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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟むハッとしたらベッドの上にいた。頭が滅茶苦茶痛い…少し目眩がして、俺がこうなる前の状況が思い出される。俺は今、とっても渋い顔をしていることだろう。
痛む場所を撫でると包帯が巻かれていた。なんとか起き上がって辺りを見回すと、小さな背中がせっせと動いているのが見える。
見覚えのある赤茶色の後頭部を眺めていると、赤茶色の頭がくるりと回転して同じ色の瞳が俺を捉えた。始めは驚いた顔をしていたが、すぐに安堵したように顔が綻ぶ。馴染みのその表情に俺は気持ちが安らぐ。
「よかった、やっと目が覚めたねアル。気分はどう?」
「最悪だ、頭が凄く痛いよエルダ。」
「まだ傷が塞がっていないからね。薬を用意するね?あっ、その前にご飯かな?」
「お腹空いてない。」
「1週間も気を失っていたんだから仕方がないよ。パン粥を用意するね。タサファンに目が覚めたこと伝えてくるよ。」
「うん、頼むよエルダ。」
ふわふわの髪が揺れ、Ω特有の甘い匂い。癒やされる存在…タサファンの奥さんのエルダが俺を看病してくれていたらしい。
エルダがいそいそと部屋から出て行くのを眺め、1週間も気を失っていたことに驚きつつ、こうなってしまった原因の馬鹿共を思い出し頭を抱える。
あのギルドマスターからの尋問?中は椅子に縛られたままだった俺はキレ散らかした保護者の面々の暴走した魔力を一身に受けてふっ飛ばされた。身動き出来ないのに逃げられるわけがない。
多分、ギルドマスターとヨルダンの騎士団長さんは逃げられたと思う。あれでも実力はタサファンに引けを取らぬくらい強いのだから。俺を捕まえるだけの力はある。どうか無事であってほしい…。
「暴走した魔力で叩きつけられたんだ…そりゃ痛むわけだ…。」
ジクジク、キリキリとひっきりなしに痛む頭の傷。普通に出来た傷と違い大量の魔力を含んだ攻撃は、簡単には治らない。バイ菌が入ったみたいに治りが極端に遅くなり、化膿して下手すると壊死していく。
ヒールの魔法で治す方法もあるけど、それは怪我を負わせた魔力より強く打ち消すほどの強い魔力で、実力者が行って初めて効果が出る。残念ながら今回のこの怪我はヒールでは治せない。
こうなると薬草などで地道に治していくしかない。体が丈夫なαで良かったと心底思った。これがΩだったら確実に死んでたな…。
エルダが俺の面倒を見てくれていたのは彼が薬師としても有能だからだ。彼が調合した薬は本当によく効く。
「しっかし、こうも痛みが続くとなると暫くは仕事できないな…金には困ってないし、とにかく今は休むとするか。」
はぁ~、なんて情けないため息をつきながら俺はベッドに横になる。視界には見慣れない天井…そういや、ここ何処だ?流石にヨルダンからは移動してないとは思うけど。
ぼんやりとそんなことを考えながら俺は瞼を閉じる。あれだけ騒がしかったのが嘘のようだ。
なんだか賑やかな声が懐かしくなってしまった。あいつら不貞腐れてなきゃいいけど…。過保護でいるなら一目散に駆けつけてこいよなー、全く。
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