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第二章 異世界というものは
No.52
しおりを挟むさっぱりしたところで、着替えが沢山あった。
下着もあったのは、有難いと素直におもう。
いや、まあクリーンすればいいけどさ、要は気分よね。
毎日、洗濯していたわけじゃない?
だからさ、洗わないってのが慣れなくてさ。
今はクリーンして、軽く洗って魔法で乾燥しているんだ下着だけわね。
だって、やっぱり身についた習慣はなかなかね。
しかし、問題といえばこの服の山だ。この中から選ぶのか?
と思ったら二着ずつではあったが、服の数ではなく、布の数に驚いた。
ってかさ、服一枚にどれほどの種類の布が重ねてあるのか。
一枚を取ると……ものすごーく軽い。見た目はあの、超重いと言われる十二単のようなのに。
うーん。黄色は……大嫌いな虫が寄ってきそうだし、私自身あまり似合う色じゃないから……薄ピンクに見えたものにした。
服を着ていくと……うん、メイドが必要な意味がわかった。
背中の細かいボタンは、誰得なのですか?
たしかにコレは一人じゃ無理だ。
ドレスって、一人で着るようには作られていないんだなあ……まあ、ウェディングドレスとかはそうだものね。
この世界の正式な貴族ドレスって言ったら、まあ近いものはあるよね。
下着もそうだしね。
「あ、ショウ様。私が。」
「ごめんなさい。メイドさんたち帰ってもらっちゃったから。」
「いいえ、構いませんわ。」
「あ、マ…ショウのは私が手伝うね。」
「うん、よろしく。」
「でもさあ、貴族って面倒だね。自分で着れる服じゃないなんて。
あ、エレノアさんカッコいい!わたしもそんな服いいなあ。」
「これは、その騎士団のでございますから。」
「自分で着れて、なおかつカッコいいんだねえ。まあ、ドレスも嫌いじゃないけど。んー、久々だね。
……しかし、このコルセットは苦しい。」
だよね。滅多にそこまでのは着ないし。ましてや、声楽だったからあまり締め付けると声が出しにくいしね。
軽く締める程度の補正下着的なものだったからねえ。まあ、オペラを本格的にやって、その手の衣装はどれくらい中世に近づけて作られているかにもよるけど。
自分たちで用意するには、限界あるしね。
で、現在の私なんだが。
子供用もあるんだね、コルセット。
とは言っても、奏歌ほど大変ではない。
布で出来てて、軽く締めて、それにパニエがついてる感じだ。
子供用のが日本で見たコルセットに近いかなあ。まあ、パニエは別でしたが。
貴族って、子供も大変なんだねえ。
本当に面倒だ。
うん、美しさを追求する貴族の女性じゃなくて本当に良かった。
こんなのが毎日じゃあ、私には耐えられないわ。
「本当はお着せする前に、香油で体を磨きあげる予定でございました。
ですが、お二人とも必要ございませんわね。」
ああ、全身マッサージ的な?
完全なエステサービスってやつかな。
うーん。前世の姿ならお願いしたいが、今はエステ必要ないよねえ。
奏歌も私もまだピチピチですし。
うらやましかろう?
ふふふふ、まあ、死ぬ目にあった甲斐もあるってもんよ。いや、死ぬ目じゃないか……死んだんだもんね。
そんなことはさておき、ここはやはり定番のセリフを言ってみようじゃないか。
「「まあ、これがあたし?」」
奏歌とハモッてしまった。
「「ぶ、ははははははは……!!!」」
笑い声もみごとにハモリ、さすがに母娘だねえ。
と、言わずにはいられない。
いきなり大笑いしだした私たちにエレノアさんがびっくりしていた。
やっと発作がおさまると私たちは、目を白黒させているエレノアさんに平謝りした。
「いえ、お二人が謝られる必要はございません。ですが、なにか不手際があったのではなくて、安心しましたわ。」
にっこりとほほ笑んでくれたエレノアさん、マジ天使だ。
「あの、着替えも終わりましたし、侍女たちをいれてもよろしいでしょうか?」
「え、なんで?」
「さすがにドレスに似合うお化粧や髪結いなどは私ではむりですから。」
「…………化粧必要?」
「はい、そのままでもお美しいのですが。」
正装だもんね。私はともかく、奏歌はもう成人に近くて……本来ならさ、正装してこなきゃいけないんじゃないかと思える登城だもんね。
ま、いまさら感が強いけど……いうまい。だって、いきなり連れてきたのは、城側なのですから。
これだって、『正装』というよりは『着せてみたい』感が強いもんな。
「わかった。」
そういうないなや、ババンとメイドさんたちのご登場です。
絶対に今か今かと待機してたよ!
思わずクラウチングスタイルで、待機するメイドを想像してしまい……吹き出しそうになったのは内緒だ。
そしてあれよあれよという間に流されるまま椅子に座らされ、髪がセットされ私は、いい匂いのする粉を軽くはたかれて、薄く口紅みたいなものをぬられた。
奏歌は、もう少しいろいろと塗られていたみたいだけども、ちらっと鑑定スマホしてみたけども体の害になるものはなかった。少しは警戒心だってあるんだぞ。
え?今更、なんでしたかって?
それはですね。
むかしむかしのおしろいには、毒になる鉛が入っていて、そんなことを知らない文化というか化学のない世界では中毒で亡くなる方がいたからですよ。
この世界の成り立ちって、微妙に中世とかに近いのだもの。
まあ、魔法が発達しているから、鉛や水銀が入った水道管もないのは幸いだけどもね。
日本だって、最近までは水銀が含まれた歯の詰め物を使ってるくらいだし?まあ、微量なんで、特に体に問題はないとされてるみたいだけどね?いまだに使っている先生もいるとかいないとか?
って、話がそれちゃった。
まあ、そういうわけで、毒物ってさ身近にも潜んでるわけでさ。私だってちゃんと警戒できるんだよ。
知識的なことならね。
たださ、人の悪意って気にしたら負けって思っていきてきたからさ。苦手なのかもね。
人を常に疑って生きるのが。
でも……今回必要だって、少しは学んだよ。
「完成でございます。」
おおおおー!すげえ!あ、失礼。
「ママ、大事なことだからもう一度いっていい?」
うん、言いたいよね?わかるから!
「では、……『これがわたし?』いやあ、すごいいい腕だよね。」
「うん、これは、トップメイクアーティストになれるよ。」
ホントに。カリスマになるんじゃないかなあ。
「ありがとう存じます。ですが、失礼ではございますが発言をお許しいただけますでしょうか?」
「え?あどうぞ。」
これが、きちんとしたメイドの対応か~。じゃあ、確かにあのメイドは失礼だったんだね。
「ここまでの仕上がりに出来ましたのは、ソカ様の美しさゆえにございますれば。」
「えー、そんなことないと思う。だって、こんなに綺麗になんかできないもん。」
「うん、ほんとすごいね。」
感心しちゃうな。とっても。
「では、参りましょう。」
用意が整ったということで、脱衣所をあとにした。
たださ、緊張するよね。だって、笑われそうじゃない?
ちなみにドレスは私のはピンクのグラデーションで、腰から花が咲くように広がって少しヒールがあるピンクの花付きの赤い靴。
白いハイソックスは、白のシルクな肌触りです。両肩にシースルーなリボンがアクセント。髪はハーフアップで、どこのお姫様よ?な仕上がり。
奏歌は右肩だけの片肩って形。肩の部分には白いバラのような大輪がついてるんだけど、シースルーな生地でふんわりと作られてるせいか、強調しすぎず水色のドレスにはえている。
これもまたグラデーションになってるんだけど、私のは上から下に色が濃くなるのに対して、奏歌のは濃紺薄いから淡い水色になっていく。
髪は綺麗に結い上げられていて左側だけサイドに巻いた紙が一掴み下ろされていて、わが娘ながら……『惚れちまうやろ!』である。
うーーん、なんだかまた、でもね一波乱ありそうな予感がするんだよね。
なんかね、背中がぞわぞわするんだ。
『昭子ちゃん、奏歌ちゃん。その姿じゃもう…………お願いだからさあ、守ってよ?あー、もう。なんで危険察知をスキルでつけなかったんだろ!もうたのんだよ、勇者たち。』
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