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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟むいろいろバレてしまった。俺は悲しい…。
「つまり、アル君。君はアルディウス・アーダングラウド公爵令息で間違いないんだね?それに、君は神の祝福を受けて神の眷属であるフェンリルに保護されている、と。」
「保護はつい最近だけどね。だいたいそんな感じです。」
「我も神隠しの話は聞いておらんかったぞ。大事な話ではないか。」
「いや、ごめんじゃん…。俺もすっかり忘れてたんだ、平和だったからさぁ…。」
ベッドの上でシュンとする俺の頭をよしよしするコハク。気遣ってすごく優しく触られているので痛みはない。エルダのくれた薬が効いているみたいでなにより。
しかし、そのエルダに俺の正体すらバレてしまって取り返しのつかない話になりそうだった為、俺は諦めて全てを話すことにしたのだ。
部屋にやって来たギルドマスターのアントムさんと、長年付き合いのあるタサファンとエルダ。そして俺の自称保護者のハクアとコクヨウ、そしてコハク。
お世話になったマルさんやタサファン、俺の扱いが雑なギルドマスターにだって本当は迷惑をかけたくない。身分を隠していることに罪悪感が無かった訳ではないのだ。
「俺、どうしてもあの家から逃げたかった…それに、あの国の第二王子も大嫌いで、惨めな思いを一生するのかと思ったら我慢出来なかったんだ。」
「これから、どうするんだ?」
「今まで通り暮らすよ?絶対にあの国には帰らないって決めてんの。」
「私としては君ほどの実力がある冒険者がいなくなる痛手は負いたくない。しかし、万が一貴族からの、アーダングラウド公爵家からの横槍が入った時…君を助けてあげられるほどの権力はないよ?いいのかい?」
「かまわない。これは俺が決めたことだから。もしギルドに迷惑をかけることになりそうならその時はまた何処かに行くよ。それくらい出来る稼ぎは今までさせてもらったしね。」
だからこれからも知らぬふりしてくれる?なんてギルドマスターに言えば、目尻が下がって少し悲しそうな顔になった。せっかくのイケおじが残念な表情である。
タサファンとエルダも無言だ。タサファンは俺の気持ちがわかるのか眉間にシワをよせて複雑そうな顔をしている。俺は彼ほど辛い過去があるわけじゃないから、同情なんていらないんだけどな。
「わかった。お前の気持ちを優先しよう。この神の眷属達のことも極秘とする。」
「ありがとうアントムさん。」
「しかし、だ!君は少し迂闊過ぎる!忘れていただなどと、普通はそうならないんだよ?……A級にしたの間違いだったかな。」
「今からでもC級に落としてくれてもいいんだけど?」
「減らず口を叩くんじゃない。今は怪我の治療に専念し、回復し次第ヨルダンから帰ってきなさい。」
「むっ、我はアルディ…アルの家に行きたい。我が面倒を見るから住処に連れてゆくぞ?」
「え~っ、俺まだ動けないよ?頭以外も怪我してるんだからね?」
「コクヨウが抱えれば問題あるまい。風邪を引かぬようタオルで包むがよい。」
「わかった。任せてくれ。」
「じゃあ~、コクヨウが抱えたままコハクに乗って行けばすぐに帰れるね~?」
「また無茶苦茶言い出したなこいつら!抱える必要ないだろ!?絶っっっ対に嫌だからね!」
「……大変そうですねぇ。」
小さく聞こえたエルダの呟きにツッコむ暇などないくらいに三人衆と押し問答をするのだった。
結局俺が折れて次の日には移動することになり、ヨルダンの騎士団長さんとかには上手いことギルドマスターが伝えてくれるとのこと。ご迷惑おかけしますねぇ…。
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