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第14話:齟齬と軋轢
#20
しおりを挟むそして戦国の世において、桁違いの強さを持つ者の存在は、戦場全体の動きにまで影響を及ぼす。強き者は高名を持つ者、またはいずれそうなる者であり、それを討ち取る事で、自らも名を上げようとする者を引き付ける。それによって連鎖反応が発生し、BSI部隊による混戦の渦を成すのである。
今回の場合、その渦の中心となったのが、ティガカーツ=ホーンダートだった。
ティガカーツを援護しようとするトクルガル軍BSI部隊、ティガカーツと戦っている味方を救援しようとする、アザン・グラン軍の宇宙城直掩BSI部隊が次々と集まり、艦隊戦とは別の場所で、大規模なドッグファイトの戦場が出現。それはやがてアザン・グラン軍の防衛艦隊と、ウォーダ軍艦隊双方のBSI部隊まで巻き込み始めた。
「随分と、賑やかに、なって、来たね」
言葉を途切れさせる度に、機体を激しく機動させるティガカーツ。そしてその度にライフルで、ポジトロンランスで、敵機が撃破されていく。
「く、くそっ! なんてバケモノだ!」
援護しようとするものの、まるで効果がない状況に、歯噛みをする『ハヤテ』のパイロット。そこへ四機の部下を引き連れて接近して来る、アザン・グランの中隊指揮官機があった。
「あれがトクルガル軍のBSHOだ。奴を叩くぞ」
親衛隊仕様の『ハヤテGC』に乗って指揮を執る男は、それなりに腕に自信があり、相応の地位を与えられているようである。従う四機も同じく親衛隊仕様機なのがその証左だ。エースパイロット級の相当高度な技量を持ちながら、惜しむらくはBSHOに搭乗出来るだけの、深々度サイバーリンク適正を持っていないパイロットによく見られる、特別な分隊編制で、ウォーダ軍であればカッツ・ゴーンロッグ=シルバータなどがこれにあたる。
「Z-02、これより敵BSHOと格闘戦に入る。周辺の味方機は一時距離を取って、BSHOを援護しようとする敵機を排除しろ!」
味方のBSI部隊にそう告げて、指揮官機パイロットは『カヅノーVC』の頭上から、降下を開始する。
「全機、“フォーメーション・ペンタゴン”!」
まるで花が開くように、五方向へ展開する親衛隊仕様『ハヤテGC』。その統制のとれた動きを見上げ、ティガカーツはむしろ、期待するような眼で呟いた。
「うん。いいね」
高低差をつけて五機の『ハヤテGC』が『カヅノーVC』を取り囲む。それは真上もしくは真下から見ると、正五角形の中心に『カヅノーVC』を置いた形となっていた。
「かかれ!」
指揮官機パイロットの言葉で、五機の『ハヤテGC』は超電磁ライフルを連射し始める。五方向から迫りくる銃弾を、『カヅノーVC』は紙一重で躱しながら、急加速した。
「逃がすな! 奴を中心に置け!」
五機の『ハヤテGC』は『カヅノーVC』に合わせて急加速。五角形になる位置を保ちながら、銃撃を続ける。これはパイロットの技量が、大きくものをいう戦術だった。
「うん。こっちがもっと正解だね」
闇雲に取り囲んで、ブレードなどで次々に斬りこんで来た、先程までの敵集団とは違い、距離を置いての執拗な銃撃で、操縦ミスや疲弊を誘うのが、強敵に対する正しい戦い方だというのが、ティガカーツが先程言いたかった事であった。しかも今のように、五方向からの銃撃を維持できれば、正面に味方機はおらず、同士討ちの可能性はかなり低くなる。だが無論、ティガカーツとて斃されるつもりは無い。
「ごめん。でも機体性能が違うよね」
のんびりとした口調とは裏腹に、ティガカーツの眼がギラリと輝く。次の瞬間、さらに加速をかけた『カヅノーVC』の姿が、アザン・グラン軍パイロットの視界から消失した。
「消えた!?」
驚く五人のパイロット。そしてその短い言葉を言い終えぬうちに、パイロットの一人のコクピットに、衝突警戒警報が鳴りだした。こういう場合のこの警報は、敵が間合いまで迫った事を示している。
「なにっ!!」
咄嗟に機体を翻すアザン・グラン軍パイロット。そこへ伸びて来たポジトロンランス、『ドラゴンスレイヤー』の石突きが、猛烈な衝撃と共に機体の右胸部を砕いた。恐るべきはティガカーツの技量だ。この若者は八発装填の敵の超電磁ライフルが、連射後の次の装填にかかる僅かな時間をついて、瞬発的機動を行ったのだ。
右胸部を砕かれたその『ハヤテGC』は、右腕の機能まで麻痺し、超電磁ライフルが撃てなくなった。それでも左手で腰のQブレードを逆手に持ち、斬撃を浴びせようとするアザン・グランのパイロット。
「きみは運がいいんだから、やめといた方がいい」
そう言ってティガカーツは『カヅノーVC』を半回転、『ドラゴンスレイヤー』をぐるんと一回転させた。その穂先の刃が、背後で斬りかかろうとしていた『ハヤテGC』の、ブレードを握った左手首を斬り落とす。“運がいい”とは、最初の石突きでの一撃が、機体腹部のコクピット直撃ではなく、右胸部だったため、即死せずに済んだ事を指していた。
▶#21につづく
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