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第二章 異世界というものは
No.3
しおりを挟む馬車に揺られること、体感にして1時間くらいかな。
お?9/30時。あってますね。
でもさ?テレポートした方が早くね?って思ってしまう。迎えなしで直接行ったほうがさ、手間もないんじないかなあ?って思ってしまう私は合理性を追求しすぎる日本人さ。
無駄嫌いなんだもーん。
迎えに来ないとまずいのかもしれないけどね。城だし。
まあ……それにこんだけの人数を勇者とはいえ一人じゃ『転移』は無理かもねえ。
まあ、私はいいさ。肉(ラナンの筋肉ともいう)というクッションの上……硬いけど、いるわけですからまだねえ。
でもさあ、割合フカフカである電車だって長時間座りっぱなしは、つらいのよね。
どこでもだけどね、座りっぱなしっさあ、辛い(泣)。
「そか、だいじょぶ?おちり。」
「ま、ショウ。だいじょぶくない。尻痛い。疲れた。立ち上がりたい!もう、馬車は嫌だー。」
女の子が尻言うな!と言いたいけどね。まあ、しかたない。
「……かわる?ラナンしゃんの方がまちだよ。」
「えー、ちょっと……。」
「くくく、鍛え方が足りないねえ。二人とも。あたいは二人くらい大丈夫だよ。そらっ。」
片手で軽々と奏歌まで膝に乗せた。
さすがです、ラナン!男前!
いや、女ですけども。
「ああ、申し訳ない。かなり華奢な方だったのですねえ?」
あまり、悪いとは思ってないような声で表面上は気遣うふりをする女騎士様ですね。
この程度で何をって感じだなあ。
でもね、こちとら便利で快適な『日本』育ちなんですよー。
「すんません、こんな硬いいしゅに、すわりなれてないのでしゅ。」
「……ショウ様方は、ずいぶんと身分の高い方なのでしょうか?」
「なんで?」
「ショウ、硬いというが……かなりいい作りの馬車だぞ?椅子にも皮と布が張り付いてるし。これだとかなり身分というか、金がないと使えない素材だ。」
と洋服屋が実家のラナンらしい意見をいただきましたが、そんなこたあ、しらん!
「でも、いたいもんは、痛いち。硬いは硬いよ!」
可愛い、奏歌の尻をいじめてるではないか!
まあ、たしかに『日本』は恵まれているからね。それとは比べるなってのは、わかるけどさ。
『楽』をするため、『簡単』にするためへの情熱は……日本人の特性だな。
それでいて、昔ながらののやり方も好む。矛盾した人種だと思うよ。
でも、やはり『便利』と『楽』に慣れた日本人には、この馬車は辛いのだよ。バスだって、今は乗り心地が良くなってるし。
それにさあ、小説とか暇つぶしになるもんもないんだもん。すごく暇だ。
それに何で、子供って暇だと眠くなるんだろうね?
あんなに寝たのにさあ。
でも、今寝るのは危険だらけだ。だって、知らない場所(いや、知ってる場所自体少ないが!)に行くし、まさにアウェイなわけよ!
すると、もう一人の黙っていた女騎士がおずおずと話しかけてきた。
「あの、先程から『ショウ』様と呼ばれている方はその赤……小さなお子様のように見受けるのですが。」
赤ちゃんっていいかけたよね?あなた。
「そうだよ。この子がショウ。で、この少女が姉のソカだ。」
「……あの、本日勇者様の婚約者となられるかもしれない『ショウ』様という少女をご兄弟、保護者の方々とともにお連れするように言われたのですけども……わたくしは、聞き違いを?『ショウ』様ではなく、『ソカ』様だったのでしょうか?……それでも貧じゃ……幼すぎるように感じるのですが。」
「いまさ。私のこと貧弱って、いおうした?」
「そのまえに、わたちも赤ちゃんとか言う気だったよね?」
あ、目を逸らしやがった。
「あははは、そうだよ。勇者様が婚姻を申し込んだのは、この小さな女の子のショウであってるよ。
で、その子の姉は15歳だからね?あんまり、小さな子扱いすると魔法でやられるよ?ちなみに、ショウの魔力は、勇者様並みだからね?」
と、ラナンが豪快にわらいながらはなした。
「ロドリヌス様並み……?
うふふ、何をおっしゃってらっしゃるんです?不敬ですわね。
ありえませんわ。
きっと、ご奉仕活動でお子様を二人引き取るという話を聞き間違えたのですわ。ね、ロザリア。
大変、失礼いたしましたわ。」
クスクスと嘲笑する女騎士、確か、エミリーだっけ?
それにつられてロザリアと呼ばれた女騎士も苦笑する。
このエミリーとかいう騎士の性格、割と悪いね。
「……ま、現実逃避する女はどこにでもいるのよねえ?
貴女じゃなく、ショウが選ばれたのが不満なんでしょう?
ふふ、なっさけなーい。」
おい、おい。娘、随分と喧嘩ごしやん。嫌味にもほどがあるぜい。しかし、なんでや。
「第一さあ、ショウの魔法でとっかまったくせに。」
ああ、そうね。水のロープでつかまりやしたね。
「あ、あれは油断したからです。
ほんの三十刻で脱しましたから!」
おう、ちゃんと予約通りだったんだね!やったあ。
「あら、それだって、ショウが『可哀想だから』って、三十くらいで解けるように設定した魔法だからだったのに……さも、私が解きました的な言い方で。
自分を知らないって、マジではずかしいよね?ね、ラナンさん。」
「くく、そうだね。しっかし、ソカも言うねえ。」
「なっ、わたくしは騎士ですのよ。魔法騎士です!隊長でもある貴族なのですよ!
侮辱するのもいい加減に!」
ガタンっと馬車が揺れて、止まった。
「くっ……着きましたわ。命拾いいたしましたね?」
「どっちがしたのかな?
でも、いやねえ、女の嫉妬って。あ~~、怖い怖い。」
「そうだねえ、よいせっと。」
ラナンは、私たち二人を軽々抱っこしたままで馬車を降りた。
すると、すぐにハリーたちが駆け寄ってきた。
娘は、ラナンに下ろしてもらっても未だに膨れっ面である。
んー、珍しいな。こんなに喧嘩ごしの娘は。
いろいろありすぎて、ここに来てブチっと切れたんだろうか。
「ソカ、どーちた?」
「べっつに?ただ、なんかね?ムカついたの。まあ、あーゆー奴は多いけどさ。おっさんが好きなら好きでそっちでなんとかすりゃいいのに!」
「まあね。」
私もそれは思うけど。
女の嫉妬は、相手の女にいくっていうしなあ。
しっかし、よく考えればいいのに。わたし、まだ3歳。
16歳?くらいになるまでに頑張りゃいいじゃんね?
第一、わたしまだ決めてないからね?こっちが受理してもいない事で、ギャーギャー言われたくないよね。決めた本人に言えばいい。
たださ、家を建てるとかにちょい惹かれているのは事実ではある。つまりね?
アイツの強さを奏歌を守るのに利用しちゃおっかなあって思ってるんだよ。
それに、1000年以上生きてるわけっしょ?この世界、知り尽くしてるわじゃん?色々と教われるかなーとかさ。ほら、何せ私らは何もわからないわけ。自分を守る術は多少あってもさ、この世界の常識は全くの白紙のノートなわけ。
だから、ノートを埋めないとね。
で、そんな打算を考えいたらば、中から騎士がまたワラワラと……G並み。1匹いたら100匹いると思え!なんつって。
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