実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 「だははは!ついにお前もA級か!しかも強制的にさせられたとはな!」
 「笑い事じゃないだろ…。タサファン笑いすぎ!」
 「来月はヨルダンで討伐任務の筆頭となりゃギルドも力を入れるだろうさ。俺も一緒に行くんだ安心しろよ。」
 「その前に単独でブラックサーペント狩りなんだ…マルさんに言われた…。」
 「あぁ~…まぁ頑張れよ。」



 ギルドでマルさんとの話し合いが終わり、とても面倒くさい魔獣討伐を強制的に受注させられた。ブラックサーペントは単独で狩る魔獣じゃないのよ…なんてげんなりしながら手元にある酒を飲む。

 ここはギルドの側にある酒屋である。たまたまタサファンがいたので一緒に飲むことにしたのだ。S級冒険者であるタサファンは既婚者なので遅くまで飲めないが、愚痴を聞いてくれるくらいの時間はあるらしい。

 タサファンの奥さんはΩで小柄な可愛らしい人で、俺にも優しいおっとりな性格。タサファンとは正反対で潰されそうなくらい体格差があるがいつも仲良さげに買い物とかしているのを見かける。

 奥さんも元は冒険者で昔は俺も一緒に討伐任務行ったなぁ、なんて懐かしんでいるとタサファンが渋い顔をしていた。

 どうやらタサファンですらブラックサーペントの単独討伐は嫌らしい。ギルドマスターの無茶振りに振り回される仲間としては同情くらいはしてくれるみたい。



 「あの親父またアルに無茶振りさせやがって…。」
 「まぁ報酬は弾んでくれるみたいだから頑張ってくるよ。タサファンとはヨルダンで合流になりそうだな。」
 「ヨルダンかー、あんま帰りたくねぇけど仕方ない。エルダも連れて行くかなー。」



 タサファンは奥さんであるエルダも一緒に討伐任務に行くようだ。彼も実は貴族の生まれで出身が隣国のヨルダンなのである。当時俺が家出計画を神様と話している時に言っていた隣国の後継者争いこそヨルダンの話なのである。

 ヨルダンで王族同士の争いが貴族にも広がり身内を殺し合うような修羅に成り果て、それに嫌気を指したタサファンは早々に身内と絶縁し冒険者として生きることを選んだ。それが16歳の時だと話を聞いて驚いたものである。

 なので彼は出来ればヨルダンに帰りたくないのだ。今はだいぶ落ち着いているが、嫌悪感の拭えぬ場所には行きたくないんだろう。エルダという癒やしを一緒に連れて行きたいくらいには。



 「でも大丈夫なの?」
 「エルダも自衛くらいできる。寧ろお前のほうが心配だっての。」
 「なんで?」
 「無茶しねぇか心配なんだって。ここ最近激務だろ。休めてんのか?」
 「タサファンよりはマシだろ。」



 人気の冒険者は貴族や商人からも指名で任務を受けてくれないかと話が舞い込む。タサファンは大人気だから毎日のように依頼が舞い込む。激務は彼の方だ。

 俺の場合はギルドマスターからの依頼が多いからな…。有り難いよ、ほんとに。


 
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