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第二章 異世界というものは

閑話 ロドリヌスside

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たしかに、ミリオンが水魔法の結界を推奨はした。
だが、発想がものすごいと思った……いや、普通は考えつかないんじゃないだろうか?
薄い水の幕を自分たちの周りに張るのだ。
俺たちが言った結界魔法とはまた違う性質のものだ。
もちろん俺たちも結界を張っている。丸くしているのは一緒なんだが……違うんだよな。
なせわかるか?って?
そりゃ、見てわかるからさ。
俺たちのは草に当たった場所の草がバシュバシュと音を立てて、切れているが……というか、それが結界というものだ。
つまり侵入を防ぐということ。
だが、あいつらのはちがう。
まったく、周りが変わらないのだ。 
本人たちはもちろん守られている。
ただ、草もまた守られている。
つまりだ、ふつうに結界に入っているんだよ。それなら体に当たるだろ?
当たらないんだ。
その上、多分だが無毒化されてないか?
赤い草が緑になっているんだ。
そう。つまりは火傷草から普通の草になってしまってるのさ。
これは普通じゃない。百歩譲って、ショウだけなら光属性もある。ありえないことではないが。
ソカの結界も同じなんだ。
え?ショウがまとめてやってるからじゃないか?って?いや、結界からは、それぞれの魔力を感じる。同じだが、別々だ。

……もしかして、この二人ならこの地を浄化してしまえるんじゃないか?とさえ思えてくる。

この地が火の草原、別名焼野原と呼ばれて500年が過ぎた。
そう、まだ500年だ。
それまでは、ここは緑の草原だったのだ。まあ、知らない奴も多いがな。
しかし、手負いのレッドドラゴンが暴れたのだ。
手負いになる戦いをがやったかはわからないが、手負いのレッドドラゴンを倒したのは俺。まあ、勇者の仕事だ。仕方がないといえる。
レッドドラゴンに通常の物理攻撃は効かねえ。
魔法攻撃を交えなきゃ、無敵に近い結界を破れねえからな。それも相応の魔力と魔法のランクとレベルが必要だ。
だから、英雄ではなく勇者ってわけだ。
で、まあ、戦ったが……結界、火の海からこの状態さ。
よくわからねんだが、教会側が言うには『穢れを受けて、大地が死したため魔物の住処たる火の草(火傷草の別名だ)原に変わったのだろうというこった。
この穢れを祓うのは俺でも無理だ。聖女様でなくてはな。だが、この聖女様と呼ばれている聖人なんだが……代を重ねるごとに力が弱くなってんじゃねーか?と言われている。
『教会の尊き方』は、下々……勇者、英雄だとて貴族じゃあない(
まあ、ミリオンあたりなら興味がありゃ会えるかもなあ)だから、会わせてられないと言われている。俺もミリオンも興味がないんでどーでもいいがな。
英雄のじーさんが無下もなくそう断られたらしい。
はあ、全く何様だ?
ああ、聖女様か。
はは。俺にとっては、こいつらのがよっぽど聖女らしいと思うがな。
というか、まさに女神か?
いや……天使といったほうがしっくりくるか。
だが、人だ。紛れもなく『人』だった。
ああ、本当に人でよかったよ。
遠慮なく口説けるからな。
まあ、当分は保護者に徹するさ。まずは、信用を勝ち取る方が先決だからな?
ついでに余計な虫を排除できるしな。
と、そんなことを考えながら魔力探知をしながら後に続く。
すると、ピクリとショウが何かを察したようだ。
俺の今の範囲には、何もない。
少し範囲を広げる……とようやく端に魔獣の力を感じた。
これはスライムよりデカイな。

「ねえ、ロドさん。あっちにおっきいのがいて、あっちに小さいのがたくさん。スライムは小さいのでいい?」
「小さいの?」

俺の今の範囲には引っかからない。こいつのはもっと広いのか?

「小さいのがあるなら、そっちだな。」
「わかった。でも、遠いよ?うーん、走る?」
「そうだね。でも、体力持つかなあ。」
「んー。風とかなんか身体強化的な魔法使ってみる?乗り物的なんでもいいかな?」
「ああ、モビルスーツ的な?」
「うん。あ、ローラースケートみたいなもので宙に浮くのはどーかな?だめかな?」
「いい!それいい。風で走る感じ?」
「うんうん。」

前でまた不思議なことを言っている。こいつらの発想はこの世界のものじゃない……前世の記憶しかないと言った。ならば、前世はこの世界ではないということだろうなあ。
俺たちにはない発想で魔法を使う。はっきりいって、敵なら畏怖する存在だろうと思う。なにせ、明後日の方向からの発想だからな。こちらには想像できない分、反応が遅れる。

「ロドさん、ミリさん。あたしらちょっとスピード出すので、よろしく。」
「ええ、大丈夫。」
「ああ、大丈夫だ。」

身体強化してついてきゃいいだろう。
まあ、俺はショウとシャルの後は辿れるから転移も可能だからな。

「じゃ、ショウ!いっきまーす!」
「同じくソカ!いっきまーす!」

スワッといきなり走り出す。というか滑り出す?感じでいきなり離れた。なんだ、速いぞ!
すぐに追うがはっきりいって、これは速すぎる!
なかなか追いつかん。
ようやく追いつくと、草陰に隠れて様子を伺っている二人を見つけた。
どうやら、火のスライムは群れでいるようだ。
二人でゴソゴソと話しているのは、倒し方を相談か?

「やっぱ、雨かな?」
「うん。あ、スプリンクラーとかは?あと水鉄砲的な感じで撃つ?」
「そだね。じゃあ、あたしはスプリンクラーするからソカは、ウォーターガンにする?」
「イエス!マザー!」
「じゃ、一二の三ね?」
「……なんで掛け声、日本式よ。」
「うっさい、じゃ、いち、にの、三!スプリンクラー!」

いきなりショウがエリア魔法を使う。水のエリア魔法だと?
いや、水に光が混じってる。いわゆる『聖水』の雨じゃねーか!

ほぼ、それで壊滅。凄まじい。

取り逃がしをソカが『パンッ』と言いながら……水の小さい玉をスライムに当てていく。
当たると弾けて溶けた……。
綺麗な赤い魔石だらけになり、赤い草が緑の草に変わっていた。
……これは、やばいな。

「おろ?草の色が変わっちゃった。なんで?」

コテンと頭を傾げながら、魔石を拾うショウ。かわいい。だが、この仕草も危険だ。攫われる。

だが、これはどの石も一級品じゃないか?
全く形が失われていない丸々の魔石……ありえないだろうよ。
ソカの攻撃で当たったやつは、様々な大きさになっている。まあ、普通だ。
いや、これが普通の魔石だ。
だが、ショウのエリア魔法で消滅した火スライムの赤の魔石は、そのままの大きさだ。
たぶん、魔素の量の違いの大きさだ。まるっと無傷の魔石。
これは、はっきりいって……すごい価値がつくもんだ。 
……こいつらの力は魔力だけじゃねーな、何より『創造』する力だ。

「あっ!でっかいのがすごいスピードでくる!」

なんだと!
俺は反応が遅れた。
たしかに、大きめ魔力で走ってくるのがいる。
だが、さらに大きな魔力が一緒にこちらに向かってくる。
これは……まさか?


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