってるの?アルディウスには僕しかいないでしょ?」
「妄想に取り憑かれて変な事言わないでくださいよ。何故に俺には貴方しかいないと?」
「だ、だっていつも僕にいろいろ話してくれたじゃないか…!」
「貴方しか話し相手がいなかったから仕方なくですよ。話してもどうせ貶されるし、辛い思いはしたくないじゃないですか。」
「それは、…だって……。」
「俺はね、気づいてしまったのですよ。」
「…………、……。」
「ロンバウト様のこと、心底大っっっ嫌いです。」
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