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第二章 異世界というものは
No.42
しおりを挟む「ティアのあの強さは、エターナルドラゴンだったからってわけね。納得できたというか、納得できないというか。
……いたのね、エターナルドラゴン。」
「……あのさ、さっき気になったんだけど。」
「なんだ?」
ハロルドが腕を組みながら心配顔で言った。
「ショウは、鑑定持ちなのか?」
「いや、鑑定できる魔道具を持っていたらしい。」
ロドリヌスの言葉に、ハロルドがあからさまにホッとしている。
繋がれる……やっぱり本当なのかもしれない。冗談ではなく。
「それならよかった……。けどさ、鑑定の魔道具なんて希少だし、かなり高価なものだろう?……出会った時もだけど、なんか不思議な子達だよな。二人とも。」
「ふむ。そこらについての説明は、皆んなが揃ってからするんだろ?ショウ、ソカ。」
ロドリヌスがチラリと私らを見た……気がする。
なにせ、抱っこされてるからね!
「うん。その方が誤解を呼ばない気もする。」
何より、面倒がないからね。
何度もおんなじ話は面倒くさいっていうのが、本音だけども。
「そっか、まあ、最初から訳ありみたいなもんだし。ハリーとラナンが戻ったら聞けるならいいや。」
なんといい人なんだ、ハロルド。
ハロルドの爪の垢を煎じてのんでほしいな、ミリオンに。
「なあに?なんか、すごく失礼なこと思ってなあい?ショウちゃん?」
ブンブンと首を振る。
怖っ!ミリオン怖っ!
なんで、ちょっと思ったことがわかるんだ!ミリオンの『ちゃん』付けは背筋がゾッとする。
「まあ、ミリ。あんまショウをからかうな。
で、エターナルドラゴンの鑑定したのは、教えてもらえるのか?」
「あ、うん。ティア、教えていい?」
『いいよー。』
と念話が戻ってきた。
「ティアが、いいっていうから。」
私は鑑定をして、読み上げた。
「ーーティア
ーーショウの従魔
ーーレベル5
ーーエターナルドラゴンの幼竜
ーー0才
ーー属性全
ーー神竜とも言われ、育つには大量の魔力が必要。力は神にも匹敵すると言われている。
生態は謎。
になってる。あれ、レベル表示が増えてるみたい。なんでかな?」
「戦ったからかもしれないわね。」
「あ、そっかあ。」
「でも幼竜なのに、あの強さの『ブレス』……。ショウとソカの魔法にエターナルドラゴンと魔神と言われてるシャルの守護剣。
……最強ね。」
「だな。すげーわ。巷で、『聖女』やら『女神』やら言われてるけど、納得だわ。」
「やめてぇ。」
聖女やら女神やらは、恥ずい。恥ずかしすぎるし……有名なんぞになりたくない。
「ねえねえ、『勇者』と『英雄』いるでしょ?
もしかして『聖女』とかもやっぱりいたりするの?」
「ああ、いるぞ。教会にな。」
「んじゃ、うちらがそう言われたら、元祖が怒るんじゃない?」
「多分な。というか確認しに来る可能性があるな。
今は『聖女』は認定されていても『聖女』の力と言えるほどの『治癒魔法』を使える奴はいないというからな。」
「そうなの?でも、教会は『癒し』のエキスパートなんだよね?」
「……教会が『治癒魔法』が使える光属性の人間を無理矢理確保しているらしいからな。
だが、年々光属性の力は失われていく一方だ。
そもそも光属性や闇属性を持つものは希少だなんだよ。それも癒しに特化するのものはな。
俺やミリオンも光属性を持つが、どちらも簡単な治癒のみだな。
簡単に言ったら、水や風の治癒よりはマシ程度だ。
ソカの癒しほどにもならないくらいの癒しだ。ソカの癒しも突出しているからな。風と水の癒しだというのに。
ショウについては、あり得ないほどだな。」
なんだ、光属性が皆んな高度な『治癒魔法』を使えるわけじゃないのか。
ロドリヌスやミリオンみたいに闘いの方、つまり魔に対する『浄化魔法』に特化する方が多いらしい。けれど、弱かろうが光魔法は治癒魔法として使える。
もしかしたら、育てば魔物と闘うには強くなれるかもしれない光属性を持った子供を教会は、無理矢理連れて行ってしまうらしい。そして『治癒の使い手』として貸し渋るんだとか。
ミリオンは、立場的に守られているし、光属性だけをもつわけじゃない。なので、教会に連れて行かれなかったという。
でも、打診はあったんだって。王様が断ったみたいだけど、軽い脅しがあったという。
『神の慈悲が減るでしょう』って!
ロドリヌスが子供の時は、『聖女』と言ってもいい『力』を持った人が確かにいたんだとか。
その頃は、光属性を持つ人は希少でも今よりはいて、力も強かったそうです。
なので、ロドリヌスも無理に連れて行かれることはなかったそう。
「だったら、まずいんじゃねえのか?」
「何が?」
「昔の聖女に匹敵するなら……。」
「そうね、攫われる可能性はあるのよ。まあ、だからこの家も急がせたのだけど。それも理由の一つね。裏で調べてもらったら、二人を狙ってる組織が多すぎて……。」
まじですか!というか、いつのまに調べたわけ?
「教会やら闇のブローカーやら貴族やら。何にもしてこないうちは、捕まえられないし。」
「女宿は、女騎士でもわかるように、女は入れるわけだ。」
「ああ、そっか。つまりシスターとか、『聖女』認定されてる人は、女だから入れるわけか。」
「そういうこと。」
「ここならかなり、防御に力を入れているからな。」
そっか、色々考えてくれてるんだなあ。
「なんか、心配性のお父さんみたいだね。ロドさん。」
「私もおもった!」
「で、ミリさんが「「お母さん!」」
クスクスと二人で笑ったら、ハロルドまで大笑い。
ロドリヌスは後ろでデカイため息をつき、ミリオンはソカの頭をグリグリしていた。
「……お前に惚れているって、態度に出した方がいいのか?」
私を抱っこしてるロドリヌスから不穏な空気が漂う。
「ふぇ!」
「別に、俺は『ロリコン』だったか?そのレッテルを貼られても構わないぞ?」
そう言って私の首筋に顔を埋めた。
そして、首をペロリと舐められた!
「ウギャア!」
とジタバタするが、体を後ろから抱きしめられているので、動けない。
「いいのか?」
と耳に甘く囁かれて普通なら腰砕けなんだろうが、私には恐怖しかなかった。
「あー、ロドリヌス様。やめといた方が。ショウが泣きそうです。いや、泣いてます。」
「えっ!」
くるっとひっくり返されて、顔を見られたくなくて下を向く。
覗きこまれて、優しく抱きしめられた。
「すまん。だが、流石に父親にはなりたくないぞ。」
頭をよしよししてくれて、やっぱりパパっぽいと思ってしまった。
でも、傷つけるつもりはなかった。
「ふふふ、ソカもあたしが男だって思い出させた方がいいかしら?」
「大丈夫!わかってます!すいません、調子こきました!ごめんなさい!」
ソカが慌てて、ミリオンに謝っていた。
「あら、残念ねえ。」
「ソカ、安心しろ。俺がさせねーからな。」
「あたしに勝てるとでも?」
「命に代えても守るさ。」
「え、ええ!喧嘩しないでよー。」
「まあ、冗談はさておき。お昼はどうする?」
「そうだな。」
「……ある。」
持ってきたんだから。あるもん。
「そうだよ!ママのおにぎり。」
私は無理矢理泣き止んで、ロドリヌスの膝から降りた。
ロドリヌスも今度は手を緩めてくれたから。
下を向いたままでテーブルにポンポンと料理し出していった。
調子に乗りすぎて、ロドリヌスを傷つけたのは私だ。
恥ずかしくて顔を上げたくたくない。
だから、さっさと出して……少し離れて落ち着きたい。
食欲はないし。
「ショウ。」
シャルが出てきて、声をかけてくるが、誰にも顔を見せたくない。
「あ、シャルも食べていいから。」
私はそう言って、窓の方に行った。
いじけたわけではない。ただ、自分の行動を鑑みて恥ずかしくなっただけだ。心を落ち着けたら謝るんだから。
なのに。
「ショウ、すまない。大人げなかったと思う。」
ロドリヌスが寄ってきて、頭を下げた。
ちがうよ!
おとなげなかったのは、私だ。
謝らなきゃいけないのも私だ。
「ショウ……。なあ、すまん。だから、機嫌を直してくれ。」
「ロドさん、ごめんなさい……。」
「いや、俺も悪ノリした。すまない。……頼む、泣かないでくれ。」
「……泣いてないも、鼻水だも。」
再度謝るロドリヌスを前に、恥ずかしさでいっぱいだった。
「そうか……。」
と言って笑ってくれた。
ごめんなさいとロドリヌスに抱きついたら、自分のシャツで私の顔を拭いてくれた。
私もロドリヌスを見上げて、にへっと笑った。
これは……30代のやることじゃないよね。
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