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第十六話 帰還。伝説のドラゴンに乗って王都へ逆落とし
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王都の地下深く。 そこは、王城の煌びやかな世界とは隔絶された、冷たく湿った闇の世界だった。
かつて、建国王が邪神を封じたとされる『封印の間』へと続く螺旋階段。 私はそこを、スカートの裾を翻しながら駆け下りていた。
「はぁ、はぁ……! 急がないと!」
「リゼ、足元が危ないぞ。ほら、私の手を」
隣を走るアレクセイ殿下が、当然のように手を差し出してくる。 ボロボロの甲冑姿で、顔には煤がついているのに、その笑顔だけはピクニックに来た貴公子のようだ。
「いらないわよ! 自分で走れるわ!」
私はその手をパシッとはたいた。 しかし、殿下はめげない。
「照れなくていいのに。ああ、でもその強気なところも可愛いよ。まるで警戒心の強い野生のリスみたいだ」
「リス扱いしないで!」
私たちは地下へと潜っていく。 通常なら、ここは王族しか立ち入れない禁足地だ。 だが、今の私にとっては「毎晩通った通勤路」である。 どこに段差があるか、どこでカビ臭くなるか、すべて把握している。
「それにしても驚いたよ。君の部屋の隠し扉が、こんな場所に繋がっていたなんて」
殿下が感心したように壁を撫でた。
「私が掘ったのよ」
「……え?」
「正確には、5回目の人生で掘削魔法を極めた時に作ったルートを、今回の人生で再開通させたの。毎日、衛兵に見つからずに地下へ行くには、これしかなかったから」
私は事も無げに言った。 殿下は目を丸くし、そして次の瞬間、感動に打ち震えた。
「すごい……! 君は、私のためにトンネルまで掘ってくれていたのか! 愛の力は岩盤をも穿つと言うが、まさか物理的に実践するとは!」
「違うわよ! 国を守るためよ! あんたのためじゃない!」
「国=私だ。つまり私のためだ。ありがとうリゼ、君の愛の深さに窒息しそうだ」
ポジティブ変換が早すぎる。 会話している間に、地下3層へ到達した。 ここから空気が変わる。 肌にまとわりつくような、ねっとりとした瘴気。 『厄災の門』から漏れ出した魔気が、この空間を満たしているのだ。
「グルルルル……」
暗闇の奥から、無数の赤い目が光った。 シャドーウルフ、ガーゴイル、そして不定形の黒いスライムたち。 門から溢れ出た魔物の先兵だ。
「リゼ、下がっていろ。ここは私が……」
殿下が剣を構えようとする。 しかし、私は一歩前に出た。
「遅いわよ、アレクセイ」
私は指を鳴らした。 パチンッ。 その瞬間、通路の壁に刻んでおいた魔法陣が一斉に発光した。
「『自動防衛システム起動(セキュリティ・オン)』」
ズドドドオォォォン!!
壁から無数の光弾が発射され、魔物たちをハチの巣にした。 私が「毎日のメンテナンスが面倒だから」と設置しておいた、自動迎撃トラップだ。
「え……?」
殿下が呆然としている。 瞬殺された魔物の山を前に、私は髪をかき上げた。
「さあ、行くわよ。最深部までノンストップで駆け抜けるわ」
「……リゼ。君、本当に薬屋か?」
「ええ。ちょっと害虫駆除が得意なだけのね」
私たちはさらに奥へと進んだ。 私のトラップで仕留め損ねた大型の魔物は、殿下が光の剣で一刀両断にする。 私が魔法で足止めし、殿下がトドメを刺す。 言葉を交わさずとも、呼吸が合う。 10回のループで、私が彼を観察し続けてきた結果だが、殿下はそれを「魂の共鳴」だと信じて疑わなかった。
「最高だ! リゼ、君との共闘がこんなに楽しいなんて! これは初めての共同作業だね!」
「ケーキ入刀みたいなノリで言わないで!」
敵をなぎ倒しながら、私たちはついに最深部『封印の間』へとたどり着いた。
そこは、巨大なドーム状の空間だった。 中央には、禍々しい紫色の光を放つ、巨大な石の扉――『厄災の門』がそびえ立っている。 その扉が、今は半開きになり、そこから黒い霧が噴き出していた。
そして。 その門の前に、一体の怪物が鎮座していた。 全身が漆黒の煙で構成され、山羊のような角と、ボロボロの翼を持つ巨人。 『厄災の化身(アバター)』。 門から漏れ出た魔力が凝縮して生まれた、魔王級の災害だ。
「オオオオオオオ……」
化身が咆哮する。 その声だけで、空間が歪み、天井からパラパラと瓦礫が落ちてくる。
「……あいつね。私の安眠を妨害し、パン屋を危機に晒した元凶は」
私はミスリルのナイフを抜いた。
「強敵だな。王宮魔導師団が束になっても勝てないレベルだ」
殿下が剣を構える。 その表情から、先ほどまでの浮ついた空気が消え、王国の守護者としての覇気が立ち昇る。
「リゼ。君は封印の修復を頼む。あいつは私が引き受ける」
「一人で? 無理よ。あの魔力量、あんたでも長時間持たないわ」
「君を守るためなら、限界など超えてみせるさ」
殿下はニヤリと笑った。 かっこいい。 悔しいけれど、こういう時の彼は本当にかっこいいのだ。 だからこそ、タチが悪い。
「……ダメよ。二人でやるわ」
私は彼の隣に立った。
「私がやつの魔力回路を解析して弱点を暴く。あんたはその隙に最大火力でぶっ放す。いいわね?」
「……ふっ。わかった。君の指揮に従おう、私の女神」
「行くわよ!」
私たちは同時に地面を蹴った。
「オオオオッ!!」
化身が巨大な腕を振り下ろす。 衝撃波が走り、床が砕ける。 私たちは左右に散開して回避した。
「『光よ、我が刃となれ(ライトニング・ブレード)』!」
殿下が光の斬撃を放つ。 化身の腕を切り裂くが、すぐに黒い煙が集まり再生してしまう。 物理無効、魔法耐性あり。 厄介な相手だ。
「再生核はどこ……! 『解析(アナライズ)』!」
私は走りながら、瞳に魔力を集中させた。 アメジストの瞳が青白く発光する。 化身の体内に流れる魔力の奔流。 その中心、胸の奥深くに、一際輝くコアが見えた。
「見つけた! 胸の中央! そこにある『賢者の石』もどきが核よ!」
「胸か! 了解だ!」
殿下が跳躍する。 しかし、化身もさるもの。 背中から無数の黒い触手を伸ばし、空中の殿下を迎撃する。
「チッ……!」
殿下は剣で触手を弾くが、数が多すぎる。 防戦一方になり、地面に叩きつけられた。
「アレクセイ!」
「ぐっ……! 問題ない! これくらい、リゼに冷たくされた時の心の痛みに比べれば、蚊に刺されたようなものだ!」
殿下は即座に起き上がった。 メンタルが強すぎる。
「援護するわ! 『重力よ、彼を縛れ(グラビティ・プレス)』!」
私は古代語魔法を発動。 化身の周囲の重力を10倍にする。 ズシンッ! 化身の動きが鈍る。
「今よ!」
「おおおおおッ! 『聖光・極大消滅破(セント・エクスカリバー)』!!」
殿下の剣が、太陽のごとく輝いた。 彼は残りの魔力を全て注ぎ込み、光の奔流となって化身へと突っ込んだ。
ドゴォォォォォォォォン!!!!!
光が地下空間を埋め尽くす。 化身の胸が貫かれ、黒い煙が霧散していく。 断末魔の声と共に、核が砕け散った。
「……やったか?」
光が収まると、そこには膝をつく殿下の姿があった。 肩で息をしている。
「……ナイス、アレクセイ」
私が駆け寄ろうとした時だった。
「まだよ! リゼ、後ろ!」
通信魔石から、地上にいるミナの声が響いた。 え?
振り返ると、砕け散ったはずの核の破片が、再び集まろうとしていた。 いや、違う。 門の隙間から、新たな魔力が供給されているのだ。 門を閉じない限り、こいつは何度でも蘇る!
「くそっ、ゾンビかよ!」
私は悪態をついた。 殿下はもう魔力切れ寸前だ。 次の再生まで、あと数十秒。 それまでに門を閉じなければ、私たちはここでジリ貧になって死ぬ。
「アレクセイ! 門を閉じるわ! 魔力を貸して!」
私は扉の前に走り、両手をかざした。
「ああ、いくらでも持って行け! 私の全ては君のものだ!」
殿下が背後から私に抱きついた。 いや、抱きついたのではない。 魔力供給のための接触だ。 背中合わせで戦うかっこいいシーンを想像していたのに、なぜかバックハグ状態になっている。
「近い! くっつくな!」
「魔力を送るには、これが一番効率がいいんだ!」
殿下の体から、温かい光が流れ込んでくる。 膨大な魔力。 枯渇していた私のタンクが一瞬で満タンになり、溢れそうになる。
「いくわよ……! 『古の盟約に基づき、我、封印を修復せん』!」
私が詠唱を始めると、扉に刻まれた紋章が輝き出した。 重い石の扉が、ギギギ……と音を立てて閉まり始める。
「オオオ……マタ……セッ……」
再生しかけた化身が、扉の隙間から這い出そうとする。 黒い手が私に伸びる。
「邪魔だァァァッ!!」
殿下が私を抱きしめたまま、片手で光の弾丸を放った。 化身の手が弾き飛ばされる。
「リゼに触れるな! その細い腰に触れていいのは私だけだ!」
「どさくさに紛れてどこ触ってんのよ!」
殿下の手が私の腰に回されている。 セクハラだ。 でも、そのおかげで魔力のパスが繋がり、封印術式の速度が上がる。
「閉まれぇぇぇぇッ!!」
私と殿下の声が重なった。 光と魔力が奔流となって扉を押し込む。
ズォォォン!!
扉が完全に閉じた。 同時に、幾重もの魔法鍵がかかり、封印の紋章が焼き付けられる。 漏れ出していた瘴気が消え、化身の残滓も空気に溶けて消滅した。
静寂が戻った。 残ったのは、荒い息を吐く私たち二人だけ。
「……終わった……」
私は力が抜けて、その場に座り込んだ。 殿下も私の背中に寄りかかるようにして倒れ込む。
「ふぅ……。なんとか、なったな」
「ええ。ギリギリだったわね」
私たちはしばらく、背中合わせで座っていた。 地下の冷たい空気が、火照った体を冷やしていく。 殿下の体温が、背中越しに伝わってくる。 不快では……ない。 むしろ、安心感すら覚えている自分がいて、私は慌てて首を振った。
「……さて、帰るわよ」
私は立ち上がろうとした。 だが、殿下が私の手を掴んだ。
「リゼ」
真剣な声。 振り返ると、彼は真っ直ぐに私を見ていた。 煤で汚れた顔。 でも、その瞳は澄み切っていた。
「今回の件、礼を言う。君がいなければ、この国は終わっていた」
「……別に。私はパン屋を守りたかっただけよ」
「わかっている。君はそういうことにしておきたいんだね」
彼は優しく微笑んだ。 その笑顔は、いつもの狂気じみたものではなく、どこか寂しげで、そして深い愛情に満ちていた。
「リゼ。君が逃げ出した理由……少しだけ、わかった気がするよ」
「え?」
「私は、君に甘えすぎていたのかもしれない。君が優秀で、何でもできて、いつも私の影で支えてくれていたことに、胡座をかいていた。君の負担に気づかず、君の心を置き去りにしていた」
殿下が、私の手を両手で包み込む。
「『厄災の門』の管理。これも君が一人で背負っていたんだね。そんな重荷を背負わせて、私は『愛している』と口先だけで叫んでいた。……滑稽だな」
「…………」
私は言葉を失った。 あのポジティブモンスターのアレクセイが、反省している? まともなことを言っている? 天変地異の前触れか?
「君が逃げたのは、私の愛が重かったからじゃない。私の愛が『軽かった』からだ。君の献身に見合うだけの、本当の信頼と尊敬が欠けていたんだ」
彼は私の手の甲に、額を押し当てた。
「すまなかった、リゼ。本当に、すまなかった」
王族が。 プライドの塊である彼が。 私に頭を下げている。
胸の奥がチクリと痛んだ。 10回目の人生で初めて見る、彼の弱さ。 そして、誠実さ。
(……ズルいわよ、そんなの)
こんな顔を見せられたら、邪険にできないじゃない。 私は自由になりたいだけなのに。 これじゃあ、まるで私が彼をいじめているみたいだ。
「……わかったなら、少しは反省なさい」
私は彼の手を振りほどかず、小さく言った。
「これからは、自分のことは自分でするのよ。書類も自分で見る。封印の管理も、魔導師団に引き継がせるわ。私はもう、手伝わないから」
「ああ、約束する。君の手を煩わせることはしない」
彼は顔を上げた。
「だから……これからは、公爵令嬢としてではなく、一人の女性として、私の隣にいてくれないか? 仕事のパートナーとしてではなく、人生のパートナーとして」
プロポーズ。 10回目にして初めての、まともなプロポーズだ。 いつもの「檻に閉じ込めてやる」という狂気はない。 ただ純粋な、一人の男としての願い。
心が揺れた。 ほんの少しだけ。 このまま、彼の手を取れば。 きっと、幸せな未来があるのかもしれない。 もう断罪も、処刑もない。 彼と一緒に、この国を立て直していく未来が。
でも。
(……ダメよ)
私は思い出した。 帝国の別荘での、あの平和な朝を。 湖の静けさを。 時間を気にせず眠る幸せを。
私は、まだ自由を知ったばかりだ。 ここで彼の手を取れば、私はまた「王太子妃」という枠に収まってしまう。 それは、幸せかもしれないけれど、私の望む「スローライフ」ではない。
私はゆっくりと、彼の手から自分の手を抜いた。
「……ごめんなさい、アレクセイ」
「リゼ?」
「その言葉は嬉しかったわ。でも、私はまだ、あんたの隣には戻れない」
私は立ち上がった。
「私はもっと、世界を見てみたいの。自分の足で歩いて、自分の目で見たいの。あんたの後ろをついて歩くんじゃなくて、あんたとは違う道を歩いてみたいの」
「リゼ……」
「だから、サヨナラよ。今度こそ、本当に」
私は背を向けた。 これでいい。 これで、彼も諦めてくれるはずだ。
私は出口へと歩き出した。 殿下は追いかけてこなかった。 ただ、静かに私の背中を見送っている気配がした。
「(これで終わりね。私の長い婚約期間も、逃亡劇も)」
胸に空いた穴のような寂しさを感じながら、私は階段を上がった。 地上へ出れば、ミナとポチが待っている。 そうしたら、帝国へ帰ろう。 そして、今度こそ本当の休日を――。
「……待て」
背後から、声が聞こえた。 低い、決意に満ちた声。
「逃がすかよ」
「え?」
振り返ると、アレクセイ殿下が立ち上がっていた。 その瞳から、先ほどの殊勝な色は消え失せ、いつもの――いや、以前にも増して強烈な「炎」が燃え上がっていた。
「私の反省は終わった。そして理解した。君が自由を求めているなら、私がその『自由』ごと君を愛せばいいと!」
「はあ!?」
「君が世界を見たいなら、私も一緒に見よう! 君が違う道を歩くなら、私もその道に並走しよう! 君がスローライフを望むなら、私が世界最高のスローライフ環境(王城の別邸)を提供しよう!」
ポジティブ変換、再起動。 しかもアップデートされている。
「リゼ! 君は言ったな。『自分の足で歩きたい』と! 素晴らしい! ならば、私との『愛の追いかけっこ』こそ、君の足を鍛える最高のトレーニングではないか!」
「なんでそうなるのよ!」
「決定だ! 君が逃げる限り、私は追いかける! これはもはや婚約などという枠組みを超えた、魂のレースだ! さあ、逃げろリゼ! 10秒後にスタートだ!」
「10、9、8……」
カウントダウンを始める王子。 私は絶句した。 反省したんじゃなかったのか。 「手を煩わせない」って言ったじゃないか。 いや、ある意味、仕事の手は煩わせないと言っただけで、プライベートで追いかけ回すことは否定していない。
「……このバカァァァァッ!!」
私は絶叫し、全速力で階段を駆け上がった。 前言撤回。 こいつは変わらない。 死ぬまで変わらない。
「待てェェェリゼェェェ! 愛してるぞォォォ!」
背後から迫る足音。 私の逃亡生活は、終わるどころか、第2ラウンドへと突入した。 しかも今度は、「国を救った英雄カップル(公認)」として、世界中が私たちの鬼ごっこを見守るという、最悪のオマケ付きで。
地上に出ると、朝焼けが広がっていた。 美しい夜明け。 でも、私の安眠の夜は、まだまだ明けそうになかった。
かつて、建国王が邪神を封じたとされる『封印の間』へと続く螺旋階段。 私はそこを、スカートの裾を翻しながら駆け下りていた。
「はぁ、はぁ……! 急がないと!」
「リゼ、足元が危ないぞ。ほら、私の手を」
隣を走るアレクセイ殿下が、当然のように手を差し出してくる。 ボロボロの甲冑姿で、顔には煤がついているのに、その笑顔だけはピクニックに来た貴公子のようだ。
「いらないわよ! 自分で走れるわ!」
私はその手をパシッとはたいた。 しかし、殿下はめげない。
「照れなくていいのに。ああ、でもその強気なところも可愛いよ。まるで警戒心の強い野生のリスみたいだ」
「リス扱いしないで!」
私たちは地下へと潜っていく。 通常なら、ここは王族しか立ち入れない禁足地だ。 だが、今の私にとっては「毎晩通った通勤路」である。 どこに段差があるか、どこでカビ臭くなるか、すべて把握している。
「それにしても驚いたよ。君の部屋の隠し扉が、こんな場所に繋がっていたなんて」
殿下が感心したように壁を撫でた。
「私が掘ったのよ」
「……え?」
「正確には、5回目の人生で掘削魔法を極めた時に作ったルートを、今回の人生で再開通させたの。毎日、衛兵に見つからずに地下へ行くには、これしかなかったから」
私は事も無げに言った。 殿下は目を丸くし、そして次の瞬間、感動に打ち震えた。
「すごい……! 君は、私のためにトンネルまで掘ってくれていたのか! 愛の力は岩盤をも穿つと言うが、まさか物理的に実践するとは!」
「違うわよ! 国を守るためよ! あんたのためじゃない!」
「国=私だ。つまり私のためだ。ありがとうリゼ、君の愛の深さに窒息しそうだ」
ポジティブ変換が早すぎる。 会話している間に、地下3層へ到達した。 ここから空気が変わる。 肌にまとわりつくような、ねっとりとした瘴気。 『厄災の門』から漏れ出した魔気が、この空間を満たしているのだ。
「グルルルル……」
暗闇の奥から、無数の赤い目が光った。 シャドーウルフ、ガーゴイル、そして不定形の黒いスライムたち。 門から溢れ出た魔物の先兵だ。
「リゼ、下がっていろ。ここは私が……」
殿下が剣を構えようとする。 しかし、私は一歩前に出た。
「遅いわよ、アレクセイ」
私は指を鳴らした。 パチンッ。 その瞬間、通路の壁に刻んでおいた魔法陣が一斉に発光した。
「『自動防衛システム起動(セキュリティ・オン)』」
ズドドドオォォォン!!
壁から無数の光弾が発射され、魔物たちをハチの巣にした。 私が「毎日のメンテナンスが面倒だから」と設置しておいた、自動迎撃トラップだ。
「え……?」
殿下が呆然としている。 瞬殺された魔物の山を前に、私は髪をかき上げた。
「さあ、行くわよ。最深部までノンストップで駆け抜けるわ」
「……リゼ。君、本当に薬屋か?」
「ええ。ちょっと害虫駆除が得意なだけのね」
私たちはさらに奥へと進んだ。 私のトラップで仕留め損ねた大型の魔物は、殿下が光の剣で一刀両断にする。 私が魔法で足止めし、殿下がトドメを刺す。 言葉を交わさずとも、呼吸が合う。 10回のループで、私が彼を観察し続けてきた結果だが、殿下はそれを「魂の共鳴」だと信じて疑わなかった。
「最高だ! リゼ、君との共闘がこんなに楽しいなんて! これは初めての共同作業だね!」
「ケーキ入刀みたいなノリで言わないで!」
敵をなぎ倒しながら、私たちはついに最深部『封印の間』へとたどり着いた。
そこは、巨大なドーム状の空間だった。 中央には、禍々しい紫色の光を放つ、巨大な石の扉――『厄災の門』がそびえ立っている。 その扉が、今は半開きになり、そこから黒い霧が噴き出していた。
そして。 その門の前に、一体の怪物が鎮座していた。 全身が漆黒の煙で構成され、山羊のような角と、ボロボロの翼を持つ巨人。 『厄災の化身(アバター)』。 門から漏れ出た魔力が凝縮して生まれた、魔王級の災害だ。
「オオオオオオオ……」
化身が咆哮する。 その声だけで、空間が歪み、天井からパラパラと瓦礫が落ちてくる。
「……あいつね。私の安眠を妨害し、パン屋を危機に晒した元凶は」
私はミスリルのナイフを抜いた。
「強敵だな。王宮魔導師団が束になっても勝てないレベルだ」
殿下が剣を構える。 その表情から、先ほどまでの浮ついた空気が消え、王国の守護者としての覇気が立ち昇る。
「リゼ。君は封印の修復を頼む。あいつは私が引き受ける」
「一人で? 無理よ。あの魔力量、あんたでも長時間持たないわ」
「君を守るためなら、限界など超えてみせるさ」
殿下はニヤリと笑った。 かっこいい。 悔しいけれど、こういう時の彼は本当にかっこいいのだ。 だからこそ、タチが悪い。
「……ダメよ。二人でやるわ」
私は彼の隣に立った。
「私がやつの魔力回路を解析して弱点を暴く。あんたはその隙に最大火力でぶっ放す。いいわね?」
「……ふっ。わかった。君の指揮に従おう、私の女神」
「行くわよ!」
私たちは同時に地面を蹴った。
「オオオオッ!!」
化身が巨大な腕を振り下ろす。 衝撃波が走り、床が砕ける。 私たちは左右に散開して回避した。
「『光よ、我が刃となれ(ライトニング・ブレード)』!」
殿下が光の斬撃を放つ。 化身の腕を切り裂くが、すぐに黒い煙が集まり再生してしまう。 物理無効、魔法耐性あり。 厄介な相手だ。
「再生核はどこ……! 『解析(アナライズ)』!」
私は走りながら、瞳に魔力を集中させた。 アメジストの瞳が青白く発光する。 化身の体内に流れる魔力の奔流。 その中心、胸の奥深くに、一際輝くコアが見えた。
「見つけた! 胸の中央! そこにある『賢者の石』もどきが核よ!」
「胸か! 了解だ!」
殿下が跳躍する。 しかし、化身もさるもの。 背中から無数の黒い触手を伸ばし、空中の殿下を迎撃する。
「チッ……!」
殿下は剣で触手を弾くが、数が多すぎる。 防戦一方になり、地面に叩きつけられた。
「アレクセイ!」
「ぐっ……! 問題ない! これくらい、リゼに冷たくされた時の心の痛みに比べれば、蚊に刺されたようなものだ!」
殿下は即座に起き上がった。 メンタルが強すぎる。
「援護するわ! 『重力よ、彼を縛れ(グラビティ・プレス)』!」
私は古代語魔法を発動。 化身の周囲の重力を10倍にする。 ズシンッ! 化身の動きが鈍る。
「今よ!」
「おおおおおッ! 『聖光・極大消滅破(セント・エクスカリバー)』!!」
殿下の剣が、太陽のごとく輝いた。 彼は残りの魔力を全て注ぎ込み、光の奔流となって化身へと突っ込んだ。
ドゴォォォォォォォォン!!!!!
光が地下空間を埋め尽くす。 化身の胸が貫かれ、黒い煙が霧散していく。 断末魔の声と共に、核が砕け散った。
「……やったか?」
光が収まると、そこには膝をつく殿下の姿があった。 肩で息をしている。
「……ナイス、アレクセイ」
私が駆け寄ろうとした時だった。
「まだよ! リゼ、後ろ!」
通信魔石から、地上にいるミナの声が響いた。 え?
振り返ると、砕け散ったはずの核の破片が、再び集まろうとしていた。 いや、違う。 門の隙間から、新たな魔力が供給されているのだ。 門を閉じない限り、こいつは何度でも蘇る!
「くそっ、ゾンビかよ!」
私は悪態をついた。 殿下はもう魔力切れ寸前だ。 次の再生まで、あと数十秒。 それまでに門を閉じなければ、私たちはここでジリ貧になって死ぬ。
「アレクセイ! 門を閉じるわ! 魔力を貸して!」
私は扉の前に走り、両手をかざした。
「ああ、いくらでも持って行け! 私の全ては君のものだ!」
殿下が背後から私に抱きついた。 いや、抱きついたのではない。 魔力供給のための接触だ。 背中合わせで戦うかっこいいシーンを想像していたのに、なぜかバックハグ状態になっている。
「近い! くっつくな!」
「魔力を送るには、これが一番効率がいいんだ!」
殿下の体から、温かい光が流れ込んでくる。 膨大な魔力。 枯渇していた私のタンクが一瞬で満タンになり、溢れそうになる。
「いくわよ……! 『古の盟約に基づき、我、封印を修復せん』!」
私が詠唱を始めると、扉に刻まれた紋章が輝き出した。 重い石の扉が、ギギギ……と音を立てて閉まり始める。
「オオオ……マタ……セッ……」
再生しかけた化身が、扉の隙間から這い出そうとする。 黒い手が私に伸びる。
「邪魔だァァァッ!!」
殿下が私を抱きしめたまま、片手で光の弾丸を放った。 化身の手が弾き飛ばされる。
「リゼに触れるな! その細い腰に触れていいのは私だけだ!」
「どさくさに紛れてどこ触ってんのよ!」
殿下の手が私の腰に回されている。 セクハラだ。 でも、そのおかげで魔力のパスが繋がり、封印術式の速度が上がる。
「閉まれぇぇぇぇッ!!」
私と殿下の声が重なった。 光と魔力が奔流となって扉を押し込む。
ズォォォン!!
扉が完全に閉じた。 同時に、幾重もの魔法鍵がかかり、封印の紋章が焼き付けられる。 漏れ出していた瘴気が消え、化身の残滓も空気に溶けて消滅した。
静寂が戻った。 残ったのは、荒い息を吐く私たち二人だけ。
「……終わった……」
私は力が抜けて、その場に座り込んだ。 殿下も私の背中に寄りかかるようにして倒れ込む。
「ふぅ……。なんとか、なったな」
「ええ。ギリギリだったわね」
私たちはしばらく、背中合わせで座っていた。 地下の冷たい空気が、火照った体を冷やしていく。 殿下の体温が、背中越しに伝わってくる。 不快では……ない。 むしろ、安心感すら覚えている自分がいて、私は慌てて首を振った。
「……さて、帰るわよ」
私は立ち上がろうとした。 だが、殿下が私の手を掴んだ。
「リゼ」
真剣な声。 振り返ると、彼は真っ直ぐに私を見ていた。 煤で汚れた顔。 でも、その瞳は澄み切っていた。
「今回の件、礼を言う。君がいなければ、この国は終わっていた」
「……別に。私はパン屋を守りたかっただけよ」
「わかっている。君はそういうことにしておきたいんだね」
彼は優しく微笑んだ。 その笑顔は、いつもの狂気じみたものではなく、どこか寂しげで、そして深い愛情に満ちていた。
「リゼ。君が逃げ出した理由……少しだけ、わかった気がするよ」
「え?」
「私は、君に甘えすぎていたのかもしれない。君が優秀で、何でもできて、いつも私の影で支えてくれていたことに、胡座をかいていた。君の負担に気づかず、君の心を置き去りにしていた」
殿下が、私の手を両手で包み込む。
「『厄災の門』の管理。これも君が一人で背負っていたんだね。そんな重荷を背負わせて、私は『愛している』と口先だけで叫んでいた。……滑稽だな」
「…………」
私は言葉を失った。 あのポジティブモンスターのアレクセイが、反省している? まともなことを言っている? 天変地異の前触れか?
「君が逃げたのは、私の愛が重かったからじゃない。私の愛が『軽かった』からだ。君の献身に見合うだけの、本当の信頼と尊敬が欠けていたんだ」
彼は私の手の甲に、額を押し当てた。
「すまなかった、リゼ。本当に、すまなかった」
王族が。 プライドの塊である彼が。 私に頭を下げている。
胸の奥がチクリと痛んだ。 10回目の人生で初めて見る、彼の弱さ。 そして、誠実さ。
(……ズルいわよ、そんなの)
こんな顔を見せられたら、邪険にできないじゃない。 私は自由になりたいだけなのに。 これじゃあ、まるで私が彼をいじめているみたいだ。
「……わかったなら、少しは反省なさい」
私は彼の手を振りほどかず、小さく言った。
「これからは、自分のことは自分でするのよ。書類も自分で見る。封印の管理も、魔導師団に引き継がせるわ。私はもう、手伝わないから」
「ああ、約束する。君の手を煩わせることはしない」
彼は顔を上げた。
「だから……これからは、公爵令嬢としてではなく、一人の女性として、私の隣にいてくれないか? 仕事のパートナーとしてではなく、人生のパートナーとして」
プロポーズ。 10回目にして初めての、まともなプロポーズだ。 いつもの「檻に閉じ込めてやる」という狂気はない。 ただ純粋な、一人の男としての願い。
心が揺れた。 ほんの少しだけ。 このまま、彼の手を取れば。 きっと、幸せな未来があるのかもしれない。 もう断罪も、処刑もない。 彼と一緒に、この国を立て直していく未来が。
でも。
(……ダメよ)
私は思い出した。 帝国の別荘での、あの平和な朝を。 湖の静けさを。 時間を気にせず眠る幸せを。
私は、まだ自由を知ったばかりだ。 ここで彼の手を取れば、私はまた「王太子妃」という枠に収まってしまう。 それは、幸せかもしれないけれど、私の望む「スローライフ」ではない。
私はゆっくりと、彼の手から自分の手を抜いた。
「……ごめんなさい、アレクセイ」
「リゼ?」
「その言葉は嬉しかったわ。でも、私はまだ、あんたの隣には戻れない」
私は立ち上がった。
「私はもっと、世界を見てみたいの。自分の足で歩いて、自分の目で見たいの。あんたの後ろをついて歩くんじゃなくて、あんたとは違う道を歩いてみたいの」
「リゼ……」
「だから、サヨナラよ。今度こそ、本当に」
私は背を向けた。 これでいい。 これで、彼も諦めてくれるはずだ。
私は出口へと歩き出した。 殿下は追いかけてこなかった。 ただ、静かに私の背中を見送っている気配がした。
「(これで終わりね。私の長い婚約期間も、逃亡劇も)」
胸に空いた穴のような寂しさを感じながら、私は階段を上がった。 地上へ出れば、ミナとポチが待っている。 そうしたら、帝国へ帰ろう。 そして、今度こそ本当の休日を――。
「……待て」
背後から、声が聞こえた。 低い、決意に満ちた声。
「逃がすかよ」
「え?」
振り返ると、アレクセイ殿下が立ち上がっていた。 その瞳から、先ほどの殊勝な色は消え失せ、いつもの――いや、以前にも増して強烈な「炎」が燃え上がっていた。
「私の反省は終わった。そして理解した。君が自由を求めているなら、私がその『自由』ごと君を愛せばいいと!」
「はあ!?」
「君が世界を見たいなら、私も一緒に見よう! 君が違う道を歩くなら、私もその道に並走しよう! 君がスローライフを望むなら、私が世界最高のスローライフ環境(王城の別邸)を提供しよう!」
ポジティブ変換、再起動。 しかもアップデートされている。
「リゼ! 君は言ったな。『自分の足で歩きたい』と! 素晴らしい! ならば、私との『愛の追いかけっこ』こそ、君の足を鍛える最高のトレーニングではないか!」
「なんでそうなるのよ!」
「決定だ! 君が逃げる限り、私は追いかける! これはもはや婚約などという枠組みを超えた、魂のレースだ! さあ、逃げろリゼ! 10秒後にスタートだ!」
「10、9、8……」
カウントダウンを始める王子。 私は絶句した。 反省したんじゃなかったのか。 「手を煩わせない」って言ったじゃないか。 いや、ある意味、仕事の手は煩わせないと言っただけで、プライベートで追いかけ回すことは否定していない。
「……このバカァァァァッ!!」
私は絶叫し、全速力で階段を駆け上がった。 前言撤回。 こいつは変わらない。 死ぬまで変わらない。
「待てェェェリゼェェェ! 愛してるぞォォォ!」
背後から迫る足音。 私の逃亡生活は、終わるどころか、第2ラウンドへと突入した。 しかも今度は、「国を救った英雄カップル(公認)」として、世界中が私たちの鬼ごっこを見守るという、最悪のオマケ付きで。
地上に出ると、朝焼けが広がっていた。 美しい夜明け。 でも、私の安眠の夜は、まだまだ明けそうになかった。
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