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第十四話 王国崩壊の危機。リゼの張った結界が消えたせいです
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ガレリア帝国の首都ルーンガルド。 その中心部に位置する『薔薇の区画』、ジークフリート伯爵の屋敷。
朝の光が降り注ぐサンルームで、私は優雅なティータイムを楽しんでいた。
「……平和ね」
最高級の茶葉で淹れた紅茶の香りを楽しみながら、私は庭を眺めた。 手入れの行き届いた庭園には、色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥たちがさえずっている。 その一角で、私のペット(ドラゴン)であるポチが、大型犬用の特大ガムを嬉しそうに齧っている姿もまた、シュールだが平和な光景だ。
「お姉さま、クッキーが焼けましたよ!」
エプロン姿のミナが、焼きたてのクッキーを運んできた。 彼女はこの数日で、すっかりこの屋敷のメイド長と化していた。 本来の聖女としての仕事よりも、家事全般を取り仕切ることに生きがいを感じているらしい。 「王城での書類整理に比べれば、お掃除もお料理も天国です!」と語る彼女の目は、ブラック企業から脱出した社畜特有の輝きを放っていた。
「ありがとう、ミナ。……これ、また発光してるけど」
「あ、すみません。隠し味に『祈り』を込めたら、聖属性が付与されちゃって」
「食べるだけでアンデッドが一撃で成仏しそうなクッキーね」
私は苦笑しながら、黄金に輝くクッキーを口にした。 美味しい。 サクサクとした食感と共に、体内の魔力が浄化されていくのがわかる。 これなら、多少の呪いなら食べて治せるかもしれない。
「ジークフリートさんは?」
「朝から皇宮へ呼び出されています。『国境付近での謎の爆発(王子の仕業)について説明せよ』だそうです」
「……ご愁傷様ね」
私は他人事のように呟いた。 あの「契約の祭壇」での一件以来、ジークフリートは奔走している。 王子が祭壇で得た情報――つまり私の居場所――を元に、いつ攻め込んでくるかわからないからだ。
「でも、お姉さま。本当に大丈夫でしょうか? 王子様、千里眼でここを見てるんですよね?」
ミナが不安そうに空を見上げる。
「ええ。だからこそ、ここには厳重な結界が張られているわ。ジークフリートが帝国の魔導師団に掛け合って設置した『認識阻害』と『座標攪乱』の二重結界よ。これがある限り、千里眼でも正確な位置までは特定できないはず……」
私はそう言い聞かせた。 だが、胸の奥で警鐘が鳴り止まない。 あのアレクセイ殿下だ。 常識や理屈が通じる相手ではない。 「見えないなら、見えるまで全てを破壊すればいい」というバーサーカー理論で行動する男だ。
その時だった。
ウウウウウウウ――ッ!!
不快なサイレンの音が、首都全土に響き渡った。 敵襲を告げる警報だ。 しかも、最高レベルの『緊急事態宣言』を示す音色。
「な、何事ですか!?」
ミナがクッキーの皿を取り落とす。 庭のポチがガムを放り出して飛び上がった。
「ご主人様! やばい気配がするぞ! 空から化け物が来る!」
ポチが叫ぶ。 私はサンルームを飛び出し、空を見上げた。
首都の空を覆う巨大な防衛結界『アイギスの盾』。 帝国の科学と魔法の結晶であり、過去数百年間、一度も破られたことのない絶対防御壁。 その頂点付近に、一際眩しい黄金の光点が現れた。
「まさか……」
私は息を呑んだ。 光点は、隕石のような速度で結界に激突した。
ドォォォォォォォォン!!!!!
鼓膜を破るような轟音。 空が割れたかと思うほどの衝撃波が、首都全体を揺るがした。 屋敷の窓ガラスが一斉にビリビリと震える。
「結界が……歪んでる!?」
ミナが悲鳴を上げる。 絶対防御の結界が、衝突点から蜘蛛の巣状に亀裂を走らせている。 そして、その亀裂の向こうから、聞き覚えがありすぎる声が降ってきた。
『リゼェェェェェェッ!! 迎えに来たぞォォォォッ!!』
拡声魔法など使っていない。 地声だ。 魂の底から放たれた愛の絶叫が、物理的な衝撃波となって結界を粉砕しようとしているのだ。
「来た……! 本当に来やがった……!」
私は戦慄した。 国境からここまで、通常なら馬車で一週間はかかる距離だ。 それを、彼はわずか半日で走破したというのか。 しかも、単身で。
『帝国よ! そこをどけ! 私のリゼが、その下に埋まっているんだ!』
アレクセイ殿下は、結界の上空に浮かびながら剣を振り上げた。 聖剣アロンダイト・カスタムが、太陽よりも眩しく輝く。
『邪魔をするなら、この街ごと愛の力で更地にする! リゼを探すための発掘作業だと思えば安いものだ!』
「発掘作業!?」
ミナがツッコミを入れる。 首都を遺跡か何かと勘違いしている。
「迎撃せよ! 魔導砲、全門斉射!」
帝国の防衛隊長の声が響く。 市街地のあちこちに設置された迎撃タワーから、無数の魔力弾が発射された。 空を埋め尽くす光の雨。 一国の軍隊を壊滅させるほどの火力だ。
だが、殿下は笑っていた。
『ハハハッ! 花火か? リゼとの再会を祝う祝砲とは、帝国も気が利くな!』
彼は剣を一振りした。 たったそれだけで、数千発の魔力弾がかき消された。 いや、吸収された。 彼の『光属性・魔力吸収』スキルによって、敵の攻撃がそのまま彼のエネルギーに変換されたのだ。
『礼を言うぞ! おかげで魔力が満タンだ! これなら結界など紙切れ同然!』
殿下の体がさらに強く発光する。 スーパーサイヤ人など目ではない。 もはや恒星だ。
「まずい……! ポチ、ミナ! 逃げるわよ!」
私は庭へ飛び降りた。 この屋敷はもう安全ではない。 千里眼で場所がバレている以上、彼が結界を突破したら真っ先にここへ来る。
「ポチ、変身して! 小型化モードで!」
「わ、わかったワン!」
ポチがポンの音と共に、手のひらサイズのトカゲに変身する。 これをポケットにねじ込み、ミナの手を引いて裏口へと走る。
パリーン!!
頭上で、何かが砕ける音がした。 見上げると、帝国の誇る絶対防御結界『アイギスの盾』が、ガラス細工のように粉砕されていた。 空いた穴から、黄金の流星が降ってくる。
『見つけた……! 愛しのリゼ……!』
殿下が、真っ直ぐにこの屋敷へ向かってくる。 その目は、完全に私をロックオンしていた。 千里眼の精度、恐るべし。
「走れミナ! 地下水路へ!」
私たちは屋敷の地下ワインセラーにある隠し通路へと飛び込んだ。 ジークフリートが教えてくれた緊急脱出ルートだ。
ズドォォォォォン!!
背後で屋敷が吹き飛ぶ音がした。 殿下の着地衝撃だ。 私の「天国」だったスイートルームも、ふかふかのベッドも、焼きたてパンも、全てが瓦礫の下に消えた。
「私の……私の週休5日がぁぁぁっ!!」
私は涙ながらに叫び、暗い地下通路をひた走った。
◇
地上。 半壊したジークフリート邸の跡地。
土煙の中から、アレクセイ殿下がゆらりと姿を現した。 黄金の甲冑は煤けているが、その体には傷一つない。 ただ、その表情は修羅のそれだった。
「いない……」
彼は瓦礫の山を見回した。 ついさっきまでリゼがいたはずの場所。 そこには、飲みかけの紅茶のカップと、食べかけのクッキーだけが残されていた。
「また逃げたのか……リゼ……」
彼はクッキーを拾い上げ、愛おしげに口に入れた。
「……美味い。聖なる味がする。リゼの手作りか?(実際はミナ作)」
ボリボリとクッキーを噛み砕きながら、彼は再び千里眼を発動させようとした。 だが、使いすぎた魔力の反動で、視界がぐらりと揺れる。 いくら彼でも、国境から走り続け、帝国の結界を破壊し、さらに千里眼を維持するのは限界に近い。
「殿下! そこまでです!」
瓦礫の向こうから、武装した兵士たちを引き連れたジークフリートが現れた。 彼は憤怒の形相をしていた。 当然だ。 愛する別邸を破壊され、首都の防衛網を突破されたのだから。
「貴国の暴挙、もはや看過できない! これは宣戦布告と受け取るぞ!」
ジークフリートが杖を構える。 背後には、帝国の宮廷魔導師団がずらりと並び、攻撃魔法の詠唱を始めている。
「宣戦布告?」
アレクセイは鼻で笑った。
「私がいつ国を相手にした? 私が戦っているのは『リゼとの距離』という物理法則だけだ。邪魔をするなら、貴様らもまとめて物理法則の彼方へ飛ばしてやる」
彼は剣を構えた。 一人対帝国全軍。 常識的に考えれば無謀だが、今の彼には「敗北」の二文字が見えていない。
「来るぞ! 総員、防御結界展開!」
ジークフリートが叫ぶ。 アレクセイが地面を蹴ろうとした、その瞬間だった。
『――殿下! アレクセイ殿下! 応答してください! 緊急事態です!』
アレクセイの懐にある通信用魔道具が、悲鳴のような声を上げた。 王国の宰相、バルロの声だ。
「うるさい。今いいところなんだ。後にしろ」
『後になどできません! 国が……王国が滅びます!!』
「は?」
アレクセイの動きが止まった。 滅びる? 私がいない間に?
『王都の地下で、大規模な魔力爆発が起きました! 地下深くに封印されていたはずの『厄災の門』が開き、魔物が……魔物が溢れ出しています!』
「厄災の門だと?」
アレクセイは眉をひそめた。 それは王家に伝わる古い伝説だ。 王都の地下には、古代の邪神を封じた門があり、歴代の王族がその封印を守ってきた……はずだった。 だが、ここ数百年、その封印は安定しており、誰も気にしていなかった。
『なぜ急に封印が解けたんだ? 定期点検はしていたはずだろう』
『そ、それが……調査の結果、判明したのです。ここ数年、あの封印を人知れず維持し、強化し続けていた人物がいたことが……!』
宰相の声が震える。
『その人物の魔力供給が、数日前から途絶えたため、封印が一気に劣化したのです!』
「……誰だ、その人物とは」
アレクセイは問うた。 だが、彼の心臓は既に嫌な音を立てていた。 王城の地下。 誰にも知られず。 国を守るための地味な作業を、毎日続けられるような人物。 そんなことができる人間は、この世に一人しかいない。
『……リーゼロッテ様です』
宰相の答えは、予想通りであり、そして絶望的だった。
『リーゼロッテ様の部屋の地下に、秘密の通路が見つかりました。彼女は毎晩、皆が寝静まった後に地下へ降り、自身の魔力を削って封印を補修していたのです! 誰にも告げず、見返りも求めず……ただ、殿下の治める国を守るために!』
「……リゼ……」
アレクセイの手から剣が滑り落ちた。 ガシャン、という音が瓦礫に響く。
彼は知らなかった。 彼女が書類仕事だけでなく、国の根幹に関わる防衛システムまで、たった一人で支えていたことを。 「リゼは優秀だ」とは思っていた。 だが、ここまでとは。 彼女は文字通り、王国の守護神だったのだ。
『殿下! 魔物は既に下町まで溢れかえっています! 騎士団だけでは防ぎきれません! 殿下の光魔法が必要です! 今すぐお戻りください!』
宰相の悲痛な叫び。 アレクセイは立ち尽くした。
目の前には、崩れた屋敷の地下への入り口がある。 リゼはこの下にいる。 あと数分、いや数秒あれば、彼女を捕まえられる。 愛しいリゼ。 ずっと追い求めてきたリゼ。 今、手を伸ばせば届く距離にいる。
だが、背後には、故郷の悲鳴がある。 リゼが守り続けてきた国が、今まさに燃えようとしている。
「……くっ……!」
アレクセイは空を仰いだ。 苦渋の選択。 リゼを取るか、国を取るか。
「(もし、ここで私がリゼを選べば、国は滅びる。そうなれば、リゼが帰る場所がなくなる。彼女との愛の巣を作る土地も、彼女に贈るドレスを作る職人も、美味しいケーキを作るパティシエも、みんな死んでしまう)」
彼の脳内で、高速の演算が行われた。 そして、一つの結論に達した。
「(リゼが愛した国を滅ぼすことは、リゼへの裏切りだ。私がすべきは、彼女が守ろうとしたものを、代わりに守り抜くことだ!)」
ポジティブ変換、完了。 彼は、リゼを諦めるのではない。 リゼのために、国を救うのだ。
アレクセイはジークフリートを睨みつけた。
「……帝国よ。今日のところは預けておく」
「預ける?」
「リゼのことだ。私のリゼを、一時的に貴様らに預けてやる。だが勘違いするな。これは放棄ではない。貸与だ!」
彼はマントを翻した。
「リゼに伝えておけ! 『国を掃除したらすぐに戻る。それまで、いい子で待っていろ』とな!」
「……勝手な言い草だね」
ジークフリートは呆れたが、攻撃の手を止めた。 この怪物が去ってくれるなら、それに越したことはない。
「行くぞ!」
アレクセイは再び空へ飛び上がった。 今度は、来た道を戻るために。 帝国の空に、黄金の軌跡が描かれる。 それは、愛の暴走機関車が、一時的に始発駅へ戻っていく姿だった。
◇
地下水路。 私とミナは、膝まで泥水に浸かりながら息を潜めていた。
頭上の振動が止まった。 爆発音も、殿下の怒号も聞こえない。
「……行った?」
私は恐る恐る、探索魔法を使った。 地上の魔力反応を確認する。 あの太陽のような巨大な魔力の塊が、猛スピードで遠ざかっていくのがわかる。 東の方角へ。 王国の方角へ。
「嘘……帰った?」
信じられなかった。 あと一歩まで迫っておきながら、なぜ?
その時、ポケットに入れていた通信用の魔石(以前の人生で王城の通信傍受用に作ったもの)が震えた。 王国騎士団の緊急無線を拾ったのだ。
『総員、撤退戦用意! 王都防衛ラインが決壊! 魔物が……魔物が止まらない!』 『殿下は!? 殿下はまだか!?』 『現在、音速で帰還中とのこと! あと10分で到着する! それまで持ちこたえろ!』
「……あ」
私は思い出した。 王都の地下。 古びた祭壇。 毎晩、寝る前の日課にしていた「おまじない」。
「やっば……」
私の顔から血の気が引いた。
「どうしたんですか、お姉さま? 王子様、諦めてくれたんですか?」
ミナが嬉しそうに聞く。
「……諦めたんじゃないわ。呼び戻されたのよ」
私は乾いた笑いを漏らした。
「私が……私が『厄災の門』の鍵を閉め忘れてきたから」
「え?」
「王都の地下にある封印よ。あれ、放っておくと緩むから、毎日魔力を注いで締めてたの。家出する時、すっかり忘れてたわ」
「えええええ!?」
ミナが絶叫した。 地下水路に声が響く。
「それって、リゼ様がいなくなったら魔物が出るってことですか!?」
「そうなるわね。というか、もう出てるみたい」
「自爆テロじゃないですか!」
「違うわよ! あんなの、国の管理不足よ! なんで私がボランティアでやってた仕事を、誰も引き継いでないのよ!」
私は逆ギレした。 引き継ぎ資料を作る暇もなかったのだ。 それに、まさか数日で決壊するとは思わなかった。 私の魔力供給がどれだけ高濃度だったか、今さらながら思い知る。
「でも……これで助かったわ」
私は壁に背中を預けて座り込んだ。 皮肉なことに、私の「うっかりミス(国家存亡レベル)」が、私を王子の魔手から救ったのだ。 国が滅びる危機になれば、さすがの殿下もそちらを優先せざるを得ない。
「勝った……!」
私は拳を握りしめた。 これは勝利だ。 戦略的勝利だ。 王国がパニックになっている間、殿下は魔物退治に追われる。 その隙に、私はもっと遠くへ、誰も知らない場所へ逃げることができる。
「お姉さま、喜んでる場合ですか? 国が大変なことに……」
ミナがドン引きしている。
「大丈夫よ。殿下がいるもの」
私は確信を持って言った。
「あの男は化け物よ。魔物の大群くらい、デコピンで吹き飛ばすわ。国が滅びることはない。ただ、彼がしばらく忙しくなるだけ」
「それはそうですけど……」
「さあ、地上へ戻りましょう。ジークフリートに新しい隠れ家を用意してもらわなきゃ」
私は立ち上がった。 足取りは軽い。 罪悪感? 少しはある。 でも、私の自由のためだ。 殿下には、いい運動だと思って頑張ってもらおう。
私の安眠は、まだ遠い。
朝の光が降り注ぐサンルームで、私は優雅なティータイムを楽しんでいた。
「……平和ね」
最高級の茶葉で淹れた紅茶の香りを楽しみながら、私は庭を眺めた。 手入れの行き届いた庭園には、色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥たちがさえずっている。 その一角で、私のペット(ドラゴン)であるポチが、大型犬用の特大ガムを嬉しそうに齧っている姿もまた、シュールだが平和な光景だ。
「お姉さま、クッキーが焼けましたよ!」
エプロン姿のミナが、焼きたてのクッキーを運んできた。 彼女はこの数日で、すっかりこの屋敷のメイド長と化していた。 本来の聖女としての仕事よりも、家事全般を取り仕切ることに生きがいを感じているらしい。 「王城での書類整理に比べれば、お掃除もお料理も天国です!」と語る彼女の目は、ブラック企業から脱出した社畜特有の輝きを放っていた。
「ありがとう、ミナ。……これ、また発光してるけど」
「あ、すみません。隠し味に『祈り』を込めたら、聖属性が付与されちゃって」
「食べるだけでアンデッドが一撃で成仏しそうなクッキーね」
私は苦笑しながら、黄金に輝くクッキーを口にした。 美味しい。 サクサクとした食感と共に、体内の魔力が浄化されていくのがわかる。 これなら、多少の呪いなら食べて治せるかもしれない。
「ジークフリートさんは?」
「朝から皇宮へ呼び出されています。『国境付近での謎の爆発(王子の仕業)について説明せよ』だそうです」
「……ご愁傷様ね」
私は他人事のように呟いた。 あの「契約の祭壇」での一件以来、ジークフリートは奔走している。 王子が祭壇で得た情報――つまり私の居場所――を元に、いつ攻め込んでくるかわからないからだ。
「でも、お姉さま。本当に大丈夫でしょうか? 王子様、千里眼でここを見てるんですよね?」
ミナが不安そうに空を見上げる。
「ええ。だからこそ、ここには厳重な結界が張られているわ。ジークフリートが帝国の魔導師団に掛け合って設置した『認識阻害』と『座標攪乱』の二重結界よ。これがある限り、千里眼でも正確な位置までは特定できないはず……」
私はそう言い聞かせた。 だが、胸の奥で警鐘が鳴り止まない。 あのアレクセイ殿下だ。 常識や理屈が通じる相手ではない。 「見えないなら、見えるまで全てを破壊すればいい」というバーサーカー理論で行動する男だ。
その時だった。
ウウウウウウウ――ッ!!
不快なサイレンの音が、首都全土に響き渡った。 敵襲を告げる警報だ。 しかも、最高レベルの『緊急事態宣言』を示す音色。
「な、何事ですか!?」
ミナがクッキーの皿を取り落とす。 庭のポチがガムを放り出して飛び上がった。
「ご主人様! やばい気配がするぞ! 空から化け物が来る!」
ポチが叫ぶ。 私はサンルームを飛び出し、空を見上げた。
首都の空を覆う巨大な防衛結界『アイギスの盾』。 帝国の科学と魔法の結晶であり、過去数百年間、一度も破られたことのない絶対防御壁。 その頂点付近に、一際眩しい黄金の光点が現れた。
「まさか……」
私は息を呑んだ。 光点は、隕石のような速度で結界に激突した。
ドォォォォォォォォン!!!!!
鼓膜を破るような轟音。 空が割れたかと思うほどの衝撃波が、首都全体を揺るがした。 屋敷の窓ガラスが一斉にビリビリと震える。
「結界が……歪んでる!?」
ミナが悲鳴を上げる。 絶対防御の結界が、衝突点から蜘蛛の巣状に亀裂を走らせている。 そして、その亀裂の向こうから、聞き覚えがありすぎる声が降ってきた。
『リゼェェェェェェッ!! 迎えに来たぞォォォォッ!!』
拡声魔法など使っていない。 地声だ。 魂の底から放たれた愛の絶叫が、物理的な衝撃波となって結界を粉砕しようとしているのだ。
「来た……! 本当に来やがった……!」
私は戦慄した。 国境からここまで、通常なら馬車で一週間はかかる距離だ。 それを、彼はわずか半日で走破したというのか。 しかも、単身で。
『帝国よ! そこをどけ! 私のリゼが、その下に埋まっているんだ!』
アレクセイ殿下は、結界の上空に浮かびながら剣を振り上げた。 聖剣アロンダイト・カスタムが、太陽よりも眩しく輝く。
『邪魔をするなら、この街ごと愛の力で更地にする! リゼを探すための発掘作業だと思えば安いものだ!』
「発掘作業!?」
ミナがツッコミを入れる。 首都を遺跡か何かと勘違いしている。
「迎撃せよ! 魔導砲、全門斉射!」
帝国の防衛隊長の声が響く。 市街地のあちこちに設置された迎撃タワーから、無数の魔力弾が発射された。 空を埋め尽くす光の雨。 一国の軍隊を壊滅させるほどの火力だ。
だが、殿下は笑っていた。
『ハハハッ! 花火か? リゼとの再会を祝う祝砲とは、帝国も気が利くな!』
彼は剣を一振りした。 たったそれだけで、数千発の魔力弾がかき消された。 いや、吸収された。 彼の『光属性・魔力吸収』スキルによって、敵の攻撃がそのまま彼のエネルギーに変換されたのだ。
『礼を言うぞ! おかげで魔力が満タンだ! これなら結界など紙切れ同然!』
殿下の体がさらに強く発光する。 スーパーサイヤ人など目ではない。 もはや恒星だ。
「まずい……! ポチ、ミナ! 逃げるわよ!」
私は庭へ飛び降りた。 この屋敷はもう安全ではない。 千里眼で場所がバレている以上、彼が結界を突破したら真っ先にここへ来る。
「ポチ、変身して! 小型化モードで!」
「わ、わかったワン!」
ポチがポンの音と共に、手のひらサイズのトカゲに変身する。 これをポケットにねじ込み、ミナの手を引いて裏口へと走る。
パリーン!!
頭上で、何かが砕ける音がした。 見上げると、帝国の誇る絶対防御結界『アイギスの盾』が、ガラス細工のように粉砕されていた。 空いた穴から、黄金の流星が降ってくる。
『見つけた……! 愛しのリゼ……!』
殿下が、真っ直ぐにこの屋敷へ向かってくる。 その目は、完全に私をロックオンしていた。 千里眼の精度、恐るべし。
「走れミナ! 地下水路へ!」
私たちは屋敷の地下ワインセラーにある隠し通路へと飛び込んだ。 ジークフリートが教えてくれた緊急脱出ルートだ。
ズドォォォォォン!!
背後で屋敷が吹き飛ぶ音がした。 殿下の着地衝撃だ。 私の「天国」だったスイートルームも、ふかふかのベッドも、焼きたてパンも、全てが瓦礫の下に消えた。
「私の……私の週休5日がぁぁぁっ!!」
私は涙ながらに叫び、暗い地下通路をひた走った。
◇
地上。 半壊したジークフリート邸の跡地。
土煙の中から、アレクセイ殿下がゆらりと姿を現した。 黄金の甲冑は煤けているが、その体には傷一つない。 ただ、その表情は修羅のそれだった。
「いない……」
彼は瓦礫の山を見回した。 ついさっきまでリゼがいたはずの場所。 そこには、飲みかけの紅茶のカップと、食べかけのクッキーだけが残されていた。
「また逃げたのか……リゼ……」
彼はクッキーを拾い上げ、愛おしげに口に入れた。
「……美味い。聖なる味がする。リゼの手作りか?(実際はミナ作)」
ボリボリとクッキーを噛み砕きながら、彼は再び千里眼を発動させようとした。 だが、使いすぎた魔力の反動で、視界がぐらりと揺れる。 いくら彼でも、国境から走り続け、帝国の結界を破壊し、さらに千里眼を維持するのは限界に近い。
「殿下! そこまでです!」
瓦礫の向こうから、武装した兵士たちを引き連れたジークフリートが現れた。 彼は憤怒の形相をしていた。 当然だ。 愛する別邸を破壊され、首都の防衛網を突破されたのだから。
「貴国の暴挙、もはや看過できない! これは宣戦布告と受け取るぞ!」
ジークフリートが杖を構える。 背後には、帝国の宮廷魔導師団がずらりと並び、攻撃魔法の詠唱を始めている。
「宣戦布告?」
アレクセイは鼻で笑った。
「私がいつ国を相手にした? 私が戦っているのは『リゼとの距離』という物理法則だけだ。邪魔をするなら、貴様らもまとめて物理法則の彼方へ飛ばしてやる」
彼は剣を構えた。 一人対帝国全軍。 常識的に考えれば無謀だが、今の彼には「敗北」の二文字が見えていない。
「来るぞ! 総員、防御結界展開!」
ジークフリートが叫ぶ。 アレクセイが地面を蹴ろうとした、その瞬間だった。
『――殿下! アレクセイ殿下! 応答してください! 緊急事態です!』
アレクセイの懐にある通信用魔道具が、悲鳴のような声を上げた。 王国の宰相、バルロの声だ。
「うるさい。今いいところなんだ。後にしろ」
『後になどできません! 国が……王国が滅びます!!』
「は?」
アレクセイの動きが止まった。 滅びる? 私がいない間に?
『王都の地下で、大規模な魔力爆発が起きました! 地下深くに封印されていたはずの『厄災の門』が開き、魔物が……魔物が溢れ出しています!』
「厄災の門だと?」
アレクセイは眉をひそめた。 それは王家に伝わる古い伝説だ。 王都の地下には、古代の邪神を封じた門があり、歴代の王族がその封印を守ってきた……はずだった。 だが、ここ数百年、その封印は安定しており、誰も気にしていなかった。
『なぜ急に封印が解けたんだ? 定期点検はしていたはずだろう』
『そ、それが……調査の結果、判明したのです。ここ数年、あの封印を人知れず維持し、強化し続けていた人物がいたことが……!』
宰相の声が震える。
『その人物の魔力供給が、数日前から途絶えたため、封印が一気に劣化したのです!』
「……誰だ、その人物とは」
アレクセイは問うた。 だが、彼の心臓は既に嫌な音を立てていた。 王城の地下。 誰にも知られず。 国を守るための地味な作業を、毎日続けられるような人物。 そんなことができる人間は、この世に一人しかいない。
『……リーゼロッテ様です』
宰相の答えは、予想通りであり、そして絶望的だった。
『リーゼロッテ様の部屋の地下に、秘密の通路が見つかりました。彼女は毎晩、皆が寝静まった後に地下へ降り、自身の魔力を削って封印を補修していたのです! 誰にも告げず、見返りも求めず……ただ、殿下の治める国を守るために!』
「……リゼ……」
アレクセイの手から剣が滑り落ちた。 ガシャン、という音が瓦礫に響く。
彼は知らなかった。 彼女が書類仕事だけでなく、国の根幹に関わる防衛システムまで、たった一人で支えていたことを。 「リゼは優秀だ」とは思っていた。 だが、ここまでとは。 彼女は文字通り、王国の守護神だったのだ。
『殿下! 魔物は既に下町まで溢れかえっています! 騎士団だけでは防ぎきれません! 殿下の光魔法が必要です! 今すぐお戻りください!』
宰相の悲痛な叫び。 アレクセイは立ち尽くした。
目の前には、崩れた屋敷の地下への入り口がある。 リゼはこの下にいる。 あと数分、いや数秒あれば、彼女を捕まえられる。 愛しいリゼ。 ずっと追い求めてきたリゼ。 今、手を伸ばせば届く距離にいる。
だが、背後には、故郷の悲鳴がある。 リゼが守り続けてきた国が、今まさに燃えようとしている。
「……くっ……!」
アレクセイは空を仰いだ。 苦渋の選択。 リゼを取るか、国を取るか。
「(もし、ここで私がリゼを選べば、国は滅びる。そうなれば、リゼが帰る場所がなくなる。彼女との愛の巣を作る土地も、彼女に贈るドレスを作る職人も、美味しいケーキを作るパティシエも、みんな死んでしまう)」
彼の脳内で、高速の演算が行われた。 そして、一つの結論に達した。
「(リゼが愛した国を滅ぼすことは、リゼへの裏切りだ。私がすべきは、彼女が守ろうとしたものを、代わりに守り抜くことだ!)」
ポジティブ変換、完了。 彼は、リゼを諦めるのではない。 リゼのために、国を救うのだ。
アレクセイはジークフリートを睨みつけた。
「……帝国よ。今日のところは預けておく」
「預ける?」
「リゼのことだ。私のリゼを、一時的に貴様らに預けてやる。だが勘違いするな。これは放棄ではない。貸与だ!」
彼はマントを翻した。
「リゼに伝えておけ! 『国を掃除したらすぐに戻る。それまで、いい子で待っていろ』とな!」
「……勝手な言い草だね」
ジークフリートは呆れたが、攻撃の手を止めた。 この怪物が去ってくれるなら、それに越したことはない。
「行くぞ!」
アレクセイは再び空へ飛び上がった。 今度は、来た道を戻るために。 帝国の空に、黄金の軌跡が描かれる。 それは、愛の暴走機関車が、一時的に始発駅へ戻っていく姿だった。
◇
地下水路。 私とミナは、膝まで泥水に浸かりながら息を潜めていた。
頭上の振動が止まった。 爆発音も、殿下の怒号も聞こえない。
「……行った?」
私は恐る恐る、探索魔法を使った。 地上の魔力反応を確認する。 あの太陽のような巨大な魔力の塊が、猛スピードで遠ざかっていくのがわかる。 東の方角へ。 王国の方角へ。
「嘘……帰った?」
信じられなかった。 あと一歩まで迫っておきながら、なぜ?
その時、ポケットに入れていた通信用の魔石(以前の人生で王城の通信傍受用に作ったもの)が震えた。 王国騎士団の緊急無線を拾ったのだ。
『総員、撤退戦用意! 王都防衛ラインが決壊! 魔物が……魔物が止まらない!』 『殿下は!? 殿下はまだか!?』 『現在、音速で帰還中とのこと! あと10分で到着する! それまで持ちこたえろ!』
「……あ」
私は思い出した。 王都の地下。 古びた祭壇。 毎晩、寝る前の日課にしていた「おまじない」。
「やっば……」
私の顔から血の気が引いた。
「どうしたんですか、お姉さま? 王子様、諦めてくれたんですか?」
ミナが嬉しそうに聞く。
「……諦めたんじゃないわ。呼び戻されたのよ」
私は乾いた笑いを漏らした。
「私が……私が『厄災の門』の鍵を閉め忘れてきたから」
「え?」
「王都の地下にある封印よ。あれ、放っておくと緩むから、毎日魔力を注いで締めてたの。家出する時、すっかり忘れてたわ」
「えええええ!?」
ミナが絶叫した。 地下水路に声が響く。
「それって、リゼ様がいなくなったら魔物が出るってことですか!?」
「そうなるわね。というか、もう出てるみたい」
「自爆テロじゃないですか!」
「違うわよ! あんなの、国の管理不足よ! なんで私がボランティアでやってた仕事を、誰も引き継いでないのよ!」
私は逆ギレした。 引き継ぎ資料を作る暇もなかったのだ。 それに、まさか数日で決壊するとは思わなかった。 私の魔力供給がどれだけ高濃度だったか、今さらながら思い知る。
「でも……これで助かったわ」
私は壁に背中を預けて座り込んだ。 皮肉なことに、私の「うっかりミス(国家存亡レベル)」が、私を王子の魔手から救ったのだ。 国が滅びる危機になれば、さすがの殿下もそちらを優先せざるを得ない。
「勝った……!」
私は拳を握りしめた。 これは勝利だ。 戦略的勝利だ。 王国がパニックになっている間、殿下は魔物退治に追われる。 その隙に、私はもっと遠くへ、誰も知らない場所へ逃げることができる。
「お姉さま、喜んでる場合ですか? 国が大変なことに……」
ミナがドン引きしている。
「大丈夫よ。殿下がいるもの」
私は確信を持って言った。
「あの男は化け物よ。魔物の大群くらい、デコピンで吹き飛ばすわ。国が滅びることはない。ただ、彼がしばらく忙しくなるだけ」
「それはそうですけど……」
「さあ、地上へ戻りましょう。ジークフリートに新しい隠れ家を用意してもらわなきゃ」
私は立ち上がった。 足取りは軽い。 罪悪感? 少しはある。 でも、私の自由のためだ。 殿下には、いい運動だと思って頑張ってもらおう。
私の安眠は、まだ遠い。
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