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第八話 商売繁盛? いいえ、これは身バレの危機です
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「……ここまで来れば、とりあえずは安心ね」
深く苔むした森の奥深く。 樹齢数百年はあろうかという巨木たちが、天然のドームのように空を覆い隠す場所。 『迷いの森』の中でも、特に魔力が濃く、普通の人間なら一歩踏み入れただけで平衡感覚を失う危険地帯だ。
その中心にある、かつてエルフたちが一時的な野営地として使い、今は放棄された小さな廃屋。 そこに、私とミナは転がり込んでいた。
「ぜぇ、はぁ……死ぬかと思いました……」
ミナが床にへたり込む。 泥だらけのドレス、ボサボサの髪。 かつて王城で着飾っていた男爵令嬢の面影は皆無だ。 あるのは、修羅場をくぐり抜けた戦友(サバイバー)の顔だけである。
「よく頑張ったわね、ミナ。あのバカ王子の『勇者ごっこ』に付き合わずに済んだのは、あんたの聖女パワーのおかげよ」
私はミナに水筒を渡した。 中身は、私が調合した疲労回復ポーション(味は栄養ドリンク風)だ。
「ありがとうございます、お姉さま……。でも、あの王子様、本当に諦めてくれるでしょうか?」
「諦めるわけないでしょ。あいつの辞書に『断念』という言葉はないわ。あるのは『一時撤退(戦略的リロード)』と『再突撃(愛の特攻)』だけよ」
私は窓の隙間から外を警戒しながら言った。 アレクセイ殿下は今頃、私が撒いた煙幕と、ミナが展開した聖域(サンクチュアリ)の残滓に惑わされ、森の中を彷徨っているはずだ。 だが、彼のことだ。 「迷路もまた、愛の迷宮!」とか言いながら、楽しそうに草を刈って進んでくるに違いない。
「当面はここを拠点にするわ。エルフの里への道は、季節によって変わるから、正しいルートが開くまで数日は待機が必要なの」
「はい! 私、お洗濯とお掃除なら任せてください! 王城での下積み時代に鍛えられましたから!」
ミナがガッツポーズをする。 悲しいかな、聖女としての能力よりも、雑用スキルの方が高いのが彼女の現状だった。
◇
それから三日間。 奇妙な共同生活が始まった。
この廃屋はボロボロだったが、私とミナのコンビネーションにかかれば、すぐに快適な住処へと変貌した。
「『浄化(ピュリフィケーション)』!」
ミナが手をかざすと、部屋に積もっていた百年分の埃とカビが、神々しい光と共に消滅する。 ただの掃除ではない。 除霊レベルの清浄化だ。 床板は新築のように輝き、空気は高原のリゾート地のように澄み渡る。
「すごいわね、ミナ。あんた、掃除屋として独立できるわよ」
「えへへ、お掃除は好きなんです。心が洗われるようで」
ミナは嬉しそうに鼻歌を歌いながら、今度は私の洗濯物を浄化し始めた。 水も洗剤も使わず、光だけでシミ一つなく真っ白にする技術。 便利すぎる。 一家に一台欲しい聖女様だ。
一方、私は資金調達のために動いていた。 逃亡生活には金がかかる。 特に、これから隣国やエルフの里で暮らすには、現地の通貨や交換用の物資が必要だ。 王城から持ち出した宝石類は足がつく可能性があるので、安易に換金できない。
となれば、やはり手に職をつけるしかない。 薬作りだ。
「この森は素材の宝庫ね」
私は森で採取したレアなキノコや薬草を並べ、簡易的な調合キットでポーションを作り始めた。 狙いは、冒険者向けの回復薬と、魔除けの香だ。 この森には、一攫千金を狙って迷い込む無謀な冒険者が多い。 彼らに売りつければ、良い稼ぎになる。
「お姉さま、お手伝いします!」
掃除を終えたミナが寄ってきた。
「じゃあ、この空き瓶を洗っておいてくれる? あと、煮沸消毒も」
「了解です! 『聖なる水よ、穢れを払いたまえ(ホーリー・ウォッシュ)』!」
ミナが指先から水を出し、瓶を洗浄する。 その水がキラキラと虹色に輝いているのが気になったが、まあ聖女だし演出だろうとスルーした。 これが間違いだった。
翌日。 完成したポーションを検品していた私は、異変に気づいた。
「……何これ?」
私が作ったのは、標準品質の『中級回復薬(ハイ・ポーション)』のはずだった。 傷が塞がる程度の、どこにでもある薬だ。 しかし、目の前にある瓶詰めされた液体は、内側から淡い黄金色の光を放ち、コルク栓をしていても漏れ出すほどの神聖なオーラを纏っていた。
試しに、実験用に捕まえた瀕死のトカゲ(尻尾が切れている)に一滴垂らしてみた。
ボワンッ!
光が弾けた瞬間、トカゲの尻尾が生えた。 それだけではない。 トカゲの鱗が黄金色に変色し、背中から小さな翼が生え、さらに目が知性的に輝き出したのだ。
「キュイッ!(ありがとう、神よ!)」
トカゲは私に一礼すると、空を飛んで去っていった。 ドラゴンへの進化。 たった一滴で。
「……ミナちゃん?」
私は震える声で相棒を呼んだ。
「はい! どうしましたか、お姉さま!」
「あんた、瓶を洗う時に何をしたの?」
「え? 普通に、心を込めて『使う人が元気になりますように』って祈りながら洗いましたけど」
「祈り! それが原因か!」
私は頭を抱えた。 聖女ミナの『祈り』は、ただの精神論ではない。 神聖属性の極大エンチャントだ。 彼女が洗った瓶は、その時点で『聖杯』クラスのアーティファクトと化していたのだ。 そこに私の高品質ポーションを入れたことで、効果が化学反応(というより奇跡)を起こし、『神霊薬(エリクサー・ゴッド)』になってしまったのである。
「ど、どうしましょうお姉さま……失敗作ですか?」
ミナが不安そうにする。
「失敗作どころか、国が傾くレベルの代物よ。こんなの市場に流したら、戦争が起きるわ」
「ひえっ!」
「でも……背に腹は代えられないわね」
私は悪役令嬢としての計算高さを発動させた。 これをそのまま売るのは危険だが、100倍に希釈すれば、ちょうどいい『超・特効薬』くらいになるはずだ。
「ミナ、これからは祈らないで。無心で洗って」
「む、無心……わかりました。明日の晩御飯のことを考えながら洗います」
「それは煩悩よ」
こうして、私とミナの『森の隠れ家薬店』が、ひっそりと(する予定で)オープンした。
◇
商売の相手は、主に森で遭難しかけている冒険者たちだ。 私は『認識阻害のローブ』をまとい、ミナにもフードを被らせて、森の入り口付近まで出張販売に向かった。
最初のお客は、ゾンビの群れに襲われて半泣きになっていた3人組の冒険者パーティーだった。
「た、助けてくれぇ! 毒が、毒が回って……!」
リーダー格の戦士が、顔を紫色にして倒れている。 ゾンビ毒だ。普通の解毒剤では治らない。
「お困りのようね」
私は木陰から声をかけた。 怪しさ満点だが、彼らに選ぶ権利はない。
「く、薬か!? いくらでも払う! 助けてくれ!」
「一本、銀貨5枚よ」
「安い! くれ!」
私は希釈した特製ポーションを渡した。 戦士がそれを一気飲みする。
カッ!
戦士の体が発光した。 紫色の顔色が瞬時に健康的なピンク色になり、傷口が塞がり、さらにはハゲかけていた頭頂部にフサフサの髪が生えてきた。
「うおおおおっ! 力が! 力がみなぎるぅぅぅ!」
戦士が起き上がり、剣を一閃。 迫り来るゾンビの群れを、衝撃波だけで消し飛ばした。
「す、すげえ……!」 「なんだこの薬!? 若返り効果まであるぞ!」 「あんた、何者だ!?」
冒険者たちが驚愕の眼差しで私を見る。 私はフードを目深に被り直し、ミステリアスに微笑んだ(見えないけど)。
「ただの通りすがりの薬屋よ。……名は、アリス」
「アリス様……! 森の女神、アリス様だ!」
彼らは地面に額を擦り付けて感謝した。 そして、余計なことに、銀貨5枚の代わりに、持っていた金貨や魔物の素材を全て置いていってくれた。
「ふふ、チョロいわね」
私はホクホク顔で売り上げを回収した。 これなら、すぐに目標金額が貯まる。 隣のミナも、「わぁ、お金がいっぱい!」と目を輝かせている。 彼女もまた、王城での薄給生活の反動で、現金収入に弱い体になっていた。
しかし。 ここでも私は、情報伝達速度というものを甘く見ていた。
助けられた冒険者たちは、町に戻るなり、酒場で大声で吹聴したのだ。 「迷いの森には女神がいる!」 「死人も蘇る秘薬を売ってくれる!」 「しかも、女神の横には、天使のような可愛い助手がいて、微笑むだけで装備が祝福(強化)された!」
噂は尾ひれをつけ、翼を生やして拡散した。 数日のうちに、迷いの森の入り口には、噂を聞きつけた冒険者、商人、そして不治の病に悩む貴族の使いなどが殺到する事態となった。
「……まずいわね」
森の入り口付近の木の上から、行列を見下ろして私は呟いた。 完全に『聖地』化している。 中には、ギルドの調査員らしき姿もある。 これ以上目立つと、本命の敵(王子)に見つかるのも時間の問題だ。
「お姉さま、どうしますか? 今日もたくさんのお客さんが待ってますよ?」
ミナは呑気だ。 彼女は最近、客に「頑張ってくださいね」と声をかけるだけでチップがもらえることに味を占め、接客業に目覚めつつある。
「店じまいよ。これ以上はリスクが高すぎる」
「えぇ~っ! あと少しで、念願の『ふわふわベッド』が買えるのに!」
「命とベッド、どっちが大事なの?」
私が説得しようとした、その時だった。 行列の後方から、不穏な気配が近づいてきた。
ただの人間ではない。 統率された動き。 鋭い殺気。 そして、隠しきれない『王家の犬』の匂い。
「……来た」
私は息を飲んだ。 冒険者たちを掻き分けて現れたのは、黒ずくめの集団。 王家直属の諜報部隊、『影の騎士団』だ。 アレクセイ殿下の私兵であり、リゼ捜索の別動隊である。
「静まれ」
リーダーらしき男が、低い声で群衆を制した。 一瞬で静まり返る森。
「我々は、この森に潜む『重要指名手配犯』を探している。特徴は、プラチナブロンドの髪とアメジストの瞳を持つ女だ」
男が手配書を掲げる。 そこには、私の顔(美化率200%)が描かれている。
「加えて、最近の情報では、ピンク色の髪の小娘を連れているとの報告もある」
ミナが「ひっ」と息を飲む。 バレている。 私とミナのセット運用が、完全に把握されている。
「この近くで『奇跡の薬屋』を営む女がいると聞いた。そいつの特徴を教えろ」
騎士が冒険者の一人に詰め寄る。 冒険者は震えながら答えた。
「い、いや、顔はフードで見えなくて……でも、名前は『アリス』と……」
「アリス……!」
リーダーの目が光った。
「間違いない。殿下の推測通りだ。『不思議の国』ごっこを続けているな」
彼は懐から通信用の魔道具を取り出した。 アレクセイ殿下への直通回線だ。
「殿下、発見しました。ターゲットは迷いの森の入り口付近で、違法な薬物売買を行なっている模様です」
『……違法?』
水晶玉から、殿下の不機嫌そうな声が響く。
『言葉を慎め。リゼが作っているのは、国民の健康を守るための慈愛の薬だ。たとえそれが毒物であっても、彼女が薬だと言えばそれは万能薬なのだ』
相変わらずの狂信ぶりだ。
『で、確保したのか?』
「いえ、まだ接触していませんが……一つ、気になる情報が」
リーダーが声を潜めた。
「ターゲットのそばに、もう一人、非常に親密な関係の人物がいるようです。客の証言によると、『アリス様とその相棒は、まるで長年連れ添った夫婦のように息がぴったりだ』と」
『……なんだと?』
空気が凍りついた。 水晶玉越しでもわかる。 アレクセイ殿下の温度が、絶対零度まで下がった。
『その相棒とは、男か? 女か?』
「フードを被っていて不明ですが……アリス様はその者を『私の大事なパートナー』と呼び、稼いだ金を全てその者に渡しているとか……」
これはミナのことだ。 私が売上管理(金庫番)をミナに任せていたのを、客が誤解したらしい。
『金を……渡している? つまり、ヒモか?』
殿下の声が震える。
『私のリゼをたぶらかし、彼女に働かせて貢がせている馬の骨がいるというのか!?』
「あくまで噂ですが……」
『許さん……!!』
ドォォォォン!!
通信越しに、何かが爆発する音が聞こえた。 殿下が怒りのあまり、近くの岩山でも粉砕したのだろう。
『リゼは私のものだ。彼女の財布も、彼女の労働力も、彼女の視線も、全て私のものだ! どこの誰とも知らん泥棒猫に、指一本触れさせてたまるか!』
『……殿下、落ち着いてください。その相棒というのは、おそらく例の聖女ミナでは……』
『関係ない! 男だろうが女だろうが、リゼと私の間に入り込む者は全員ギルティだ!』
アレクセイの絶叫が森に響く(魔道具の音量がMAXになっている)。
『今すぐ行く! 座標を送れ! その「相棒」とやらを血祭りにあげて、リゼの目を覚まさせてやる!』
ブツン。 通信が切れた。
森の入り口は、恐怖の沈黙に包まれた。 冒険者たちは察した。 「なんかヤバいのが来る」と。
木の上で、私とミナは顔を見合わせた。
「……お姉さま。私、血祭りにあげられるんでしょうか」
ミナが涙目で震えている。
「大丈夫よ。血祭りになる前に、高飛びするわよ」
私はミナの手を引いた。 もう商売どころではない。 身バレどころか、三角関係(王子の脳内における)のもつれによる修羅場が迫っている。
「逃げるわよ! 今度はもっと奥へ! エルフの里へ強行突破するわ!」
「はいぃぃぃ! もうお金なんていりませぇぇん!」
私たちが枝を蹴って飛び去ると同時、はるか彼方から、金色の光が彗星のように飛んでくるのが見えた。 アレクセイ殿下だ。 飛竜すら置いてきぼりにして、単身、飛行魔法で突っ込んできている。
「速すぎるでしょバカ!」
私たちは全速力で森の闇へと消えた。
◇
数分後。 私たちがいた場所に、アレクセイが隕石のように着地した。
ズドォォォォン!!
地面がクレーター状に陥没し、周囲の冒険者たちが衝撃波で吹き飛ぶ。 土煙の中から現れたのは、鬼神の如き形相のアレクセイだった。
「どこだ……! 私のリゼはどこだ!」
彼は血走った目で周囲を睨みつけた。 そして、地面に落ちていた一枚の紙切れを拾い上げる。 それは、私がポーションの瓶に貼っていた手書きのラベルだった。
『効能:元気が出る。 注意:飲み過ぎると毛深くなります。 製造者:アリス&ミナ』
「アリス&ミナ……」
アレクセイはその文字を握り潰した。
「やはり聖女ミナか。あの女……リゼを洗脳するだけでなく、ビジネスパートナーとして囲い込むとは。リゼの経営手腕を利用して巨万の富を得ようとしているのか」
彼は完全に誤解していた。 リゼが主体で、ミナが助手だという事実を、彼の脳は「可哀想なリゼが、悪徳聖女に搾取されている」と変換していた。
「待っていろ、リゼ。今、そのブラック契約から解放してやる。そして、君を雇うのはこの私だ。終身雇用契約(結婚)でな!」
アレクセイは再び空へ飛び立った。 残された冒険者たちは、呆然と空を見上げていた。
「……今の、王太子殿下だよな?」 「なんか、『終身雇用』とか叫んでなかったか?」 「俺たち、とんでもない痴話喧嘩に巻き込まれてるんじゃ……」
彼らが真実に気づいた頃には、もう遅かった。 迷いの森は、この日を境に『恋のバトルフィールド』と化し、一般人の立ち入りが禁止されることになるのだった。
◇
森のさらに奥。 霧が濃くなり、木々の形状が歪み始めるエリア。
私とミナは、息を切らして走っていた。
「はぁ、はぁ……お姉さま、もう無理です……足が……」
「頑張って! ここを抜ければ、エルフの結界があるはずよ!」
私は地図(記憶)を頼りに進む。 エルフの里は、排他的だが、一度中に入ってしまえば絶対の安全圏だ。 過去の人生で得た『通行手形(エルフの長老の入れ歯を拾ってあげた謝礼)』が、まだ有効であることを祈るしかない。
「止まれ、人間たちよ」
突然、頭上から凛とした声が降ってきた。 弓の弦を引き絞る音。 見上げると、木の上に数人のエルフたちが立っていた。 美しい顔立ちに、長い耳。 そして、私たちに向けられた鋭い矢。
「ここは我らの聖域。穢れた人間が入ることは許されぬ」
リーダー格のエルフが冷たく言い放つ。 通常なら、ここで追い返されるか、矢の雨を浴びるところだ。 だが、私は怯まない。 むしろ、待っていた。
「久しぶりね、シルヴィア。相変わらず肌艶がいいじゃない」
私はフードを取り、ニカっと笑いかけた。 エルフのリーダー、シルヴィアが目を見開く。
「その声……まさか、リゼ?」
「正解。ちょっと厄介な男(ストーカー)に追われててね。匿ってくれない?」
シルヴィアは驚愕し、そして次の瞬間、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……またお前か。前回(8回目の人生の話だが、彼女にとっては数年前の感覚)も、『国を追われた』とか言って転がり込んできたな」
「今回はもっと深刻よ。国じゃなくて、王子の愛(ヘビー級)に追われてるの」
「……入るがいい。ただし、森を騒がせたら即刻追い出すぞ」
シルヴィアが合図をすると、霧が晴れ、里への道が開かれた。 助かった。 エルフとのコネクション、プライスレス。
「お姉さま、知り合いなんですか?」
「まあね。昔、彼女の黒歴史(ポエムノート)を偶然拾ってしまってね。それ以来の仲よ」
「弱みを握ってるだけじゃないですか!」
私たちはエルフの里へと駆け込んだ。 その直後、私たちの背後で、森の結界が再び閉じた。
ギリギリセーフ。 これで、アレクセイ殿下も手出しはできないはずだ。 エルフの結界は、古代魔法による絶対防御。 いくら彼でも、これを破るには……。
「リゼェェェェ!! 開けろォォォォ!!」
ドガン! ドガン!
里の外から、結界を叩く音が聞こえる。 まるでドアノックのように、結界全体がビリビリと震えている。
「……しつこすぎる」
私は頭を抱えた。 シルヴィアが青ざめた顔で私を見る。
「おい、リゼ。外にいるあの『黄金のゴリラ』は何だ? 結界にヒビが入ってるぞ」
「……私の元婚約者よ」
「どんな英才教育を受けたらあんな化け物が育つんだ」
エルフの里に、かつてない緊張が走る。 私の逃亡生活は、ついに種族をも巻き込んだ国際問題へと発展しようとしていた。
深く苔むした森の奥深く。 樹齢数百年はあろうかという巨木たちが、天然のドームのように空を覆い隠す場所。 『迷いの森』の中でも、特に魔力が濃く、普通の人間なら一歩踏み入れただけで平衡感覚を失う危険地帯だ。
その中心にある、かつてエルフたちが一時的な野営地として使い、今は放棄された小さな廃屋。 そこに、私とミナは転がり込んでいた。
「ぜぇ、はぁ……死ぬかと思いました……」
ミナが床にへたり込む。 泥だらけのドレス、ボサボサの髪。 かつて王城で着飾っていた男爵令嬢の面影は皆無だ。 あるのは、修羅場をくぐり抜けた戦友(サバイバー)の顔だけである。
「よく頑張ったわね、ミナ。あのバカ王子の『勇者ごっこ』に付き合わずに済んだのは、あんたの聖女パワーのおかげよ」
私はミナに水筒を渡した。 中身は、私が調合した疲労回復ポーション(味は栄養ドリンク風)だ。
「ありがとうございます、お姉さま……。でも、あの王子様、本当に諦めてくれるでしょうか?」
「諦めるわけないでしょ。あいつの辞書に『断念』という言葉はないわ。あるのは『一時撤退(戦略的リロード)』と『再突撃(愛の特攻)』だけよ」
私は窓の隙間から外を警戒しながら言った。 アレクセイ殿下は今頃、私が撒いた煙幕と、ミナが展開した聖域(サンクチュアリ)の残滓に惑わされ、森の中を彷徨っているはずだ。 だが、彼のことだ。 「迷路もまた、愛の迷宮!」とか言いながら、楽しそうに草を刈って進んでくるに違いない。
「当面はここを拠点にするわ。エルフの里への道は、季節によって変わるから、正しいルートが開くまで数日は待機が必要なの」
「はい! 私、お洗濯とお掃除なら任せてください! 王城での下積み時代に鍛えられましたから!」
ミナがガッツポーズをする。 悲しいかな、聖女としての能力よりも、雑用スキルの方が高いのが彼女の現状だった。
◇
それから三日間。 奇妙な共同生活が始まった。
この廃屋はボロボロだったが、私とミナのコンビネーションにかかれば、すぐに快適な住処へと変貌した。
「『浄化(ピュリフィケーション)』!」
ミナが手をかざすと、部屋に積もっていた百年分の埃とカビが、神々しい光と共に消滅する。 ただの掃除ではない。 除霊レベルの清浄化だ。 床板は新築のように輝き、空気は高原のリゾート地のように澄み渡る。
「すごいわね、ミナ。あんた、掃除屋として独立できるわよ」
「えへへ、お掃除は好きなんです。心が洗われるようで」
ミナは嬉しそうに鼻歌を歌いながら、今度は私の洗濯物を浄化し始めた。 水も洗剤も使わず、光だけでシミ一つなく真っ白にする技術。 便利すぎる。 一家に一台欲しい聖女様だ。
一方、私は資金調達のために動いていた。 逃亡生活には金がかかる。 特に、これから隣国やエルフの里で暮らすには、現地の通貨や交換用の物資が必要だ。 王城から持ち出した宝石類は足がつく可能性があるので、安易に換金できない。
となれば、やはり手に職をつけるしかない。 薬作りだ。
「この森は素材の宝庫ね」
私は森で採取したレアなキノコや薬草を並べ、簡易的な調合キットでポーションを作り始めた。 狙いは、冒険者向けの回復薬と、魔除けの香だ。 この森には、一攫千金を狙って迷い込む無謀な冒険者が多い。 彼らに売りつければ、良い稼ぎになる。
「お姉さま、お手伝いします!」
掃除を終えたミナが寄ってきた。
「じゃあ、この空き瓶を洗っておいてくれる? あと、煮沸消毒も」
「了解です! 『聖なる水よ、穢れを払いたまえ(ホーリー・ウォッシュ)』!」
ミナが指先から水を出し、瓶を洗浄する。 その水がキラキラと虹色に輝いているのが気になったが、まあ聖女だし演出だろうとスルーした。 これが間違いだった。
翌日。 完成したポーションを検品していた私は、異変に気づいた。
「……何これ?」
私が作ったのは、標準品質の『中級回復薬(ハイ・ポーション)』のはずだった。 傷が塞がる程度の、どこにでもある薬だ。 しかし、目の前にある瓶詰めされた液体は、内側から淡い黄金色の光を放ち、コルク栓をしていても漏れ出すほどの神聖なオーラを纏っていた。
試しに、実験用に捕まえた瀕死のトカゲ(尻尾が切れている)に一滴垂らしてみた。
ボワンッ!
光が弾けた瞬間、トカゲの尻尾が生えた。 それだけではない。 トカゲの鱗が黄金色に変色し、背中から小さな翼が生え、さらに目が知性的に輝き出したのだ。
「キュイッ!(ありがとう、神よ!)」
トカゲは私に一礼すると、空を飛んで去っていった。 ドラゴンへの進化。 たった一滴で。
「……ミナちゃん?」
私は震える声で相棒を呼んだ。
「はい! どうしましたか、お姉さま!」
「あんた、瓶を洗う時に何をしたの?」
「え? 普通に、心を込めて『使う人が元気になりますように』って祈りながら洗いましたけど」
「祈り! それが原因か!」
私は頭を抱えた。 聖女ミナの『祈り』は、ただの精神論ではない。 神聖属性の極大エンチャントだ。 彼女が洗った瓶は、その時点で『聖杯』クラスのアーティファクトと化していたのだ。 そこに私の高品質ポーションを入れたことで、効果が化学反応(というより奇跡)を起こし、『神霊薬(エリクサー・ゴッド)』になってしまったのである。
「ど、どうしましょうお姉さま……失敗作ですか?」
ミナが不安そうにする。
「失敗作どころか、国が傾くレベルの代物よ。こんなの市場に流したら、戦争が起きるわ」
「ひえっ!」
「でも……背に腹は代えられないわね」
私は悪役令嬢としての計算高さを発動させた。 これをそのまま売るのは危険だが、100倍に希釈すれば、ちょうどいい『超・特効薬』くらいになるはずだ。
「ミナ、これからは祈らないで。無心で洗って」
「む、無心……わかりました。明日の晩御飯のことを考えながら洗います」
「それは煩悩よ」
こうして、私とミナの『森の隠れ家薬店』が、ひっそりと(する予定で)オープンした。
◇
商売の相手は、主に森で遭難しかけている冒険者たちだ。 私は『認識阻害のローブ』をまとい、ミナにもフードを被らせて、森の入り口付近まで出張販売に向かった。
最初のお客は、ゾンビの群れに襲われて半泣きになっていた3人組の冒険者パーティーだった。
「た、助けてくれぇ! 毒が、毒が回って……!」
リーダー格の戦士が、顔を紫色にして倒れている。 ゾンビ毒だ。普通の解毒剤では治らない。
「お困りのようね」
私は木陰から声をかけた。 怪しさ満点だが、彼らに選ぶ権利はない。
「く、薬か!? いくらでも払う! 助けてくれ!」
「一本、銀貨5枚よ」
「安い! くれ!」
私は希釈した特製ポーションを渡した。 戦士がそれを一気飲みする。
カッ!
戦士の体が発光した。 紫色の顔色が瞬時に健康的なピンク色になり、傷口が塞がり、さらにはハゲかけていた頭頂部にフサフサの髪が生えてきた。
「うおおおおっ! 力が! 力がみなぎるぅぅぅ!」
戦士が起き上がり、剣を一閃。 迫り来るゾンビの群れを、衝撃波だけで消し飛ばした。
「す、すげえ……!」 「なんだこの薬!? 若返り効果まであるぞ!」 「あんた、何者だ!?」
冒険者たちが驚愕の眼差しで私を見る。 私はフードを目深に被り直し、ミステリアスに微笑んだ(見えないけど)。
「ただの通りすがりの薬屋よ。……名は、アリス」
「アリス様……! 森の女神、アリス様だ!」
彼らは地面に額を擦り付けて感謝した。 そして、余計なことに、銀貨5枚の代わりに、持っていた金貨や魔物の素材を全て置いていってくれた。
「ふふ、チョロいわね」
私はホクホク顔で売り上げを回収した。 これなら、すぐに目標金額が貯まる。 隣のミナも、「わぁ、お金がいっぱい!」と目を輝かせている。 彼女もまた、王城での薄給生活の反動で、現金収入に弱い体になっていた。
しかし。 ここでも私は、情報伝達速度というものを甘く見ていた。
助けられた冒険者たちは、町に戻るなり、酒場で大声で吹聴したのだ。 「迷いの森には女神がいる!」 「死人も蘇る秘薬を売ってくれる!」 「しかも、女神の横には、天使のような可愛い助手がいて、微笑むだけで装備が祝福(強化)された!」
噂は尾ひれをつけ、翼を生やして拡散した。 数日のうちに、迷いの森の入り口には、噂を聞きつけた冒険者、商人、そして不治の病に悩む貴族の使いなどが殺到する事態となった。
「……まずいわね」
森の入り口付近の木の上から、行列を見下ろして私は呟いた。 完全に『聖地』化している。 中には、ギルドの調査員らしき姿もある。 これ以上目立つと、本命の敵(王子)に見つかるのも時間の問題だ。
「お姉さま、どうしますか? 今日もたくさんのお客さんが待ってますよ?」
ミナは呑気だ。 彼女は最近、客に「頑張ってくださいね」と声をかけるだけでチップがもらえることに味を占め、接客業に目覚めつつある。
「店じまいよ。これ以上はリスクが高すぎる」
「えぇ~っ! あと少しで、念願の『ふわふわベッド』が買えるのに!」
「命とベッド、どっちが大事なの?」
私が説得しようとした、その時だった。 行列の後方から、不穏な気配が近づいてきた。
ただの人間ではない。 統率された動き。 鋭い殺気。 そして、隠しきれない『王家の犬』の匂い。
「……来た」
私は息を飲んだ。 冒険者たちを掻き分けて現れたのは、黒ずくめの集団。 王家直属の諜報部隊、『影の騎士団』だ。 アレクセイ殿下の私兵であり、リゼ捜索の別動隊である。
「静まれ」
リーダーらしき男が、低い声で群衆を制した。 一瞬で静まり返る森。
「我々は、この森に潜む『重要指名手配犯』を探している。特徴は、プラチナブロンドの髪とアメジストの瞳を持つ女だ」
男が手配書を掲げる。 そこには、私の顔(美化率200%)が描かれている。
「加えて、最近の情報では、ピンク色の髪の小娘を連れているとの報告もある」
ミナが「ひっ」と息を飲む。 バレている。 私とミナのセット運用が、完全に把握されている。
「この近くで『奇跡の薬屋』を営む女がいると聞いた。そいつの特徴を教えろ」
騎士が冒険者の一人に詰め寄る。 冒険者は震えながら答えた。
「い、いや、顔はフードで見えなくて……でも、名前は『アリス』と……」
「アリス……!」
リーダーの目が光った。
「間違いない。殿下の推測通りだ。『不思議の国』ごっこを続けているな」
彼は懐から通信用の魔道具を取り出した。 アレクセイ殿下への直通回線だ。
「殿下、発見しました。ターゲットは迷いの森の入り口付近で、違法な薬物売買を行なっている模様です」
『……違法?』
水晶玉から、殿下の不機嫌そうな声が響く。
『言葉を慎め。リゼが作っているのは、国民の健康を守るための慈愛の薬だ。たとえそれが毒物であっても、彼女が薬だと言えばそれは万能薬なのだ』
相変わらずの狂信ぶりだ。
『で、確保したのか?』
「いえ、まだ接触していませんが……一つ、気になる情報が」
リーダーが声を潜めた。
「ターゲットのそばに、もう一人、非常に親密な関係の人物がいるようです。客の証言によると、『アリス様とその相棒は、まるで長年連れ添った夫婦のように息がぴったりだ』と」
『……なんだと?』
空気が凍りついた。 水晶玉越しでもわかる。 アレクセイ殿下の温度が、絶対零度まで下がった。
『その相棒とは、男か? 女か?』
「フードを被っていて不明ですが……アリス様はその者を『私の大事なパートナー』と呼び、稼いだ金を全てその者に渡しているとか……」
これはミナのことだ。 私が売上管理(金庫番)をミナに任せていたのを、客が誤解したらしい。
『金を……渡している? つまり、ヒモか?』
殿下の声が震える。
『私のリゼをたぶらかし、彼女に働かせて貢がせている馬の骨がいるというのか!?』
「あくまで噂ですが……」
『許さん……!!』
ドォォォォン!!
通信越しに、何かが爆発する音が聞こえた。 殿下が怒りのあまり、近くの岩山でも粉砕したのだろう。
『リゼは私のものだ。彼女の財布も、彼女の労働力も、彼女の視線も、全て私のものだ! どこの誰とも知らん泥棒猫に、指一本触れさせてたまるか!』
『……殿下、落ち着いてください。その相棒というのは、おそらく例の聖女ミナでは……』
『関係ない! 男だろうが女だろうが、リゼと私の間に入り込む者は全員ギルティだ!』
アレクセイの絶叫が森に響く(魔道具の音量がMAXになっている)。
『今すぐ行く! 座標を送れ! その「相棒」とやらを血祭りにあげて、リゼの目を覚まさせてやる!』
ブツン。 通信が切れた。
森の入り口は、恐怖の沈黙に包まれた。 冒険者たちは察した。 「なんかヤバいのが来る」と。
木の上で、私とミナは顔を見合わせた。
「……お姉さま。私、血祭りにあげられるんでしょうか」
ミナが涙目で震えている。
「大丈夫よ。血祭りになる前に、高飛びするわよ」
私はミナの手を引いた。 もう商売どころではない。 身バレどころか、三角関係(王子の脳内における)のもつれによる修羅場が迫っている。
「逃げるわよ! 今度はもっと奥へ! エルフの里へ強行突破するわ!」
「はいぃぃぃ! もうお金なんていりませぇぇん!」
私たちが枝を蹴って飛び去ると同時、はるか彼方から、金色の光が彗星のように飛んでくるのが見えた。 アレクセイ殿下だ。 飛竜すら置いてきぼりにして、単身、飛行魔法で突っ込んできている。
「速すぎるでしょバカ!」
私たちは全速力で森の闇へと消えた。
◇
数分後。 私たちがいた場所に、アレクセイが隕石のように着地した。
ズドォォォォン!!
地面がクレーター状に陥没し、周囲の冒険者たちが衝撃波で吹き飛ぶ。 土煙の中から現れたのは、鬼神の如き形相のアレクセイだった。
「どこだ……! 私のリゼはどこだ!」
彼は血走った目で周囲を睨みつけた。 そして、地面に落ちていた一枚の紙切れを拾い上げる。 それは、私がポーションの瓶に貼っていた手書きのラベルだった。
『効能:元気が出る。 注意:飲み過ぎると毛深くなります。 製造者:アリス&ミナ』
「アリス&ミナ……」
アレクセイはその文字を握り潰した。
「やはり聖女ミナか。あの女……リゼを洗脳するだけでなく、ビジネスパートナーとして囲い込むとは。リゼの経営手腕を利用して巨万の富を得ようとしているのか」
彼は完全に誤解していた。 リゼが主体で、ミナが助手だという事実を、彼の脳は「可哀想なリゼが、悪徳聖女に搾取されている」と変換していた。
「待っていろ、リゼ。今、そのブラック契約から解放してやる。そして、君を雇うのはこの私だ。終身雇用契約(結婚)でな!」
アレクセイは再び空へ飛び立った。 残された冒険者たちは、呆然と空を見上げていた。
「……今の、王太子殿下だよな?」 「なんか、『終身雇用』とか叫んでなかったか?」 「俺たち、とんでもない痴話喧嘩に巻き込まれてるんじゃ……」
彼らが真実に気づいた頃には、もう遅かった。 迷いの森は、この日を境に『恋のバトルフィールド』と化し、一般人の立ち入りが禁止されることになるのだった。
◇
森のさらに奥。 霧が濃くなり、木々の形状が歪み始めるエリア。
私とミナは、息を切らして走っていた。
「はぁ、はぁ……お姉さま、もう無理です……足が……」
「頑張って! ここを抜ければ、エルフの結界があるはずよ!」
私は地図(記憶)を頼りに進む。 エルフの里は、排他的だが、一度中に入ってしまえば絶対の安全圏だ。 過去の人生で得た『通行手形(エルフの長老の入れ歯を拾ってあげた謝礼)』が、まだ有効であることを祈るしかない。
「止まれ、人間たちよ」
突然、頭上から凛とした声が降ってきた。 弓の弦を引き絞る音。 見上げると、木の上に数人のエルフたちが立っていた。 美しい顔立ちに、長い耳。 そして、私たちに向けられた鋭い矢。
「ここは我らの聖域。穢れた人間が入ることは許されぬ」
リーダー格のエルフが冷たく言い放つ。 通常なら、ここで追い返されるか、矢の雨を浴びるところだ。 だが、私は怯まない。 むしろ、待っていた。
「久しぶりね、シルヴィア。相変わらず肌艶がいいじゃない」
私はフードを取り、ニカっと笑いかけた。 エルフのリーダー、シルヴィアが目を見開く。
「その声……まさか、リゼ?」
「正解。ちょっと厄介な男(ストーカー)に追われててね。匿ってくれない?」
シルヴィアは驚愕し、そして次の瞬間、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……またお前か。前回(8回目の人生の話だが、彼女にとっては数年前の感覚)も、『国を追われた』とか言って転がり込んできたな」
「今回はもっと深刻よ。国じゃなくて、王子の愛(ヘビー級)に追われてるの」
「……入るがいい。ただし、森を騒がせたら即刻追い出すぞ」
シルヴィアが合図をすると、霧が晴れ、里への道が開かれた。 助かった。 エルフとのコネクション、プライスレス。
「お姉さま、知り合いなんですか?」
「まあね。昔、彼女の黒歴史(ポエムノート)を偶然拾ってしまってね。それ以来の仲よ」
「弱みを握ってるだけじゃないですか!」
私たちはエルフの里へと駆け込んだ。 その直後、私たちの背後で、森の結界が再び閉じた。
ギリギリセーフ。 これで、アレクセイ殿下も手出しはできないはずだ。 エルフの結界は、古代魔法による絶対防御。 いくら彼でも、これを破るには……。
「リゼェェェェ!! 開けろォォォォ!!」
ドガン! ドガン!
里の外から、結界を叩く音が聞こえる。 まるでドアノックのように、結界全体がビリビリと震えている。
「……しつこすぎる」
私は頭を抱えた。 シルヴィアが青ざめた顔で私を見る。
「おい、リゼ。外にいるあの『黄金のゴリラ』は何だ? 結界にヒビが入ってるぞ」
「……私の元婚約者よ」
「どんな英才教育を受けたらあんな化け物が育つんだ」
エルフの里に、かつてない緊張が走る。 私の逃亡生活は、ついに種族をも巻き込んだ国際問題へと発展しようとしていた。
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