銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第14話:齟齬と軋轢

#21

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 これに対して、指揮官機を含む残る四人は、不運だったとしか言いようがない。

 味方の一機と機体が重なった事で、四機が射撃を躊躇った一瞬を逃さず、ティガカーツは超電磁ライフルを一連射。二機目の『ハヤテGC』が躱しきれずに、連射弾の最後の一発で、バックパックを撃ち抜かれた。
 対消滅反応炉の爆発で砕け散る味方機の発光に照らされる。残りの三機。「まだだ!」と叫ぶ指揮官。

「三機で近接フォーメーションを組む! 回り込め!!」

 三機で射撃戦は無理だと判断した指揮官は、取り囲んでの格闘戦を選択した。部下の二機はポジトロンパイク。指揮官機は長めのクァンタムブレードの二刀流だ。

「ふぅん…強そうだね」

 相手の殺気が増したのを感じ、ティガカーツは『カヅノーVC』の左手に握らせていた、超電磁ライフルをバックパックのハードポイントへ戻して、『ドラゴンスレイヤー』を両手持ちにする。
 それと同時に左右から同じタイミングで仕掛ける、二機の『ハヤテGC』。余程訓練を積んでいるのか、息もぴったりだ。さらに正面から二刀流の指揮官機が、一気に間合いを詰めて来る。逃げ場所のない合わせ技だ。

 ところがここでティガカーツは、再び驚くべき技量を見せる。三機の斬撃が揃って半円を描く刹那を見切り、『ドラゴンスレイヤー』を大きく旋回。二本のポジトロンパイクと一本のQブレードを、ひと振りで弾き返した。残るは二刀流の指揮官機の、もう一本のブレード。するとティガカーツは自分の機体を回転させて、残る一本の斬撃をスルリと回避する。
 体勢を崩した指揮官機はそのまま前へ、そして後ろを取った『カヅノーVC』の鑓の刺突が、指揮官機を背中のバックパックごと刺し貫いた。血飛沫のように赤いプラズマを、バックパックに空いた穴から吹き出した指揮官機は、慣性で前進したのち爆発。だが残った二機は動じる事無く、再び斬撃を放って来る。強敵を前にしているこの状況で、非情だが正しい判断だ。

 しかし、やはりティガカーツは格が違っていた。この程度の相手なら、二機同時でも動きを見切る事が出来る。

“右から来る方が少しだけ遅い!”

 瞬時に判断したティガカーツは、『カヅノーVC』を僅かに右へスライドさせると、「ごめん…」と呟いて『ドラゴンスレイヤー』の連続突きを繰り出した。何本もの鑓が一度に見えるほどの凄まじさの刺突が、二機の『ハヤテGC』の機体をズタズタに引き裂く。

 この光景にティガカーツの周囲で、遠巻きに状況を見ていた敵のBSI部隊は、一斉に逃げ出した。『カヅノーVC』が撃破した五機は、『カノン・ガルザック』城守備隊のエースチームだったのだろう。それが難なく敗北し、一気に士気が低下したに違いない。
 
 一見すると戦場全体の流れからは外れているような、BSI部隊同士の戦闘に思えるが、実際はそうではない。
 ティガカーツの鬼神の如き戦いを見て、アザン・グラン側のBSI部隊が逃げ出した事で、BSI部隊の戦場に大穴が空き、ウォーダ側の対艦装備や対要塞装備を施したBSI部隊の突入を許したのだ。

 対艦装備のBSI部隊の主な狙いは、アザン・グラン側の軽巡航艦や駆逐艦である。宙雷戦隊を構成するこれらの艦を叩く事で、戦艦や重巡航艦の戦いを有利に進めるためで、特に今回のようにアザン・グラン側に対するウォーダ側のように、戦力が大きな方が、相手の宙雷戦隊に打撃を与える事に成功した場合、さらに効果は広がる。

“もう少し、戦えるかな…”

 超電磁ライフルの残弾数と、機体のエネルギー残量を確認したティガカーツは、自分担当の女性管制官に尋ねる。

「“CC86”、僕の中隊はどこ?」

 僕の中隊…といっても“ランサー中隊”は、ティガカーツの本来の所属隊ではなく、今回のみ便宜上加わっているだけである。このためティガカーツの桁違いの機動能力についていく事が出来ず、離れ離れになっていた。

「“ランサー中隊”は二機喪失。補給が必要となったため、母艦に一時帰投しています。“ランサー00”も―――」

「了解。僕は少し、突入隊の援護をして帰るよ」

 帰還を指示しようとする管制官に最後まで言わせず、言いたい事だけ言って通信回線を切ったティガカーツは、機体を右やや上方で通過していく、宇宙城への突入隊に向ける。

「帰ったら…やっぱり怒られるよね」

 おそらくこのあと機動兵器部隊管制科から、苦情が上がるであろう事を自覚はしているティガカーツだが、ASGULと攻撃艇主体で編成された宇宙城突入隊は、敵のBSIユニットに対し脆弱だった。
 自分が今しがた鬼神の如き戦い方を見せ、敵のBSIユニットを追い払いはしたが、まだかなりの数が残っており、それらに突入隊を襲われてしまうと、本末転倒というものだとティガカーツは考え、援護に加わる事を決めたのである。

 ただ管制科から苦情が上がるより前、この変人天才パイロットを今回の戦いに連れて来たイェルサスは、戦術状況ホログラムのサブ画面にピックアップしていた、ティガカーツの『カヅノーVC』のこの動きに、苦笑いと共に大きなため息をついて、機動兵器戦参謀に告げた。


「ティガカーツに一週間の謹慎を命じる。そう伝えておくように」



▶#22につづく
 
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