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第二章 異世界というものは
No.45
しおりを挟む「では参りましょう。」
という、ミリオンのお姉さんでもあると言うエレノアさんと共に馬車に乗り込む。
もちろん、王子であるミリオンと元勇者であるロドリヌスも一緒だ。
「ショウ様、ソカ様。此度は、本当に申し訳ありません。
あのように部をわきまえぬ者を寄越してしまい、さぞ、お気を悪くされたことでしょう。それでなくとも、面倒なことをこちらが言い出しておりますのに。」
馬車に入り走り出すと、エレノアさんに謝られた。
「いえ、まあ……おっさんんっっ、あの騎士の方々が、残ねっんっっ、あの王太子様の家来って事で納得というか何というか……。」
「まあ……あの子も何か、ご迷惑をおかけしたのですね。
悪い子では、無いのですが……何せ第二王妃が……頭の痛いことですわ。」
はあ、とため息をついたエレノアさんはガタイはいいけども、とても色っぽかった。
これが、人妻というやつですかね!
「エレノアが迎えに来たということは、母上はいてくださるのよね?」
「ええ、もちろん。
大変憤慨なさっていらっしゃいましたわ。
そもそも、強くて可愛らしい子供を無理やり城へ呼ぶこと自体おかしいでしょって。
兵たちを引いては国をも助けていただいて、呼びつけるなんて……と。」
「そこは、ほら王様だからじゃなくて?」
「いいえ!ソカ様、よろしいですか?ミリオンは王と同格ですの。そして、もと勇者様で『魔族を統一させ、和解へと導いた勇者』であるロドリヌス様が後見されているショウ様ですのよ?
本来なら王が頭を下げに来たっておかしくないのですわ!……コホン、失礼いたしました。」
「ふーん、ロドさんって凄いんだね。」
と奏歌が他人事のように言う。
「ソカ様にも言えますのよ?
勇者ミリオン様の想い人として、有名になりつつありますもの。
ましてや、馬鹿王………王太子にも『婚約者にする!』と宣言されていらっしゃる。」
あ、馬鹿王子って言おうとした!同感だよ。
でも、ん?
なんか不穏な言葉が?
宣言?なんでさっ!
「宣言ねえ……初耳だわ。」
「それは、緘口令がしかれておりましたもの。」
ミリオンが笑ったままなのに、怖い。……魔王化するの?
というか、本物の魔王のが怖くないんじゃない?
私はブルっとなってしまったよ。
「ミリオン、ショウたちが怯える。抑えろ。」
「あら、失礼。」
シュワワワーと元のミリオンの雰囲気に戻った。
「ちょっと、いいえ、かなり頭にきてしまったものだから。」
ふふふと笑うミリオンだけど、うーん。私たちが怒らせた時よりも怖かったよ。
「ショウ様は、ロドリヌス様の婚約者扱いとなっておりますが、それでよろしいのでしょうか?」
よろしくないけど……私はすごく眠い。
一瞬、ミリオンの殺気でピッてなったけど……子供の体力を今実感中。
起きなきゃって思っても体がいうこときかん。
「ショウ?あー、ダメだな。こりゃ。」
「まあ、疲れてるわよね。」
「んー、忘れがちだけど3歳だからねえ。」
「どうりでなあ……あまり喋らないと思っていたんだ。」
そうですね。声に出せるほど気力も体力もなかったみたい。
で、この馬車の揺れと膝抱っこされてる安心感(ロドリヌスの膝に安心を求めちゃイカンと思うが、子供の体が……うらめしい)で
、瞼がだんだん…だんだん下がるのです。
「城まで寝てろ。」
と横抱きにされ、どこからか毛布を出してかけてくれた。後から考えれば空間収納なんだけどね……と最後に思えたか、わからないがそのまま眠ってしまった。
背中から聞こえるティアの寝息を子守唄に。
ーーーーーーーーーーーーーー
side奏歌
「あ、完全に撃沈だね。」
「そうねえ。」
まあ、泣くと体力半端なく減るしね。ましてや、ママは今は子供というか幼児だしね。
なんだかんだで、ママはロドさんに懐いてるよね。
まあ、さ。ストレートに好き好き攻撃されるんだもんね。
多少は、絆されるって。
資産もあって、強くて、優しいんじゃねえ。
まあ、ちょっと(どころじゃないけど)デリカシーがないのと変態臭がするけどさ。
「ねえ、ミリオン。王様ってどんな人?」
「どんなって……うーん。悪い人ではないのだけど……。」
「……残念なところのある方かしら?」
「ふーん。じゃ、王太子は王様に似たの?」
「……似てはいるけど、あーなったのは、母親のせいねえ。」
「第二王妃ってやつ?」
「そう。第一王妃様のお子はミリオンだけなのよ。」
「は?あれ?エレノアさんは?」
「私は第二王妃の第一子なの。……俗にいう『いらない子』なのよ。
どちらにもなかなか子供ができなかったの。……よくあることなのだけど。
初めてできた子供が第二王妃で、王位継承権を持たない女の私。……毎日毎日、『いらない子、死んでしまえ!』って、呪いのように言われて育ったの。
それを知った第一王妃様が『それが、自分の子にいうことか!』と見て見ぬフリをしていた侍女を含めて、さらには王にカミナリを落として私を連れて行ったのよ。
ふふふ。そこからはルテリシア様に愛情たっぷりに育てていただいたわ。だから、母親って言ったらルテリシア様ね。
でも、残念なことに第二王妃の血筋になってしまうのよ。」
「うわあ、最悪な女~。ショウと私の大っ嫌いなタイプだわ。」
「ちなみに、母上は、本当に電撃を落としたらしいわよ?」
「それはすごい!あれ?ロドさんはその頃何をしていたの?」
「俺か?俺は魔族と戦っていたかな?国にはいなかった。」
そうなんだ。ん?じゃ、結構、みんな年いってんのかな?
「エレノアさんは、結婚してるんだよね?」
「ふふふ。私を政治の道具にして他国の花嫁にしようとした時に守ってくれたのもルテリシア様なの。
私はいつも守ってくれていた騎士が好きだったの。その方が今の旦那様よ。それもあって、ルテリシア様をお守りできるように騎士になったの。」
「うわあ、ラブロマンスだね!もっと詳しく聞きたいけど……。
ねね、今度女子会しよ!」
「じょしかい?」
「うん、女だけのパーティ!ショウも喜ぶと思うし!」
「ふふふ。とても嬉しいわ。」
「女だけなの?」
「そう!」
ミリオンがちょっと寂しそうに言ったけど、女の子だけの女子会。
楽しみだもん。
しっかし、この世界……年齢が本当にわかりません!
だって、魔族と戦ってたって、かなり昔っていったもんね。
「もうすぐ着くわね。」
ミリオンの言葉にため息が出てしまう。
ママじゃないけど、超面倒くさいと私も思う。気分は三者面談とか面接試験……やだやだ。
でも、エレノアさんに出会ったこと、あと第一王妃様に会うのはすこーし楽しみ♡
だって、話からするとかなり素敵な方みたいじゃない?
応援ありがとうございます!
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