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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟む冒険者は怪我をするのが当たり前。たまにイレギュラーなこともあるけど、魔物と戦っていたら怪我しないことなんてない。それが上位の冒険者でもだ。ランクの高い冒険者ほどひとつの傷を気にかける。
毒を持つ虫に刺されれば肉が腐ってしまうかもしれない。麻痺が残るかもしれない。万が一を考えて常に行動するものだ。だから、今回の怪我だって理不尽だと思いつつも、まぁ仕方ないかな、くらいにしか考えていなかった。
もう10年も冒険者してるんだよ?今回以外にも大怪我を負ったこともある。だから、傷が残ったって気にしない。俺は男だ、傷一つでギャーギャー言わない……んだけど。
「なんと…こんなにも大きく…。」
「ごふっ!…ゲホゲホっ!」
「ああぅ~…こんな大きな傷、残っちゃうなんてぇ…。」
「ああぁ…赤子は弱いと知っていながら守るどころか…。」
「ゲホッ……ま、まぁあれは事故だったってことで。」
「ちょっと!アルは怪我をしているのです!絶対安静なんです!乱暴しないでください!!」
「おおお、すまない…。」
「しょぼん…。」
俺の意識が戻ったのを感じ取ったお騒がせ野郎達がシュッとやってきた。パン粥をちびちび食べていた俺は驚いて咽た。そして大きな範囲を包帯を巻いた頭を見るなりさらに騒がしくなる部屋の中。
エルダが怒って場を収めてくれなきゃずっとうるさかったろうな…。ちょっと前まで騒がしかったのが懐かしいと思っていた自分よ、見つめ直せ…これは、うるさいだ。
「もう、こんなことでメソメソしないでよコハク。傷跡は残るかもだが、ちゃんと治るし、後遺症は残らないってエルダが言ってたから問題ない。」
「でもでも~、これじゃお婿にいけないんじゃ…。」
「なんで婿入り前提で話してんの?俺、結婚願望ないからね?」
「しかしこれでは……そうだ、責任取って俺が娶るしか…。」
「やめろ!変なことを言い出すんじゃないコクヨウ!!ハクアも頷くな!」
なんでそんな斜め上の発想になってしまうわけ!?これが女なら分かるけど、俺は男!しかもα!!娶るは違うだろ!
両手をわなわなしながらコクヨウが呟くのに同意するハクアも混乱しているだけに違いない。
「とにかく、俺は安静にしなきゃいけないから大人しくしてて。話し相手くらいならできるからさ。」
「アル、怪我させられたのに訴えなくていいの?」
「ん?あぁ人間じゃないから訴えるなんてできないだろ。そういやギルドマスター達には正体明かしたの?」
「いや、アルディウスが目覚めるまでは話さないと言ったぞ。」
「怪我が良くなってからね~。」
「……ねぇ、質問していい?」
「なに?エルダどうかした?」
「アルって、その、アルディウスって名前なの?」
「………あっ。」
「………あっ。」
「アルディウスって、まさかアーダングラウドの神隠し…じゃない、の?」
「あばばばばっ!違う、違うよエルダ!忘れてね?俺はただのアルだから!」
アーダングラウドの神隠し、とは。俺が教会で行方不明になってからエンデルクロス王国(俺の出身地ね)で、大規模な捜査をしたものの痕跡ひとつなくまさに神隠しだと言われている未解決事件のことである。
俺もうっかりしていた…すっかり忘れていた。アルディウスって名前はある意味有名なんだった!
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