10 / 20
第十話 王子、嫉妬に狂って国境軍を動かす
しおりを挟む
転移魔法の光が収まると、そこは荒涼とした岩肌が広がる山の中腹だった。
「……くしゅんっ!」
ミナが可愛らしくくしゃみをする。 ここは標高が高いらしく、空気が刃物のように冷たい。 見下ろせば、眼下には雲海が広がり、遠くには雪を冠した連峰が連なっている。 エルフの里から数十キロ離れた、国境の山岳地帯だ。
「とりあえず、追っ手はいないみたいね」
私は周囲を警戒しながら、岩陰に腰を下ろした。 心臓がまだバクバクと音を立てている。 あのままエルフの里にいたら、間違いなくアレクセイ殿下に捕まっていた。 そして今頃は、愛の監禁部屋で手錠(ピンク色のフリル付き)をかけられていたに違いない。
「お姉さま、ここどこですか? 寒いです……」
ミナが身を寄せてくる。 彼女のエルフ風の薄着では、この寒さは命取りだ。 私はリュックから予備の毛布を取り出し、彼女に巻き付けた。
「ここは『竜の背骨』と呼ばれる山脈の一部よ。この山を越えればガレリア帝国。手前側が王国領。私たちは今、その境界線上のグレーゾーンにいるわ」
「帝国……あの怪しいスパイの人の国ですね」
ミナが嫌そうな顔をする。 無理もない。 先ほどの修羅場の原因は、半分くらいあの男(ジークフリート)にある。
私はポケットの中を探り、ジークフリートから渡された『転移の指輪』を取り出した。 真紅の宝石が妖しく輝いている。 これを使えば、一瞬で帝国の安全圏へ飛べる。 温かい食事、ふかふかのベッド、そして週休5日の好待遇が待っているはずだ。
「……でも、まだ使う気になれないわね」
私は指輪を再びポケットにねじ込んだ。 あの男の目は、私を「便利な道具」として見ていた。 殿下の「愛玩動物」としての視線よりはマシだが、結局は他人の掌の上だ。 私の求めているのは、誰にも管理されない真の自由なのだ。
「とりあえず、山を降りましょう。こんなところで野宿したら凍死するわ」
「はい! あ、でもお姉さま、あっちを見てください。なんか、光ってませんか?」
ミナが麓の方角を指差す。 夕闇が迫る中、山裾の街道沿いに、無数の松明の明かりが列をなして動いているのが見えた。 まるで、地を這う光の蛇だ。
私はバッグから自作の望遠鏡を取り出し、その光の列を覗いた。 そして、絶句した。
「……嘘でしょ」
レンズの向こうに見えたのは、整然と行軍する重装歩兵の部隊。 騎馬隊。 魔導砲を牽引する巨大な地竜。 そして、その中央にはためく、見覚えがありすぎる『王家の紋章』と、さらにその横に掲げられた巨大な旗。
その旗には、達筆な文字でこう書かれていた。
【愛の逃避行支援部隊(実態:リゼ奪還軍)】
「……頭おかしいんじゃないの!?」
私は思わず叫んだ。 あれは一個小隊や中隊ではない。 数千、いや万に近い規模の大軍勢だ。 国境守備軍だけでなく、王都からの中央軍まで動員している。
「お姉さま、あれって……もしかして王子様の軍隊ですか?」
「そうよ。あいつ、私一人のために国軍を動かしたのよ!」
私は怒りで震えた。 一人の女性を探すために、国家予算をどれだけ投入しているんだ。 兵士たちの給料、食費、装備の維持費。 ざっと計算しただけで、小さな国の年間予算が吹き飛ぶレベルだ。
「金に汚い王子め! 私の慰謝料(宝物庫から盗んだ分)を取り返すために、その何倍もの税金を使うなんて、経済観念はどうなってるのよ!」
「えっと、お姉さま。多分、お金の問題じゃないと思いますけど……」
ミナが呆れたようにツッコミを入れるが、私は聞く耳を持たなかった。 これはもはや個人のストーカー事案ではない。 国家権力の私物化による、大規模軍事侵攻だ。
「逃げるわよミナ。あんなのに包囲されたら、アリ一匹逃げられないわ」
「はいぃぃぃ! もう山登りは嫌ですぅぅぅ!」
私たちは、軍隊の進路とは逆方向、山のさらに奥深くへと足を踏み入れた。
◇
数時間前。 王国軍、国境方面司令部。
その作戦会議室は、異常な熱気に包まれていた。 いや、熱気というよりは、一人の男が放つ殺気に支配されていた。
「報告します! 第三師団、配置につきました! 第四魔導大隊、探知結界の展開完了!」
「よし。第五騎兵隊は? リゼが逃げ込みそうな山道は封鎖したか?」
地図の上に駒を置きながら、アレクセイ殿下が鋭く問う。 彼は今、王太子の正装ではなく、戦場に立つための黄金の甲冑を身に纏っていた。 その瞳は、獲物を追い詰める捕食者のようにギラギラと輝いている。
「はっ! 既に主要な獣道には伏兵を配置しております。リス一匹通しません!」
「うむ。ご苦労」
アレクセイは満足げに頷き、そして壁に貼られた巨大な地図を睨みつけた。 そこには、エルフの里を中心とした広範囲な包囲網が描かれている。
「殿下……。僭越ながら申し上げますが……」
恐る恐る口を開いたのは、国境警備隊の将軍だ。 彼は歴戦の猛者だが、今の王太子の狂気の前では子猫のように震えていた。
「これほどの規模で軍を動かすとなると、隣国への説明がつきません。事実上の開戦準備と取られかねませんが……」
「構わん」
アレクセイは即答した。
「隣国が文句を言ってきたらこう言え。『我が国の至宝が盗まれた。それを取り返すための正当な防衛行動である』とな」
「し、至宝とは……国宝の魔道具のことでしょうか?」
「違う。私の心臓(リゼ)のことだ」
「は?」
「リゼは私の心臓だ。彼女がいなければ私は死ぬ。つまり、彼女を連れ去った帝国(と勘違いしている)は、私に対する暗殺未遂を行ったも同然だ。これは自衛権の発動なのだよ」
将軍は口をパクパクさせた。 無茶苦茶だ。 恋愛脳で国際法を解釈しないでほしい。
「それに、今回の作戦にはもう一つ、重大な目的がある」
アレクセイは拳を握りしめた。 その拳から、バチバチと光属性の魔力が漏れ出し、地図の一部(帝国の領土部分)を焦がした。
「リゼをたぶらかした『間男』の排除だ」
会議室の気温が氷点下まで下がった。
「エルフの里で感知した、あの不快な残り香……。帝国のスパイめ。リゼの優しさに付け込み、甘い言葉で誘惑し、彼女を連れ去ろうとした罪、万死に値する」
アレクセイの脳内では、ジークフリート(まだ顔も知らないが)は、リゼを鎖で繋いで無理やり連れ回す極悪非道な誘拐犯として描かれていた。 実際はリゼが自分の意思で逃げているのだが、彼の辞書に「リゼが本気で自分を嫌っている」という項目はないため、必然的に「悪い男に騙されている」という結論になるのだ。
「いいか、全軍に告ぐ!」
アレクセイが立ち上がり、声を張り上げた。
「リゼは見つけ次第、最高級の綿毛のように優しく保護せよ! 彼女の髪一本でも傷つけた者は即刻処刑だ! しかし! 彼女のそばにいる『男』に関しては、容赦は無用だ! 発見次第、魔法の的としてハチの巣にしろ!」
「「「イエッサー!!」」」
兵士たちが唱和する。 彼らの中には、「王子の痴話喧嘩に付き合わされるのは御免だ」と思っている者も多いが、王子のカリスマ性と、何より「成功報酬として特別ボーナス(金貨10枚)」という餌に釣られていた。
「行くぞ! 『オペレーション・ラブ・レスキュー』開始だ!」
アレクセイが先頭に立ち、軍勢が動き出した。 その進軍の振動は、山々を揺るがし、眠れる魔物たちをも叩き起こす規模だった。
◇
山の中腹。 私とミナは、道なき道を進んでいた。
「はぁ、はぁ……お姉さま、もう歩けません……」
ミナが泣き言を言う。 無理もない。 舗装された街道は全て軍に封鎖されているため、私たちは獣道を、それも崖のような急斜面を選んで進むしかなかったのだ。
「頑張って。止まったら終わりよ。捕まったら、あんたは一生、王子の執務室で書類整理ロボットにされるのよ?」
「ひぃっ! 歩きます! 這ってでも行きます!」
社畜への恐怖が、ミナの足を動かす。 私たちは岩場を登り、渓流を渡り、ひたすら山頂を目指した。 山頂付近には、古代の『転移ゲート』の跡地があるという噂を、以前の人生で聞いたことがあった。 それがまだ使えるかは賭けだが、それしか逃げ道はない。
しかし。 現実は非情だった。
「……行き止まり?」
目の前に立ちはだかったのは、高さ数百メートルの絶壁だった。 登れるような足場はない。 左右は切り立った崖。 後ろからは、軍隊の包囲網が迫ってくる。
「お姉さま、あそこ! 下から光が!」
ミナが指差す。 谷底から、無数の魔法の光が昇ってくるのが見えた。 探索部隊だ。 彼らは魔導探知機を使い、しらみつぶしに山を検索している。
「『発見! 魔力反応あり! 座標、北北西の崖下!』」
風に乗って、兵士の声が聞こえた。 見つかった。 聖女の結界を張っているはずだが、至近距離まで肉薄されれば、物理的な痕跡(足跡や体温)までは隠せない。
「ここまでのようね……」
私は唇を噛んだ。 10回目の人生。 またしてもバッドエンドか。 いや、死にはしないだろうが、自由の死だ。 あの王子に捕まれば、一生籠の中の鳥。 それも、溺愛という名の砂糖漬けにされて、思考能力を奪われるのだ。
「……嫌よ」
私は呟いた。
「え?」
「絶対に嫌! 私は私の人生を生きるの! あんな『勘違いポジティブ男』の飾り物になんてなってたまるもんですか!」
私は崖を見上げた。 登るのは無理だ。 なら、どうする?
ふと、私の『危機感知スキル』ではなく、『宝探しスキル』が反応した。 この絶壁の近く。 微かだが、異質な魔力の流れを感じる。
「……洞窟?」
崖の中腹、岩陰に隠れるようにして、小さな横穴が開いているのが見えた。 普通の洞窟ではない。 そこから漂ってくるのは、カビ臭い空気ではなく、もっと濃厚で、危険な『魔素』の匂い。
「ミナ、あそこに行くわよ」
「え? あんな穴に? でも、すごく嫌な予感がしますけど……」
「軍隊に捕まるのと、正体不明の穴に入るのと、どっちがいい?」
「穴です!」
即答だった。 私たちは残りの魔力を振り絞り、『浮遊魔法(レビテーション)』を使って崖の中腹まで飛び上がった。 そして、その横穴へと滑り込んだ。
中は暗く、湿っていた。 しかし、奥から吹き上げてくる風は、ここがただの穴ではなく、どこか深い場所へと繋がっていることを示唆していた。
「お姉さま……ここ、もしかして……」
ミナが震える声で言う。
「ええ。多分、『ダンジョン』ね」
突発的に発生する、魔物の巣窟。 入れば生きて帰れる保証はない、死の迷宮。 しかし、今の私たちにとっては、唯一の『希望の抜け道』だった。
「行きましょう。魔物なら私がぶっ飛ばす。でも、王子はぶっ飛ばしても死なないからタチが悪いのよ」
私たちは暗闇の奥へと足を踏み入れた。
その直後。 外から殿下の声が響いてきた。
「リゼーーーッ!! そこにいるんだろう!?」
崖の下に、アレクセイ殿下が到着したのだ。 彼は私たちが入った横穴を見上げ、絶叫した。
「そこは危険だ! そこは『深淵の迷宮』の入り口だぞ! S級指定の最悪のダンジョンだ!」
「S級……?」
私は歩みを止めた。 聞いてない。 そんな高難易度だなんて聞いてない。 中級くらいかと思っていた。
「戻ってこいリゼ! 今ならまだ間に合う! 私の胸に飛び込んでくれば、すべてを許そう! 君をそそのかした間男だけを殺して、君とは幸せな家庭を……!」
「うるさい! S級ダンジョンのドラゴンの方が、あんたよりマシよ!」
私は入り口に向かって叫び返した。 そして、追っ手が入って来られないように、入り口の天井を魔法で崩落させた。
ズズズズ……ドォォォン!!
岩盤が崩れ、入り口が塞がれる。 外からの光が遮断され、私たちは完全な闇の中に閉ざされた。
「……やっちゃいましたね」
ミナが呆然と呟く。
「ええ。もう後戻りはできないわ」
私は魔法で明かりを灯した。 青白い光が、どこまでも続く鍾乳洞を照らし出す。
「攻略するわよ、ミナ。このダンジョンを抜けて、反対側の出口から脱出する。それが私たちの『自由への道』よ」
「はい! 私、お姉さまと一緒なら、地獄の底までついて行きます!」
「地獄じゃないわよ。ここは『資材置き場』よ」
私は強がって見せたが、内心では冷や汗をかいていた。 S級ダンジョン。 過去の人生でも挑んだことのない未踏の領域。 果たして、私の「スローライフへの執念」は、ダンジョンの殺意に勝てるのか。
◇
一方、崩落した入り口の前。
アレクセイは、塞がれた岩壁を呆然と見上げていた。
「……リゼ……」
彼は膝から崩れ落ちた。 絶望。 愛する人が、自ら死地へと飛び込んでしまった。 しかも、「ドラゴンの方がマシ」という捨て台詞を残して。
「殿下! いかがなさいますか! 岩を爆破して突入しますか!?」
側近が駆け寄る。 だが、アレクセイは首を振った。
「いや……無理に開ければ、崩落が広がって彼女を生き埋めにしてしまうかもしれん」
彼は立ち上がり、岩壁に手をついた。 その目には、涙が滲んでいた。
「……私が、追い詰めすぎたのか?」
初めての、反省の言葉。 側近たちが「おおっ、ついに殿下が正気に!」と色めき立つ。
「彼女は、私との愛の生活に自信が持てなかったのかもしれない。私の愛が大きすぎて、それに見合う自分になれるか不安だったんだな」
「……はい?(撤回。やはり狂っていた)」
「だから、彼女は『試練』を選んだんだ。S級ダンジョンという過酷な環境で自分を磨き、私に相応しい女性になって帰ってくるつもりなんだ!」
アレクセイの瞳に、再び狂気の輝きが戻った。 ポジティブ変換回路、正常稼働。
「なんと健気な……! そこまでして私を……!」
彼は感涙にむせびながら、将軍たちに命令を下した。
「全軍、ここで待機だ! この山を包囲し、出口となりうる全ての穴を封鎖せよ! リゼが出てきた瞬間、ファンファーレで出迎えるぞ!」
「は、はい……」
「そして、私は……」
アレクセイは剣を抜いた。
「私は別ルートから潜入する。彼女がピンチになった時、颯爽と現れて助けるのがヒーローの役目だからな!」
「で、殿下ァァァ! 危険ですぅぅぅ!」
止める部下たちを振り切り、アレクセイは近くにあった別の亀裂へと飛び込んだ。 愛の暴走機関車は、地下迷宮へと舞台を移しても止まることを知らない。
こうして、私とミナのダンジョン攻略と、それを追うストーカー王子の『地下鬼ごっこ』が幕を開けた。 地上では数千の軍隊がキャンプを張り、山岳地帯は一大観光地のような賑わいを見せ始めるのだが、それはまた別の話である。
「……くしゅんっ!」
ミナが可愛らしくくしゃみをする。 ここは標高が高いらしく、空気が刃物のように冷たい。 見下ろせば、眼下には雲海が広がり、遠くには雪を冠した連峰が連なっている。 エルフの里から数十キロ離れた、国境の山岳地帯だ。
「とりあえず、追っ手はいないみたいね」
私は周囲を警戒しながら、岩陰に腰を下ろした。 心臓がまだバクバクと音を立てている。 あのままエルフの里にいたら、間違いなくアレクセイ殿下に捕まっていた。 そして今頃は、愛の監禁部屋で手錠(ピンク色のフリル付き)をかけられていたに違いない。
「お姉さま、ここどこですか? 寒いです……」
ミナが身を寄せてくる。 彼女のエルフ風の薄着では、この寒さは命取りだ。 私はリュックから予備の毛布を取り出し、彼女に巻き付けた。
「ここは『竜の背骨』と呼ばれる山脈の一部よ。この山を越えればガレリア帝国。手前側が王国領。私たちは今、その境界線上のグレーゾーンにいるわ」
「帝国……あの怪しいスパイの人の国ですね」
ミナが嫌そうな顔をする。 無理もない。 先ほどの修羅場の原因は、半分くらいあの男(ジークフリート)にある。
私はポケットの中を探り、ジークフリートから渡された『転移の指輪』を取り出した。 真紅の宝石が妖しく輝いている。 これを使えば、一瞬で帝国の安全圏へ飛べる。 温かい食事、ふかふかのベッド、そして週休5日の好待遇が待っているはずだ。
「……でも、まだ使う気になれないわね」
私は指輪を再びポケットにねじ込んだ。 あの男の目は、私を「便利な道具」として見ていた。 殿下の「愛玩動物」としての視線よりはマシだが、結局は他人の掌の上だ。 私の求めているのは、誰にも管理されない真の自由なのだ。
「とりあえず、山を降りましょう。こんなところで野宿したら凍死するわ」
「はい! あ、でもお姉さま、あっちを見てください。なんか、光ってませんか?」
ミナが麓の方角を指差す。 夕闇が迫る中、山裾の街道沿いに、無数の松明の明かりが列をなして動いているのが見えた。 まるで、地を這う光の蛇だ。
私はバッグから自作の望遠鏡を取り出し、その光の列を覗いた。 そして、絶句した。
「……嘘でしょ」
レンズの向こうに見えたのは、整然と行軍する重装歩兵の部隊。 騎馬隊。 魔導砲を牽引する巨大な地竜。 そして、その中央にはためく、見覚えがありすぎる『王家の紋章』と、さらにその横に掲げられた巨大な旗。
その旗には、達筆な文字でこう書かれていた。
【愛の逃避行支援部隊(実態:リゼ奪還軍)】
「……頭おかしいんじゃないの!?」
私は思わず叫んだ。 あれは一個小隊や中隊ではない。 数千、いや万に近い規模の大軍勢だ。 国境守備軍だけでなく、王都からの中央軍まで動員している。
「お姉さま、あれって……もしかして王子様の軍隊ですか?」
「そうよ。あいつ、私一人のために国軍を動かしたのよ!」
私は怒りで震えた。 一人の女性を探すために、国家予算をどれだけ投入しているんだ。 兵士たちの給料、食費、装備の維持費。 ざっと計算しただけで、小さな国の年間予算が吹き飛ぶレベルだ。
「金に汚い王子め! 私の慰謝料(宝物庫から盗んだ分)を取り返すために、その何倍もの税金を使うなんて、経済観念はどうなってるのよ!」
「えっと、お姉さま。多分、お金の問題じゃないと思いますけど……」
ミナが呆れたようにツッコミを入れるが、私は聞く耳を持たなかった。 これはもはや個人のストーカー事案ではない。 国家権力の私物化による、大規模軍事侵攻だ。
「逃げるわよミナ。あんなのに包囲されたら、アリ一匹逃げられないわ」
「はいぃぃぃ! もう山登りは嫌ですぅぅぅ!」
私たちは、軍隊の進路とは逆方向、山のさらに奥深くへと足を踏み入れた。
◇
数時間前。 王国軍、国境方面司令部。
その作戦会議室は、異常な熱気に包まれていた。 いや、熱気というよりは、一人の男が放つ殺気に支配されていた。
「報告します! 第三師団、配置につきました! 第四魔導大隊、探知結界の展開完了!」
「よし。第五騎兵隊は? リゼが逃げ込みそうな山道は封鎖したか?」
地図の上に駒を置きながら、アレクセイ殿下が鋭く問う。 彼は今、王太子の正装ではなく、戦場に立つための黄金の甲冑を身に纏っていた。 その瞳は、獲物を追い詰める捕食者のようにギラギラと輝いている。
「はっ! 既に主要な獣道には伏兵を配置しております。リス一匹通しません!」
「うむ。ご苦労」
アレクセイは満足げに頷き、そして壁に貼られた巨大な地図を睨みつけた。 そこには、エルフの里を中心とした広範囲な包囲網が描かれている。
「殿下……。僭越ながら申し上げますが……」
恐る恐る口を開いたのは、国境警備隊の将軍だ。 彼は歴戦の猛者だが、今の王太子の狂気の前では子猫のように震えていた。
「これほどの規模で軍を動かすとなると、隣国への説明がつきません。事実上の開戦準備と取られかねませんが……」
「構わん」
アレクセイは即答した。
「隣国が文句を言ってきたらこう言え。『我が国の至宝が盗まれた。それを取り返すための正当な防衛行動である』とな」
「し、至宝とは……国宝の魔道具のことでしょうか?」
「違う。私の心臓(リゼ)のことだ」
「は?」
「リゼは私の心臓だ。彼女がいなければ私は死ぬ。つまり、彼女を連れ去った帝国(と勘違いしている)は、私に対する暗殺未遂を行ったも同然だ。これは自衛権の発動なのだよ」
将軍は口をパクパクさせた。 無茶苦茶だ。 恋愛脳で国際法を解釈しないでほしい。
「それに、今回の作戦にはもう一つ、重大な目的がある」
アレクセイは拳を握りしめた。 その拳から、バチバチと光属性の魔力が漏れ出し、地図の一部(帝国の領土部分)を焦がした。
「リゼをたぶらかした『間男』の排除だ」
会議室の気温が氷点下まで下がった。
「エルフの里で感知した、あの不快な残り香……。帝国のスパイめ。リゼの優しさに付け込み、甘い言葉で誘惑し、彼女を連れ去ろうとした罪、万死に値する」
アレクセイの脳内では、ジークフリート(まだ顔も知らないが)は、リゼを鎖で繋いで無理やり連れ回す極悪非道な誘拐犯として描かれていた。 実際はリゼが自分の意思で逃げているのだが、彼の辞書に「リゼが本気で自分を嫌っている」という項目はないため、必然的に「悪い男に騙されている」という結論になるのだ。
「いいか、全軍に告ぐ!」
アレクセイが立ち上がり、声を張り上げた。
「リゼは見つけ次第、最高級の綿毛のように優しく保護せよ! 彼女の髪一本でも傷つけた者は即刻処刑だ! しかし! 彼女のそばにいる『男』に関しては、容赦は無用だ! 発見次第、魔法の的としてハチの巣にしろ!」
「「「イエッサー!!」」」
兵士たちが唱和する。 彼らの中には、「王子の痴話喧嘩に付き合わされるのは御免だ」と思っている者も多いが、王子のカリスマ性と、何より「成功報酬として特別ボーナス(金貨10枚)」という餌に釣られていた。
「行くぞ! 『オペレーション・ラブ・レスキュー』開始だ!」
アレクセイが先頭に立ち、軍勢が動き出した。 その進軍の振動は、山々を揺るがし、眠れる魔物たちをも叩き起こす規模だった。
◇
山の中腹。 私とミナは、道なき道を進んでいた。
「はぁ、はぁ……お姉さま、もう歩けません……」
ミナが泣き言を言う。 無理もない。 舗装された街道は全て軍に封鎖されているため、私たちは獣道を、それも崖のような急斜面を選んで進むしかなかったのだ。
「頑張って。止まったら終わりよ。捕まったら、あんたは一生、王子の執務室で書類整理ロボットにされるのよ?」
「ひぃっ! 歩きます! 這ってでも行きます!」
社畜への恐怖が、ミナの足を動かす。 私たちは岩場を登り、渓流を渡り、ひたすら山頂を目指した。 山頂付近には、古代の『転移ゲート』の跡地があるという噂を、以前の人生で聞いたことがあった。 それがまだ使えるかは賭けだが、それしか逃げ道はない。
しかし。 現実は非情だった。
「……行き止まり?」
目の前に立ちはだかったのは、高さ数百メートルの絶壁だった。 登れるような足場はない。 左右は切り立った崖。 後ろからは、軍隊の包囲網が迫ってくる。
「お姉さま、あそこ! 下から光が!」
ミナが指差す。 谷底から、無数の魔法の光が昇ってくるのが見えた。 探索部隊だ。 彼らは魔導探知機を使い、しらみつぶしに山を検索している。
「『発見! 魔力反応あり! 座標、北北西の崖下!』」
風に乗って、兵士の声が聞こえた。 見つかった。 聖女の結界を張っているはずだが、至近距離まで肉薄されれば、物理的な痕跡(足跡や体温)までは隠せない。
「ここまでのようね……」
私は唇を噛んだ。 10回目の人生。 またしてもバッドエンドか。 いや、死にはしないだろうが、自由の死だ。 あの王子に捕まれば、一生籠の中の鳥。 それも、溺愛という名の砂糖漬けにされて、思考能力を奪われるのだ。
「……嫌よ」
私は呟いた。
「え?」
「絶対に嫌! 私は私の人生を生きるの! あんな『勘違いポジティブ男』の飾り物になんてなってたまるもんですか!」
私は崖を見上げた。 登るのは無理だ。 なら、どうする?
ふと、私の『危機感知スキル』ではなく、『宝探しスキル』が反応した。 この絶壁の近く。 微かだが、異質な魔力の流れを感じる。
「……洞窟?」
崖の中腹、岩陰に隠れるようにして、小さな横穴が開いているのが見えた。 普通の洞窟ではない。 そこから漂ってくるのは、カビ臭い空気ではなく、もっと濃厚で、危険な『魔素』の匂い。
「ミナ、あそこに行くわよ」
「え? あんな穴に? でも、すごく嫌な予感がしますけど……」
「軍隊に捕まるのと、正体不明の穴に入るのと、どっちがいい?」
「穴です!」
即答だった。 私たちは残りの魔力を振り絞り、『浮遊魔法(レビテーション)』を使って崖の中腹まで飛び上がった。 そして、その横穴へと滑り込んだ。
中は暗く、湿っていた。 しかし、奥から吹き上げてくる風は、ここがただの穴ではなく、どこか深い場所へと繋がっていることを示唆していた。
「お姉さま……ここ、もしかして……」
ミナが震える声で言う。
「ええ。多分、『ダンジョン』ね」
突発的に発生する、魔物の巣窟。 入れば生きて帰れる保証はない、死の迷宮。 しかし、今の私たちにとっては、唯一の『希望の抜け道』だった。
「行きましょう。魔物なら私がぶっ飛ばす。でも、王子はぶっ飛ばしても死なないからタチが悪いのよ」
私たちは暗闇の奥へと足を踏み入れた。
その直後。 外から殿下の声が響いてきた。
「リゼーーーッ!! そこにいるんだろう!?」
崖の下に、アレクセイ殿下が到着したのだ。 彼は私たちが入った横穴を見上げ、絶叫した。
「そこは危険だ! そこは『深淵の迷宮』の入り口だぞ! S級指定の最悪のダンジョンだ!」
「S級……?」
私は歩みを止めた。 聞いてない。 そんな高難易度だなんて聞いてない。 中級くらいかと思っていた。
「戻ってこいリゼ! 今ならまだ間に合う! 私の胸に飛び込んでくれば、すべてを許そう! 君をそそのかした間男だけを殺して、君とは幸せな家庭を……!」
「うるさい! S級ダンジョンのドラゴンの方が、あんたよりマシよ!」
私は入り口に向かって叫び返した。 そして、追っ手が入って来られないように、入り口の天井を魔法で崩落させた。
ズズズズ……ドォォォン!!
岩盤が崩れ、入り口が塞がれる。 外からの光が遮断され、私たちは完全な闇の中に閉ざされた。
「……やっちゃいましたね」
ミナが呆然と呟く。
「ええ。もう後戻りはできないわ」
私は魔法で明かりを灯した。 青白い光が、どこまでも続く鍾乳洞を照らし出す。
「攻略するわよ、ミナ。このダンジョンを抜けて、反対側の出口から脱出する。それが私たちの『自由への道』よ」
「はい! 私、お姉さまと一緒なら、地獄の底までついて行きます!」
「地獄じゃないわよ。ここは『資材置き場』よ」
私は強がって見せたが、内心では冷や汗をかいていた。 S級ダンジョン。 過去の人生でも挑んだことのない未踏の領域。 果たして、私の「スローライフへの執念」は、ダンジョンの殺意に勝てるのか。
◇
一方、崩落した入り口の前。
アレクセイは、塞がれた岩壁を呆然と見上げていた。
「……リゼ……」
彼は膝から崩れ落ちた。 絶望。 愛する人が、自ら死地へと飛び込んでしまった。 しかも、「ドラゴンの方がマシ」という捨て台詞を残して。
「殿下! いかがなさいますか! 岩を爆破して突入しますか!?」
側近が駆け寄る。 だが、アレクセイは首を振った。
「いや……無理に開ければ、崩落が広がって彼女を生き埋めにしてしまうかもしれん」
彼は立ち上がり、岩壁に手をついた。 その目には、涙が滲んでいた。
「……私が、追い詰めすぎたのか?」
初めての、反省の言葉。 側近たちが「おおっ、ついに殿下が正気に!」と色めき立つ。
「彼女は、私との愛の生活に自信が持てなかったのかもしれない。私の愛が大きすぎて、それに見合う自分になれるか不安だったんだな」
「……はい?(撤回。やはり狂っていた)」
「だから、彼女は『試練』を選んだんだ。S級ダンジョンという過酷な環境で自分を磨き、私に相応しい女性になって帰ってくるつもりなんだ!」
アレクセイの瞳に、再び狂気の輝きが戻った。 ポジティブ変換回路、正常稼働。
「なんと健気な……! そこまでして私を……!」
彼は感涙にむせびながら、将軍たちに命令を下した。
「全軍、ここで待機だ! この山を包囲し、出口となりうる全ての穴を封鎖せよ! リゼが出てきた瞬間、ファンファーレで出迎えるぞ!」
「は、はい……」
「そして、私は……」
アレクセイは剣を抜いた。
「私は別ルートから潜入する。彼女がピンチになった時、颯爽と現れて助けるのがヒーローの役目だからな!」
「で、殿下ァァァ! 危険ですぅぅぅ!」
止める部下たちを振り切り、アレクセイは近くにあった別の亀裂へと飛び込んだ。 愛の暴走機関車は、地下迷宮へと舞台を移しても止まることを知らない。
こうして、私とミナのダンジョン攻略と、それを追うストーカー王子の『地下鬼ごっこ』が幕を開けた。 地上では数千の軍隊がキャンプを張り、山岳地帯は一大観光地のような賑わいを見せ始めるのだが、それはまた別の話である。
50
あなたにおすすめの小説
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです
・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。
さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。
しかしナディアは全く気にしていなかった。
何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから――
偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。
※頭からっぽで
※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。
※夫婦仲は良いです
※私がイメージするサバ女子です(笑)
※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪
地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!
日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」
学園のアイドル、マルスからの突然の告白。
憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。
「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」
親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。
「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
睡蓮
恋愛
ジーク伯爵は、溺愛する自身の妹レイアと共謀する形で、婚約者であるユフィーナの事を追放することを決めた。ただその理由は、ユフィーナが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしユフィーナは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、ユフィーナを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。
くろねこ
恋愛
「殴られても、奪われても、祈れば治るから大丈夫」
――そう思い込まされて育った公爵令嬢オリビア。
しかし、偽聖女を名乗る義妹に階段から突き落とされた瞬間、
彼女の中で“何か”が完全に目覚める。
奪われた聖女の立場。
踏みにじられた尊厳。
見て見ぬふりをした家族と神殿。
――もう、我慢はしない。
大地そのものに影響を与える本物の加護を持つオリビアは、知略と魔法で屋敷を制圧し、偽りを一つずつ洗い流していく。
敵意を向けた者は近づけず、逆らった義母は“環境”に叱られ、王太子は腹を抱えて大笑い。
「奪われたなら、取り戻すだけです。倍……いえ、一万倍で」
これは、偽りの聖女からすべてを奪い返し、本物が“正しい場所”に立つ物語。
ざまぁ好き必読。
静かに、確実に、格の違いを見せつけます。
♦︎タイトル変えました。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる