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第4話:ミノネリラ騒乱
#31
しおりを挟む「しかしまぁ、“分身の術”とか変わった事を、よく思いつくよなぁ、ノヴァルナ様は。アレ、(センクウ・カイ)FXの開発が決まった時、ご自分でガルワニーシャの技研に、アイデアをねじ込んだんだろ?」
『シデン・カイXS』の超電磁ライフルを撃ちながら、『ホロウシュ』のセゾ=イーテスが同僚のシンハッド=モリンとの通信回線に呼びかける。無駄口ではあるが、眼球は状況確認に激しく動いており、油断はしていない。
対するモリンも、緩慢な直線運動に入った敵のASGULに、射撃を浴びせながら応答する。
「それな。『ムシャレンジャー』が元ネタらしいぜ」
「は?…『ムシャレンジャー』?」
モリンの言葉に眉をひそめつつ、セゾは機体機動に捻り込みをかけて、敵の攻撃艇からのビームを難なく回避した。一方のモリンは、狙っていたASGULを撃破して機体を加速させ、セゾの疑問に答える。
「そ。追加戦士のシャドウブラックが乗るロボ・シャドウが、分身の術を使ってるじゃん。アレを自分の『センクウ』でもやれないか…って、真剣に考えてらした時があってな」
「えー。ロボ・シャドウのとは、全然違うじゃねーか」
確かに『閃国戦隊ムシャレンジャー』に登場する、ロボ・シャドウの分身の術は実体があり、それぞれがシュリケン・ブレードを投擲して来るため、欺瞞情報で数が増えたように見せ掛けるものではない。するとそこへノヴァルナ自身が、通信で割り込みを掛けて来た。
「ああ? しょーがねーだろ。技研の連中と話して、一番現実的な方法がこれしか無かったんだからよ!」
「ノ、ノヴァルナ様!」
「すいません!」
慌てるセゾとモリンにノヴァルナは「ふん」と鼻を鳴らし、口調を真剣にして命じる。
「そろそろ敵の艦隊が、痺れを切らして動き始めるはずだ。俺は敵の旗艦を狙う。敵のBSI部隊をもっと押し込んどけ」
「御意!」
凛としたノヴァルナの口調に、声を揃えるセゾとモリンの口許も、自然と引き締まる。『ホロウシュ』の筆頭を任されているモリンは、他のメンバーにもノヴァルナの指示を即座に伝えた。
「全機、積極攻勢に出ろ。敵のBSI部隊を艦隊戦闘に参加させるな!」
『ホロウシュ』達の「了解」の応答を聞きながら、ノヴァルナは『センクウ・カイFX』のスロットルを上げて加速を掛ける。『センクウ』よりアップした瞬発力が頼もしい。そして『センクウ・カイFX』は、バックパックのハードポイントから、大型の方の超電磁ライフルを手に取った。
ノヴァルナの『センクウ・カイFX』が手に取った、大型のライフル。これこそが今回ノヴァルナが使うと告げていた“アレ”であった。そしてその正体は、二年前に“フォルクェ=ザマの戦い”に勝利した際、イマーガラ家当主ギィゲルト・ジヴ=イマーガラのBSHO『サモンジSV』が使用し、ウォーダ軍第1艦隊の戦艦群に大損害を与えた、超空間狙撃砲『ディメンション・ストライカー』である。
ギィゲルトを討ち果たし、鹵獲した『D‐ストライカー』は、ウォーダ軍によって機能を細部まで解析され、ノヴァルナの指示による改修・再構成を経て、『センクウ・カイFX』用の新装備となった。今回の戦いはその『センクウ・カイFX』仕様の、初の実戦使用となる。名称は元の使用者、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラに敬意を表し『サモンジ』だ。
トモスの艦隊は、自軍BSI部隊の機動戦の趨勢が芳しくない事から、ノヴァルナの読み通り、砲撃戦でウォーダ軍第1特務艦隊を撃破しようと、動き始めた。基幹艦隊の火力をもってすれば、戦闘輸送艦と宙雷戦隊で編制された小艦隊など、ものの数ではない。
ただノヴァルナの狙いもまた、トモスの旗艦である。電子共鳴弾が発するダミー情報と『ホロウシュ』の技量が、二十倍のイースキー軍BSI部隊を圧迫する間を抜け、『センクウ・カイFX』を駆って、トモスの旗艦を目指した。
また第1特務艦隊の方も応戦態勢を取る。“タクバークの雲”の、氷塊の密度が一番高い部分に艦隊を潜ませ、宙雷戦隊には突撃態勢を取らせる。
第1特務艦隊のこの状況を見て、トモスは「ほう…」と、興味をそそられた表情になった。相手が後退すると考えていたのだろう。
「大量の氷塊を盾代わりに、応戦するつもりか。さすがはノヴァルナ殿の直卒衆。戦意は高そうだな…しかし」
無謀なものだ…と思う。幾ら大量の氷を盾にしたところで、中小艦艇の兵装相手ならともかく、戦艦の主砲ビームの前では何の役にも立たない。
「敵艦隊、間もなく戦艦主砲の射程に入ります」
砲術参謀の報告に、トモスは大きく頷いて告げる。
「射程に入り次第、射撃開始」
その声を発した直後、トモスは環境の外、彼方の宇宙空間を一条の光が過ぎるのを見た。彗星のようだが、トミック星系の主恒星からこれほど離れた場所で、彗星が尾を引くはずは無い。
そしてトモスが首を傾げた一分も経たぬうちに、トモスの旗艦は左舷内部から、爆発を起こしたのであった。
トモスの旗艦に爆発を発生させたのは無論、『センクウ・カイFX』の超空間狙撃砲『サモンジ』によるものだ。
宇宙空間に漂う一つの氷塊の上に立つ『センクウ・カイFX』は、一弾を発射すると、ライフル本体のレバーを引き、シリンダー状のパーツを分離した。分離されたパーツは回転しながら、無重力の中を飛び去って行く。すると『センクウ・カイFX』は、バックパックから排出された新たなパーツを手に取り、ライフル本体へ装着。射撃体勢に入った。
コクピット内のノヴァルナは、『サモンジ』専用の射撃照準センサーの表示を見据え、無言でトリガーを引く。長い銃身の先端に開く発射口から一瞬だけ、青白い光が飛び出す。次の瞬間、銃身内で超空間転移した銃弾が、トモスの旗艦内部で実体化し、同位相爆発を起こした。今度の一弾は艦首に大穴を穿つ。
ズシン!…と、まるで巨人に上から拳で殴りつけられたような、激しい震動が艦橋まで伝わり、立っていた乗組員をすべて転倒させる。
「艦首長距離センサー付近で爆発!」
完全に混乱し、声を上擦らせて報告するオペレーター。
「攻撃か!? 何が起きている!?」
トモスの問いに艦長が何か答える前に、さらなる爆発が艦底部で発生した。推進機系に障害が起き、トモスの旗艦は速度が低下し始める。旗艦のトラブルは艦隊のすべてに影響を及ぼす。艦列が乱れ、護衛の駆逐艦が右往左往しだした。“フォルクェ=ザマの戦い”の前哨戦の時と同じで、イースキー軍はノヴァルナの『D‐ストライカー:サモンジ』による超空間狙撃を、付近に潜む“潜宙艦”の雷撃だと勘違いしたのだろう。
今回の試射で用意した『サモンジ』の弾数は六発。ノヴァルナは残る三発をトモスの旗艦ではなく、他の戦艦に一発。重巡航艦二隻に一発ずつ撃ち込んだ。これがまた絶妙のタイミングであり、旗艦にばかり損害が出ると思っていたイースキー軍は、それ以外の艦にも爆発が起きた事で、混乱を拡大させる。
効果ありと判断したノヴァルナは、『サモンジ』をバックパックに戻し、『クォルガルード』に通信を入れた。
「マグナー准将」
以心伝心、この言葉のみでマグナー准将は第1特務艦隊に命令を出す。
「宙雷戦隊、突撃せよ」
これを聞き、一本棒の隊列を組んだ宙雷戦隊が二つ。漂う氷塊の間を縫って、獲物を狙う蛇のように、突撃を開始した。
▶#32につづく
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