10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)

放浪人

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第六話 第一回・王子の接近。トラップが「愛のムチ」にしか見えない

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辺境の村ポルタの丘の上に建つ、私の小さな薬屋兼自宅。 その窓から、私は望遠鏡(自作)で眼下の道を凝視していた。

「……来たわね」

レンズの向こう、一本道を悠然と歩いてくる人影があった。 黄金の髪が夕日に輝き、その背後には後光のようなオーラが見える。 間違いない。 我が国の王太子にして、私の安眠を脅かす最大の天敵、アレクセイ・ド・グランツ殿下だ。

驚くべきことに、彼は単身だった。 後ろに軍隊を引き連れている様子はない。 だが、油断はできない。 彼は一人で軍隊一個大隊分の戦闘力を持つ、歩く戦略兵器なのだから。

「ふん、一人で来たってことは、隠密に私を始末するつもりね」

私はゴクリと唾を飲み込んだ。 私の脳内では、すでに「裏切者の元婚約者を秘密裏に処刑する冷酷な王子」というシナリオが出来上がっていた。 そうでなければ、わざわざ護衛も連れずに来るはずがない。 これは暗殺だ。 私を社会的に抹殺するだけでなく、物理的にも消し去ろうとしているのだ。

「甘いわよ、アレクセイ。ここはもう、ただの薬屋じゃない。私の全てを注ぎ込んだ要塞『デス・ハウス』よ!」

私は手元の起爆スイッチ(魔石製のリモコン)を握りしめた。 小屋の周囲には、徹夜で仕掛けた数百のトラップが眠っている。 さあ、どこからでもかかってきなさい。

   ◇

一方、アレクセイは上機嫌だった。 彼は鼻歌交じりに坂道を登っていた。

「♪リ~ゼ、愛しのリ~ゼ。今、迎えに行くよ~」

彼の目には、前方のボロボロの小屋が、輝く黄金の城に見えていた。 あの中に、愛するリーゼロッテがいる。 それだけで、この殺風景な辺境の村が、世界で最も美しい聖地に思えた。

「おや?」

小屋の敷地に入ろうとした瞬間、アレクセイの足が止まった。 彼の超人的な感覚が、大気の揺らぎを察知したのだ。

「……結界か。しかも、かなり高度な」

彼はニヤリと笑った。 普通の人間なら気付きもしないような、精巧な多重結界。 物理障壁、魔法反射、認識阻害。 宮廷魔導師長クラスでも突破に数時間はかかる代物だ。

「ふふっ、すごいなリゼ。私を拒むために、ここまで手の込んだ準備をしてくれたのか。私の実力を信頼している証拠だね」

アレクセイは嬉しそうに呟いた。 普通の男なら「拒絶されている」と落ち込むところだが、彼は違う。 「これほどの障壁を用意する=私の力を高く評価している=私を意識しまくっている」という謎理論で、好感度がさらに上昇した。

「ならば、力ずくでこじ開けるのは野暮というもの。愛の力で、優しく解いてあげよう」

アレクセイは指先に魔力を集中させた。 彼の魔力属性は『光』。 あらゆる魔法を分解し、無効化する絶対的な力だ。

「『愛は障害を越える(ブレイク・スペル)』」

彼が指を鳴らすと、パリンッという澄んだ音と共に、第一層の結界が霧散した。 しかし、その瞬間だった。

カチッ。

足元の地面が微かに沈んだ。 結界解除をトリガーにした、物理トラップの発動スイッチだ。

「おっと?」

ドガァァァン!!

アレクセイの足元で、盛大な爆発が起きた。 土煙が舞い上がり、周囲の木々がビリビリと震える。 私が仕掛けた『アリス式クレイモア』だ。 爆風と共に、悪臭を放つ煙幕(スカンクの分泌液と腐った卵を煮詰めたもの)が拡散する。

「ケホッ、ケホッ……!」

煙の中から、アレクセイの咳き込む声が聞こえる。 小屋の中でモニターしていた私は、ガッツポーズをした。

「やった! 直撃よ! さすがの殿下も、あの臭いには耐えられないはず!」

あれを吸えば、三日は吐き気が止まらない。 戦意喪失して帰ってくれるに違いない。

だが。

「……ほう」

煙が晴れると、そこには無傷のアレクセイが立っていた。 光の障壁(バリア)で爆風を完全に防いでいる。 そして、彼は周囲に漂う地獄のような悪臭を吸い込み――うっとりと目を細めた。

「なんて……なんて刺激的な香りなんだ!」

「は?」

私は望遠鏡を落としそうになった。

アレクセイは、ハンカチを取り出すこともなく、深呼吸をしていた。

「この鼻を突く強烈な刺激臭……。これは、彼女の私に対する『情熱』のメタファーか! 腐った卵のような匂いの中に、微かに香るハーブの香り……これは、ツンデレな彼女の『毒舌の中に隠された優しさ』を表現しているんだな!」

彼は感涙にむせび泣いた。

「ああ、リゼ! 君の愛は、なんて個性的で、なんてアヴァンギャルドなんだ! 普通の香水や花束では満足できない、我々上級者のための香り……素晴らしい! この匂いだけでご飯三杯はいける!」

「いけるわけないでしょバカなの!?」

私は思わずツッコミを入れた。 あれはただの悪臭だ。 スカンクだ。 それを「情熱のアロマ」と解釈するなんて、鼻がおかしいのか、頭がおかしいのか。 ……多分、両方だ。

「よし、次はどんなサプライズが待っているんだい?」

アレクセイは、臭いを身に纏ったまま(本人は高級コロンのつもり)、さらに前進した。 その足取りは、先ほどよりも軽やかだ。

次に彼を待ち受けていたのは、庭の中央に掘られた落とし穴だった。

ズボッ。

「おや?」

アレクセイの姿が地面に消えた。 深さ5メートル。 底には『高反発スライム』が敷き詰められている。 落ちたが最後、永遠にバウンドし続ける地獄のアトラクションだ。

「ふふふ、落ちたわね!」

私は窓から身を乗り出した。 穴の底から、ビヨーン、ビヨーンという音が聞こえてくるはずだ。

「うわぁっ! ……お? ……おおっ!?」

穴の中から、アレクセイの声が響く。

「すごい! なんだこの弾力は! まるで雲の上で跳ねているようだ!」

ビヨーン! アレクセイが穴から飛び出し、空中で一回転して、また穴の中へ落ちていく。

「たーのーしーいー!!」

ビヨーン! 再び飛び出すアレクセイ。 その顔は、遊園地に来た子供のように輝いていた。

「リゼ! 見てくれ! 君が用意してくれたトランポリン、最高だよ! 私の運動不足を気遣ってくれたんだね! 愛を感じるよ!」

「違うわよ! 三半規管を破壊する拷問器具よ!」

私は頭を抱えた。 彼は、拷問をアトラクションとして楽しんでいる。 スライムの粘液で服がベトベトになっているはずだが、それすらも「ローションプレイの一種か?」と解釈していそうで怖い。

アレクセイは数分間、楽しそうにバウンドした後、 「ふう、いい運動だった」 と言って、空中で体勢を整え、華麗に穴の縁に着地した。 全身スライムまみれだが、彼はそれを手で拭い、ペロリと舐めた。

「……ん? 甘い。レモン味だ」

「隠し味よバカ!」

殺傷能力はないスライムを使ったのが仇となった。 彼は完全にリフレッシュしてしまったようだ。

「さて、庭の遊びはこれくらいにして、本番といこうか」

アレクセイは、いよいよ小屋の玄関へと迫った。 そこには、最後の砦が待っている。

泥と魔力で作られたゴーレム、『プーさん(仮)』だ。 身長2メートルの巨体が、玄関の前で仁王立ちしている。 そのつぶらな瞳(小石)には、侵入者を排除する殺意が宿っている。

「グルルルル……」

プーさんが低い唸り声を上げる。 普通なら恐怖で足がすくむ場面だ。 だが、アレクセイは足を止め、目を丸くした。

「か……可愛い……!」

彼は胸を押さえた。

「なんて愛らしいテディベアなんだ! リゼの手作りか? 私へのプレゼントか?」

プーさんは無言で右腕を振り上げた。 丸太のような腕によるラリアットが、アレクセイの首を狙う。 ドゴォォォッ!! 鈍い音が響いた。

直撃した。 まともに首に入った。 岩をも砕く一撃だ。

しかし。 アレクセイの首は、微動だにしていなかった。 彼は微笑んだまま、プーさんの腕を頬ずりしていた。

「痛くないよ。君のパンチは、綿毛のように優しいね」

プーさんが困惑したように(見える)動きを止める。 彼の腕は、アレクセイの『物理無効化(常時発動)』の肌によって、逆にヒビが入っていた。

「よしよし、いい子だ。名前は? アレクJr.か?」

アレクセイはプーさんを抱きしめた。 ギュウゥゥゥッ。 愛の抱擁。 しかし、その腕力はドラゴンの絞殺レベルを超えていた。

メリメリメリ……。 プーさんの体から、嫌な音がする。

「ああ、可愛い。家に連れて帰って、リゼとの子供の遊び相手にしよう」

バキッ。ボロッ。 プーさんの土の体が崩れていく。 愛が重すぎて、物理的に圧壊しているのだ。

「あれ? 寝ちゃったのかな?」

アレクセイが腕を緩めると、そこにはただの土塊に戻ったプーさんの残骸があった。 彼は少し残念そうに首を傾げたが、すぐに気を取り直した。

「まあいい。リゼに直してもらおう」

彼はついに、玄関のドアノブに手をかけた。

   ◇

小屋の中。 私は戦慄していた。 モニター魔法の映像を見て、膝が震えていた。

「化け物……!」

爆発も、毒ガスも、落とし穴も、ゴーレムも。 全てが無効化された。 いや、無効化どころか、全てを「愛のファンサービス」として消化吸収してしまった。 あの男、メンタルがオリハルコンでできているのか?

「ガチャリ」

玄関の鍵が開く音がした。 もちろん鍵はかけていたが、彼にかかれば鍵などないも同然だ。

「リゼ? 入るよ? 恥ずかしがらなくていいんだよ?」

甘い声。 背筋が凍るような甘い声が聞こえる。

「逃げなきゃ!」

私は即座に判断した。 戦っては勝てない。 会話も通じない。 ならば、逃走一択だ。

私は裏口へと走った。 リュックは背負っている。 貴重品も持った。 店の商品は……諦めよう。 命あっての物種だ。

「お邪魔しまーす」

玄関が開く音。 私は裏口のドアを蹴破り、外へと飛び出した。 夕闇が迫る森の中へ、全速力で駆ける。

「……ん? リゼ?」

アレクセイがリビングに入ってくる気配がする。 私は振り返らずに走った。 森の木々が私の味方をしてくれる。 『森の案内人(フォレスト・ガイド)』のスキルを発動し、道なき道を進む。

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

心臓が破裂しそうだ。 怖い。 本当に怖い。 あんな理解不能な生物が、かつての婚約者だったなんて。 私は9回の人生で、一体何を学んでいたんだ。 彼の本性が「ポジティブ・モンスター」だったなんて、攻略本にも載っていなかったぞ!

   ◇

小屋のリビング。 アレクセイは、静まり返った部屋の中央に立っていた。

「リゼ……?」

誰もいない。 家具は整然と配置され、テーブルの上には飲みかけのハーブティーが置かれている。 まだ温かい。 ついさっきまで、彼女がここにいた証拠だ。

「……いないのか」

アレクセイは肩を落とした。 せっかく全ての「試練」を乗り越えたのに、肝心の姫君が不在とは。 やはり、まだ照れているのだろうか。

彼は部屋を見渡した。 質素だが、センスの良いインテリア。 壁には乾燥した薬草が吊るされ、棚には手作りのポーションが並んでいる。

「ふふ、ここで彼女は、村人たちのために薬を作っていたんだね。なんて優しいんだ」

彼はカウンターに近づいた。 そこには、一冊のノートが置かれていた。 『売上台帳』だ。 彼は勝手にページをめくった。

『4月1日 腰痛薬 効果絶大すぎるとクレーム。次は成分を薄めること』 『4月2日 育毛剤 村長の髪が爆発。トリミング代を請求された』 『4月3日 安眠ポーション 飲んだ人が三日起きない。致死量ギリギリだったかも』

「……可愛い」

アレクセイはノートを抱きしめた。 失敗談すら愛おしい。 ドジっ子なリゼ。 完璧に見えて、実は抜けているところがある彼女が、たまらなく好きだ。

「ん?」

ふと、カウンターの隅に置かれた物に目が留まった。 小さなアロマキャンドルだ。 使いかけで、芯が黒く焦げている。 彼はそれを手に取り、鼻に近づけた。

「……この香り」

ラベンダーと、柑橘系、そして彼女自身の甘い体臭が混じった香り。 彼は目を閉じた。 脳裏に、リゼの姿が鮮明に浮かぶ。 恥ずかしそうに笑うリゼ。 怒って頬を膨らませるリゼ。 そして、涙目で逃げ出すリゼ。

「ああ、リゼ。君の残り香だけで、私は一晩中、君の夢を見られそうだ」

アレクセイはキャンドルをポケットにしまった。 これは戦利品だ。 そして、新たな決意の証でもある。

彼は裏口が開いていることに気づいた。 ドアが蹴破られた痕跡がある。 そこから、森へと続く小さな足跡。

「また、かくれんぼの続きか」

アレクセイは裏口に立ち、森の闇を見つめた。 普通なら、夜の森への追跡は危険だ。 だが、彼にとってそれは、夜のデートコースに過ぎない。

「いいだろう。受けて立つよ」

彼はニヤリと笑った。 その瞳は、獲物を追う狩人のそれではなく、大好きなボールを追いかける大型犬のように輝いていた。

「どこまでも逃げるといい。地球の裏側までだって追いかける。そして捕まえたら……今度こそ、たっぷりと『お仕置き(キスの嵐)』をしてあげるからね」

彼はポケットから一枚の紙を取り出した。 先ほど、トラップの爆発で吹き飛んだ看板の切れ端だ。 そこには、『元婚約者お断り』と殴り書きされていた。

「『元婚約者お断り』……ふふっ。つまり『現・夫なら大歓迎』ということだな? わかっているよ、リゼ。焦らなくていい。すぐにその願いを叶えてあげる」

アレクセイは看板の切れ端に口づけをし、それを風に乗せて飛ばした。 そして、迷うことなく森の中へと足を踏み入れた。

背後には、彼が「愛の力」で破壊し尽くした小屋の残骸が、月明かりに照らされて静かに佇んでいた。 私のスローライフの拠点は、わずか一週間で廃墟と化したのだった。

   ◇

森の中を走りながら、私は何度も後ろを振り返った。 追っ手の気配はない。 今のところは。

「あいつ……絶対に来る」

確信があった。 あのアレクセイ殿下は、一度ロックオンした獲物を絶対に逃がさない。 しかも、今の彼は「恋の暴走列車」状態だ。 ブレーキが壊れているどころか、アクセルしか付いていない。

「どうする? どこへ逃げる?」

隣国に行くか? いや、帝国のスパイがいるという噂もある。 それに、殿下の権力なら隣国に手配書を回すくらい造作もない。

「……そうだ、聖女ミナ」

ふと、王城に残してきた本来のヒロインの顔が浮かんだ。 彼女なら、この暴走王子を止める何かを知っているかもしれない。 いや、むしろ彼女が殿下と結ばれれば、私は解放されるはずなのだ。

「なんでくっつかないのよ! シナリオ通りに行きなさいよ!」

私は夜空に向かって文句を言った。 だが、返ってくるのはフクロウの声だけ。

「……とりあえず、合流地点を探さなきゃ」

私は地図を思い出した。 この森を抜けると、帝国の国境に近い『迷いの森』がある。 そこなら、さすがの殿下も迷うかもしれない。 それに、あそこには私の古い知り合い(5回目の人生で助けたエルフ)がいるはずだ。

「よし、エルフの里へ行こう」

私は方針を決めた。 スローライフはお預けだ。 今は、生き残るためのサバイバルだ。

リュックの中の非常食(干し肉)を噛み締めながら、私は涙目で走った。

「私の安眠……私の布団……返してよぉぉぉ!」

悲痛な叫びが、夜の森に吸い込まれていった。 逃亡生活6日目。 状況は悪化の一途を辿っていた。
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