実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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そして出会う俺とお前

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 突然だが、αという生き物は支配する側の人間である。時に例外はいるらしいが、基本的には人の上に立つ人間だ。よりαとしての遺伝子が強いと完璧な男として、貴族としてはより高い地位に立てる。この世界の第二性とは、とても重要なものだ。

 そう、とても重要なのだ。このロンバウトという男はバランスの良い体つきで、王家にしかない黄金色の瞳は他のαを圧倒する存在だ。筋肉質な180cmの身長に、幼い頃より受けた英才教育は生かされ、今では公爵として立派に仕事をこなす優良物件……それは女性やΩからすれば、たが。

 同じαに熱量をぶつけるのはおかしい。俺はロンバウトより身長もあるし、それなりに筋肉質。見た目は完全にαだ。昔も女の子みたいに可愛かった訳ではない俺に、異様なまでに執着するこの男…絶対に変だ。

 明らかに俺へ向ける視線が、熱い。そりゃもうあっつあつ。流石の俺でもわかる。これは恋い焦がれている乙女のような……いや、気持ち悪いから考えるのやめよう。




 「ロンバウト様は本当に気持ち悪いですねぇ…。」
 「お前は頭ん中腐ってっから気持ち悪いんだよ。気づけ。」
 「うるさい兄弟だ。私は真面目にアルディウスのことを考えているだけだ。気持ち悪いのはお前らだろうに。」
 「私達は大事な弟の身を案じているだけです。貴方と一緒にしないでください。」
 「俺らはお前みたいな突拍子なことはしていない。黙ってなストーカー。」
 「ストーカーではないと言ってるだろう!」



 元ではあるがロンバウトは王子なんだ。同じ公爵とはいえ言いたい放題だなフィリスティウス。まぁ、そう言われるほど変態行動してたのかロンバウト。詳しく知りたいような、知りたくないような…。

 会話を聞けば聞くほどドン引きなんだが…こいつ、ただの拗らせとかのレベルじゃないぞ。



 「う~ん、本当に気持ち悪いねぇ~。アル様に近寄って欲しくないよ~。」
 「ここまでくると病気だな…。」
 「時に一途な想いは病的な執着になる。勉強になったではないか。」
 「なにを冷静に話してんだ!ハクア、しみじみと思い耽るんじゃない!コハクもドン引きしてないで!コクヨウまで体ごと引かないでよ!!」
 「しかし、ここまでくると本気度が違うな。普通はここまで追いかけてこないし、今のお前を見ても夢見る乙女の顔してたぞ。」
 「気持ち悪いこと言うなコクヨウーっ!」




 ゾワワワワ、全身に鳥肌が立った。体を擦りながら俺が怒鳴ると全く悪びれた様子のないコクヨウが、すまんと特に感情の篭っていない声で謝った。絶対に反省してない。

 向こうはまた喧嘩しているようだが、会話の内容がエグい。幼い頃の俺が可愛かったみたいな話くらいなら恥ずかしい程度で済むが、今の俺を性的に見ている話を兄弟にしないでほしい。

 保護者達はそんな会話を聞いても平然と…いや、予測はしていたのは意外と対応は冷静だった。当の本人は絶叫したが。

 俺は別にすっごい肉体美な訳じゃないし、ロンバウトは俺の全裸見たことないだろう。想像でうっとりするの…ぎもぢわるい(心底気持ち悪い)です。



 「やめろーっ!俺のち○この話とかは本人のいないところでしてくれーっ!」
 「話はしていいんだねぇ~アル様~。」
 「まぁアルのは立派だよな。」
 「人間にしてはなかなか凛々しいブツを持っておるのは事実よな。」
 「なんでお前らが知ってんだ!ふざけるな私のアルディウスなのに!」
 「お前のアルディウスじゃない!」
 「我らはアルディウスの保護者だぞ?共に風呂に入ることもあるわ。裸の付き合いはよいものだ。」
 「あああぁぁーっ!!ズルい、ズルい私もアルディウスとお風呂入りたい!」
 「コハクは一緒に寝てるよ~。アル様体温高いから一緒に寝るの気持ちいいんだ~。」
 「ぎゃーっ!なんで!私だって同衾したい!」
 「同衾って言い方やめろ!」



 
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