娘と二人、異世界に来たようです……頑張る母娘の異世界生活……ラブ少し!

十夜海

文字の大きさ
50 / 124
第二章 異世界というものは

閑話 ロドリヌスside

しおりを挟む


たしかに、ミリオンが水魔法の結界を推奨はした。
だが、発想がものすごいと思った……いや、普通は考えつかないんじゃないだろうか?
薄い水の幕を自分たちの周りに張るのだ。
俺たちが言った結界魔法とはまた違う性質のものだ。
もちろん俺たちも結界を張っている。丸くしているのは一緒なんだが……違うんだよな。
なせわかるか?って?
そりゃ、見てわかるからさ。
俺たちのは草に当たった場所の草がバシュバシュと音を立てて、切れているが……というか、それが結界というものだ。
つまり侵入を防ぐということ。
だが、あいつらのはちがう。
まったく、周りが変わらないのだ。 
本人たちはもちろん守られている。
ただ、草もまた守られている。
つまりだ、ふつうに結界に入っているんだよ。それなら体に当たるだろ?
当たらないんだ。
その上、多分だが無毒化されてないか?
赤い草が緑になっているんだ。
そう。つまりは火傷草から普通の草になってしまってるのさ。
これは普通じゃない。百歩譲って、ショウだけなら光属性もある。ありえないことではないが。
ソカの結界も同じなんだ。
え?ショウがまとめてやってるからじゃないか?って?いや、結界からは、それぞれの魔力を感じる。同じだが、別々だ。

……もしかして、この二人ならこの地を浄化してしまえるんじゃないか?とさえ思えてくる。

この地が火の草原、別名焼野原と呼ばれて500年が過ぎた。
そう、まだ500年だ。
それまでは、ここは緑の草原だったのだ。まあ、知らない奴も多いがな。
しかし、手負いのレッドドラゴンが暴れたのだ。
手負いになる戦いをがやったかはわからないが、手負いのレッドドラゴンを倒したのは俺。まあ、勇者の仕事だ。仕方がないといえる。
レッドドラゴンに通常の物理攻撃は効かねえ。
魔法攻撃を交えなきゃ、無敵に近い結界を破れねえからな。それも相応の魔力と魔法のランクとレベルが必要だ。
だから、英雄ではなく勇者ってわけだ。
で、まあ、戦ったが……結界、火の海からこの状態さ。
よくわからねんだが、教会側が言うには『穢れを受けて、大地が死したため魔物の住処たる火の草(火傷草の別名だ)原に変わったのだろうというこった。
この穢れを祓うのは俺でも無理だ。聖女様でなくてはな。だが、この聖女様と呼ばれている聖人なんだが……代を重ねるごとに力が弱くなってんじゃねーか?と言われている。
『教会の尊き方』は、下々……勇者、英雄だとて貴族じゃあない(
まあ、ミリオンあたりなら興味がありゃ会えるかもなあ)だから、会わせてられないと言われている。俺もミリオンも興味がないんでどーでもいいがな。
英雄のじーさんが無下もなくそう断られたらしい。
はあ、全く何様だ?
ああ、聖女様か。
はは。俺にとっては、こいつらのがよっぽど聖女らしいと思うがな。
というか、まさに女神か?
いや……天使といったほうがしっくりくるか。
だが、人だ。紛れもなく『人』だった。
ああ、本当に人でよかったよ。
遠慮なく口説けるからな。
まあ、当分は保護者に徹するさ。まずは、信用を勝ち取る方が先決だからな?
ついでに余計な虫を排除できるしな。
と、そんなことを考えながら魔力探知をしながら後に続く。
すると、ピクリとショウが何かを察したようだ。
俺の今の範囲には、何もない。
少し範囲を広げる……とようやく端に魔獣の力を感じた。
これはスライムよりデカイな。

「ねえ、ロドさん。あっちにおっきいのがいて、あっちに小さいのがたくさん。スライムは小さいのでいい?」
「小さいの?」

俺の今の範囲には引っかからない。こいつのはもっと広いのか?

「小さいのがあるなら、そっちだな。」
「わかった。でも、遠いよ?うーん、走る?」
「そうだね。でも、体力持つかなあ。」
「んー。風とかなんか身体強化的な魔法使ってみる?乗り物的なんでもいいかな?」
「ああ、モビルスーツ的な?」
「うん。あ、ローラースケートみたいなもので宙に浮くのはどーかな?だめかな?」
「いい!それいい。風で走る感じ?」
「うんうん。」

前でまた不思議なことを言っている。こいつらの発想はこの世界のものじゃない……前世の記憶しかないと言った。ならば、前世はこの世界ではないということだろうなあ。
俺たちにはない発想で魔法を使う。はっきりいって、敵なら畏怖する存在だろうと思う。なにせ、明後日の方向からの発想だからな。こちらには想像できない分、反応が遅れる。

「ロドさん、ミリさん。あたしらちょっとスピード出すので、よろしく。」
「ええ、大丈夫。」
「ああ、大丈夫だ。」

身体強化してついてきゃいいだろう。
まあ、俺はショウとシャルの後は辿れるから転移も可能だからな。

「じゃ、ショウ!いっきまーす!」
「同じくソカ!いっきまーす!」

スワッといきなり走り出す。というか滑り出す?感じでいきなり離れた。なんだ、速いぞ!
すぐに追うがはっきりいって、これは速すぎる!
なかなか追いつかん。
ようやく追いつくと、草陰に隠れて様子を伺っている二人を見つけた。
どうやら、火のスライムは群れでいるようだ。
二人でゴソゴソと話しているのは、倒し方を相談か?

「やっぱ、雨かな?」
「うん。あ、スプリンクラーとかは?あと水鉄砲的な感じで撃つ?」
「そだね。じゃあ、あたしはスプリンクラーするからソカは、ウォーターガンにする?」
「イエス!マザー!」
「じゃ、一二の三ね?」
「……なんで掛け声、日本式よ。」
「うっさい、じゃ、いち、にの、三!スプリンクラー!」

いきなりショウがエリア魔法を使う。水のエリア魔法だと?
いや、水に光が混じってる。いわゆる『聖水』の雨じゃねーか!

ほぼ、それで壊滅。凄まじい。

取り逃がしをソカが『パンッ』と言いながら……水の小さい玉をスライムに当てていく。
当たると弾けて溶けた……。
綺麗な赤い魔石だらけになり、赤い草が緑の草に変わっていた。
……これは、やばいな。

「おろ?草の色が変わっちゃった。なんで?」

コテンと頭を傾げながら、魔石を拾うショウ。かわいい。だが、この仕草も危険だ。攫われる。

だが、これはどの石も一級品じゃないか?
全く形が失われていない丸々の魔石……ありえないだろうよ。
ソカの攻撃で当たったやつは、様々な大きさになっている。まあ、普通だ。
いや、これが普通の魔石だ。
だが、ショウのエリア魔法で消滅した火スライムの赤の魔石は、そのままの大きさだ。
たぶん、魔素の量の違いの大きさだ。まるっと無傷の魔石。
これは、はっきりいって……すごい価値がつくもんだ。 
……こいつらの力は魔力だけじゃねーな、何より『創造』する力だ。

「あっ!でっかいのがすごいスピードでくる!」

なんだと!
俺は反応が遅れた。
たしかに、大きめ魔力で走ってくるのがいる。
だが、さらに大きな魔力が一緒にこちらに向かってくる。
これは……まさか?


しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...