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第十三話
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「アイナはどう? その……ジェイルとはうまくいっているかしら……?」
「……そうですね……どうなのでしょうか…………」
今度はしっかりと寂しげな表情になったアイナを見て、レイラは途端に心配になった。レイラが不安そうな顔になったからか、アイナは慌てたように微笑む。
「不満があるわけではございません。あのようなことがあったからといって、ジェイルとの関係性に変化はございませんし、お姉様の知るジェイルのままでございます」
アイナは微笑んではいるものの、目からは寂しさがうかがえた。
「幼い頃からお姉様とジェイルが互いに思いを寄せ合っていることに気付いておりました。お姉様同様、私もジェイルのことを近くで見てきましたので……」
アイナは果物屋の方に視線を向け、ジェイルたちがまだ果物屋にいることを確認すると、真剣な目でレイラを見た。
「私も物心ついた頃からジェイルに恋をしておりました」
唐突な告白に、レイラは返事ができず瞬きを繰り返した。今までそのような素振りを一度を見たことがなく、アイナがジェイルに恋心を寄せている可能性を考えたことすらなかったのだ。
くすっと笑うアイナ。
「お姉様、驚きすぎでございます」
「ぇっ……ぁ…………だって……っ」
「お姉様を含め誰にも気付かれていない自信があったのですが、やはりお姉様にもバレていなかったようですね」
「……うん…………」
まだ現実を受け止めきれておらず、レイラは目が泳いだ。幼い頃から一緒に過ごしてきたのに少しも気付かなかったことに情けなさを感じた。そして、誰にも気付かれないように恋心を内に秘めていたアイナをよそにひとり悠々と恋を楽しんでいたのかと思うと、恥ずかしさや申し訳なさでいっぱいになった。
顔が俯きどんどん表情が苦しくなるレイラの手に優しい感触が伝わる。アイナの手だ。
「まさかではないですが、自分を責めていらっしゃいますか? 当たり前のことですが、お姉様が私に対して申し訳なく思う必要も、過去を悔いる必要もございません。私は誰にも気付かれたくありませんでした。面と向かって言うのは少し照れてしまいますが、ジェイルよりも私はお姉様が大事なのです。大切な人と好きな人に幸せであってほしい、楽しく過ごしてほしい、それが私の願いでした。その通りになっていたのであれば、これ以上に幸せなことはございません」
優しい眼差しを向けてくれるアイナを見つめるレイラの目には涙が滲んだ。
「お姉様……!」
アイナはハンカチを取り出し、レイラの目元に添えた。
「ありがとう……大丈夫……」
そう言いながら、レイラは瞬きしながら手で目元を扇いだ。
「私……全然だめですね……」
「……?」
「先程ジェイルとうまくいっているかについて聞かれた際、曖昧な返事をしてしまって……心配そうな顔をなさるお姉様を見て、心配をかけてどうするのかと反省し、安心していただきたくて打ち明けました。私が好きな人と結婚できるのだと知れば、安心していただけるのではないかと思い……。ですが、お姉様を悲しませてしまいました……」
レイラはあわてて首を振った。
「そんなことないわ……! 話してくれてとても嬉しかった……いつも聞いてもらってばかりだったから……。ずっと、アイナに気を使わせてばかりなのね……情けない限りだわ……不甲斐ない姉で本当にごめんなさい……!」
「やめてください! 不甲斐ないだなんてあり得ないです。そのようなことを思ったことなど一度もございません。お姉様はいつも明るくて、優しくて、私にとって太陽の様な存在なのです」
レイラは口をぎゅっと閉じ、再び首を横に振った。
「そんな素敵な姉じゃないの…………」
父から隣国の王太子と結婚することになったと聞かされた時、レイラは自分ではなくアイナではだめなのかという旨を口にしたことをはっきりと覚えている。大きなショックを受けたとはいえ、自分のことしか考えていない発言を悔いていた。
「だって……私は――――」
レイラが続きを言う前に、ゼフトとジェイルが戻ってきた。
「少しは話せただろうか?」
「あっ……はい……」
ゼフトに聞かれ、咄嗟に答える。
それから四人は婚約者同士で隣に座り、テーブルを挟んで向かい合った。
「……そうですね……どうなのでしょうか…………」
今度はしっかりと寂しげな表情になったアイナを見て、レイラは途端に心配になった。レイラが不安そうな顔になったからか、アイナは慌てたように微笑む。
「不満があるわけではございません。あのようなことがあったからといって、ジェイルとの関係性に変化はございませんし、お姉様の知るジェイルのままでございます」
アイナは微笑んではいるものの、目からは寂しさがうかがえた。
「幼い頃からお姉様とジェイルが互いに思いを寄せ合っていることに気付いておりました。お姉様同様、私もジェイルのことを近くで見てきましたので……」
アイナは果物屋の方に視線を向け、ジェイルたちがまだ果物屋にいることを確認すると、真剣な目でレイラを見た。
「私も物心ついた頃からジェイルに恋をしておりました」
唐突な告白に、レイラは返事ができず瞬きを繰り返した。今までそのような素振りを一度を見たことがなく、アイナがジェイルに恋心を寄せている可能性を考えたことすらなかったのだ。
くすっと笑うアイナ。
「お姉様、驚きすぎでございます」
「ぇっ……ぁ…………だって……っ」
「お姉様を含め誰にも気付かれていない自信があったのですが、やはりお姉様にもバレていなかったようですね」
「……うん…………」
まだ現実を受け止めきれておらず、レイラは目が泳いだ。幼い頃から一緒に過ごしてきたのに少しも気付かなかったことに情けなさを感じた。そして、誰にも気付かれないように恋心を内に秘めていたアイナをよそにひとり悠々と恋を楽しんでいたのかと思うと、恥ずかしさや申し訳なさでいっぱいになった。
顔が俯きどんどん表情が苦しくなるレイラの手に優しい感触が伝わる。アイナの手だ。
「まさかではないですが、自分を責めていらっしゃいますか? 当たり前のことですが、お姉様が私に対して申し訳なく思う必要も、過去を悔いる必要もございません。私は誰にも気付かれたくありませんでした。面と向かって言うのは少し照れてしまいますが、ジェイルよりも私はお姉様が大事なのです。大切な人と好きな人に幸せであってほしい、楽しく過ごしてほしい、それが私の願いでした。その通りになっていたのであれば、これ以上に幸せなことはございません」
優しい眼差しを向けてくれるアイナを見つめるレイラの目には涙が滲んだ。
「お姉様……!」
アイナはハンカチを取り出し、レイラの目元に添えた。
「ありがとう……大丈夫……」
そう言いながら、レイラは瞬きしながら手で目元を扇いだ。
「私……全然だめですね……」
「……?」
「先程ジェイルとうまくいっているかについて聞かれた際、曖昧な返事をしてしまって……心配そうな顔をなさるお姉様を見て、心配をかけてどうするのかと反省し、安心していただきたくて打ち明けました。私が好きな人と結婚できるのだと知れば、安心していただけるのではないかと思い……。ですが、お姉様を悲しませてしまいました……」
レイラはあわてて首を振った。
「そんなことないわ……! 話してくれてとても嬉しかった……いつも聞いてもらってばかりだったから……。ずっと、アイナに気を使わせてばかりなのね……情けない限りだわ……不甲斐ない姉で本当にごめんなさい……!」
「やめてください! 不甲斐ないだなんてあり得ないです。そのようなことを思ったことなど一度もございません。お姉様はいつも明るくて、優しくて、私にとって太陽の様な存在なのです」
レイラは口をぎゅっと閉じ、再び首を横に振った。
「そんな素敵な姉じゃないの…………」
父から隣国の王太子と結婚することになったと聞かされた時、レイラは自分ではなくアイナではだめなのかという旨を口にしたことをはっきりと覚えている。大きなショックを受けたとはいえ、自分のことしか考えていない発言を悔いていた。
「だって……私は――――」
レイラが続きを言う前に、ゼフトとジェイルが戻ってきた。
「少しは話せただろうか?」
「あっ……はい……」
ゼフトに聞かれ、咄嗟に答える。
それから四人は婚約者同士で隣に座り、テーブルを挟んで向かい合った。
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